第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午前問題6~10】

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6. 56歳の男性。発症時に明らかな運動麻痺はないが、歩くとすぐによろけて物につかまっていないと立っていられなくなり、頭部CT検査で脳出血と診断された。頭部CT画像を別に示す。
 この患者の頭部CT画像として最も可能性が高いのはどれか。

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

解答

解説

本症例のポイント

・56歳の男性。
・発症時:①明らかな運動麻痺はない。②歩くとすぐによろけて物につかまっていないと立っていられない
・頭部CT検査:脳出血と診断。
→本症例は、小脳が障害されていると疑え、脳出血と診断されていることから「小脳出血」と判断できる。頭部CTを診るときのポイントとして、どの断層(スライスレベル)で見ているのか分かっておくと部位の間違いを防げる。

1. 〇:正しい。小脳出血が疑え、この患者の頭部CT画像として最も可能性が高い。CTのスライスは橋レベルである。
2. ×:右側頭葉皮質下出血が疑われる。CTのスライスは中脳レベルである。左側(優位半球)が障害されていた場合の症状としては、感覚性失語(ウェルニッケ失語)が起こりやすいが、今回は右側である。
3. ×:視床出血が疑われる。CTのスライスは視床レベルである。視床出血は、被殻出血と並んで頻度の高い脳出血である。脳出血全体の30%程度を占めている。そもそも視床は、感覚路の中継点(対側の四肢体幹および顔面の知覚を中継)である。したがって、麻痺に比べ、感覚障害が強くなる。
4. ×:被殻出血が疑われる。被殻・淡蒼球は、大脳基底核を構成している。また、内包後脚には、錐体路が通っているため、この部分に障害が及ぶと錐体路障害が起こる。具体的な症状としては、片麻痺、中枢性顔面神経麻痺、感覚障害、運動性失語(優位半球の場合)などである。
5. ×:左頭頂葉皮質下出血が疑われる。CTのスライスは大脳皮質レベルである。頭頂葉出血の症状としては、劣位半球障害では半側空間無視、優位半球障害ではゲルストマン症候群である。

 

 

 

 

 

 

7. 正中神経を手首と肘部で電気刺激した運動神経伝導検査の波形を示す。
 この運動神経伝導検査から考えられる病態はどれか。
 ただし、手首と肘部の刺激部位間の距離は175mmである。(正常範囲:振幅3. 5mV以上、運動神経伝導速度48m/s以上)

1. 運動ニューロン変性
2. 軸索変性
3. 神経筋接合部異常
4. 正常
5. 脱髄

解答

解説

運動神経伝導検査とは?

運動神経伝導検査とは、末梢神経を電気刺激した際に、神経やその支配筋から発生する活動電位を記録したものである。主として末梢神経の機能評価に用いられる。要するに、神経の伝達速度が遅くなっているか調べるものとなっている。つまり、この時点で、選択肢1.運動ニューロン変性選択肢3.神経筋接合部異常は選択から外される。

【結果の解釈】
脱髄:伝導速度低下、持続時間延長、振幅低下
軸索変性:持続時間短縮、振幅低下

1. ×:運動ニューロンは、骨格筋を支配している神経の源である脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)、さらにその脊髄前角細胞に随意運動のための刺激を送ってくる大脳皮質の運動神経細胞(上位運動ニューロン)がある。運動神経伝導検査は、末梢神経の伝導速度を測るため、運動ニューロンが障害されても検査に影響はない。したがって、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動ニューロン変性疾患では、運動及び感覚神経伝導速度は通常に保たれる。
2. ×:軸索変性が生じると、機能する神経線維の数の減少に伴い、①振幅が低下し、②持続時間は短縮する。なぜなら、軸索変性では障害された神経線維はほとんど伝導できなくなるが、障害されていない神経線維は正常に伝導できるため。伝導速度は低下しないため不適切である。
3. ×:神経筋接合部(経終板)は、シナプスが形成され、筋収縮を引き起こす神経伝達が行われる部位である。運動神経伝導検査は、末梢神経の伝導速度を測るため、神経筋接合部が障害されても検査に影響はない反復誘発筋電図で評価する。
4. ×:正常ではない。なぜなら、特徴として持続時間の延長が認められるため。
5. 〇:正しい。脱髄の特徴として、持続時間の延長、振幅の低下などが認められる。上記特徴が見て取れる。なぜなら、脱髄により跳躍伝導が行えなくなるため。伝導速度は低下するが伝導する刺激の量はあまり変化しない。

