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41 前十字靭帯損傷で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.単独損傷が8割以上である。
2.Lachman testが陽性となる。
3.再建術は受傷後1年以降が推奨されている。
4.受傷前レベルへのスポーツ復帰率は9割以上である。
5.ハムストリングスの収縮により損傷部位の緊張は低下する。
解答2・5
解説
前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。
【主な膝前十字靭帯損傷を検査】
①Lachman test(ラックマンテスト):背臥位で膝関節を20~30度屈曲させて、下腿部近位端を斜め前方へ引き出す。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。
②軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト):前十字靱帯損傷膝では膝伸展位において外反、軸圧のストレスをかけることにより脛骨は前方にずれる。そして、屈曲とともに 20°~30°付近で脛骨は突然整復位に外旋するように、即ち、後方の正常な位置に戻る。
③Jerkテスト(ジャークテスト):片方の手で、患者の足首を持ち、もう一方の手で膝を持ち、下腿を内旋しながら伸展すると、膝でクリックを伴う亜脱臼整復感が確認できる。
膝関節前十字靭帯再建術後の理学療法では、安全な範囲でできるだけ早くに膝関節の可動域を回復させ、大腿を中心とした下肢筋力の向上を目的に実施する必要がある。しかし、骨に開けた穴と再腱靭帯が癒合するのに6〜8週、移植後に弱くなった腱の回復に3〜4ヶ月を要する。したがってこの間は、再腱靭帯を十分に保護しながら理学療法を進めないと、再び関節が不安定になる危険性がある。
1.× 単独損傷は、「8割以上」ではなく約3割である。なぜなら、運動時の急激な回旋や外力衝撃により、半月板や側副靭帯など他の構造も同時に損傷することが多いため。
2.〇 正しい。Lachman testが陽性となる。Lachman test(ラックマンテスト)は、背臥位で膝関節を20~30度屈曲させて、下腿部近位端を斜め前方へ引き出す。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。
3.× 再建術は、受傷後「1年以降」ではなく3~6カ月以内が推奨されている。なぜなら、ACL損傷後、再建までの期間が長いと関節軟骨損傷を生じるとする報告は多数存在するため。「関節軟骨損傷の有無と受傷から手術までの期間を調査した観察研究では、関節軟骨損傷なし群の受傷から手術までの期間が平均4カ月であるのに対し、軟骨損傷あり群では平均37カ月と有意に長く、また受傷から手術までの期間が長いと関節軟骨損傷の程度も悪化していた。本ガイドラインで行ったメタアナリシスでも、関節軟骨損傷予防の観点から、受傷後3カ月以内にACL再建を行うことを推奨する結果となった」と記載されている(※参考・引用「前十字靭帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019 P21」日本整形外科学会様HPより)。
4.× 受傷前レベルへのスポーツ復帰率は、「9割以上」ではなく「9割以下(陳旧群で86%)」である。受傷前レベルへとなるともっと低いと考えられる。参考としては、「ACL再建後のスポーツ復帰に関する1件の観察研究では、ACL再建が3カ月以内(平均 6 週間)に施行された新鮮群と、3カ月以上(平均54カ月)で施行された陳旧群とで比較し、最終調査時のスポーツ復帰率は新鮮群で83%、陳旧群で86%であった」と記載されている (※引用「前十字靭帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019 P21」日本整形外科学会様HPより)。ちなみに、スポーツ復帰に関しては、ACL再建後にスポーツ復帰した患者の24カ月の再受傷率は、健常者の受傷率よりも高く、女性アスリートは反対側の受傷が多い。また同側、反対側ともに若年者であることと活動性が高いことが再損傷の危険因子であった」と記載されている (※引用「前十字靭帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019 P71」日本整形外科学会様HPより)。
5.〇 正しい。ハムストリングスの収縮により、損傷部位(前十字靭帯)の緊張は低下する。なぜなら、ハムストリングスの収縮(緊張)により、脛骨の後方引きを助け、前方への不必要な移動を抑制するため。ちなみに、前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)
ハムストリングスとは、3つの筋肉(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)の総称を指す。
大腿二頭筋
