第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21 ICFで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.各構成要素は相互に関連している。
2.障害を有した人のみが対象である。
3.ICFコアセットでは全コードを評価する。
4.ライフスタイルは環境因子の1つである。
5.活動と参加の第一評価点は実行状況を表す。

解答1・5

解説

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICFは「特定の人々のためのもの」ではなく、「全ての人に関する分類」である。

1.〇 正しい。各構成要素は相互に関連している。否定的側面と肯定的側面を表す。
2.× 「障害を有した人のみ」が対象ではなく、「全ての人に関する分類」である。障害を「生活機能」というプラス面からみるように視点を転換した分類法である。
3.× ICFコアセットでは全コードを評価する必要はなく、使用目的別に使い分ける必要がある。
4.× ライフスタイルは「環境因子の1つ」ではなく、「個人因子」の1つである。
5.〇 正しい。活動と参加の第一評価点は、実行状況を表す。ちなみに、実行状況とは現在の環境における課題の遂行状況のことである。

ICFコアセットとは?

ICFコアセット」・・・各細分化されているICFのコードは1,500項目ほどにもなるため、健康状態全般や主な傷病の患者を評価しやすいように実用性を重視して必要な項目を抜粋したもの。

ICFコアセットの種類
①一般ICFコアセット(Generic ICF core sets:7項目からなる)
②包括的ICFコアセット(Comprehensive ICF core sets)
 特定の健康問題や特定の患者が直面している代表的な問題を全体的に反映するように項目が選定され、脳卒中用など30種類以上のコアセットが開発されている。
③短縮ICFコアセット(Brief ICF core sets)
 短縮ICFコアセットは包括的ICFコアセットをもとにつくられており、簡素な評価で十分である場面で用いられる。

 

 

 

 

 

 

22 対応がなく正規分布を示さない連続変数の3群間の差を検討するのに用いるのはどれか。

1.相関分析
2.分散分析
3.Paired-t検定
4.Kruskal-Wallis検定
5.Mann-WhitneyのU検定

解答

解説

検定とは?

 検定とは、統計学的手法を用いて、帰無仮説が正しいか、正しくないかを判断することである。

「検定の方法」

①パラメトリック検定(母集団が正規分布をするという仮説のもとに行う)
例:パラメトリック検定には、①t検定(2群の平均値の差を検定する)、②分散分析(3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する)などがある。

②ノンパラメトリック検定(母集団の分布にかかわらず用いることのできる)に大別される。
例:ノンパラメトリック検定には、①Mann-Whitney検定(2群の中央値の差を検定する)、②X2検定(割合の違いを求める)、③Wilcoxon符号付順位検定(一対の標本による中央値の差を検定する)などがある。

1.× 相関分析は、2変数間の関係を数値で表す方法であり、パラメトリックな手法である。
2.× 分散分析は、正規分布している3群以上の平均値に差があるかどうかを検定する。全てパラメトリック検定である。
3.× Paired-t検定(ペアード・ティーテスト、対応のあるt検定)は、パラメトリック検定であり、関連2群比較法である。治療前後の検査値の比較など2群間で変数同士が対応している場合の平均値の差を検定する。
4.〇 正しい。Kruskal-Wallis検定(クラスカル・ウォリス検定)は、ノンパラメトリック検定であり、対応のない3つ以上のグルーブを調べたい時に用いる。
5.× Mann-WhitneyのU検定(マン・ホイットニーのU検定)は、ノンパラメトリック検定であり、独立2群比較法である。2群をひとまとめにして順位をつけ、群別の順位の和を比較する検定である。2群間の比較で、正規性が確認されない場合に用いられる。

 

 

 

 

 

 

23 随意運動について正しいのはどれか。

1.γ運動ニューロンは、随意的な筋収縮の命令を直接筋肉に伝える。
2.一次運動野では、巧級な動きを必要とする手の領域が小さい。
3.Betzの巨大錐体細胞は、補足運動野のⅤ層に存在する。
4.小脳は、運動をスムーズにする役割を担っている。
5.放線冠の障害で、錐体外路症状が出現する。

