【PT/OT/共通】筋電図検査所見についての問題「まとめ・解説」

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※問題の引用:厚生労働省より

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

MEMO

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PT専門

53回 午前9

9. 42歳の女性。感冒症状が出現して1週後から対称性に両手のしびれを自覚し、脱力が急速に近位部へ広がったため神経内科を受診した。上肢遠位部優位の脱力と四肢の深部腱反射消失を認め、Guillain-Barre症候群と診断された。
 検査所見として正しいのはどれか。

1.髄液検査で細胞数が増加する。
2.頚髄MRI検査で髄内信号異常を認める。
3.末梢神経伝導検査で伝導速度が低下する。
4.未梢神経の連続刺激でM波の振幅が漸増する。
5.未梢神経刺激で誘発されるF波の潜時が短縮する。

解答:3

解説

本症例のポイント

・42歳の女性(Guillain-Barre症候群
・感冒症状が出現して1週後から対称性に両手のしびれを自覚し、脱力が急速に近位部へ広がった。
・上肢遠位部優位の脱力と四肢の深部腱反射消失を認めた。
→Guillain-Barré症候群とは?
 Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 髄液検査では、細胞数が増加は伴わず、蛋白上昇(蛋白細胞解離)が認められる。脳や脊髄に病気や異常があると、髄液に変化がみられ、この髄液を採取し調べ病気の診断、治療、予後を判定するのが髄液検査である。
2.× 頚髄MRI検査で髄内信号異常は認めない。なぜなら、Guillain-Barre症候群(ギランバレー症候群)は末梢神経の障害であるため。ちなみに、頚髄MRI検査で髄内信号異常を認めるのは、脊髄空洞症や視神経脊髄炎などである。
3.〇 正しい。末梢神経伝導検査で伝導速度が低下する
4.× 未梢神経の連続刺激でM波の振幅が漸増ではなく、低下する
5.× 未梢神経刺激で誘発されるF波の潜時が短縮ではなく、延長する

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54回 午前7

7. 正中神経を手首と肘部で電気刺激した運動神経伝導検査の波形を示す。
 この運動神経伝導検査から考えられる病態はどれか。
 ただし、手首と肘部の刺激部位間の距離は175mmである。(正常範囲:振幅3. 5mV以上、運動神経伝導速度48m/s以上)

1. 運動ニューロン変性
2. 軸索変性
3. 神経筋接合部異常
4. 正常
5. 脱髄

解答

解説

運動神経伝導検査とは?

運動神経伝導検査とは、末梢神経を電気刺激した際に、神経やその支配筋から発生する活動電位を記録したものである。主として末梢神経の機能評価に用いられる。要するに、神経の伝達速度が遅くなっているか調べるものとなっている。つまり、この時点で、選択肢1.運動ニューロン変性選択肢3.神経筋接合部異常は選択から外される。

【結果の解釈】
脱髄:伝導速度低下、持続時間延長、振幅低下
軸索変性:持続時間短縮、振幅低下

1. ×:運動ニューロンは、骨格筋を支配している神経の源である脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)、さらにその脊髄前角細胞に随意運動のための刺激を送ってくる大脳皮質の運動神経細胞(上位運動ニューロン)がある。運動神経伝導検査は、末梢神経の伝導速度を測るため、運動ニューロンが障害されても検査に影響はない。したがって、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン変性疾患では、運動及び感覚神経伝導速度は通常に保たれる。
2. ×:軸索変性が生じると、機能する神経線維の数の減少に伴い、①振幅が低下し、②持続時間は短縮する。なぜなら、軸索変性では障害された神経線維はほとんど伝導できなくなるが、障害されていない神経線維は正常に伝導できるため。伝導速度は低下しないため不適切である。
3. ×:神経筋接合部(経終板)は、シナプスが形成され、筋収縮を引き起こす神経伝達が行われる部位である。運動神経伝導検査は、末梢神経の伝導速度を測るため、神経筋接合部が障害されても検査に影響はない反復誘発筋電図で評価する。
4. ×:正常ではない。なぜなら、特徴として持続時間の延長が認められるため。
5. 〇:正しい。脱髄の特徴として、持続時間の延長、振幅の低下などが認められる。上記特徴が見て取れる。なぜなら、脱髄により跳躍伝導が行えなくなるため。伝導速度は低下するが伝導する刺激の量はあまり変化しない。

