第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 片麻痺患者の車椅子移乗動作訓練に用いる課題と学習機序との組合せで正しいのはどれか。

1.速度を変えた立ち上がり動作訓練:プライミング効果
2.片麻痺患者の移乗動作のビデオ視聴:転移
3.肘台を想定した方向へのリーチ動作訓練:内的焦点
4.絵カードを用いた移乗動作順序の課題分析:チャンク化
5.骨盤を手すりへ誘導した非麻痺側荷重訓練:多様練習

解答

解説
1.× 速度を変えた立ち上がり動作訓練は、プライミング効果とはいえない。プライミング(入れ知恵記憶)は、「大脳皮質」が主に関与する。プライミング記憶(入れ知恵記憶)とは、以前に入力された情報が無意識に記憶され、その後の認識などの脳機能に影響を与える記憶のことをいう。例えば、「じゃんけん」という文字を事前に見ていれば、「じ〇〇けん」という穴埋めを見たときに、「じゃんけん」と想起しすい。
2.× 片麻痺患者の移乗動作のビデオ視聴は、転移とはいえない。転移とは、患者のこれまでの人生の中の重要人物に対する感情を治療者に向けることをいう。好ましい感情を抱くことを陽性転移、ネガティブな感情を抱くことを陰性転移という。以前行った学習が後で行う学習に影響を及ぼすことも転移といえ、例えば、一側の上下肢で行った学習が、対側にも影響を及ぼすことをいう。
3.× 肘台を想定した方向へのリーチ動作訓練は、「内的焦点」ではなく「外的焦点」である。内的焦点とは、自分の内部に注意を向ける(身体の部位や重心に意識を置く)ことである。また、外的焦点とは、外部の対象に注意を向ける(身体の外側に意識を置く)ことである。
4.〇 正しい。絵カードを用いた移乗動作順序の課題分析はチャンク化である。チャンク化とは、数個の内容を1つのかたまりとしてまとめることをいう。たとえば、何桁もある数字を、6個か7個ずつかたまりにして覚えると、ある程度の桁数ならば覚えることができる。この場合はある一連の動作を絵カードにして覚えることをいい、 チャンク化の一例である。
5.× 骨盤を手すりへ誘導した非麻痺側荷重訓練は、多様練習とはいえない。多様練習とは、一連の動作を多様な方法で練習することである。(例、リハ室のベッドや病棟のベッドなどベッドを変えての移乗練習)ある動作を身につけるために、たとえば、単純にある1つの関節だけを動かす練習ではなく、その関節を含めた一連の動作を行う訓練をいう。

 

 

 

 

 

 

 

22 Danielsらの徒手筋力テストについて正しいのはどれか。2つ選べ。

1.検査しようとする筋の筋腹を押さえると、正確な筋力を測定できない。
2.運動の開始位置から最終肢位まで抵抗をかけ続ける方法を抑止テストという。
3.MP関節伸展のはね返り運動でMP関節屈曲ができれば段階1(Trace)である。
4.大腿骨幹部切断者の股関節外転で最大抵抗に抗することができれば段階4(Good)である。
5.関節可動域に制限がある場合、最大抵抗に抗することができれば段階4(Good)である。

解答1・4

解説
1.〇 正しい。検査しようとする筋の筋腹を押さえると、正確な筋力を測定できない。なぜなら、筋の筋腹を押さえると緊張が変化し最大筋力を発揮できないため。
2.× 運動の開始位置から最終肢位まで抵抗をかけ続ける方法を「抑止テスト」ではなく「抵抗自動運動テスト」という。ちなみに、抑止テストとは、最終運動域の状態から抵抗をかけるテストのことである。
3.× MP関節伸展のはね返り運動でMP関節屈曲ができれば段階1(Trace)であるとはいえない。なぜなら、MP関節伸展のはね返り運動は代償動作であるため。はね返り運動とは、反対方向への運動を勢いよく行うことで狙いの運動方向へ関節を動かすことをいう。
4.〇 正しい。大腿骨幹部切断者の股関節外転で最大抵抗に抗することができれば段階4(Good)である。なぜなら、切断されていることで、てこの柄(モーメントアーム)が短く、通常より弱い抵抗を加えることしかできないため。
5.× 関節可動域に制限がある場合、最大抵抗に抗することができれば「段階4(Good)」ではなく「段階5 (Normal)」である。