【起始】長頭:坐骨結節、短頭:大腿骨体の粗線の外側唇、外側大腿筋間中隔、【停止】腓骨頭、【作用】股関節伸展、外旋、膝関節屈曲、【支配神経】長頭:坐骨神経の脛骨神経部、短頭:坐骨神経の総腓骨神経部
半膜様筋
【起始】坐骨結節、【停止】脛骨粗面、脛骨内側顆の後部、斜膝窩靭帯、膝窩筋筋膜、【作用】股関節伸展、内転、内旋、膝関節屈曲、【支配神経】坐骨神経の脛骨神経部
半腱様筋
【起始】坐骨結節(大腿二頭筋長頭の起始の内側でこれと融合)、【停止】脛骨粗面の内側(鵞足を形成)、【作用】股関節伸展、内転、内旋、膝関節屈曲、【支配神経】坐骨神経の脛骨神経部
42 日本で最初の理学療法士養成教育機関が開設された時期はどれか。
1.1950年代
2.1960年代
3.1970年代
4.1980年代
5.1990年代
解答2
解説
(※引用:「理学療法士養成における教育制度の国際動向と今後の展望」著:藤澤宏幸様HPより)
1.3~5.× 1950年代/1970年代/1980年代/1990年代は、日本で最初の理学療法士養成教育機関が開設された時期に該当しない。
2.〇 正しい。1960年代は、日本で最初の理学療法士養成教育機関が開設された時期である。「日本における理学療法士教育は昭和 38 年(1963)に国立療養所附属東京病院附属リハビリテーション学院(各種学校)に始まり,40 年の歳月を経たいま,高等教育機関による養成は専門学校,短期大学そして大学へと広がった」と記載されている(※引用:「理学療法士養成における教育制度の国際動向と今後の展望」著:藤澤宏幸様HPより)。
43 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018に示されている集中リハビリテーションの転帰指標はどれか。
1.SARA
2.筋力
3.咳嗽力
4.深部感覚
5.関節可動域
解答1
解説
転帰とは、アウトカムと同義であり、治療や予防などの医学的介入から得られるすべての結末のことである。したがって、転帰指標とは、治療や介入によって得られる患者の状態改善や予後の結果を、数値や割合で示す指標のことである。例えば、症状の改善度、再発率、死亡率、生活の質などが評価対象となり、臨床研究や医療現場で治療効果を比較・判断する際に重要な役割を果たす。これにより、最適な治療法の選択や効果の改善が期待され、医療の発展に寄与する。
脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)
多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)
1.〇 正しい。SARA(※下参照)は、脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018に示されている集中リハビリテーションの転帰指標である。「小脳失調を主体とする脊髄小脳変性症では集中リハに対する研究の結果がドイツ、日本から報告されている。介入量は1~2時間/回 x 週3~7回× 4週間、プログラムの内容は静的バランス、動的バランス、平地や凹凸地の歩行、階段昇降、体幹と四肢の協調運動、重症度や個別性を配慮した立位や移動などに関連するADL練習、転倒防止のためのステップ練習、肩と脊椎の拘縮予防などであった。転帰指標は、SARA、歩行速度、バランス指標、 ADL指標などが用いられ、短期的には、SARA、歩行速度の改善が得られた(エビデンスレベルⅡ)。長期的にもSARA、歩行速度とも改善が 6~12カ月維持されていた(エビデンスレベルⅣa)」と記載されている(※引用:「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 P258」日本神経学会様HPより)。
2~5.× 筋力/咳嗽力/深部感覚/関節可動域は、脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018に示されている集中リハビリテーションの転帰指標ではない。なぜなら、脊髄小脳変性症や多系統萎縮症では、主要な問題は運動失調やバランス障害であるため。指標と用いるのは不十分といえる。ちなみに、転帰指標は、SARA、歩行速度、バランス指標、 ADL指標などが用いられる。
SARA (scale for the assessment and rating of Ataxia)は、脊髄小脳変性による失調症の定量的な評価法である。全8項目(歩行、立位、座位、言語障害、指追い試験、鼻指試験、手の回内・回外運動、踵脛試験)の評価セットである。四肢の運動失調の他、歩行障害、構音障害、眼球運動障害を簡便に評価できる。評価に採用している病院も多い(私が勤めていた病院でも使用していた)。
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44 登はん性起立を示すのはどれか。
1.筋強直性ジストロフィー
2.肢帯型筋ジストロフィー
3.先天型筋ジストロフィー
4.Duchenne型筋ジストロフィー
5.顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
