第46回(H23) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 重度片麻痺患者に指導すべき動作方法はどれか。2つ選べ。

1.起き上がりは、非麻痺側に寝返ってから行う。
2.階段を上るときは、麻痺側下肢、非麻痺側下肢の順とする。
3.ズボンを脱ぐときは、麻痺側下肢、非麻痺側下肢の順とする。
4.立位から床に座るときは、非麻痺側上肢、同側膝の順に床につく。
5.エスカレーターから降りるときは、麻痺側下肢、非麻痺側下肢の順とする。

解答1・4

解説
1.〇 正しい。起き上がりは、非麻痺側に寝返ってから行う。
2.× 階段を上るときは、「麻痺側下肢、非麻痺側下肢」ではなく「非麻痺側下肢、麻痺側下肢」の順とする。一方で、下るときは「麻痺側下肢、非麻痺側下肢」の順で行う。
3.× ズボンを脱ぐときは、「麻痺側下肢、非麻痺側下肢」ではなく「非麻痺側下肢、麻痺側下肢」の順とする。一方で、履くときは「麻痺側下肢、非麻痺側下肢」の順で行う。
4.〇 正しい。立位から床に座るときは、「非麻痺側上肢、同側膝」の順に床につく。
5.× エスカレーターから降りるときは、「麻痺側下肢、非麻痺側下肢」ではなく「非麻痺側下肢、麻痺側下肢」の順とする。

 

 

 

 

 

 

32 中心性頸髄損傷について正しいのはどれか。(※不適切問題:解3つ)

1.若年層に多い。
2.褥瘡の危険性が高い。
3.脊柱の可動域は保たれる。
4.異常感覚を持つ患者が多い。
5.運動麻痺は上肢よりも下肢の方が重度である。

解答2・3・4

解説

中心性頚髄損傷とは?

中心性頚髄損傷とは、転倒などの頸椎の過伸展により発生する。したがって高齢者に多い。中心性とは脊髄の中心が主に受傷される。そのため、下肢よりも上肢の障害が優位となる。四肢麻痺、手指の巧緻性低下などの運動障害、強いしびれなどの感覚障害、膀胱直腸障害を呈する。

1.× 「若年層」ではなく「高齢者」に多い。なぜなら、転倒が受傷機転となるため。ほかにも、脊柱管の変形に伴う狭窄があることなどが要因としてあげられる。
2.〇 正しい。褥瘡の危険性が高い。なぜなら、四肢麻痺、手指の巧緻性低下などの運動障害、強いしびれなどの感覚障害、膀胱直腸障害を呈するため。
3.〇 正しい。脊柱の可動域は保たれる。なぜなら、脊柱管に大きな損傷がないため。下肢よりも上肢の障害が優位となる。
4.〇 正しい。異常感覚を持つ患者が多い。強いしびれなどの感覚障害のほか、頭部から上肢にかけての激しい痛み、しびれ、つっぱりなどの異常感覚を伴うことが多い。
5.× 逆である。運動麻痺は、「下肢」よりも「上肢」の方が重度である。経過・回復も上肢より下肢の方が早い。

 

 

 

 

 

33 慢性閉塞性肺疾患患者の入浴指導で適切なのはどれか。

1.両手で髪を洗う。
2.上肢は素早く洗う。
3.長い洗体タオルを使う。
4.座面の低い椅子に腰掛ける。
5.洗面器は床に置いて使用する。

解答

解説

慢性呼吸器疾患患者の入浴中のADL指導

酸素飽和度が低下しやすく息切れを呈しやすい動作の制限。

(前かがみの姿勢や両上肢の挙上、反復する動作、肩まで湯船につかるなど)

