第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

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※問題の引用:第54回理学療法士国家試験、第54回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

 

 

1. 関節可動域測定法(日本整形外科会、日本リハビリテーション医学会基準による)で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 肩外転
2. 肘伸展
3. 股伸展
4. 股内転
5. 足背屈

解答1、4

解説
1. 〇:正しい。肩外転は、【基本軸】肩峰を通る床への垂直線(立位または坐位)、【移動軸】上腕骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、体幹の側屈が起こらないように、90°以上になったら前腕を回外することを原則とする。
2. ×:肘伸展は、【基本軸】上腕骨、【移動軸】橈骨である。【測定部位及び注意点】前腕は回外位とする。設問の図は、前腕中間位にして測定している。
3. ×:股伸展は、【基本軸】体幹と平行な線、【移動軸】大腿骨である。股関節伸展の場合、膝関節伸展位で行う点が誤りである。
4. 〇:正しい。股内転は、【基本軸】両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線、【移動軸】大腿中央線である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①背臥位で骨盤を固定する。②下肢は外旋しないようにする内転の場合は、反対側の下肢を屈曲挙上してその下を通して内転させる。
5. ×:足背屈は、【基本軸】矢状面における腓骨長軸への垂直線、【移動軸】足底面である。設問の図は、膝関節伸展位で行っており、正しくは膝関節屈曲位で行う。(2022年改定)

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2. 32歳の女性。下痢症状の後に四肢の脱力が出現した。Guillain-Barré症候群で、入院2週間後のGuillain-Barré障害スコアが5(人工呼吸管理)であった。グラフは表の3項目の合計点と歩行の関係を示す。この患者が発症6か月後の歩行不可能な確率はどれか。

1. 20%
2. 30%
3. 60%
4. 80%
5. 90%

解答

解説

 表から、3項目の合計点を求める。本症例は、32歳(年齢は40歳以下なので評価点0点)、下痢症状あり(発症に先立つ下痢症状の有無がありなので評価点1点)、入院2週間後のGuillain-Barré障害スコアが5(障害スコア5は評価点5点)。よって、3項目の合計点は、「0点+1点+5点=6点」となる。次に、グラフに着目し、3項目の合計点が6点である発症6か月後の歩行不可能な確率を見ると、選択肢3. 60%であることが分かる。よって、解答は選択肢3. 60%である。

 ちなみに、本問に示されているスコアは、EGOS(Erasmus GBS Outcome Scale)という。Guillain-Barré 症候群の予後因子(発症6か月後に歩行可能か?)に使用されるものである。今回の問題は、問題文から必要情報を拾って点数を求め、グラフに当てはめることで解答は容易に行える。

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

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次の文により3,4の問いに答えよ。検査方法を図に示す。

3. この検査方法はどれか。

1. Oberテスト
2. Patrickテスト
3. SLRテスト
4. Thomasテスト
5. Thompsonテスト

解答

解説
1. ×:Oberテスト(オーバーテスト)は、大腿筋膜張筋の短縮を診るテスト。側臥位で股関節中間位、膝関節屈曲位で股関節内転方向に自重にて下垂してもらう。陽性であれば、股関節が屈曲する。
2. ×:Patrickテスト(パトリックテスト)は、股関節の炎症や痛みを評価するテスト。背臥位で評価側の足背を反対側の膝蓋骨に載せ、評価側の膝を床へ押さえる。鼠径部に痛みが出れば陽性である。
3. 〇:正しい。SLRテストは、図のように行う。詳細は次の問題の答えに記載。
4. ×:Thomasテスト(トーマステスト)は、股関節屈曲拘縮を診るテスト。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。
5. ×:Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテスト。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。

 

 

 

 

 

 

 

次の文により3,4の問いに答えよ。検査方法を図に示す。

4. この検査で陽性となるのはどれか。

1. アキレス腱断裂
2. 膝蓋骨脱臼
3. 大腿筋膜張筋短縮
4. 大腿四頭筋短縮
5. ハムストリングス損傷

解答

解説

SLRテストとは?

SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、脊髄後根で圧迫を受ける疾患(坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなど)の有無、ハムストリングス損傷や短縮をみる。背臥位で、下肢を挙上し痛みが生じたら陽性である。

1. ×:アキレス腱断裂は、Thompsonテスト(トンプソンテスト)が陽性の場合である。
2. ×:膝蓋骨脱臼は、脱臼不安感テスト(apprehension test)が陽性の場合である。脱臼不安感テストは、膝蓋骨を太ももの骨に押さえつけながら、外側に移動させて膝を曲げる。脱臼しそうな不安感を訴えると陽性となる。
3. ×:大腿筋膜張筋短縮は、Oberテスト(オーバーテスト)が陽性の場合である。
4. ×:大腿四頭筋短縮は、Elyテスト(エリーテスト)が陽性の場合である。ちなみに、Thomasテスト(トーマステスト)は、股関節屈曲拘縮を診るテスト。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がる(股関節屈曲)と陽性である。①股関節屈曲+膝関節伸展した場合は大腿直筋の短縮の可能性を、②股関節屈曲+股関節外旋した場合は縫工筋の短縮を疑う。
5. 〇:図は、SLRテストであるので、陽性であればハムストリングスの損傷・短縮を疑える。

 

 

 

 

 

 

5. 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で誤っているのはどれか。

1. 手尺屈
2. 指屈曲(MP)
3. 指外転
4. 母指対立
5. 母指掌側外転

解答

解説
1. 〇:正しい。手尺屈は、【基本軸】前腕の中央線、【移動軸】第3中手骨である。【測定部位及び注意点】前腕を回内位で行う。
2. 〇:正しい。指屈曲(MP)は、【基本軸】第2~5中手骨、【移動軸】第2~5基節骨である。
3. 〇:正しい。指外転は、【基本軸】第3指中手骨延長線、【移動軸】第2,4,5指軸である。【測定部位及び注意点】中指の運動は橈側外転、尺側外転とする。
4. 〇:正しい。母指対立は、母指先端と小指基部部(または先端)との距離(cm)で表示する。
5. ×:母指掌側外転は、【基本軸】示指、【移動軸】母指である。【測定部位及び注意点】運動は手掌面に直角な面とする。誤っている点として、図の動きは母指掌側外転ではなく、橈側外転である。

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6 COMMENTS

名無さん

トーマス(Thomos)テストは股関節屈曲拘縮です。
大腿四頭筋(大腿直筋)はエリー(Ely)テストです。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
58回受験生

Am1の解の2が違う理由は橈骨が移動軸であるのに、尺骨になっていることではないのでしょうか?

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
肘伸展の【測定部位及び注意点】は前腕を回外位として測定します。
設問の図は、前腕中間位にして測定しているため誤りになっていると思っておりました。
もちろん設問の図は、前腕中間位として測定しているため、移動軸が純粋な橈骨にも尺骨にもなっていないと思います。
何かありましたらお気軽にお問い合わせください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
57回受験生

コメント失礼致します。
AM1の選択肢5番の謝っている理由として、「膝関節屈曲位で行う点が誤りである」と記載されていますが、正しくは膝関節伸展位で行う点が誤りで、本来であれば膝関節は屈曲位で行うのではないかと思いました。
ご返答いただけると幸いです。

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