【PT/OT/共通】熱傷についての問題「まとめ・解説」

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※問題の引用:厚生労働省より

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

MEMO

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目次 非表示

PT専門

第45回PT 午後20問

44歳の患者。両上肢と体幹とに図のようなⅡ度の熱傷がある。受傷後3日目に保持すべき肢位で正しいのはどれか。

1.頸部:中間位
2.肩関節:外転位
3.右前腕:回内位
4.体幹:軽度屈曲位
5.膝関節:軽度屈曲位

解答

解説

1.× 頸部は、「中間位」ではなく軽度伸展位とする。なぜなら、頸部屈曲拘縮が起こりやすいため。頸部は首の後ろに巻いたタオル等を挿入してポジションを整える。
2.〇 正しい。肩関節は外転位とする。なぜなら、肩関節は、内転・内旋拘縮しやすいため。肩関節外転・外旋位に整え拘縮を予防する。
3.× 右前腕は、「回内位」ではなく回外位とする。
4.× 体幹は、「軽度屈曲位」ではなく軽度伸展位とする。
5.× 膝関節は、「軽度屈曲位」ではなく伸展位とする。なぜなら、膝関節屈曲拘縮が起こりやすいため。

 

 

 

 

 

 

第47回PT 午前49問

熱傷患者の理学療法で誤っているのはどれか。

1.温浴時に関節可動域訓練を併用する。
2.植皮術直後から関節可動域訓練を行う。
3.ゆっくりした持続的な皮膚の伸張を行う。
4.スプリントの圧迫によってケロイド形成を抑制する。
5.初期の安静肢位として肩関節外転·外旋位をとらせる。

解答

解説

熱傷の理学療法

①変形拘縮の予防
②瘢痕形成予防
③浮腫の軽減
④筋力維持改善
⑤全身体力の維持など。

1.〇 正しい。温浴時に関節可動域訓練を併用する。なぜなら、熱傷では皮膚組織の破壊により可動域が制限されるため。関節可動域訓練は、時間をかけ持続的・愛護的に行う。
2.× 植皮術直後から関節可動域訓練を行う必要はない。なぜなら、移植直後から関節可動域訓練すると、移植された皮膚の生着を妨げるため。ちなみに、生着とは、移植した細胞や組織、臓器が正常に機能している状態のことである。
3.〇 正しい。ゆっくりした持続的な皮膚の伸張を行う。なぜなら、皮膚の瘢痕形成・組織の収縮化を防ぐため。
4.〇 正しい。スプリントの圧迫によってケロイド形成を抑制する。ケロイドとは、皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患である。炎症であるため、痒みや痛みを伴う。ケロイドは審美的、機能的に障害を残すため、その予防が必要となり、スプリントの圧迫を実施する。
5.〇 正しい。初期の安静肢位として、肩関節外転・外旋位をとらせる。なぜなら、体幹の熱傷では肩関節の内転・内旋拘縮を予防するため。

 

 

 

 

 

第48回PT 午前31問

熱傷の部位と起こりやすい拘縮を予防する肢位の組合せで適切でないのはどれか。

1.前頸部:頸椎伸展
2.前胸部:肩関節外転
3.肘窩部:前腕回内
4.膝窩部:膝関節伸展
5.下腿後面:足関節背屈

解答3

解説

1.〇 正しい。前頸部は、(軽度)頸椎伸展とする。
2.〇 正しい。前胸部は、肩関節外転とする。肩関節内転拘縮になりやすいため。
3.× 肘窩部(肘関節前面)の熱傷では、屈曲拘縮が起こりやすいので、肘関節は伸展位に保持する。ちなみに、前腕は回外位にする。
4.〇 正しい。膝窩部は、膝関節伸展とする。
5.〇 正しい。下腿後面は、足関節背屈とする。

 

 

第50回PT 午後16問

16 44歳の患者。Ⅱ度の熱傷がある部位を図に示す。
 受傷後3日目に保持すべき肢位で正しいのはどれか。


1. 頸部中間位
2. 肩関節外転位
3. 右前腕回内位
4. 体幹軽度屈曲位
5. 股関節軽度屈曲位

解答2

解説

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

1.× 頸部中間位ではなく、軽度伸展位とする。
2.〇 正しい。肩関節は外転位である。なぜなら、肩関節内転拘縮になりやすいため。
3.× 右前腕回内位ではなく、回外位とする。
4.× 体幹軽度屈曲位ではなく、軽度伸展位とする。
5.× 股関節軽度屈曲位ではなく、右股関節は伸展位とする。

 

 

 

第51回PT 午前19問

19 24歳の女性。2日前に室内での火災に巻き込まれ救急搬送された。35%の範囲の熱傷と診断され入院中。意識は清明。顔面から前頸部も受傷し煤のような色の痰がでる。肩甲帯から上腕にかけては植皮が必要な状態。骨盤と下肢とに傷害はみられない。
 この時期の理学療法として適切なのはどれか。

1. 患部局所の浮腫に対する弾性包帯による持続圧迫
2. 下肢に対する80%MVC での筋力増強
3. 背臥位での持続的な頸部伸展位の保持
4. 尖足予防のための夜間装具の装着
5. squeezingによる排痰

