第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

 

26 切断の幻肢・幻肢痛について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.小児切断では幻肢痛が強い。
2.出現した幻肢は消失しない。
3.幻肢は近位部よりも遠位部を明確に感じる。
4.幻肢痛は精神的ストレスによって影響される。
5.ミラーセラピーは幻肢痛の軽減に効果がない。

解答3・4

解説
1.× 小児切断では幻肢痛が「強い」のではなく「弱い」。むしろ、4~6歳以下の小児切断の場合、知覚神経の発達が未熟であるため幻肢は出現しないといわれている。
2.× 出現した幻肢は「消失しない」のではなく「消失する」。残存することもあるが、多くの幻肢は6か月~2年で消失する。
3.〇 正しい。幻肢は近位部よりも遠位部を明確に感じる。指先やつま先などの先端を感じることが多い。
4.〇 正しい。幻肢痛は精神的ストレスによって影響される。心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法も用いられる。主に、バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動療法、経皮的電気神経刺激法(TENS)などである。
5.× ミラーセラピーは幻肢痛の軽減に効果がある。他にも、脳卒中患者の麻痺改善や複合性局所性疼痛症候群、腕神経叢引き抜き損傷患者の疼痛軽減効果などが報告されている。ちなみに、ミラーセラピー(mirror therapy)とは、鏡を使用して運動の視覚フィードバックを与える治療法である。矢状面で両肢間に鏡を設置し、鏡に映された一側肢が鏡に隠れた反対側肢の位置と重なるようにする。切断や麻痺などの患側肢の遠位部に健側肢の映った鏡像がつながって見えることで、患側肢が健常な実像であるかのように感じさせながら運動を行う。

幻肢・幻肢痛の特徴

①下肢より上肢、近位部より遠位部に多い。
②幻肢は、6か月~2年で消失することが多い。
③幻肢の大きさは健肢とほぼ同様。
④4~6歳以下の小児切断例では出現しない。
⑤幻肢痛は天候や精神的ストレスに左右される。
⑥幻肢は断端の運動につれて移動する。
⑦幻聴・幻肢痛は断場の状態(神経や癒着など)に関連を持つ場合がある。

※幻視痛は、心因性の要素が関係するため薬物療法以外の治療法 (バイオフィードバック、リラクセーション訓練、認知行動族法、経皮的電気神経刺激法【TENS】 など)も用いられる。

 

 

 

 

 

 

27 坐骨部褥瘡の既往がある脊髄損傷者の車椅子座位の対応で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.アームサポートを通常よりも低くする。
2.フットサポートを通常よりも高くする。
3.移乗前にクッションのしわをのばす。
4.定期的に前屈み姿勢を取らせる。
5.リクライニングを禁止する。

解答3・4

解説
1~2.× アームサポートを通常よりも低く/高くする優先度は低い。なぜなら、アームサポートの高さが適切でないと、除圧動作が行いにくいため。また、坐骨に圧が集中し、褥瘡再発のおそれがある。
3.〇 正しい。移乗前にクッションのしわをのばす。なぜなら、しわがあることで特定の部位に圧がかかりやすいため。
4.〇 正しい。定期的に前屈み姿勢を取らせる。なぜなら、定期的に前屈みになることで、坐骨への圧を軽減することができるため。
5.× リクライニングを禁止する優先度は低い。なぜなら、リクライニングを行うことで、坐骨への圧を軽減できるため。

褥瘡の予防

①一般に2時間ごとに体位変換を行うことが基本とされる。
②30°側臥位では体圧を分散させ身体を支えることができる。
③ベッドのキャッチアップは30°まで。
④予防にマッサージは効果的。ただし、骨突出部・突起部や発赤があるところには(摩擦を加えてしまうため)行わない。
⑤円座は接触部分が逆に圧迫されてしまい褥瘡の誘因となる。

 

 

 

 

 

 

28 筋萎縮性側索硬化症でみられる機能障害はどれか。2つ選べ。

1.知能障害
2.視野障害
3.嚥下障害
4.呼吸障害
5.感覚障害

解答3・4

解説

筋萎縮性側索硬化症とは?

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロン障害、下位運動ニューロン障害の両者を示す疾患である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

1~2.5.× 知能障害/視野障害/感覚障害は、筋萎縮性側索硬化症でみられにくい。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、上位運動ニューロン障害、下位運動ニューロン障害の両者を示す疾患である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
3~4.〇 正しい。嚥下障害/呼吸障害は、筋萎縮性側索硬化症でみられる。

 

 

 

 

 

 

29 アテトーゼ型脳性麻痺児の症状と訓練課題との組合せで適切なのはどれか。

1.定頸不良:背臥位で下肢を挙上する。
2.体幹過伸展:座面の高い椅子で座位を保持する。
3.手指の過伸展:豆をつまむ。
4.目と手の協調障害:ボールプールで遊ぶ。
5.動的パランス不良:セラピーボールに乗って揺らす。

解答

解説

アテトーゼ型脳性麻痺とは?