解答4
解説
Gowers徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでみられる症状である。
1.× 筋強直性ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種である。15~40歳代(男性にやや多い)に発症する。進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。収縮した骨格筋が弛緩しにくくなる現象(ミオトニア現象)と、全身の筋力低下、筋萎縮を主症状とし、その他にも多彩な症状を呈する疾患である。
2.△ 肢帯型筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性と壊死による筋力低下が主病態で、新生児~乳児期早期に発症する。主に肩や腰周辺(肢帯筋)の筋肉が徐々に弱くなる遺伝性疾患である。初期は運動時の疲労感や筋力低下として現れ、進行性となる。文献によっては、このタイプも登はん性起立(Gowers徴候、ガワーズ徴候)を示すようであるが、分かる方いらしたらコメント欄にて教えてください。
3.× 先天型筋ジストロフィーとは、胎児期から筋肉の形成に異常が起こる遺伝性疾患である。福山型が代表的で、精神遅滞・筋力低下・脳形成不全を主徴とする常染色体劣性遺伝病である。 先天性筋ジストロフィー症の中で日本では一番頻度が高く、小児期進行性ジストロフィー症では、デュシェンヌ型についで頻度が多い。フロッピーインファント(floppy infant )を呈する。
4.〇 正しい。Duchenne型筋ジストロフィーは、登はん性起立(Gowers徴候、ガワーズ徴候)を示す。特に、Duchenne型筋ジストロフィーのステージ2で認められる。ちなみに、Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。
【Duchenne型筋ジストロフィーの特徴的症状】①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③ガワーズ徴候、④腓腹筋などの仮性肥大
5.× 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、顔面と上肢帯から上腕に分布する筋力低下がみられる。小児~成人に発症する。表情や腕の動きが制限され(顔面神経麻痺、翼状肩甲)、生活に支障をきたす。
ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
(A:独歩で5m以上歩行ができる)
(B:一人では歩けないが、モノにつかまれば歩ける。)
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助
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45 正常歩行周期で膝関節伸展モーメントが最も作用するのはどれか。
1.初期接地
2.荷重応答期
3.立脚終期
4.前遊脚期
5.遊脚中期
解答2
解説
1.× 初期接地は、踵接地後の衝撃吸収・膝折れ防止の準備のため、軽度の膝関節伸展モーメントが作用する程度である時期である。むしろ、初期接地の際に、膝関節屈筋群が最も働く。これは膝関節を安定させ、膝が過度に伸展(過伸展)することを防ぐためである。
2.〇 正しい。荷重応答期は、正常歩行周期で膝関節伸展モーメントが最も作用する。なぜなら、踵接地後の衝撃吸収・膝折れ防止のため、重力により膝関節には屈曲モーメントが作用(外部モーメント)し、それに拮抗するため筋が膝関節伸展モーメントを発揮する(内部モーメント)ため。
※【第47回 理学療法士 午前28】正常歩行における「関節運動」の説明で正しいのはどれか。選択肢2.荷重応答期には、膝関節に伸展モーメントが働く。これが「×」となっている。第47回の問題は、外部モーメントを聞いており、今回の問題は、筋が発揮する伸展モーメント(内部モーメント)を聞いている。
3.× 立脚終期は、遊脚期の下肢の振り子運動(前方への推進力を効率的に伝える)ための準備として、膝関節伸展筋(筋による膝関節伸展モーメント)が作用し始める。ただし、荷重応答期と比較すると最大でも荷重応答期の40%程度である。
4~5.× 前遊脚期/遊脚中期は、推進力の勢いを打ち消さないよう、膝関節周囲筋の筋活動はほとんどない。下肢の振り子運動を誘導する動きを調整する程度で、膝関節屈伸の筋群が活動する程度である。
【立脚期】
1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで
【遊脚期】
6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで
(図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)
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