解答5

解説

1.× 弾性包帯による持続圧迫を行うのは、「患部局所の浮腫」に対してではなく、「肥厚性瘢痕部(ケロイド)」に対して行う。肥厚性疲痕が顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮を来し、機能障害の原因となるため予防が必要である。本症例の場合、皮膚が落ち着いてきた時点で、拘縮予防目的にスポンジでの圧迫療法をすることがある。
2.× 下肢に対する80%MVCでの筋力増強は不適切である。なぜなら、本症例は下肢に傷害はないため。受傷後2日であることからも、そこまで高負荷の筋力増強訓練は必要ない。80%MVCでの筋力増強とは、最大筋力の80%の負荷となる。
3.× 持続的な頸部伸展位の保持をあえて「背臥位」のままである必要はない。介助下で端座位の獲得を目指し離床へと繋げていくことが大切である。
4.× 尖足予防のための夜間装具の装着は必要ない。なぜなら、下肢に傷害はなく尖足にならないため。
5.〇 正しい。squeezing(スクイージング)による排痰である。本症例は、「煤(すす)のような色の痰が排出されている」ということから気道熱傷が疑われ、気道の浮腫が起こりやすいと考えられる。また気道の炎症により分泌物も多くなっており、squeezingによる排痰を促し無気肺(肺の一部または全体に空気がなく、肺がつぶれた状態)などを予防する。

squeezing(スクイージング)

痰のある胸郭を呼気時に圧迫することにより呼気流速を高め、痰の移動を促進し、反動による吸気時の肺の拡張を促す手技のことを言う。

 

 

 

 

 

第55回PT 午前20問

20 85歳の女性。自宅仏壇のろうそくの火が右袖に引火し、右前腕から前胸部および顔面にⅢ度5%とⅡ度15%の熱傷および気道熱傷を受傷した。受傷翌日に前胸部から右前腕前面にかけて植皮術を実施した。
 術後早期から開始する理学療法として正しいのはどれか。

1. squeezingによる排痰を実施する。
2. 前腕は最大回内位に保持する。
3. 肩関節は外転位に保持する。
4. 筋力増強運動は禁止する。
5. 起立歩行は禁止する。

解答3
解説

本症例のポイント

・85歳の女性。
・「右前腕から前胸部および顔面」に「Ⅲ度5%」と「Ⅱ度15%」の熱傷および気道熱傷。
・受傷翌日:前胸部から右前腕前面にかけて植皮術を実施。
→本症例は、「右前腕から前胸部および顔面」に熱傷および気道熱傷していることから、①肩・肘の拘縮予防や②排痰の促通(今回熱傷部位によりsqueezingはできない)、③廃用予防が必要になる。

1. × squeezingによる排痰を実施する必要はない。なぜなら、本症例は前胸部から右前腕前面にかけて植皮術を行っているため。Squeezing(スクイージング)とは、胸郭の呼気時圧迫により呼気流速を増し排痰を促進し、反動による吸気時の拡張を促す。小児では呼吸数が多いこともあり正確な適用が困難なことも多い。他にも、Percussion(パーカッション)という技法があり、それは胸壁を用手的に振動させる。不整脈や気管支攣縮、酸素消費量増加の原因となり侵襲的であるため特に重症小児患者には用いないほうが良いと思われる。本症例は、植皮術を行っており、5日~2週間程度、患部に伸張刺激が加わる運動は避けた方が良い。
2. × 前腕は、「最大回内位」ではなく回外位に保持する。熱傷の二次性症状として、癒着・瘢痕拘縮が起こりやすいため、熱傷部位が伸張される肢位をとる。
3. 〇 正しい。肩関節は内転拘縮をきたしやすいため外転位に保持する。各関節に生じやすい拘縮があるのでそれを予防するような肢位を確保する。スプリントや装具を活用しながらポジショニングを行う。
4~5 熱傷の理学療法として、①変形拘縮の予防、②瘢痕形成予防、③浮腫の改善、④筋力維持改善、⑤全身体力の維持を行う。したがって、熱傷部位に負担がかからない部位は、運動を行うべきである。本症例は、右前腕から前胸部および顔面、気道熱傷されているが、下肢の筋力増強運動や・起立歩行は行える。

熱傷の分類

・Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
・Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
・Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
・Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

第56回PT 午前31問

31 熱傷部位と背臥位時の肢位の組合せで正しいのはどれか。

1. 前頸部:頸部屈曲
2. 腋窩部:肩外転90°
3. 会陰部:両股関節外旋
4. 膝窩部:膝90°屈曲
5. 足背部:底屈位

解答2

解説

1.× 前頸部は、「頸部屈曲」ではなく頸部伸展で保持する。なぜなら、頸部伸展制限をきたしやすいため。
2.〇 正しい。腋窩部は、肩外転90°で保持する。なぜなら、肩関節外転制限をきたしやすいため。
3.× 会陰部は、「両股関節外旋」ではなく両股関節外転位で保持する。なぜなら、股関節外転制限をきたしやすいため。
4.× 膝窩部は、「膝90°屈曲」ではなく膝関節伸展位で保持する。なぜなら、膝関節伸展制限をきたしやすいため。
5.× 足背部は、「底屈位」ではなく足関節背屈もしくは底背屈0°で保持する。なぜなら、背臥位では足関節背屈制限をきたしやすいため。

 

 

 

 

 

