第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午後問題46~50】

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46 8歳の脳性麻痺児が階段昇降時に手すりを必要とし、長距離の歩行や狭い場所を歩くときに介助が必要な場合、GMFCS-Expanded and Revised (E&R)のレベルはどれか。

1.レベルⅠ
2.レベルⅡ
3.レベルⅢ
4.レベルⅣ
5.レベルⅤ

解答
解説

 GMFCS-Expanded and Revised (E&R)は、粗大運動能力分類システム拡張・改訂されたものである。以下に、各レベルのせた。本症例は、階段昇降時に手すりを必要とし、長距離の歩行や狭い場所を歩くときに介助が必要な場合(言い換えると、短い歩行や広い場所は介助も歩行補助具も使用せず歩行できる)ので、選択肢2.レベルⅡ(制限を伴って歩く)が正しい。

MEMO

【それぞれレベルの大きな見出し】
レベルⅠ:制限なしに歩く
レベルⅡ:制限を伴って歩く
レベルⅢ:手に持つ移動器具を使用して歩く
レベルⅣ:制限を伴って自力移動;電動の移動手段を使用しても良い
レベルⅤ:手動車椅子で移送される

【各レベル間の区別】
• レベル I および II の区別
レベル I の子ども達と青年達に比べて、レベル II の子ども達と青年は、長距離を歩くことやバランスを保つことに制限があり、歩行を習得する最初の頃に手に持つ移動手段を必要とすることがあり、屋外や近隣で長い距離を移動するときに車輪のついた移動手段を使用することがあり、階段を上がったり、下りたりする時に手すりの使用を必要とし、走ったり跳躍したりする能力が劣っている。

• レベル II および III の区別
レベルⅡの子ども達と青年達は、4 歳以降は手に持つ移動器具を使用せずに歩く能力がある(時には使用することを選択するかもしれないが)。レベルⅢの子ども達と青年達は、屋内を歩くために手に持つ移動器具を必要とし、屋外や近隣で車輪のついた移動手段を使用する。

• レベル III および IV の区別
レベルⅢの子ども達と青年達は、一人で坐るか、坐るために最低限の限定的な外的支持を必要としている、立位での移乗においてより自立しており、手に持つ移動器具で歩く。レベルⅣの子ども達と青年達は、(普通支えられての)坐位で活動できるが、自力移動は制限される。レベルⅣの子ども達と青年達は、手動車椅子で移送されるか、電動の移動手段を使用することがおそらくより多い。

• レベル IV および V の区別
レベルⅤの子ども達と青年達は、頭と体幹のコントロールが非常に制限されており、広範な補完的な技術と身体的介助を必要とする。自力移動は、もし子ども達や青年達がどのように電動車椅子を操作するかを習得した時だけに、達成される。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

理学療法士国家試験 GMFCSについての問題4選「まとめ・解説」
理学療法士国家試験 脳性麻痺についての問題9選「まとめ・解説」

 

 

 

47 人工呼吸器装着患者の理学療法で適切でないのはどれか。

1.離床はベッドアップ60°までとする。
2.体位変換を行い気道内分泌物の移動を促す。
3.気管内吸引時は陰圧をかけずに吸引カテーテルを挿入する。
4.気管内吸引に使用するカテーテルは滅菌したものを使用する。
5.会話が不可能なため患者が自分のニーズを伝えられるように援助する。

解答
解説
1.× 離床はベッドアップ60°までとする必要はない。むしろ、人工呼吸器装着患者には離床を勧めることが多い。ちなみに、離床(座位トレーニング)に制限がある場合は、①意識レベルがJCS:2~3桁、②全身状態が不安定、③麻痺などの症状増悪があるなどである。また、日本集中治療医学会の「集中治療における早期リハビリテーション ~根拠に基づくエキスパートコンセンサス~」によれば、集中治療室での挿管下人工呼吸患者に対する早期離床や早期からの積極的な運動は、セッションの中断、旧得な身体への悪影響や有害事象は極めて少なく、安全に実施可能であるとされている。相関下や各種のカテーテルが使用されていてもそれは運動や離床の阻害因子となり得ないとも述べている。さらに近年では、体外式膜型人工肺装着下においても早期離床や運動を実施した例が報告されている。
2.〇 正しい。体位変換を行い気道内分泌物の移動を促す(体位排痰法)。なぜなら、人工呼吸器によって換気は保たれていても、分泌物が身体下部に貯留するため。
3.〇 正しい。気管内吸引時は陰圧をかけずに吸引カテーテルを挿入する。吸引操作や戻すときは、陰圧をかけながらゆっくり行う。なぜなら、粘膜を傷つけないため。
4.〇 正しい。気管内吸引に使用するカテーテルは滅菌したものを使用する。1回吸引ごとにカテーテル外側をアルコール綿でふき取る。なぜなら、内腔の分泌物をできる限り除去してから次の吸引を行うことが推奨されているため。
5.〇 正しい。会話が不可能なため患者が自分のニーズを伝えられるように援助する。人工呼吸器装着中の患者は、コミュニケーションがとりにくくストレスが溜まりやすい。YES/NO(うなずき)や唇の動き、コミュニケーションボードの使用など使っても、細かいニーズまで伝えられないができるだけ援助していくことが必要である。

 

 

 

48 歩行(80m/分)に相当する運動強度に最も近いのはどれか。

1. 1.5METs
2. 3.5METs
3. 5.0METs
4. 6.0METs
5. 7.0METs

解答
解説

METsとは?