本問の画像診断

手首刺激と肘部刺激の伝導時間は、10.9-5.9=5(ms)
手首と肘部の距離は175mmである。

したがって、伝導速度は175(mm)÷5(ms)35m/sである。
明らかな伝導速度の遅延を認める。

また、振幅もわずかに減少しているが正常範囲である。

(正常範囲:振幅3. 5mV以上、運動神経伝導速度48m/s以上)

 

 

 

 

58回 午前14

14.42歳の女性。3か月前に手足がしびれるようになり、1か月前から手足の脱力を自覚した。神経内科を受診し慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーと診断され、ステロイド療法が開始された。
 筋電図検査所見として正しいのはどれか。

1.誘発筋電図で伝導速度が低下する。
2.誘発筋電図でF波の潜時が短縮する。
3.針筋電図で低振幅・短持続電位波形が出現する。
4.誘発筋電図の反復刺激試験でwaning(M波の振幅が漸減)を認める。
5.誘発筋電図の反復刺激試験でwaxing(M波の振幅が漸増)を認める。

解答

解説

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーとは?

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの原因は不明であり、2か月以上にわたる進行性または際年生の左右対称性の多発根ニューロパチーである。末梢運動神経・末梢感覚神経がともに侵される特徴を持つ。電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。

筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。①神経伝導速度検査、②針筋電図検査、③表面筋電図検査があげられる。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べることができる(参考:「筋電図検査とは」りんくう総合医療センター様HPより)。
・神経原性変化があると高振幅、長持続、多相性の波形に。
・筋原性変化があると低振幅、短持続、多相性の波形に。

1.〇 正しい。誘発筋電図で伝導速度が低下する。慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーの原因は不明であり、2か月以上にわたる進行性または際年生の左右対称性の多発根ニューロパチーである。末梢運動神経・末梢感覚神経がともに侵される特徴を持つ。電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。
2.× 誘発筋電図でF波の潜時は、「短縮」ではなく延長する。F波は、未梢神経刺激で誘発される。
3.× (神経原性変化があると)針筋電図では、「低振幅・短持続電位波形」ではなく、高振幅・長持続電位波形が出現する。主に、糖尿病性神経障害、筋萎縮性側策硬化症、慢性炎症性多発根神経炎、手根管症候群、ギラン・バレー症候群など筋疾患:重症筋無力症、多発性筋炎、進行性筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィーなどがあげられる。一方、筋原性変化(筋ジストロフィーやミオパチー)があると低振幅、短持続、多相性の波形となる。ちなみに、針筋電図検査とは、筋肉内に針を刺し、筋肉から出る電位を記録する検査である。脊髄にある前角細胞と呼ばれる運動神経以下の運動神経と筋肉の異常を検出するために行われる。異常を示す筋肉が限局している場合には、その分布により原因が末梢神経にあるのか、それとも脊髄なのかなどをある程度推定することができる。
4.× 誘発筋電図の反復刺激試験で、waning(M波の振幅が漸減)を認めるのは、「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー」ではなく重症筋無力症である。重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される。(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)
5.× 誘発筋電図の反復刺激試験で、waxing(M波の振幅が漸増)を認めるのは、「慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー」ではなく Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)である。Lambert-Eaton症候群とは、肺小細胞癌を高頻度に合併する傍腫瘍性神経症候群で、神経終末部のアセチルコリン(Ach)の放出障害をその病態の基盤とする神経筋接合部・自律神経疾患である。四肢筋力の易疲労性を生じ、筋の反復運動により筋力が増強する(waxing現象)のがみられる。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

 

 

OT専門

59回 午後24

24 重症筋無力症で正しいのはどれか。

1.肺小細胞癌を合併する。
2.Parkinson病より患者数が多い。
3.テンシロン試験で症状が改善する。
4.血清クレアチンキナーゼ値が上昇する。
5.誘発筋電図の反復刺激試験で振幅の漸増を認める。

解答

解説

重症筋無力症とは?