第57回PT 午前34問

34 熱傷について正しいのはどれか。

1.Ⅰ度熱傷では水庖がみられる。
2.Ⅲ度熱傷では創底から上皮化が起こる。
3.深達性Ⅱ度熱傷では痛覚鈍麻がみられる。
4.浅達性Ⅱ度熱傷では水疱底は蒼白である。
5.熱傷面積はⅠ、Ⅱ、Ⅲ度すべての面積を合わせて計算する。

解答

解説

熱傷の分類
  • Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
  • Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

1.× 水庖がみられるのは、「Ⅰ度熱傷」ではなく「浅達性Ⅱ度熱傷」である。ちなみに、Ⅰ度熱傷は、水泡形成はない。
2.× 創底から上皮化が起こるのは、「Ⅲ度熱傷」ではなく「深達性Ⅱ度熱傷」である。ちなみに、Ⅲ度熱傷は、炭化水泡形成はない。上皮化とは、欠損した皮膚や粘膜が治癒過程において上皮すなわち表皮や粘膜上皮で再度被覆されることである。 創傷の治癒過程では、肉芽組織が形成された後、表皮細胞が遊離・増殖して再生上皮が形成される。
3.〇 正しい。深達性Ⅱ度熱傷では、痛覚鈍麻がみられる。
4.× 水疱底は蒼白であるのは、「浅達性Ⅱ度熱傷」ではなく「深達性Ⅱ度熱傷」である。ちなみに、浅達性Ⅱ度熱傷は、水疱底は赤色である。
5.× 熱傷面積は、「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ度すべての面積を合わせて計算する」ではなく「成人は9の法則・小児は5の法則」として計算する。

 

 

 

第58回PT 午前40問

40.手背に生じた慢性期の熱傷後瘢痕拘縮に対する理学療法として正しいのはどれか。2つ選べ。

1.圧迫療法
2.寒冷療法
3.神経筋電気刺激療法
4.コックアップ・スプリント
5.手指屈曲の関節可動域練習

解答1・5

解説

熱傷のリハビリテーション

熱傷のリハビリプログラムは、主に①急性期と②慢性期に分けることができる。一般的に、熱傷のリハビリでは急性期においてより、慢性期に比重がおかれるが、リハビリプログラムは熱傷の受傷直後より開始されなければならない。

①急性期:熱傷の程度、部位と範囲が予後に重大な影響を及ぼす。重度熱傷では、ショックに陥るため、蘇生術や心肺機能、腎機能の維持と電解質、体液のバランスが急務となる。また、熱風の吸引などによる気管の損傷は呼吸不全をきたすため、時には気管切開も必要となる。

②慢性期:全身状態が落ち着き、この時期の課題は、疼痛、感染、植皮術、ケロイド、拘縮、ADL、心理的な問題となる。ケロイドとは、皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患である。

(参考:「総合リハビリテーション 7巻4号 (1979年4月発行)熱傷のリハビリテーション」著 千野 直一より)

1.〇 正しい。圧迫療法を実施する。なぜなら、スプリントの圧迫によってケロイド形成を抑制することができるため。ケロイドとは、皮膚の深いところにある真皮という部分で炎症が続いてしまうことにより生じる疾患である。炎症であるため、痒みや痛みを伴う。ケロイドは審美的、機能的に障害を残すため、その予防が必要となり、スプリントの圧迫を実施する。
2.× 寒冷療法の優先度は低い。なぜなら、本症例は慢性期であるため。寒冷療法は主に急性期(炎症)に対して行う。ちなみに、寒冷療法の生理作用には、局所新陳代謝の低下、毛細血管浸透圧の減少、血管収縮とその後の拡張、感覚受容器の閾値の上昇、刺激伝達遅延による中枢への感覚インパルス減少、筋紡錘活動の低下等がある。これらの作用により、炎症や浮腫の抑制、血液循環の改善、鎮痛作用、筋スパズムの軽減が期待される。(引用:「寒冷療法」物理療法系専門領域研究部会 著:加賀谷善教)
3.× 神経筋電気刺激療法の優先度は低い。神経筋電気刺激療法は、主に筋肉や運動神経への電気刺激により筋収縮を起こすことで、筋力増強や筋委縮の予防、痙縮抑制などを目的に行われる治療法である。
4.× コックアップ・スプリント(手関節固定装具)の優先度は低い。手関節を機能的な位置に保持できないときに適応され、特に橈骨神経麻痺・中枢弛緩性麻痺の拘縮予防に用いられる。手関節背屈装具のことであり、機能的把持動作を可能とする。
5.〇 正しい。手指屈曲の関節可動域練習を実施する。なぜなら、本症例のように熱傷が手背(手)に生じた場合、手内在筋マイナスポジションを取りやすいため。手内在筋マイナスポジションとは、母指内転位、MP過伸展、PIP・DIP関節屈曲位のとなるものを指す。

 

 

 

 

第59回PT 午前36問

36 熱傷部位の皮膚で正しいのはどれか。

1.壊死組織は赤色を呈する。
2.Ⅲ度熱傷は汗腺まで達しない。
3.Ⅰ度熱傷部位は植皮術を要する。
4.感染を伴うと植皮の生着が阻害される。
5.植皮後は知覚が回復してから運動を開始する。

