第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午前問題1~5】

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※問題の引用:第56回理学療法士国家試験、第56回作業療法士国家試験の問題および正答について(厚生労働省HPより)

 

1 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で正しいのはどれか。2つ選べ。(2022年改定により不適切問題:解1つ)

解答2(5:改定により不適切

解説
1.× 母指橈側外転の【基本軸】示指(橈骨の延長上)、【移動軸】母指である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、運動は手掌面とする以下の手指の運動は、原則として手指の背側に角度計を当てる。設問の図の基本軸は、中指となっている。
2.〇 正しい。指外転の【基本軸】第3中手骨延長線、【移動軸】第2,4,5指軸である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、中指の運動は橈側外転、尺側外転とする。
3.× 胸腰部屈曲の【基本軸】仙骨後面、【移動軸】第一胸椎棘突起と第5腰椎棘突起を結ぶ線である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①体幹側面より行う。②立位、腰かけ座位または側臥位で行う。③股関節の運動が入らないように行う。
4.× 股関節屈曲の【基本軸】体幹と平行な線、【移動軸】大腿骨(大転子と大腿骨外果の中心を結ぶ線)である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、①骨盤と脊柱を十分に固定する、②屈曲は背臥位(膝屈曲位で行う)、③伸展は腹臥位(膝伸展位で行う)
5.×(改定により不適切) 足部外転の【基本軸】【移動軸】ともに、第2中足骨長軸である。ちなみに、【測定部位及び注意点】は、膝関節を屈曲位, 足関節を0度で行なう。

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2 筋萎縮性側索硬化症の機能的予後を示しているのはどれか。
 縦軸は機能、横軸は時間を示す。

解答1

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。筋萎縮性側索硬化症は、機能の低下が徐々に進行する。リハビリテーションにより、機能の低下を遅らせることができても、選択肢2~5のように向上できる疾患ではない。
2.× 再発と寛解を繰り返すパターンがみられるのは、多発性硬化症である。
3~4.× 筋萎縮性側索硬化症は、機能の低下が徐々に進行する。機能が著明に低下した後、自然経過で改善するパターンは、脳卒中骨折である。
5.× 筋萎縮性側索硬化症は、機能の低下が徐々に進行する。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

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3 25歳の男性。頸髄完全損傷。手指屈曲拘縮以外の関節可動域制限はない。書字の際のボールペンを把持した場面を下図に示す。
 片手では困難で、両手でボールペンを保持する動作が観察された。
 このような動作を行う頸髄損傷患者のZancolliの四肢麻痺上肢機能分類の最上位レベルはどれか。

1. C5A 
2. C6A
3. C6B3
4. C7A
5. C8B

解答2

解説

本症例のポイント

本症例は、両手を使用し、テノデーシスアクション(腱固定作用)を使用している。両手を使用して手関節の背屈させ、手指屈曲をさせている。つまり、手関節背屈・手指伸展、完全屈曲は不十分と考えられる。ちなみに、テノデーシスアクション(腱固定作用)とは、手関節を背屈させることにより指屈筋が伸展され、手指の受動的な屈曲を生み出すこと。

1.× C5Aは、肘関節屈曲が不十分(腕橈骨筋の収縮が困難)である。写真のように、肘関節屈曲位で保つ場合は、前腕回外位(上腕二頭筋優位)で行うことが多い。
2.〇 正しい。C6Aは最上位レベルである。C6Aは、肘関節屈曲が十分であるが、手関節背屈が不十分である。本症例は、両手を使用し、テノデーシスアクション(腱固定作用)を使用している。両手を使用して手関節の背屈させ、手指屈曲をさせている。つまり、手関節背屈・手指伸展、完全屈曲は不十分と考えられる。C6Aと一致する。C6Aは、手関節背屈が弱く、単独のテノデーシスアクション(腱固定作用)が利用できず、写真のように両手を利用してテノデーシスアクション(腱固定作用)を起こすのが特徴である。
3.× C6B3は、手関節背屈(円回内筋、橈側手根屈筋、上腕三頭筋の機能)が働くが、手指伸展は困難である。写真では、両上肢を利用して手関節背屈を補っている。
4.× C7Aは、尺側指完全伸展が可能なレベルである。写真では、手指の伸展はみられず、手指の屈曲制限が見られている。
5.× C8Bは、手指の完全屈曲が可能なレベルである。C8B残存している場合であれば、片手でボールペンを把持できる。

 

 

 

 

 

 

 

4 7歳の男児。Duchenne型筋ジストロフィーの患者で、下肢筋力が低下し、椅子からの立ち上がり、階段昇降ができない。手すりを利用し、5mほど歩行可能である。
 厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類のステージはどれか。

1. ステージⅡ
2. ステージⅢ
3. ステージⅣ
4. ステージⅤ
5. ステージⅥ

解答3

解説

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

1.× ステージⅡは、階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする。
2.× ステージⅢは、階段昇降不能、平地歩行可能、通常の高さのイスからの立ち上がり可能である。
3.〇 正しい。ステージⅣは、歩行可能、イスからの立ち上がり不能である。本症例の症状と合致する。
4.× ステージⅤは、歩行不能、四つ這い可能である。
5.× ステージⅥは、四つ這い不能だが、いざり移動可能である。

 

 

 

 

 

 

 

5 75歳の男性。糖尿病でインスリン療法中。胸部不快感で受診した。半年前と今回の心電図を下図に示す。
 今回発症したと考えられる病態はどれか。

1. 狭心症
2. 心筋梗塞
3. 心房細動
4. 房室ブロック
5. 心室性期外収縮

解答2

解説

本症例の心電図

半年前の心電図(心房細動):①QRS波が不規則、②基線が細かく波打つようであること

今回の心電図(心筋梗塞):ST上昇、異常Q波(Q波の幅が0.04秒以上、または、Q波の深さがR波の高さの1/4であることで判断できる)がみられている。

1.× 狭心症は、ST低下がみられる。
2.〇 正しい。心筋梗塞が、今回発症したと考えられる病態である。
3.× 心房細動は、半年前の心電図でみられている。特徴として、①QRS波が等間隔にならずに、不規則に現れること、②基線が細かく波打つようであることである。
4.× 房室ブロックの基線は直線的である。また、房室ブロックは、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型に分けられる。心電図では、PQ間隔の延長、QRS波の脱落、P波は明確などがみられる。
5.× 心室性期外収縮とは、本来の洞結節からの興奮より早く、心室で興奮が開始していることをいう。つまり、P波が認められず、幅広い変形したQRS波がみられる。

心筋梗塞とは?

心筋が壊死に陥った状態のこと。
心電図の特徴は、STの上昇である。
リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。

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