 アテトーゼ型は、麻痺の程度に関係なく四肢麻痺であるが上肢に麻痺が強い特徴を持つ。錐体外路障害により動揺性の筋緊張を示す。筋緊張は低緊張と過緊張のどちらにも変化する。他にも、特徴として不随意運動が主体であることや、原始反射・姿勢反射が残存しやすいことがあげられる。

1.× 定頸不良に対し、背臥位で下肢を挙上する訓練の優先度は低い。なぜなら、より頭部の伸展筋が緊張を助長させるため。腹臥位で頭部を挙上することで頭部の伸展筋をストレッチするとよい。アテトーゼ型脳性麻痺児は姿勢筋緊張の動揺がみられ、姿勢や運動のコントロールが不良である。 リラクセーションで過緊張を取りながら、随意的な運動や反応を引き出す方法を模索する。
2.× 体幹過伸展に対し、座面の高い椅子で座位を保持する訓練の優先度は低い。なぜなら、より体幹の過伸展を助長させるため。体幹はなるべく垂直に保った状態(股関節・膝関節90°屈曲位)で座位訓練を行う。
3.× 手指の過伸展に対し、豆をつまむ訓練の優先度は低い。なぜなら、つまみ動作は難易度が高すぎるため。ちなみに、手指の過伸展に対しては、ビンの蓋の開け閉めなどの訓練のほうが有効である。
4.× 目と手の協調障害に対し、ボールプールで遊ぶ訓練の優先度は低い。なぜなら、主にボールプールは触覚刺激として感覚統合療法であるため。ちなみに、目と手の協調障害に対しては、ペグ差しの練習のほうが有効である。
5.〇 正しい。動的パランス不良に対し、セラピーボールに乗って揺らす訓練は有効である。セラピーボールに乗せて揺らして、立ち直り反応や平衡反応の誘発できる。

 

 

 

 

 

 

30 筋疾患と症状との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.皮膚筋炎:叩打ミオトニア
2.筋強直性ジストロフィー:有痛性強直性けいれん
3.肢帯型筋ジストロフィー:動揺性歩行
4.Becker型筋ジストロフィー:floppy infant
5.Duchenne型筋ジストロフィー:翼状肩甲

解答3・5

解説

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは?

多発性筋炎(皮膚筋炎)とは、膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と40~60歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。

1.× 叩打ミオトニアは、「皮膚筋炎」ではなく「筋強直性ジストロフィー」である。ちなみに、ミオトニア(筋強直現象)とは、例えば、手をぎゅっと強く握ると、その直後に手を開くことが難しくなったり(把握ミオトニア)、診察用のハンマー(打鍵器)で舌や親指の付け根(母指球)を叩くと、筋肉が収縮して勝手に動いてしまったり(叩打ミオトニア)のことである。
2.× 有痛性強直性けいれんは、「筋強直性ジストロフィー」ではなく「多発性硬化症」である。有痛性強直性けいれんとは、自動的あるいは他動的に関節を動かす刺激が発作を誘発し、痛みやしびれを伴って四肢が強直発作を示すものである。
3.〇 正しい。動揺性歩行は、「肢帯型筋ジストロフィーやDuchenne型筋ジストロフィー」である。両側の障害で、左右に体幹をゆすって歩く動揺性歩行となる。
4.× floppy infantは、「Becker型筋ジストロフィー」ではなく「進行性筋ジストロフィーや筋強直性ジストロフィー」である。Becker(ベッカー)型筋ジストロフィーは5歳~25歳くらいに発症し、進行はゆっくりで生命予後は良い。フロッピーインファント(floppy infant )とは、全身の筋緊張が極度に低下し、やわらかで、だらりとしている乳幼児をさす用語である。Scarf徴候(スカーフ徴候)やfrog position(蛙様肢位)はその所見である。原因としては、脳性麻痺や染色体異常などの中枢神経障害のほか、脊髄前角細胞障害(脊髄性筋萎縮症など)、筋に原因がある場合(重症筋無力症、筋ジストロフィー)、代謝異常の場合(糖原病など)がある。
5.〇 正しい。翼状肩甲は、「Duchenne型筋ジストロフィー」である。翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺や三角筋拘縮(短縮)症でみられる。過去問より肩甲背神経、長胸神経の両方を選択する問題があったため、両方を正解と考えても良さそうであるが、一般的であるのは長胸神経の障害である。

 

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