解答

解説

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

(※図引用:「筋膜の構造」illustAC様より)

1.× 赤色を呈するのは、「壊死組織」ではなくⅡ度の浅達性(真皮浅層:水泡底)である。ちなみに、壊死組織は、Ⅲ度熱傷で白くなったあと黒色を呈する。
2.× Ⅲ度熱傷は汗腺まで達する。なぜなら、汗腺は主に真皮に位置するため。Ⅲ度熱傷の深さは皮下組織に達する。
3.× 植皮術を要するのは、「Ⅰ度熱傷部位」ではなくⅢ度熱傷部位である。Ⅲ度熱傷の特徴として、【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要である。植皮術とは、皮膚を削り、その上に別の部分から採取した皮膚を移植する治療法で、損傷した皮膚を再建し、外界からの感染を防ぐことで生体を保護する効果がある。
4.〇 正しい。感染を伴うと植皮の生着が阻害される。なぜなら、感染により、正常な機能・回復を阻害するだけでなく炎症症状を呈するため。植皮術の合併症には、血腫や感染などがある。感染は皮膚の生着に支障をきたし、最悪の場合生着しない可能性がある。したがって、感染兆候や血腫の有無を観察することが重要である。ちなみに、生着とは、移植した細胞や組織、臓器が正常に機能している状態のことである。
5.× 植皮後は、「知覚が回復して」ではなく、生着(植皮部位の安定性確保されて)から運動を開始する。皮膚の生着が見込める1週間程度までは、積極的なリハビリテーションの開始は困難である。ちなみに、植皮の知覚回復は、移植床や皮弁の辺縁からの知覚神経軸索伸長によって起こると考えられている。知覚回復には、部位によってさまざまであるが、指で平均的に1~2か月かかるといわれている。

熱傷の理学療法

①変形拘縮の予防
②瘢痕形成予防
③浮腫の軽減
④筋力維持改善
⑤全身体力の維持など。

 

OT専門

第47回OT 午後12問

12 図に示す斜線の部位にⅡ度深達性熱傷がある。
 急性期に安静を保つためのスプリント肢位で正しいのはどれか。

解答

解説

本症例のポイント

Ⅱ度深達性熱傷(【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行)

→熱傷の二次損傷として関節拘縮が伴い、熱傷部位に癒着・瘢痕拘縮が起きやすい。熱傷部位と近い関節は熱傷部位が伸展されるようポジショニングをする。手の熱傷では、手内在筋マイナスポジションになりやすい。手内在筋マイナスポジションとは、母指内転位、MP過伸展、PIP・DIP関節屈曲位のとなるものを指す。

1.× 手内在筋マイナスポジションである。この肢位にならないように、スプリント肢位を設定する。
2.× MP関節屈曲位にする。
3.〇 正しい。手内在筋マイナスポジションに拘縮することを防ぐことができている。瘢痕により主内在筋がMP伸展、PIP・DIP屈曲のようになることが想定されるため、MP関節屈曲、PIP・DIP関節伸展位が好ましい。
4.× 手関節は軽度背屈位にする。
5.× MP関節屈曲位にする。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

 

 

第48回OT 午後36問

36 手背部と前腕部の熱傷における急性期の安静肢位として正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:解答なし)

1.DIP関節伸展位
2.PIP関節屈曲位
3.MP関節伸展位
4.手関節屈曲位
5.前腕回外位

解答 なし(採点除外)
理由:設問が不十分で正解が得られないため。

解説

前腕部の「どこ」に熱傷があるのか記載がないため、不適切問題となったと考えられる。熱傷部位はそのままにしておくと、瘢痕化し関節が拘縮するため、拘縮を予防できる肢位で固定する必要がある。

1.〇 正しい。DIP関節伸展位に保持する。なぜなら、手背の熱傷により、総指伸筋腱・腱鞘が障害されると、MP関節過伸展PIP・DIP関節屈曲位の拘縮が起こりやすいため。
2.× PIP関節は、屈曲位ではなく、伸展位を保つ。
3.× MP関節は、伸展位ではなく、屈曲位を保つ。
4.× 手関節は、屈曲位(掌屈位)ではなく、軽度伸展位(軽度背屈位)を保つ。
5.△ 前腕回外位と断定できない。なぜなら、前腕部の「どこ」に熱傷があるのか記載がないため。

 

 

 

 

第50回OT 午前36問

36 熱傷患者に対する作業療法で誤っているのはどれか。

1.肥厚性瘢痕部は圧迫する。
2.急性期から装具で良肢位に保持する。
3.急性期はゆっくりとした運動を行う。
4.皮膚移植部は生着してから伸張する。
5.体幹の熱傷では肩関節は内転位とする。

解答5

解説
1.〇 正しい。肥厚性瘢痕部は圧迫する(スポンジや弾性包帯などでの圧迫法)。肥厚性疲痕が顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮を来し、機能障害の原因となるため予防が必要である。
2.〇 正しい。急性期から装具で良肢位に保持する。なぜなら、拘縮予防のため行う。
3.〇 正しい。急性期はゆっくりとした運動を行う。なぜなら、強度の高い運動は、皮膚の急激な伸張により、組織の傷害をきたすため。
4.〇 正しい。皮膚移植部は生着してから伸張する。植皮術後の安静期間は、採皮部で1~2日、植皮部で7~10日である。
5.× 体幹の熱傷での肩関節は、「内転位」ではなく外転・外旋位とする。なぜなら、体幹の熱傷において肩関節は、内転・内旋に拘縮しやすいため。また、熱傷の二次症状として癒着・疲痕拘縮が起こりやすいため、熱傷部位が伸展されるような肢位をとることが基本である。

