第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題6~10】

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6.75歳の女性。右利き。脳梗塞を発症し救急車で搬入された。発症翌日に症状の悪化を認めた。発症3日目の頭部MRIの拡散強調像を別に示す。
 最も出現しやすい症状はどれか。

1.片麻痺
2.失語症
3.運動失調
4.嚥下障害
5.視野障害

解答:1

解説

本症例のポイント

・75歳女性(右利き)
・脳梗塞。
・発症翌日:症状の悪化。
・頭部MRIの拡散強調像(発症3日目):画像は、側脳室レベルのスライスである。そのため、受傷部位は「放線冠」であると推測できる。
→放線冠は錐体路の一部で、大脳皮質と下位脳を結ぶ上行性・下行性線維のことで、内包から上方の部位を指す。錐体路は、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。ちなみに、視床・内包・被殻・尾状核は大脳基底核レベルの画像で見られる。

1.〇:正しい。片麻痺である。なぜなら、放線冠は錐体路の一部で大脳皮質からの運動線維が収束するため。
2.×:失語症は、視床の症状であるが、一般的には、ブローカ野・ウェルニッケ野の障害で出現する。
3.×:運動失調は、視床の症状であるが、一般的には、小脳の障害で出現する。視床に障害が起こると①視床痛、②運動失調、③視床手、④失語などが特徴である。
4.×:嚥下障害は、大脳皮質から延髄の脳神経核を結ぶ皮質経路で起こる。つまり、延髄梗塞による球麻痺などで出現しやすい。
5.×:視野障害は、視神経から後頭葉の視覚伝導路の障害で起こる。視覚伝導路は、「視神経―視交叉―視索―外側膝状体―視放線―視覚野」である。

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7.70歳の男性。脳卒中による右片麻痺。現在のADLは次のとおりである。食事は普通食を先割れスプーン使用で自立、整容は自立、更衣は自立。トイレは部分介助、入浴は部分介助。背臥位から自力で起き上がり端座位保持可能だが、車いすへの移乗は監視が必要。移動は車椅子にて自立。排便や排尿は時々失禁がある。
 Barthel Indexの得点はどれか。

1.35点
2.45点
3.55点
4.65点
5.75点

解答:355点

解説

本症例のポイント

70歳の男性(脳卒中による右片麻痺)
→設問には階段昇降の記載ないが、設問文の「移動が車椅子自立」であるため歩行不能(階段昇降不能)と読み取れる。したがって、階段昇降も「不能(0点)」とする。注意点として、排泄と排尿は別々の項目である。

【食事】普通食を先割れスプーン使用で自立:10点

【整容】自立:5点

【更衣】自立:10点

【トイレ】部分介助:5点

【入浴】部分介助:0点

【車いすからベッドの移乗】背臥位から自力で起き上がり端座位保持可能だが、車いすへの移乗は監視が必要:10点

【移動】車椅子にて自立:5点

【排便】時々失禁がある:5点

【排尿】時々失禁がある:5点
※階段昇降の記載ない。設問文から歩行不能と読み取れるため、階段昇降も不能とし0点とする。

⇒よって、選択肢3.55点となる。

 

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8.68歳の男性。胸部大動脈解離(Stanford分類B型)に対して経カテーテル的ステントグラフト内挿術が行われたところ、術後に麻痺症状がみられた。ASIA評価表の結果を示す。
 この患者のASIAの重症度スケールと脊髄の損傷部位との組合せで正しいのはどれか。

1. B:脊髄の後方
2. C:脊髄の前方
3. C:脊髄の後方
4. D:脊髄の前方
5. D:脊髄の中心部

解答:2

解説

Stanford分類とは?

大動脈解離は、大動脈が裂ける場所によって2つに分類される。
・スタンフォードA型:上行大動脈から裂けるタイプ
→A型は病気が発症して48時間以内に破裂を起こしやすく、緊急手術が必要。

・スタンフォードB型:上行大動脈は裂けず、背中の大動脈(下行大動脈)から裂けるタイプ
→B型はA型に比し、すぐには破裂しないことが多いため、お薬と絶対安静の治療が中心であるが、このB型も破裂の兆候が認められたり(背中の痛みが持続)、腹部内臓や下半身への血の流れが悪くなる場合は緊急の治療を必要とする。

本症例の運動機能は残存しているが、L2以下のMMTが平均3未満であるため、重症度スケールは「C」である。

[損傷部位について]

・運動機能は、L2以下がMMT3未満と低下→側索or前角の損傷が考えられる。
(錐体路:大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路)

・感覚機能は、T7以下の痛覚が鈍麻→側索前方の損傷が考えられる。
(外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚):感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野)

したがって、脊髄の前方が損傷していると考えやすい。
つまり、正解は選択肢2.C:脊髄の前方である。

 

