第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

 

16 60歳の女性。脊髄小脳変性症。四肢体幹の運動失調で座位保持が困難であったが、2週間の座位保持練習を行い、端座位は上肢で支持しなくても保持できるようになった。
 今後行うバランス能力改善の運動療法として最も適切なのはどれか。

解答
解説

 脊髄小脳変性症は、自律神経障害、小脳失調、パーキンソニズムを3徴候とする脳脊髄変性症の総称である。本症例の端座位は、上肢で支持しなくても保持可能レベルである。つまり、端坐位での支持基底面内に重心を保持するレベルから、移動するレベルへとステップアップしていく必要がある。したがって、バランス能力改善の運動療法として、選択肢1~2、4~5は、難易度が高いと言える。また、選択肢3.端坐位での重心移動練習は、端坐位での支持基底面内に重心を保持するレベルから、移動するレベルへとステップアップできているといえる。

 

 

 

17 55歳の女性。8年前に多発性硬化症と診断され、再発や寛解を繰り返し、2回の入院歴がある。現在は症状が落ち着いており、訪問理学療法で屋外歩行練習が実施されている。その際、理学療法士は運動強度を軽度から中等度とし、かつ、外気温の高い時間帯を避けて実施するなどに留意している。
 この理由として関係するのはどれか。

1.Barré 徴候
2.Homner 徴候
3.Lhermitte 徴候
4.Tinel徴候
5.Uhthoff 徴候

解答
解説

 多発性硬化症は中枢神経に時間的(多発性)空間的(多巣性)に病変を生じる脱髄疾患である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。
1.× Barré 徴候(バレー徴候)とは、上肢や下肢に軽度の運動麻痺がある場合に現れる徴候のこと。両腕を、手掌を上にして肘を伸ばしたまま前方に挙上し閉眼させると、麻痺側上皮は回内し、次第に下りてくる。
2.× Horner 徴候(ホルナーもしくは、ホルネル徴候)とは、ホルネル(ホルナー)症候群の交感神経遠心路の障害によって生じる。中等度縮瞳眼瞼下垂(眼裂狭小)眼球陥凹(眼球後退)を三大徴候とする。
3.× Lhermitte 徴候(レルミット徴候)とは、首を前に曲げたときに感電したような痛みや刺すような痛みが背中から両脚、片方の腕、体の片側へ走ることをいう。多発性硬化症の特徴的な徴候であるが、「外気温の高い時間帯を避けて実施するなどに留意している。」理由には該当しないため不適当である。
4.× Tinel徴候(チネル徴候)とは、末梢神経の損傷部位をたたいたときに、神経の支配領域にチクチク感や蟻走感が生じることをいう。これにより神経の損傷部位が特定でき、また、神経の回復状況も把握できる。
5.〇 正しい。Uhthoff 徴候(ウートフ徴候)とは、入浴・温熱などで体温が上昇する(運動をすることでも含まれる)と視覚障害や麻痺症状が一過性に悪くなることをいう。本症例の「外気温の高い時間帯を避けて実施するなどに留意している。」理由と一致する。過度な運動負荷は避けることが必要である。

 

 

 

18 32歳の女性。2週前に上気道炎を発症し、5日前から四肢末端の異常感覚を自覚した。その後、徐々に四肢の脱力を認めたGuillain-Barré症候群と診断され、直ちにγ-グロブリン大量静注療法を開始した。入院時の四肢筋力はMMTで段階4であったが、入院2日後には顔面筋麻痺と構音・嚥下障害が出現し、翌日には痰が多く呼吸困難が出現したため、気管挿管され人工呼吸器管理となった。四肢筋力は近位筋で段階1、その他は段階2~3に低下している。
 現時点で優先される治療はどれか。

1.機能的電気刺激
2.筋力増強運動
3.座位練習
4.自発呼吸練習
5.排痰練習

解答
解説

 Guillain-Barré症候群(ギランバレー症候群)は、免疫・炎症性ニューロパチーの代表的疾患であり、急性の運動麻痺を主張とする多発根ニューロパチーをきたす。多くは自然回復するが、一部重篤化することがある。Guillain-Barré症候群は、感冒様症状(発熱、頭痛、鼻汁、咳・痰、咽頭痛)や腹部症状(腹痛、下痢)から1~3週間後に四肢の筋力低下をきたし、運動神経障害を主症状とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。