本問の画像診断

手首刺激と肘部刺激の伝導時間は、10.9-5.9=5(ms)
手首と肘部の距離は175mmである。

したがって、伝導速度は175(mm)÷5(ms)35m/sである。
明らかな伝導速度の遅延を認める。

また、振幅もわずかに減少しているが正常範囲である。

(正常範囲:振幅3. 5mV以上、運動神経伝導速度48m/s以上)

 

 

 

 

 

8.3歳の男児。脳性麻痺による右片麻痺。背臥位から図のように起き上がる。
 影響する反射はどれか。

1. Moro反射
2. Galant反射
3. 緊張性迷路反射
4. 交叉性伸展反射
5. 非対称性緊張性頸反射

解答

解説

非対称性緊張性頸反射(ATNR)とは?

背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から、生後4~6ヵ月まで。

1. ×:Moro反射(モロー反射)は、背臥位で新生児の頭を支え床からわずかに離した後、急に頭部の手を離す(頚部を後屈させる)と児は手を開き、抱き着くように上肢を屈曲・内転する反射のことである。新生児期に出現し4~6か月後に消失する原始反射である。
2. ×:Galant反射(ガラント反射)は、脊柱近位を尖ったものでこすることで、体幹が刺激側に側屈する反射である。生後1~2か月ごろに消失する。
3. ×:緊張性迷路反射は、背臥位では上下肢伸展し、腹臥位では上下肢屈曲する反射である。生後5~6か月に消失する。
4. ×:交叉性伸展反射は、一側の下肢を屈曲し、反対側を伸展しておく。伸展側の足底部を刺激すると、非刺激側は屈曲位から伸展する反射である。生後2か月で消失する。
5. 〇:非対称性緊張性頸反射が影響している。非対称性緊張性頸反射は、頚部を回旋すると、顔面を向いた方の上・下肢が伸展、反対側の上・下肢が屈曲する反射である。生後1~3か月に出現し、4~6か月に消失する。図を見ると、寝返った方向(左頚部回旋)への左上・下肢は伸展しており、反対側の右上・下肢は屈曲している。非対称性緊張性頸反射の特徴である。通常、このような原始反射は成長とともに抑制され消失するが、脳性麻痺児では成人まで原始反射が残存することがある。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】姿勢反射を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

 

9. 水中での立位姿勢を図に示す。体重の約50%が免荷されるのはどれか。

解答

解説
1.× 頚部までの水深の場合、約10%程度の体重負荷量となる。
2~3.× 乳頭までの水深の場合、約30%程度の体重負荷量となる。また姿勢が変化していても水面下に存在する体積が変わらなければ、浮力は変わらない。
4.〇 正しい。臍までの水深の場合、約50~60%程度の体重負荷量となる。
5.× 大腿部までの水深の場合、約90%程度の体重負荷量となる。ちなみに、下腿ではほぼ免荷にはならない。

 

 

 

 

 

 

10. 65歳の男性。視床出血による左片麻痺。救急搬送され保存的治療が行われた。発症後3日より脳卒中ケアユニットでの理学療法を開始。このとき覚醒しておらず、大きな声で呼びかけたが開眼しなかったため、胸骨部に痛み刺激を加えたところ、刺激を加えている手を払いのけようとする動きがみられた。
 この患者のJCS<Japan Coma Scale>での意識障害の評価で正しいのはどれか。

1. Ⅱ-10
2. Ⅱ-20
3. Ⅱ-30
4. Ⅲ-100
5. Ⅲ-200

解答

解説

本症例のポイント

・65歳男性(視床出血による左片麻痺)
・発症後3日:覚醒しておらず、大きな声で呼びかけたが開眼しなかったため、胸骨部に痛み刺激を加えたところ、刺激を加えている手を払いのけようとする動きがみられた。
→本症例は、「大きな声で呼びかけたが開眼しなかった」ことから、JCS三桁であることが分かる。JCSの二桁は、刺激すると覚醒する状態だが、刺激をやめると眠り込む状態である。一方、三桁は、刺激しても覚醒しない状態である。

1. ×:Ⅱ-10は、普通の呼びかけで容易に開眼する。
2. ×:Ⅱ-20は、大きな声または体を揺さぶることにより開眼する。
3. ×:Ⅱ-30は、痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する。
4. 〇:正しい。Ⅲ-100は、痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする。
5. ×:Ⅲ-200は、痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる

 

JCSをしっかり覚えたい方用にまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】意識障害の評価(JCS・GCS)を完璧に覚えよう!

 

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