METsは安静座位での体重1㎏当たりが1分間に消費する酸素量を基準(1METs)としている。

1METs = 3.5mL/kg/分

1.× 1.5METsは、ゆっくりとした歩行(1~2㎞/h)である。
2.〇 正しい。3.5METsは、普通の歩行である。歩行(80 m/分)の速さは、約4.8㎞/時(80m×60分=4800m)である。
3.× 5.0METsは、やや早めの歩行(5㎞/h)である。
4.× 6.0METsは、ゆっくりとしたジョギング(5~㎞/h)である。
5.× 7.0METsは、ジョギング(8㎞/h)である。

(※参考:『身体活動のメッツ(METs)表』国立健康・栄養研究所様HPより)

 

 

 

 

49 障害者総合支援法に基づくサービスのうち、介護給付にあたるのはどれか。

1.補装具
2.相談支援
3.自立生活援助
4.グループホーム
5.ホームヘルプサービス

解答
解説

 障害者総合支援法による総合的な支援の詳細は、以下の図を見てください。障害者総合支援法によるサービスは、介護給付や訓練等給付などを行う自立支援給付と、相談支援などを行う地域生活支援事業がある。介護給付は介護が必要な障害者・児に対し、ニーズに合った支援・援助を行う。

(※図引用:「障害者総合支援法の給付・事業」厚生労働省HPより)

1.× 補装具は、補装具としての給付にあたる。
2.× 相談支援は、地域生活支援事業にあたる。
3.4× 自立生活援助・グループホームは、訓練等給付である。
5.〇 正しい。ホームヘルプサービスは、介護給付にあたる。ホームヘルプサービスは訪問介護のことである。

 

 

 

50 訪問リハビリテーションで正しいのはどれか。

1.日常生活の自立支援を目的とする。
2.通所介護(デイサービス)との併用はできない。
3.事業所には理学療法士を配置しなければならない。
4.通所リハビリテーションよりも優先的に利用される。
5.事業所にはリハビリテーションを実施するスペースが必要である。

解答
解説

 訪問リハビリテーションとは、病院、診療所、介護老人保健施設の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、心身の機能の維持・回復、日常生活の自立を支援するために、理学療法、作業療法等のリハビリテーションを行うサービスである。よって、選択肢1.日常生活の自立支援を目的とすることが正しい。

2.× 通所介護(デイサービス)との併用は「できない」のではなくできる。通所介護(デイサービス)とは、ゲームなどのレクリエーションや食事、入浴などの中で機能訓練を行う場所である。介護保険で受けることができる。利用者のニーズに適応したサービスを総合的・計画的に提供する観点からケアプランが作成され、訪問・通所・短期入所などの居宅サービスは併用できる。
3.× 事業所には、理学療法士を配置しなければならない規定はないが、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のいずれかの職種を適当数配置する必要がある。 また、事業所としての医師の配置は規定されていないが、訪問リハビリテーション事業所は病院、診療所または介護老人保健施設であるため、運営上、医師の関与が前提とされている。
4.× 訪問リハビリテーションより、通所リハビリテーションの方が優先的に利用される。訪問リハビリテーション費は「通院が困難な利用者」に対して給付することとされているが、通所リハビリテーションのみでは、家屋内におけるADLの自立が困難である場合の家屋状況の確認を含めた訪問リハビリテーションの提供など、ケアマネジメントの結果、必要と判断された場合は訪問リハビリテーション費を算定できるものである。「通院が困難な利用者」の趣旨は、通院により、同様のサービスが担保されるのであれば、通所系サービスを優先すべきということである。
5.× 事業所にはリハビリテーションを実施するスペースは必要ない。なぜなら、リハビリテーション専門職が居宅を訪問して行うため。基準として、病院、診療所又は介護老人保健施設であること。指定訪問リハビリテーションに必要な設備及び備品等を備えているもの。が必要である。

 

5 COMMENTS

匿名

コメントを失礼します。
午後47についての質問です。選択肢1の解説で、
「なぜなら、本症例の意識レベルがJCS1桁である、全身状態が安定している、麻痺などの症状増悪がないなどの場合であるため。」
とありますが、これはどこから読み取った事なのでしょうか?
問題文には、症例についての上記のような情報はひとつも書いていないと思うのですが、どこからそう考えたかを知りたいです。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
言い訳させていただくと、おねむで文章崩壊しておりました(/_;)笑
正しくは、離床(座位トレーニング)に制限がある場合は、①意識レベルがJCS:2~3桁、②全身状態が不安定、③麻痺などの症状増悪があるなどであると書きたかった模様です。
解説丸ごと修正しましたので、ご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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