 

 

第51回OT 午後30問

30 深達性Ⅱ度熱傷に分類されるのはどれか。

1. 表皮までの損傷
2. 真皮浅層までの損傷
3. 真皮深層までの損傷
4. 皮下組織までの損傷
5. 筋肉までの損傷

解答3

解説

熱傷の分類
  • Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
  • Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

1.× 表皮までの損傷は、Ⅰ度である。
2.× 真皮浅層までの損傷は、浅達性Ⅱ度熱傷(SDB)である。
3.〇 正しい。真皮深層までの損傷は、深達性Ⅱ度熱傷(DDB)である。
4.× 皮下組織までの損傷は、Ⅲ度である。
5.× 筋肉までの損傷は、Ⅲ度である。

 

 

 

第52回OT 午前34問

34 手背の深達性Ⅱ度熱傷に対する急性期のスプリンティング肢位で正しいのはどれか。

1. 母指掌側外転
2. 母指MP関節伸展
3. 第2〜5指MP関節伸展
4. 第2〜5指PIP関節屈曲
5. 第2〜5指DIP関節屈曲

解答1

解説

 深達性Ⅱ度熱傷とⅢ度熱傷では、二次損傷として関節拘縮伴う。熱傷部位に癒着・瘢痕拘縮が起こりやすいため、熱傷部位と近い関節については、熱傷部位が伸展されるようにポジショニングを考慮する。手背の深達性Ⅱ度熱傷では、瘢痕により手関節軽度掌屈MP関節過伸展DIP/PIP関節屈曲母指伸展内転拘縮(鷲手変形とも呼ぶ)となる。

1.〇 正しい。母指掌側外転位とする。母指伸展内転拘縮を伴うため。
2.3.× 母指MP関節「伸展」・第2〜5指MP関節「伸展」ではなく、各関節は屈曲位とする。
4.5.× 第2〜5指PIP関節「屈曲」・第2〜5指DIP関節「屈曲」ではなく、各関節は伸展位とする。

 

 

 

第53回OT 午後37問

37 手部の三度熱傷における対応で正しいのはどれか。

1.受傷直後に氷で冷却する。
2.冷却時間は5分未満とする。
3.壊死組織の除去は不要である。
4.変形防止にスプリントを使用する。
5.受傷時に手袋していたら直ちに抜去する。

解答4

解説

 Ⅲ度の熱傷は、皮下組織までの深さであり、疼痛はなく、白く乾燥、炭化水泡形成はない。また治癒には一か月以上かかり、小さいものは瘢痕治癒するが、植皮が必要なレベルである。

1.× 受傷直後に、「氷」ではなく流水で冷却する。Ⅲ度の熱傷は感覚がなく、氷での冷却によって低体温症など二次的な疾病を防ぐためである。
2.× 冷却時間は、「5分未満」ではなく、5~30分間とする。
3.× 壊死組織の除去は必要である。Ⅲ度の熱傷なので、表皮・真皮が壊死に陥る壊死組織の温存は感染源になるため。
4.〇 正しい。変形防止にスプリントを使用する。深達性Ⅱ度熱傷とⅢ度熱傷では、熱傷の二次損傷として関節拘縮を伴う熱傷部位に癒着・瘢痕拘縮が起きやすい。そのため熱傷部位と近い関節については、熱傷部位が伸展されるようにポジショニングを考慮してスプリントを使用する。
5.× 受傷時に手袋していても直ちに抜去する必要はない。着衣の上から受傷した場合、無理に抜去すると更なる皮膚の損傷をきたす。そのため、着衣の上から水をかけて冷却するのが良い。

 

 

第54回OT 午後12問

12 57歳の女性。右利き。火災により右前腕以遠にⅢ度の熱傷を受傷した。救命救急センターに搬送され、壊死組織のデブリドマンを施行され、植皮術が行われた。術後3日目にベッドサイドにて作業療法を開始した。
 この時点での受傷手への対応で正しいのはどれか。

1. 弾性包帯による巻き上げ
2. 他動関節可動域訓練
3. 動的スプリント製作
4. 安静時の挙上
5. 抵抗運動

解答

解説

本症例のポイント

・57歳の女性(右利き)
・右前腕以遠にⅢ度の熱傷。
・救命救急センターに搬送され、壊死組織のデブリドマンを施行され、植皮術が行われた。
・術後3日目にベッドサイドにて作業療法を開始。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
→各関節に生じやすい拘縮があるのでそれを予防するような肢位を確保する。スプリントや装具を活用しながらポジショニングを行う。植皮を行っている場合には5日~2週間程度、患部に伸張刺激が加わる運動は避ける。よって、本症例は、術後3日目であり、皮膚の生着が見込める1週間程度までは、積極的な作業療法の開始は困難である。炎症症状の対処法(RICE処置)を行っていく。したがって、選択肢4.安静時の挙上し、浮腫の予防・改善に努める。