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23 片麻痺でみられる連合反応で正しいのはどれか。

1.連合反応を誘発する運動が単関節運動であれば、連合反応も単関節に起こる。
2.非麻痺肢の運動を中止すると、同時に非麻痺肢の連合反応は消退する。
3.麻痺肢に共同運動が出現すると連合反応はみられなくなる。
4.非麻痺側上肢の屈曲は麻痺側上肢の伸展を誘発しやすい。
5.立ち上がり動作において連合反応を観察できる。

解答

解説

連合反応とは

連合反応とは、身体の一部の運動が、身体他部の運動を不随意的に引き起こすような現象のことである。非麻痺側の筋を強い力で働かせると麻痺側に筋収縮が起こり、麻痺側にも関節運動が生じたり筋緊張が高まったりすることをいう。連合反応は、把握動作や等尺性収縮を要する動作、全身の大きな動きを必要とする起居動作など、努力を要する動作を行った際に誘発されやすい。

一方、共同運動とは、発病の当初は随意性を喪失しているものをさす。やがて、肩・肘・手指全体を生理学的な屈曲あるいは伸展方向に同時にのみ動かせる運動ができる。

1.× 連合反応を誘発する運動が単関節運動であっても、連合反応は「単関節」ではなく「複数の関節」に起こる。つまり、共同運動またはその一部で起こることが多い。
2.× 非麻痺肢の運動を中止しても、「同時に(すぐに)」非麻痺肢の連合反応は消退するとはいえない。非麻痺肢の運動を中止しても、筋緊張が高まったままの場合が多い。
3.× 麻痺肢に共同運動が出現しても、連合反応はみられる。なぜなら、共同運動が出現するのはBrunnstrom法ステージⅡであり、ステージⅡからⅢに移行していくに従い、連合反応は強くなるため。
4.× 非麻痺側上肢の屈曲は、麻痺側上肢の「伸展」ではなく「屈曲」を誘発しやすい。なぜなら、上肢の連合反応は対称性であるため。
5.〇 正しい。立ち上がり動作において連合反応を観察できる。一方、下肢は、内外転・内外旋では対称性、屈伸では相反性(非麻痺側屈曲→麻痺側伸展)である。

 

 

 

 

 

24 高次脳機能障害と評価のための課題との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.知能:模写課題
2.注意:数唱課題
3.失行:抹消課題
4.遂行機能:迷路課題
5.短期記憶:鏡映描写課題

解答2・4

解説
1.× 模写課題は、「知能」ではなく「半側空間無視」である。知能検査は、コース立方体組み合わせテスト、WAIS-Ⅲ(ウェクスラー式の知能検査)などが挙げられる。
2.〇 正しい。数唱課題は、「注意」である。注意障害とは、必要に応じて特定の刺激に意識を向けることや、集中し続けることなどができなくなる障害である。前頭葉の損傷によって起こる。数唱課題では、数字の桁数が多くなるとミスが増える。
3.× 抹消課題は、「失行」ではなく「半側空間無視注意」である。抹消課題とは、2cmほどの線分がランダムに多数並んだ用紙を提示し、「すべての線分に鉛筆で印を付けて下さい」と指示するものである。
4.〇 正しい。迷路課題は、「遂行機能」である。 遂行機能とは、ある目的を達成するための一連の行為を手際よく行う能力のことである。検査には、遂行機能症候群行動評価(BADS)やウィスコンシンカード分類検査(WCST)などがあげられる。
5.× 鏡映描写課題は、「短期記憶」ではなく「学習の転移や手続き記憶の評価」である。鏡映描写課題とは、鏡に映った文字や図形を紙になぞって描く課題である。

 

 

 

 

 

 

25 関節リウマチの活動性を反映する血液検査項目はどれか。

1.CK
2.CRP
3.尿素窒素
4.アミラーゼ
5.アルブミン

解答

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× CK(血清クレアチンキナーゼ)は、筋肉の障害の評価として有用である。心筋炎、心外膜炎、進行性筋ジストロフィー、多発性筋炎などにより上昇する。
2.〇 正しい。CRPは、関節リウマチの活動性を反映する血液検査項目である。関節リウマチでは、赤沈・CRP・リウマトイド因子(RA-F)・抗CCP抗体などが高値となる。
3.× 尿素窒素(BUN)は、腎機能の評価として有用である。高値で急性腎臓病・慢性腎臓病・心不全などが疑われる。
4.× アミラーゼ(Amy)は、膵機能や唾液腺機能の評価として有用である。
5.× アルブミン(Alb)は、栄養状態の評価として有用である。アルブミンは肝臓で合成され、血漿中に最も多く含まれるたんぱく質である。血清アルブミンの血中半減期は、約15~21日であり、2~3週間前の静的栄養状態を示す。

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