第52回(H29) 作業療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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※問題の引用:第52回理学療法士国家試験、第52回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

 

1 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で正しいのはどれか。

 

解答4

解説

1.× 肩甲帯屈曲は、【基本軸】両側の肩峰を結ぶ線、【移動軸】頭頂と肩峰を結ぶ線である。図では、基本軸は肩峰を結んでおらず、移動軸は頭頂と肩峰を結んでいない。
2.× 肩関節水平伸展は、【基本軸】肩峰を通る矢状面への垂直線、【移動軸】上腕骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】肩関節を90°外転位とする。図では、肩峰を通る前額面への垂直線である。つまり開始肢位が肩関節外転90°から測定するため不適切である。
3.× 手関節伸展(背屈)は、【基本軸】橈骨、【移動軸】第2中手骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】前腕は中間位とする。図では、基本軸が尺骨、移動軸が第5中手骨になっているため不適切である。
4.〇 正しい。股関節屈曲は、【基本軸】体幹と平行な線、【移動軸】大腿骨である。ちなみに、【測定部位及び注意点】①骨盤と脊柱を十分に固定する。②屈曲は背臥位(膝屈曲位で行う)。図での測定で正しい。
5.× 足部内転は、【基本軸】【移動軸】ともに第1、2中足骨の間の中央線である。ちなみに、【測定部位及び注意点】膝関節を屈曲位, 足関節を0度で行なう。図では、第2、3中足骨の間の中央線となっている。

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2 72歳の男性。以前から心電図異常を指摘されていた。心電図(下図)を別に示す。
 正しいのはどれか。

1. 心房細動
2. 心房粗動
3. WPW 症候群
4. 洞不全症候群
5. Ⅰ度房室ブロック

解答5

解説

本症例のポイント

 本症例の心電図の特徴として、リズムは整、PR間隔は一定、P波やQRS波の数や形は不変である。ただ、PR間隔>0.2秒と延長していることが分かる。(基準値:PR間隔0.12秒、心電図は1マス0.04秒:5マス0.2秒)。

よって、選択肢5.Ⅰ度房室ブロックの所見である。房室ブロックは、心房刺激が心室に伝わりにくくなった状態で、障害の程度によって第1度から第3度までの3段階にわけることができる。

1.× 心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。心房細動は、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。
2.× 心房粗動の心電図の特徴は、①規則正しいRR間隔、②幅の狭いQRS波、③P波の代わりに規則正しい心房粗動波(F波)が認められる。F波2~4つにQRS波1つの割合で現われる。除細動の適応となる。
3.× WPW症候群は、心房と心室とを直接連結する副伝導路(いわゆるKent束)の存在により心室の早期興奮が生じる病態であり、頻拍性不整脈(PSVT)の原因となる。心電図上は、PR(PQ)間隔短縮QRS延長δ波(デルタ波)を認める。逆伝導のみの例では不顕性WPW症候群もある。心臓突然死の原因の一つと考えられており重要である。合併症がない場合は無症状である。
4.× 洞不全症候群は、Ⅰ~Ⅲ群に分類され、洞徐脈(心拍数50/分以下)、洞停止(P波脱落)などがみられる。したがって、心電図の特徴は、P波の消失、P波の間隔の延長などがみられる。

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3 70歳の男性。年前から誘因なく四肢末梢の感覚障害と筋力低下が出現している。次第に脱力は進行し、手指の巧緻性低下と歩行障害をきたしている。頸部MRI のT2 強調像(下図)を別に示す。
 頸髄の変化が最も大きい部位はどれか。

1. 第2頸椎・第3頸椎間
2. 第3頸椎・第4頸椎間
3. 第4頸椎・第5頸椎間
4. 第5頸椎・第6頸椎間
5. 第6頸椎・第7頸椎間

解答3

解説

頸部MRIのT2強調像から、本症例は頚部脊柱管狭窄症であることが分かる。頚髄の変化が最も大きいと判断できる基準として、①髄液腔の消失があるか?、②頸髄への圧迫があるか?、③頚髄の変性した所見頚髄内に淡く高信号域)が認められるか?の3点である。いずれも当てはまる選択肢3.第4頸椎・第5頸椎間が、頸髄が最も大きい変化している部位である。