1.× 弾性包帯による巻き上げは、十分に皮膚が生着してから実施する。効果として、弾性包帯による巻き上げ・ウレタンによる圧迫は肥厚性瘢痕・ケロイド予防に行うことである。本症例は、術後3日目であり、皮膚の生着が見込める1週間程度までは、積極的な作業療法の開始は困難である。
2.3.5.他動関節可動域訓練/動的スプリント製作/抵抗運動といった関節を動かすのは、十分に皮膚が生着してから実施する。本症例は、術後3日目であり、皮膚の生着が見込める1週間程度までは、積極的な作業療法の開始は困難である。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

 

 

 

第55回OT 午前33問

33 熱傷のリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. 持続伸長運動が基本である。
2. 熱傷瘢痕部の圧迫は避ける。
3. 熱傷による拘縮予防には装具は使用しない。
4. 慢性期のパラフィン浴は60 ℃くらいがよい。
5. 会陰部熱傷の急性期では下肢外旋肢位のポジショニングを行う。

解答1

解説
1.〇 正しい。持続伸長運動が基本である。関節拘縮予防、瘢痕形成予防の目的で、受傷創・移植皮膚を損傷しないように愛護的に運動する。ちなみに、持続伸張とは、時間をかけてゆっくり筋肉を伸ばすことである。
2.× 熱傷瘢痕部の圧迫は、「避ける」のではなくアプローチとして行う。スポンジや弾性包帯などでの圧迫法がある。肥厚性瘢痕が顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮を来し、機能障害の原因となる。
3.× 熱傷による拘縮予防に、装具を使用する。急性期から装具を用いて良肢位にポジショニングを行うことで、拘縮予防となる。
4.× 慢性期のパラフィン浴は、「60 ℃」ではなく50~55℃の間に設定するくらいがよい。60 ℃は高すぎる。
5.× 会陰部熱傷の急性期では、「下肢外旋肢位」ではなく下肢(股関節)外転位のポジショニングを行う。熱傷部位が伸展されるようにポジショニングを行う。

 

 

 

 

第57回OT 午前38問

38 手背の熱傷に対する急性期のスプリントの関節角度で正しいのはどれか。

1.手関節屈曲30度
2.MP関節屈曲50度
3.PIP関節屈曲60度
4.DIP関節屈曲30度
5.母指橈側外転60度

解答

解説

手背の熱傷に対する良肢位

・手背の熱傷:手関節10~30度伸展位、MP関節70~80度屈曲位、PIP・DIP関節0度伸展位、母指対立位とする。

・手掌の熱傷:手関節20~40度伸展位、MP関節0度、PIP・DIP関節0度、母指外転・伸展位とする。

1.× 手関節は、「屈曲」ではなく「伸展」(10~)30度である。ただし、本症例は急性期であるため、10度程度が望ましいといえる。
2.〇 正しい。MP関節屈曲50度で急性期のスプリントの関節角度を調整する。理想は、MP関節70~80度屈曲位であるが、本症例は急性期であるためまずはMP関節屈曲50度から始めるのが望ましい。
3~4.× PIP関節屈曲60度/DIP関節屈曲30度ではなく、PIP・DIP関節伸展0度が望ましい。
5.× 母指は、橈側外転60度ではなく「対立位かやや外転位」が望ましい。

 

 

第59回OT 午前11問

11 62歳の男性。畑で野焼き中に熱傷になったため救急車で搬入された。搬入時の両下肢の熱傷部位を下に示す。全身の熱傷面積は35%である。
 熱傷で正しいのはどれか。

1.疼痛評価が必要である。
2.熱傷深度はⅠ度である。
3.全身症状の観察は必要ない。
4.気道熱傷は予後因子ではない。
5.熱傷面積は予後因子ではない。

解答

解説

本症例のポイント

・62歳の男性(熱傷)。
・全身の熱傷面積:35%
→両下肢の熱傷写真は、炭化がみられる。ちなみに、重症熱傷とは、定義として「成人30%以上、幼小児15%以上の熱傷面積」とされている。

【重症熱傷:入院加療を要する熱傷】
①Ⅱ度熱傷で体表面積の30%以上。
②Ⅲ度熱傷で体表面積の10%以上。
③顔面・手・足の熱傷。
④気道熱傷。
⑤軟部組織損傷や骨折を伴う。

1.〇 正しい。疼痛評価が必要である。なぜなら、疼痛の評価により、熱傷の深達度(分類)をより詳細に評価できるため。Ⅰ度熱傷やⅡ度浅層の熱傷では疼痛を生じるが、Ⅱ度深層の熱傷では鈍麻、Ⅲ度熱傷では疼痛を感じない。
2.× 熱傷深度は、「Ⅰ度」ではなくⅢ度である。なぜなら、両下肢の熱傷写真に、炭化がみられるため。ほかにもⅢ度の特徴として、白く乾燥、水泡形成はないことがあげられる。
3.× 全身症状の観察は「必要である」。なぜなら、広範囲に熱傷を負った人は、熱傷を起こした組織の血管から体液がにじみ出ていき、また熱傷が深く広ければ全身の血管から体液が失われるため。したがって、最終的に脱水状態に陥る。ほかの熱傷の合併症として、循環血液量減少性ショックや気道熱傷、感染、瘢痕、拘縮などがある。 広範な熱傷(体表面積の20%超)の患者では、急速輸液が必要となる。
4.× 気道熱傷は予後因子「である」。なぜなら、気道熱傷で気道の浮腫を生じるため。それに伴い、呼吸困難を生じやすく、窒息の危険性が高い。
5.× 熱傷面積は予後因子「である」。なぜなら、熱傷面積が大きいほど体液が失われやすい(合併症を伴いやすい)ため。ちなみに、予後因子として、熱傷深度、熱傷面積、年齢、気道熱傷、合併損傷、既往疾患、熱傷の原因、熱傷部位、受傷後経過時間があげられる。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化、水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