 本症例は、入院2日目にして、気管挿管され人工呼吸器管理である。四肢筋力は近位筋で段階1、その他は段階2~3に低下している。ことを考慮して理学療法を決めていく。
1.× 機能的電気刺激(FES)とは、筋もしくは末梢神経を刺激して麻痺筋を収縮させることで、その筋の随意性及び消失した機能を代償させることを目的とした治療法のことをいう。適応症例は、脳卒中脊髄損傷等により運動麻痺を呈している方である。
2.× 筋力増強運動は、四肢筋力の低下進行中であるため不適当である。また末梢神経障害に対して、高負荷の訓練を行うと筋力低下を招くことがあるため、行うのであれば低負荷高頻度の筋力維持程度の訓練に抑える。
3.× 座位練習のリハビリテーションの開始基準として、障害(意識障害、運動障害、ADL障害)の進行がとまっていることがあげられる。そのため、現在は不適当といえる。
4.× 自発呼吸とは、自身の能力によって行われる呼吸を意味する。自発呼吸に対して、外部から圧力をかけることによって行われる呼吸は「人工呼吸」と呼ばれる。本症例は、痰が多く呼吸困難が出現したため、気管挿管され人工呼吸器管理となっているが、今後も症状が悪化する段階の可能性が高い。そのため、自発呼吸を練習する優先度は低い。
5.〇 正しい。本症例は痰が多く、肺炎の予防や呼吸をしやすいよう排痰練習を実施する。

 

 

 

一休みに・・・。

 

 

19 8歳の女児。顕在性二分脊椎。Sharrardの分類はⅣ群である。
 歩行練習の実施方法で適切なのはどれか。

1.靴型装具を使用する。
2.長下肢装具を使用する。
3.短下肢装具とロフストランド杖を併用する。
4.長下肢装具とロフストランド杖を併用する。
5.骨盤帯付き長下肢装具とPCW(postural control walker)を併用する。

解答
解説

 本症例は、Sharrardの分類はⅣ群(L5レベル:短下肢装具による自立歩行可能。股関節伸展、足関節底屈が可能)である。したがって、次のステージへステップアップするために、選択肢1.〇 靴型装具を使用する。のが正しい。

Sharrardの分類

第Ⅰ群(胸髄レベル)車椅子を使用している。下肢を自分で動かすことはできない。
第Ⅱ群(L1〜2レベル)車椅子と杖歩行を併用している。股関節屈曲・内転、膝関節伸展が可能。
第Ⅲ群(L3〜4レベル)第Ⅲ群(L3〜4レベル):長下肢装具または短下肢装具による杖歩行可能。股関節外転、足関節背屈が可能。
第Ⅳ群(L5レベル)短下肢装具による自立歩行可能。股関節伸展、足関節底屈が可能。
第Ⅴ群(S1〜2レベル)ほとんど装具が不要で自立歩行可能。足関節の安定性が低い。
第Ⅵ群(S3レベル)ほとんど運動麻痺はなく、健常児とほぼ同様の歩行。

 

 

 

 

20 85歳の女性。自宅仏壇のろうそくの火が右袖に引火し、右前腕から前胸部および顔面にⅢ度5%とⅡ度15%の熱傷および気道熱傷を受傷した。受傷翌日に前胸部から右前腕前面にかけて植皮術を実施した。
 術後早期から開始する理学療法として正しいのはどれか。

1. squeezingによる排痰を実施する。
2. 前腕は最大回内位に保持する。
3. 肩関節は外転位に保持する。
4. 筋力増強運動は禁止する。
5. 起立歩行は禁止する。

解答3
解説

 
1. × squeezingによる排痰を実施する。Squeezing(スクイージング)とは、胸郭の呼気時圧迫により呼気流速を増し排痰を促進し、反動による吸気時の拡張を促す。小児では呼吸数が多いこともあり正確な適用が困難なことも多い。他にも、Percussion(パーカッション)という技法があり、それは胸壁を用手的に振動させる。不整脈や気管支攣縮、酸素消費量増加の原因となり侵襲的であるため特に重症小児患者には用いないほうが良いと思われる。本症例は、植皮術を行っており、5日~2週間程度、患部に伸張刺激が加わる運動は避けた方が良い。
2. × 前腕は最大回内位ではなく回外位に保持する。熱傷の二次性症状として、癒着・瘢痕拘縮が起こりやすいため、熱傷部位が伸張される肢位をとる。
3. 〇 正しい。肩関節は内転拘縮をきたしやすいため外転位に保持する。各関節に生じやすい拘縮があるのでそれを予防するような肢位を確保する。スプリントや装具を活用しながらポジショニングを行う。
4~5 熱傷の理学療法として、①変形拘縮の予防、②瘢痕形成予防、③浮腫の改善、④筋力維持改善、⑤全身体力の維持を行う。したがって、熱傷部位に負担がかからない部位は、運動を行うべきである。本症例は、右前腕から前胸部および顔面、気道熱傷されているが、下肢の筋力増強運動や・起立歩行は行える。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓↓

理学療法士国家試験 熱傷についての問題7選「まとめ・解説」

 

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