1~2. × 第2頸椎・第3頸椎間/第3頸椎・第4頸椎間は、頚髄の変化はみられない。
4~5.× 第5頸椎・第6頸椎間/第6頸椎・第7頸椎間は、①頸髄への圧迫、②髄液腔の消失は認められるものの、頚髄の圧迫具合は第4頸椎・第5頸椎間より軽度である。

 

 

 

 

 

 

 

4 67歳の男性。Lewy小体型認知症。退職しているにもかかわらず時々会社に行こうとするが、説明をすると納得する。「子供が部屋の中にいる」と訴えることが増えた。日常の動作は緩慢となり、歩行も困難になったため入院した。
 この患者に対する作業療法の際に適切なのはどれか。

1. 幻視の訴えを正す。
2. 身体の活動量を減らす。
3. リズムのある反復動作は避ける。
4. 転倒しやすいことを本人に伝える。
5. 過覚醒を防ぐために照明を暗くする。

解答4

解説

Lewy小体型認知症とは?

Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。

1.× 幻視の訴えを正すのは不適切である。Lewy小体型認知症は、幻視を合併しやすい。例えば、患者が「子供が部屋の中にいる」と訴えることがあったら、「子供が部屋から出るまで向こうの部屋に行って過ごしましょう」と不安を取り除くような対応をする。
2.× 身体の活動量を減らすのは適切ではない。Lewy小体型認知症は、パーキンソニズムや睡眠障害を合併しやすい。そのため、活動量を減らすと、筋力低下に陥りさらに歩行が困難になる可能性が高い。また良い睡眠をとるためにも、活動量は可能な限り減らさないようにする。
3.× リズムのある反復動作を積極的に行う。Lewy小体型認知症は、パーキンソニズムを合併しやすい。パーキンソニズムに対応した動作・運動を処方するのが望ましい。
4.〇 正しい。転倒しやすいことを本人に伝える。 Lewy小体型認知症は、パーキンソニズムを伴うため転倒しやすい。そのため、転倒のリスクを本人に伝えるべきである。
5.× 過覚醒を防ぐために照明を暗くするのは不適切である。Lewy小体型認知症は、パーキンソニズムを伴うため転倒しやすい。照明を暗くすることは、転倒のリスクを高めるため好ましくない。また、睡眠障害を伴うことが多いため、日中は日光を浴び夜間は照明を暗くするなどして、夜間に良い睡眠をとれるようにすると良い。

 

 

 

 

 

 

5 25歳の男性。右前腕切断。筋電義手の作製にあたり、ハンドを開くために長短橈側手根伸筋の筋電位を検出した。近位から見た右前腕横断面の模式図を示す。
 ハンドを閉じるために検出する筋はどれか。

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

解答5

解説

 前腕筋電義手の電極の位置は、ハンドを開く際は手関節背屈群(伸展)に、ハンドを閉じる際は手関節掌屈群(屈曲)に設定する。

1.× ①深指屈筋であり、作用は第2~5指の両指節間関節の屈曲である。ちなみに、【起始】尺骨の内側面と前面、前腕骨間膜の一部、【停止】第2~5指末節骨底である。
2.× ②小指伸筋であり、作用は手関節の背屈、第5指の伸展である。ちなみに、【起始】上腕骨の外側上顆、総指伸筋の筋膜の尺側(小指伸筋筋膜)、【停止】第5指の指背腱膜である。
3.× ③長橈側手根伸筋であり、作用は手関節の背屈、橈屈である。ちなみに、【起始】上腕骨外側縁、外側上顆および外側上腕筋間中隔、【停止】第2中手骨底の背面橈側である。
4.× ④長掌筋であり、作用は手関節掌屈(屈筋)であるが、主な作用は手掌離膜に緊張を与えることである。また欠如している割合も一定数いる(日本人は約5%、欧米人は20%欠如している)。そのため、長掌筋をあえて選択することは少ない。ちなみに、【起始】上腕骨の内側上顆、前腕筋膜内面、【停止】手掌で手掌腱膜となる。
5.〇 正しい。⑤尺側手根屈筋であり、作用は手関節の掌屈、尺屈である。ちなみに、【起始】上腕頭:内側上顆と前腕筋膜、尺骨頭:肘頭から尺骨中部までの後縁、【停止】豆状骨、豆鉤靭帯、豆中手靭帯、有鉤骨、第5中手骨底である。

 

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