 

 

共通問題

第45回共通 午前89問

熱傷で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Ⅲ度熱傷は真皮層までの損傷をいう。
2.四肢関節部位は特殊部位と呼ばれる。
3.瘢痕形成の予防として圧迫と伸張とが用いられる。
4.手の熱傷では手内筋プラスポジションとなりやすい。
5.小児の熱傷面積を算出する場合は9の法則を用いる。

解答2,3

解説

1.× Ⅲ度熱傷は、「真皮層」ではなく皮下組織までの損傷をいう。ちなみに、真皮層までの損傷はⅡ度である。
2.〇 正しい。四肢関節部位は特殊部位と呼ばれる。四肢関節部位(顔面や頸部含める)や陰部(肛門)は、特殊部位と呼ばれ熱傷が治りにくい部位である。障害も残りやすい。
3.〇 正しい。瘢痕形成の予防として圧迫と伸張とが用いられる。そうすることで熱傷後の瘢痕形成を予防する。
4.× 手の熱傷では、「手内筋プラスポジション」ではなく、手内筋マイナスポジション(母指内転位、MP過伸展、 PIP・DIP関節屈曲位)となりやすい。
5.× 小児の熱傷面積を算出する場合は、「9」ではなく5の法則を用いる。ちなみに、成人に9の法則を用いる。熱傷面積の算定は深度とともに重症度の基準となる。

 

 

 

第46回共通 午前60問

60.成人の体表面で、全体表面の約9%に相当するのはどれか。2つ選べ。

1.頭部
2.外陰部
3.胸腹部
4.一側上肢
5.一側下肢

解答1/4

解説

9の法則とは?

「9の法則」とは、体表面積を9%ごとに、11のブロックに分けたものである。熱傷評価などで用いられる。
部位は、①頭部、②〜④体幹(前面、後面、胸部、腹部)、⑤〜⑥上肢(左・右)、 ⑦〜⑪下肢(左・右、前・後)である。残りの1%は外陰部である。ちなみに、小児は、5の法則となる。頭部15%、前面体幹部20%、後面体幹部15%、左右上肢各10%、左右下肢各15%である。

1.〇 正しい。頭部は、全体表面の約9%に相当する。頭部全体で9%である。 顔面だけなら4。5%。
2.× 外陰部は、1%である。
3.× 胸腹部は、18%である。胸部9%+腹部9%となる。
4.〇 正しい。一側上肢は、全体表面の約9%に相当する。
5.× 一側下肢は、18%である。一側下肢の前・後9%となる。

 

 

第48回共通 午後86問

熱傷について正しいのはどれか。

1.Ⅰ度では皮膚の発赤をきたす。
2.浅達性Ⅱ度では肥厚性瘢痕を残す。
3.Ⅲ度では強い痛みがある。
4.小児の熱傷面積の概算には9の法則が用いられる。
5.熱傷指数はⅠ度とⅡ度の面積から算出する。

解答

解説

1.〇 正しい。Ⅰ度は、皮膚の発赤をきたす。皮膚の発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛がみられ、水疱は見られない。
2.× 浅達性Ⅱ度は、真皮浅層までの障害で、強い疼痛・腫脹・水泡形成がみられるが、1~2週間で治癒し、瘢痕再生する。肥厚性瘢痕を残すのは、深達性Ⅱ度である。
3.× Ⅲ度では、痛みは感じない。皮下組織までの障害で、疼痛を感じず、皮膚は白く乾燥、炭化する。水疱形成もみられない。
4.× 小児の熱傷面積の概算には、9ではなく5の法則が用いられる。9の法則は成人に用いる。熱傷面積の概算は深度とともに、重症度の基準となる。
5.× 熱傷指数は、Ⅰ度とⅡ度の面積ではなく、Ⅱ度とⅢ度の面積から算出する。熱傷指数=Ⅱ度熱傷面積(%)×1/2+Ⅲ度熱傷面積(%)で求められる。10~15%以上の重症熱傷で全身管理を要する。

 

 

 

第51回共通 午後77問

77 重症熱傷について誤っているのはどれか。

1. イレウスを起こしやすい。
2. 胃十二指腸潰瘍を起こしやすい。
3. 気道熱傷時は窒息の危険が高い。
4. 熱傷深度が深いほど疼痛が強い。
5. 受傷直後は循環血液量が減少する。