1.× B:脊髄の後方・・・スケールBは損傷レベルより下位の運動機能は残存していない状態であるため不適切。
3.× C:脊髄の後方・・・後索の障害では、深部感覚の脱失表在感覚が正常であるのが特徴であるため不適切。
4~5.× D:脊髄の前方、D:脊髄の中心部・・・スケールDは、損傷レベルより下位の主要筋群の少なくとも半分以上が筋力3以上を呈する状態であるため不適切。ちなみに、脊髄の中心部の障害では、両側の分節性温痛覚消失がみられる。

ASIAの機能障害尺度の運動障害

・A(完全麻痺):S4~5の知覚・運動ともに完全麻痺。
・B(不全麻痺):S4~5を含む神経学的レベルより下位に知覚機能のみ残存。
・C(不全麻痺):神経学的レベルより下位に運動機能は残存しているが、主要筋群の半分以上が筋力3未満。
・D(不全麻痺):神経学的レベルより下位に運動機能は残存しており、主要筋群の少なくとも半分以上が筋力3以上。
・E(正常):運動、知覚ともに正常。

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9. 42歳の女性。感冒症状が出現して1週後から対称性に両手のしびれを自覚し、脱力が急速に近位部へ広がったため神経内科を受診した。上肢遠位部優位の脱力と四肢の深部腱反射消失を認め、Guillain-Barre症候群と診断された。
 検査所見として正しいのはどれか。

1.髄液検査で細胞数が増加する。
2.頚髄MRI検査で髄内信号異常を認める。
3.末梢神経伝導検査で伝導速度が低下する。
4.未梢神経の連続刺激でM波の振幅が漸増する。
5.未梢神経刺激で誘発されるF波の潜時が短縮する。

解答:3

解説

本症例のポイント

・42歳の女性(Guillain-Barre症候群
・感冒症状が出現して1週後から対称性に両手のしびれを自覚し、脱力が急速に近位部へ広がった。
・上肢遠位部優位の脱力と四肢の深部腱反射消失を認めた。
→Guillain-Barré症候群とは?
 Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 髄液検査では、細胞数が増加は伴わず、蛋白上昇(蛋白細胞解離)が認められる。脳や脊髄に病気や異常があると、髄液に変化がみられ、この髄液を採取し調べ病気の診断、治療、予後を判定するのが髄液検査である。
2.× 頚髄MRI検査で髄内信号異常は認めない。なぜなら、Guillain-Barre症候群(ギランバレー症候群)は末梢神経の障害であるため。ちなみに、頚髄MRI検査で髄内信号異常を認めるのは、脊髄空洞症や視神経脊髄炎などである。
3.〇 正しい。末梢神経伝導検査で伝導速度が低下する
4.× 未梢神経の連続刺激でM波の振幅が漸増ではなく、低下する
5.× 未梢神経刺激で誘発されるF波の潜時が短縮ではなく、延長する

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10.4歳の男児。顕在性二分脊椎症による脊髄髄膜瘤の術後。立位の様子を図に示す。短い距離であれば独歩可能である。
 予測される機能残存レベルの上限で正しいのはどれか。

1.L2
2.L3
3.L4
4.L5
5.S1

解答:3

解説

本症例のポイント

・4歳の男児(顕在性二分脊椎症による脊髄髄膜瘤の術後)
・立位:両短下肢装具使用
・歩行:短い距離であれば独歩可能。
→本症例は、両短下肢装具使用にて短い距離であれば独歩可能である。

二分脊椎とは、神経管閉鎖障害のうち腰仙部の脊髄・脊椎・皮膚などにみられる先天奇形であり、特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。二分脊椎症には①開放性(表面からはっきりわかるもの)と②潜在性(わかりにくいもの)がある。前者には脊髄披裂あるいは脊髄髄膜瘤などが含まれる。

1.× L2までの残存では、長下肢装具+松葉杖(両ロフストランド杖)が必要で大振り歩行である。なぜなら、腸腰筋が残存しているため。
2.× L3までの残存では、短下肢装具+松葉杖が必要で大振り歩行である。なぜなら、大腿四頭筋が残存しているため。
3.〇 正しい。L4までの残存では、短下肢装具で実用歩行が可能である。短下肢装具は、足関節の筋力低下に対して用いられることが多い。
4~5.× L5~S1までの残存では、補助具なしで実用歩行可能である。しかし、L5までの残存では、前脛骨筋は機能するが下腿三頭筋は機能しにくいため、踵足変形となりやすい。踵足は、足のつま先が宙に浮いた状態で、踵だけが接地し、直立と歩行を行う。

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4 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘の通り間違えておりました。
修正いたしましたので、ご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします(^^)/

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匿名

10番の問題は、短下肢装具を使う「上限」で考えればL3になると思います。ただ、L3では短下肢装具+杖が必要なのに対してこの問題では杖を持っていないので、レベルが1つ高いL4になるのだと思います。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通りで間違えておりました。
修正いたしましたので、ご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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