解答

解説
1.× γ運動ニューロンは、錘内筋線維の両端を支配しており、筋紡錘が正常に働くように調節する機能がある。ちなみに、随意的な筋収縮の命令を直接筋肉に伝えるのは、α運動ニューロンである。
2.× 一次運動野では、巧級な動きを必要とする手の領域は大きい。penfield(ペンフィールド)脳地図では、顔面や手指といった巧緻な運動が可能な部位ほど、脳運動野に占める面積は大きい。
3.× Betzの巨大錐体細胞は、「補足運動野」ではなく、「一次運動野のV層(内錐体細胞層)」に存在する。Betzの巨大錐体細胞から出た神経線維が下降して随意運動を司る錐体路となる。上位運動ニューロンは、一次運動野のBetz細胞から始まる。ちなみに、補足運動野は自発的に一連の運動をプログラムする。
4.〇 正しい。小脳は、運動をスムーズにする役割を担っている。
5.× 放線冠の障害では、「錐体外路症状」ではなく、錐体路障害が出現する。錐体路(大脳皮質運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→延髄→(錐体交叉)→脊髄側索→脊髄前核細胞)の障害で、対側の運動麻痺などの症状を生じる。

 

詳しく勉強したい方はこちら↓

【PT/共通】骨格筋、筋収縮、運動単位についての問題「まとめ・解説」
【PT/共通】伸張反射、筋紡錘、H波などの問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

24 正常な歩行周期とその説明の組合せで正しいのはどれか。

1.右立脚中期:右踵接地から左爪先離地まで
2.右立脚終期:左踵離地から右踵離地まで
3.右前遊脚期:左踵接地から右爪先離地まで
4.右遊脚中期:右爪先離地から右足部が左下腿部を通過するまで
5.右遊脚終期:右足部が左下腿部を通過してから右下腿が垂直になるまで

解答

解説

(※画像引用:イラストやAC様HP)

1.× 右立脚中期:「右踵接地から左爪先離地まで」ではなく、「右足底接地から左遊脚中期まで」である。右立脚中期は、右足視点で見とると「右足底接地から右下腿が垂直になるまで」であり、左足視点でみると、「左爪先離地から左遊脚中期まで」である。
2.× 右立脚終期:「左踵離地から右踵離地まで」ではなく、「左遊脚中期から右踵離地まで」である。右立脚終期は、右足視点で見とると「右下腿が垂直な状態から右踵離地まで」であり、左足視点でみると「左遊脚中期から左減速期まで」である。
3.〇 正しい。右前遊脚期:「左踵接地から右爪先離地まで」である。
4.× 右遊脚中期:「右爪先離地から右足部が左下腿部を通過するまで」ではなく、「右加速期から右遊脚中期まで」である。ちなみに、そのときを左足視点でみると「左足底接地から左立脚中期まで」である。
5.× 右遊脚終期:「右足部が左下腿部を通過してから右下腿が垂直になるまで」ではなく、「右遊脚中期から右減速期まで」である。ちなみに、そのときを左足視点でみると「左下腿が垂直な状態から左踵離地まで」である。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

類似問題です↓
【PT専門】歩行周期についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

25 CRPS〈複合性局所疼痛症候群〉のtypeⅠに認められずtypeⅡに認められるのはどれか。

1.骨萎縮
2.痛覚過敏
3.発汗異常
4.皮膚温異常
5.末梢神経伝導検査異常

解答

解説

CRPSとは?

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して,当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として、自律神経性の変化(例:発汗、血管運動異常)、運動機能の変化(例:筋力低下、ジストニア)、萎縮性の変化(例:皮膚または骨萎縮、脱毛、関節拘縮)などがみられる。

1.× 骨萎縮は、typeⅠに認められる。骨折などの外傷後や手術後などに急速に自発痛、運動痛、浮腫とともに発症し、著明な骨萎縮 (6週以降)を来す場合がある。軟部組織もしくは骨損傷後などの外傷を契機とした交感神経の異常で、反射性交感神経性ジストロフィーによるものとされている。
2~4.× 痛覚過敏/発汗異常/皮膚温異常は、CRPS〈複合性局所疼痛症候群〉の両タイプに認められる
5.〇 正しい。末梢神経伝導検査異常は、typeⅠに認められずtypeⅡに認められる。なぜなら、Ⅱ型(カウザルギー)は神経損傷後が契機となり起こるため。ちなみに、複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、神経伝導検査や筋電図検査を行い、痛みの原因が筋肉にあるのか神経にあるのかを判断するのに役立てる。

※)国際疼痛学会 (IASP)は、CRPSを症状で分類すると両者の区別がつきにくいという理由で、2005年に type Ⅰ・Ⅱの区別をなくして、単にCRPS とよぶことを提唱している。

 

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