重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。
【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。
【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用 される。

(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)

1.× 肺小細胞癌を合併するのが特徴的なのは、Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)である。Lambert-Eaton症候群とは、肺小細胞癌を高頻度に合併する傍腫瘍性神経症候群で、神経終末部のアセチルコリン(Ach)の放出障害をその病態の基盤とする神経筋接合部・自律神経疾患である。四肢筋力の易疲労性を生じ、筋の反復運動により筋力が増強する(waxing現象)のがみられる。
2.× Parkinson病より患者数が「多い」ではなく少ない。Parkinson病の患者数は、人口10万人あたり100~150人と推定されており、神経変性疾患の中では最も頻度が高い。一方、重症筋無力症は、10万人あたり5.1人である。
3.〇 正しい。テンシロン試験で症状が改善する。テンシロンは欧米の商品名であり、日本ではアンチレクスという商品名で発売されている。重症筋無力症患者では、長短時間作用型抗ChE薬であるテンシロンの静注により、一過性に筋力が回復する(テンシロン検査)。
4.× 血清クレアチンキナーゼ値が上昇するのが特徴的なのは、多発性筋炎である。血清クレアチンキナーゼとは、筋の損傷が起こると上昇を示す。心筋炎、心外膜炎、進行性筋ジストロフィー、多発性筋炎などにより上昇する。重症筋無力症は、筋の障害ではないため血清クレアチンキナーゼは上昇しない
5.× 誘発筋電図の反復刺激試験で振幅の漸増を認めるのが特徴的なのは、Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)である。重症筋無力症の場合、振幅が漸減(waning:ウィニング)する。

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

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共通問題

54回 午前91

91. 下肢の末梢神経伝導検査で複数の神経に運動神経伝導速度低下を認めた。最も考えられる疾患はどれか。

1. 多発性筋炎
2. 視神経脊髄炎
3. 閉塞性動脈硬化症
4. 筋萎縮性側索硬化症
5. Guillain-Barré症候群

解答

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

よって、選択肢5.Guillain-Barré症候群である。

1~3. × 多発性筋炎(筋原性疾患)/視神経脊髄炎(炎症性脱髄性疾患)/閉塞性動脈硬化症(慢性閉塞性疾患)は、伝導速度は低下しない。
4. × 筋萎縮性側索硬化症でみられるのは、針筋電図にて随意収縮時に高振幅電位、安静時に線維束性収縮電位、筋生検にて筋線維の群集萎縮がみられる。末梢神経伝導速度は通常保たれる。

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

59回 午前91

91 筋萎縮性側索硬化症における典型的な筋電図検査所見で正しいのはどれか。

1.運動神経伝導検査における遠位潜時延長
2.感覚神経伝導検査における伝導ブロック
3.針筋電図検査における線維束攣縮の電位出現
4.反復刺激試験における漸減現象〈Waning〉
5.反復刺激試験における漸増現象〈Waxing〉

解答

解説

筋電図検査

筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。筋肉を随意的に収縮してもらったり、神経に電気的刺激をしたりすることにより、神経や筋肉に生じる電気的活動を記録する。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べることができる。

