第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午後問題41~45】

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41 筋力増強運動について正しいのはどれか。

1.等尺性筋力増強運動では1回あたり20~30秒間以上の収縮が必要である。
2.筋力を維持するためには最大筋力の70~80%以上の抵抗が必要である。
3.目的としていない筋に代償運動が起こる方がよい。
4.等速性筋力増強運動では重錘ベルトを使用する。
5.等尺性筋収縮では血圧上昇に留意する。

解答
解説
1.× 等尺性筋力増強運動では、負荷量も大切である。最大筋力で2~3秒、40~50%の強度であれば15~20秒の筋収縮が必要である。つまり、1回あたり「20~30秒間以上だけ」ではなく、負荷量の設定が必要である。
2.× 筋力を維持するためには、最大筋力の「70~80%以上」ではなく、20~30%以上必要である。一方、筋力増強の場合、最大筋力の2/3(66%)の抵抗が必要である。
3.× 目的としていない筋に代償運動が起こるのは良くない。なぜなら、目的の筋に正確にアプローチできないためである。トレーニング効果は減少する。
4.× 等速性筋力増強運動とは、運動速度が一定な筋収縮様態である。日常の生活では生じにくい。重錘ベルトでは行えず、各速度を一定に保つことのできる装置(バイオデックスシステム、等速性筋力評価装置など)を使用する。
5.〇 正しい。等尺性筋収縮では血圧上昇に留意する。なぜなら、毛細血管圧迫による血流遮断が起こるためである。

 

 

 

42 骨折により骨壊死を起こしやすいのはどれか。

1.距骨
2.踵骨
3.中間楔状骨
4.内側楔状骨
5.立方骨

解答
解説

骨壊死とは?

 骨壊死には①症候性(外傷や塞栓症などによる血流途絶が原因)と②特発性(明らかな誘因がない阻血性壊死)がある。血行不良のため骨折後の再生が困難となる。以下に、症候性骨壊死が生じやすい部位をまとめた。

症候性骨壊死が生じやすい部位:①上腕骨解剖頸、②舟状骨、③大腿骨頸部、④大腿骨顆部、⑤距骨

 したがって、選択肢1.距骨が正しい。距骨表面の75%は関節軟骨で覆われているため、骨折で血行障害となり、壊死・偽関節・関節症性変化による機能障害を残すことが多い。距骨頸部骨折では、距骨体部の阻血性壊死が起こりやすい。

 

 

 

43 腰椎変性すべり症で歩行中に殿部から下肢にかけて疼痛が出現したときの対応で正しいのはどれか。

1.しゃがみこむ。
2.速度を速めて歩き続ける。
3.速度を遅くして歩き続ける。
4.立ち止まって体幹を伸展する。
5.立ち止まって体幹を左右に回旋する。

解答
解説

 腰椎変性すべり症は、腰部脊柱管狭窄症と同じような症状が出る。腰椎変性すべり症は、変性による椎間板や椎間関節の不安定性により、椎体が前方に転位する疾患である。間欠跛行が特徴的である。ヘルニアは病態から、前かがみになると痛みが増強するが、腰部脊柱管狭窄症は前かがみになると楽になる。

1.〇 正しい。しゃがみこむことで、前かがみとなり症状が楽になる。なぜなら、脊柱管は腰部で生理的に前弯しており、前屈により狭窄は軽減するため。
2~5.× 各選択肢(速度を速めて歩き続ける。速度を遅くして歩き続ける。立ち止まって体幹を伸展する。立ち止まって体幹を左右に回旋する。)は、いずれも症状の緩解とはならない。

 

 

 

44 急性期脳血管障害に対して、積極的に離床を行ってもよいのはどの場合か。

1.JCS3桁
2.重度な運動麻痺
3.神経症状の増悪
4.収縮期血圧220 mmHg
5.重篤な全身性合併症

解答
解説

離床開始基準(座位訓練、立位訓練など)

・JCS:1桁であること
・運動の禁忌となる心疾患や全身合併症がないこと
・主幹動脈閉塞および脳出血では神経症状の増悪がないなど。
→ただし、グレードC1(十分な科学的根拠がないが、行うことを考慮しても良い。有効性が期待できる可能性がある。)である。

(※参考:「脳卒中リハビリテーションの進め方」より)

1.× 「JCS3桁」ではなくJCS1桁が望ましい。
2.〇 正しい。重度な運動麻痺の場合でも積極的に離床を行ってもよい。ただ麻痺などの症状増悪がないことを確認する。
3.× 神経症状の増悪がある場合、離床は行えない。
4.× 収縮期血圧180mmHgまたは平均血圧130mmHgを超える場合に降圧対象となるとなり、全身状態が安定しているとは言いにくい。5.× 重篤な全身性合併症がある場合、離床は行えない。全身状態が安定していることを確認する。

JCSをしっかり覚えたい方用にまとめました。参考にしてください↓

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45 頚髄損傷の呼吸障害で正しいのはどれか。

1.肺活量は低下する。
2.咳の強さは変わらない。
3.予備吸気量は増加する。
4.予備呼気量は変わらない。
5.閉塞性換気障害が生じやすい。

解答
解説

 上位頚髄損傷では、肋間筋・呼吸補助筋の麻痺によって胸郭が十分拡張・収縮しないため、浅くて速い呼吸パターンがみられる。

1.〇 正しい。肺活量(全肺気量-残気量)は低下する。つまり、予備呼気量・予備吸気量・一回換気量とも減少する。
2.× 咳の強さは低下する。なぜなら、腹筋群や内肋間筋などの呼吸補助筋が麻痺するため。
3.× 予備吸気量は低下する。
4.× 予備呼気量は低下する。
5.× 「閉塞性換気障害(一秒率が70%以下)」ではなく、拘束性換気障害(%肺活量)が生じやすい。なぜなら、呼吸筋の麻痺により、肺活量は低下するため。

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

 

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