解答4

解説

1.〇 正しい。重症熱傷により、しばしばイレウスを生じる。イレウス(腸閉塞)とは、腸管がふさがれた状態や腸の蠕動運動が障害された状態をいう。イレウスの原因として、熱傷に伴う血清電解質異常のため起こる。
2.〇 正しい。胃十二指腸潰瘍を起こしやすい。なぜなら、熱傷により身体には大きなストレスがかかるため。熱傷に合併するストレス性潰瘍病変をCurling潰瘍(カーリング潰瘍)という。
3.〇 正しい。気道熱傷時は窒息の危険が高い。なぜなら、気道熱傷で気道の浮腫を生じるため。それに伴い、呼吸困難を生じやすく、窒息の危険性が高い。
4.× 熱傷深度が深いほど疼痛は感じない。Ⅰ度熱傷やⅡ度浅層の熱傷では疼痛を生じるが、Ⅱ度深層の熱傷は疼痛は鈍麻、Ⅲ度熱傷では、疼痛を感じない。熱傷の分類をしっかり覚えよう。
5.〇 正しい。受傷直後は循環血液量が減少する。なぜなら、血漿成分の血管外漏出が起こるため。

重症熱傷:入院加療を要する熱傷

①Ⅱ度熱傷で体表面積の30%以上。
②Ⅲ度熱傷で体表面積の10%以上。
③顔面・手・足の熱傷。
④気道熱傷。
⑤軟部組織損傷や骨折を伴う。

 

 

 

 

 

第53回共通 午前77問

77.熱傷について正しいのはどれか。

1.第Ⅰ度熱傷では熱感はみられない。
2.浅達性第Ⅱ度熱傷では癒痕を残す。
3.深達性第Ⅱ度熱傷の水痕底は発赤している。
4.第Ⅲ度熱傷では疼痛が著明である。
5.鼻咽腔内に煤が見られたときは気道熱傷が疑われる。

解答:5

解説

1.× 第Ⅰ度熱傷では、熱感はみられないのではなく、表皮までの熱傷をいう。赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛が認められるが、水泡は認められない。
2.× 浅達性第Ⅱ度熱傷では、癒痕は再生するのが特徴である。瘢痕を残すのは、選択肢3(深達性第Ⅱ度熱傷)である。
3.× 深達性第Ⅱ度熱傷の水痕底は、発赤ではなく白色もしくは破壊になるのが特徴である。発赤しているのは2(浅達性第Ⅱ度熱傷)である。
4.× 第Ⅲ度熱傷では疼痛はない。白く乾燥・炭化水泡形成はない。
5.〇 正しい。鼻咽腔内に煤が見られたときは気道熱傷が疑われる。煤(すす)と読む。

 

 

第54回共通 午前94問

94. 熱傷で正しいのはどれか。

1. 熱傷面積はⅠ、Ⅱ、Ⅲ度すべての面積を合わせて計算する。
2. Ⅰ度熱傷では水泡がみられる。
3. 浅達性Ⅱ度熱傷では水泡底は蒼白である。
4. 深達性Ⅱ度熱傷では疼痛がみられる。
5. Ⅲ度熱傷では創底から上皮化が起こる。

解答

解説
1. ×:熱傷面積は、「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ度すべての面積を合わせて計算する」のではなく、成人は9の法則小児は5の法則を用いる。
2. ×:Ⅰ度熱傷では水泡は見られない。症状は、発赤、熱傷、軽度の腫脹と疼痛である。また瘢痕にはならない。
3. ×:浅達性Ⅱ度熱傷での水泡底は、「蒼白」ではなく赤色である。
4. 〇:正しい。深達性Ⅱ度熱傷では疼痛がみられる。疼痛がないのはⅢ度熱傷からである。
5. ×:Ⅲ度熱傷では創底から上皮化が起こらず、植皮が必要である。

 

 

 

覚えておこう!!

(※図引用:看護roo!様HP)

熱傷の分類
  • Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
  • Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
  • Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

7 COMMENTS

ptsです。

熱傷した患者の患部局所の浮腫に対する弾性包帯による持続的圧迫は、行わないのでしょうか。熱傷には、治療として圧迫と伸長が良いはずだと思うのですが。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
多分、第51回午前19問目、選択肢1の「患部局所の浮腫に対する弾性包帯による持続圧迫」が不適切な理由ですかね。
コメントしてくださった通り、「治療としては皮膚に対し圧迫と伸張」を行いますが、基本的に「患部局所の浮腫」に対してではなく、「肥厚性瘢痕部」に行います。

今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご質問の意味を教えていただければと思います。
「どこが」熱傷した場合の、「どこの」拘縮予防なのでしょうか?
例えば、股関節「前面」が熱傷した場合、股関節屈曲拘縮が起こりやすいため、股関節中間位(0°伸展位)で正しいと思いますが・・・。股関節の「前後面・外内面」で肢位は変化すると考えています。

ご質問の「熱傷の拘縮予防としては、股関節はどの肢位なのでしょうか。」は、なんとなく私の答えでは、不十分な印象を受けています”(-“”-)”

返信する
匿名

足関節背面の拘縮について、業者模試では側部背面の熱傷は底屈位保持と記載されていたのですがどうなんでしょうか?

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
【】内は、記事抜粋↓
【足関節背面の熱傷では背屈方向に拘縮をきたしやすいため、軽度底屈位とする。】
ここの部分での質問ですね?

「足部背面の熱傷が背屈位保持」というのは、私の知識不足もあり聞いたことがありません。
もしコメント欄にて分かる人がいたら、教えてください。
どちらが正しいのでしょうか・・・。

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