・神経原性変化があると高振幅、長持続、多相性の波形に。
・筋原性変化があると低振幅、短持続、多相性の波形に。

1.× 運動神経伝導検査における「遠位潜時延長」は、絞扼性末梢神経障害で起こる。潜時とは、刺激を与えてからM波が立ち上がるまでの時間のことである。遠位の潜時の遅延があると、刺激部位より遠位での障害が考えられ、絞扼性末梢神経障害などの存在が示唆される。
2.× 「感覚神経」伝導検査における伝導ブロックは、脱髄性疾患(Guillain-Barré症候群)で起こる。ギラン・バレー症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。本問題で問われている筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。つまり、運動ニューロン病であり、感覚神経は影響を受けにくい
3.〇 正しい。針筋電図検査における線維束攣縮の電位出現は、筋萎縮性側索硬化症における典型的な筋電図検査所見である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上・下位の運動ニューロンのみが障害されるため。線維束攣縮とは、小さく、かつ局所的な、皮膚下に観察することが可能な不随意な筋肉の収縮及び弛緩運動である。
4.× 反復刺激試験における漸減現象〈Waning〉は、重症筋無力症で起こる。重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害 薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される。(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)
5.× 反復刺激試験における漸増現象〈Waxing〉は、Lambert-Eaton症候群(ランバート・イートン症候群)で起こる。Lambert-Eaton症候群とは、肺小細胞癌を高頻度に合併する傍腫瘍性神経症候群で、神経終末部のアセチルコリン(Ach)の放出障害をその病態の基盤とする神経筋接合部・自律神経疾患である。四肢筋力の易疲労性を生じ、筋の反復運動により筋力が増強する(waxing現象)のがみられる。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

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57回 午前91

91 筋電図検査について正しいのはどれか。

1.針筋電図の神経原性変化では低振幅・短持続電位波形が出現する。
2.軸索変性がある場合、活動電位の振幅は低下しない。
3.脱髄病変では神経伝導速度が低下する。
4.感覚神経の伝導速度は測定できない。
5.筋疾患では神経伝導速度が低下する。

解答

解説

筋電図検査

筋電図検査とは、筋肉や神経に異常がないかについて、筋肉が収縮する時や神経を電気で刺激するなどの筋肉や神経の信号の伝わり方を記録する検査である。筋肉を随意的に収縮してもらったり、神経に電気的刺激をしたりすることにより、神経や筋肉に生じる電気的活動を記録する。この記録を評価することにより、神経や筋肉に疾患があるかを調べられる。

・神経原性変化があると高振幅、長持続、多相性の波形に。
・筋原性変化があると低振幅、短持続、多相性の波形に。

1.× 針筋電図の神経原性変化(脊髄性筋萎縮症)では、低振幅・短持続電位波形ではなく「振幅は増大し、持続時間は延長する」。ちなみに、低振幅・短持続電位波形がみられるのは、筋原性変化(筋ジストロフィーやミオパチー)の場合である。重症筋無力症の場合、振幅が漸減(waning:ウィニング)する。
2.× 軸索変性がある場合、活動電位の振幅は「低下しない」のではなく「低下する」。軸索変性がある疾患として、シャルコ・マリー・トゥース病があげられる。
3.〇 正しい。脱髄病変では神経伝導速度が低下する。脱髄病変とは、神経線維の髄鞘が、変性脱落することにより生ずる疾患の総称である。つまり、神経線維の髄鞘が脱落すると、跳躍伝導が行えないため神経伝導速度が低下する。脱髄病変のひとつに、多発性硬化症があげられる。多発性硬化症は、中枢神経系の種々の部位に多発性の脱髄病変を起こし多彩な症状がみられる。緩解と増悪を繰り返し、脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。
4.× 感覚神経の伝導速度も測定できる。運動神経と感覚神経の両方支配する三叉神経や舌咽神経、迷走神経などの測定も可能である。
5.× 筋疾患では神経伝導速度が低下するのではなく「変化しない」。脱髄病変では神経伝導速度が低下する。脱髄病変とは、神経線維の髄鞘が、変性脱落することにより生ずる疾患の総称である。つまり、神経線維の髄鞘が脱落すると、跳躍伝導が行えないため神経伝導速度が低下する。

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