1.× 「両手」ではなく「片手」で髪を洗う。なぜなら、両手を挙上し、腰を前屈したポジションが最も呼吸困難を招きやすいため。
2.× 上肢は、「素早く」ではなく「ゆっくり」洗う。なぜなら、素早く洗うと呼吸困難感が伴いやすいため。また、吸気の妨げにならないように、呼気の時に動作を行う。
3.〇 正しい。長い洗体タオルを使う。なぜなら、短いタオルよりも長いタオルを使った方が呼吸苦は少ないため。ほかにも、短い洗体タオルだと上肢の運動が制限されるが、長い洗体タオルだと上肢をあまり動かさなくても洗うことができる。
4.× 「座面の低い椅子」ではなく、「ある程度高い椅子」に腰掛ける。なぜなら、座面の低い椅子は、前傾姿勢になりやすく呼吸苦が生じやすいため。
5.× 洗面器は、床に置かずに「洗顔できる高さに置いて」使用する。なぜなら、洗顔できる高さに置くことで、前傾姿勢にならずに顔を洗え、呼吸に負担がかかりにくいため。

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【共通問題のみ】呼吸器疾患(ADL・生理)についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

34 心筋梗塞の二次予防のための生活指導で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.禁煙
2.BMI目標値30以上
3.食塩摂取量12~14g/日
4.Borg指数15以上の運動
5.最大酸素摂取量50%程度の運動

解答1・5

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。(※健康日本21において)

1.〇 正しい。禁煙は、心筋梗塞の二次予防のための生活指導である。心筋梗塞の危険因子として、①身体的因子(高血圧・糖尿病・血清脂質異常・肥満など)と②生活習慣因子(喫煙・運動不足・飲酒など)があげられる。

2.× BMI目標値30以上は、高度の肥満であり目標にするには多すぎる。ちなみに、BMIの標準値は18.5~24.9である。
3.× 食塩摂取量12~14g/日は多すぎる。食塩摂取の目標値は男性:10g/日未満女性:8g/日未満である。高血圧患者では6g/日未満である。
4.× Borg指数15以上の運動は強すぎる。Borg指数は、11~13あたりが望ましい。Borg指数は、運動中の自覚症状をもとにした指標で、0~20に分けられ、0が最も軽く、20が最もきつい運動である。
5.〇 正しい。最大酸素摂取量50%程度の運動は、心筋梗塞の二次予防のための生活指導である。最大酸素摂取量50%程度の中等度の身体活動が、高血圧の治療と予防に有用であるとされている。(心筋梗塞の二次予防のガイドライン2010より)

心筋梗塞の危険因子

身体的因子:高血圧・糖尿病・血清脂質異常・肥満など。

生活習慣因子:喫煙・運動不足・飲酒など。

 

 

 

 

 

 

35 熱傷患者に対する作業療法で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.急性期には装具の適応がない。
2.肥厚性瘢痕部は圧迫を避ける。
3.患肢は挙上位にポジショニングする。
4.肉芽形成促進のために温浴療法を行う。
5.皮膚移植直後から移植部の伸張を行う。

解答3・4

解説
1.× 急性期に、装具の「適応がない」のではなく「適応となる」。急性期から装具で良肢位に保持する。なぜなら、拘縮予防のため。
2.× 肥厚性瘢痕部は圧迫を「避ける」のではなく「促す」。肥厚性瘢痕部は圧迫する(スポンジや弾性包帯などでの圧迫法)。肥厚性疲痕が顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮を来し、機能障害の原因となるため予防が必要である。
3.〇 正しい。患肢は挙上位にポジショニングする。なぜなら、患肢は浮腫予防のため。
4.〇 正しい。肉芽形成促進のために温浴療法を行う。なぜなら、温浴療法は浮腫の軽減や血行の促進するため。ちなみに、肉芽とは毛細血管に富んだ新生結合組織(幼若な結合組織)である。
5.× 移植部の伸張を行うのは、「皮膚移植直後から」ではなく「安静期間を経てから」である。植皮術後の安静期間は、採皮部で1~2日、植皮部で7~10日である。

 

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