第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午後問題36~40】

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36 成人期に発症するポリオ後症候群のHalsteadらの診断基準にないのはどれか。

1.感覚障害
2.関節痛
3.筋萎縮
4.筋肉痛
5.疲労

解答
解説

ポリオ後症候群とは?

 ポリオ後症候群とは、ポストポスト症候群、ポリオ後遅発性筋委縮症、ポリオ後進行性筋萎縮症などと呼ばれている。幼少期のポリオ(小児麻痺)の罹患者が、数十年後(50~60歳以降)に突然、疲労感・疼痛・筋委縮・筋力低下などの二次障害を呈するものである。

【Halsteadらの診断基準】
①麻痺性ポリオの確実な既往
②部分的あるいはほぼ完全な機能的・神経学的回復
③少なくとも15年間の機能的・神経学的安定期間
④安定期間を経過した後に、以下に挙げる健康上の問題が2つ以上発生。・普通でない疲労・関節痛・筋肉痛・麻痺側または非麻痺側の新たな筋力低下・機能低下・寒さに対する耐性低下・新たな筋萎縮
⑤これらの問題が、内科的・整形外科的・神経学的な原因では説明がつかない

(参考:「ポストポリオ症候群診療ガイダンス」より)

1.× 感覚障害は、成人期に発症するポリオ後症候群のHalsteadらの診断基準にない。
2~5.〇 関節痛・筋萎縮・筋肉痛・疲労は、成人期に発症するポリオ後症候群のHalsteadらの診断基準である。

 

 

 

 

37 糖尿病患者において低血糖発作時にみられる症状はどれか。

1.咽吐
2.胸痛
3.口渇
4.発汗
5.腹痛

解答
解説

血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現する。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。よって、選択肢4.発汗は低血糖症状として見られる。

1.× 咽吐・悪心は、糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられる。
2.× 「胸痛」ではなく、頭痛が起こる。
3.× 口渇は、糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられる。
5.× 腹痛は、糖尿病性ケトアシドーシスなどでみられる。

2型糖尿病の理学療法

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

38 他の筋への影響を最小限にして伸張運動を行う場合、伸張筋と運動方向の組合せで適切なのはどれか。

1.薄筋:股関節伸展位、膝関節屈曲位で股関節外転
2.中間広筋:股関節伸展位・内外旋中間位で膝関節屈曲
3.ヒラメ筋:膝関節伸展位、足部内外反中間位で足関節背屈
4.三角筋前部:肩関節内外旋中間位、肘関節伸展位で肩関節伸展
5.長橈側手根伸筋:肘関節伸展位、前腕回内位、手関節尺屈位で掌屈

解答
解説
1.× 薄筋の作用は、股関節内転・屈曲と膝関節屈曲・内旋に働く。つまり、伸張させるには股関節伸展位、膝関節伸展位で股関節外転が正しい。
2.× 中間広筋の作用は、膝関節伸展に働く(単関節筋)。つまり、伸張させるには股関節屈曲位・内外旋中間位で膝関節屈曲が正しい。ちなみに、股関節伸展位・内外旋中間位で膝関節屈曲は、二関節筋である大腿直筋を伸張できる。
3.× ヒラメ筋の作用は、足関節底屈に働く(単関節筋)。つまり、伸張させるには膝関節屈曲位、足部内外反中間位で足関節背屈が正しい。ちなみに、膝関節伸展位、足部内外反中間位で足関節背屈は、二関節筋である腓腹筋を伸張できる。
4.× 三角筋前部の作用は、肩関節外転・屈曲に働く。つまり、伸張させるには肩関節内外旋中間位、肘関節伸展位で肩関節伸展・内転が正しい。
5.〇 正しい。長橈側手根伸筋の作用は、手関節の背屈、橈屈(二関節筋)に働く。つまり、肘関節伸展位、前腕回内位、手関節尺屈位で掌屈で伸張できる。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記確認用】下肢の筋のランダム問題

 

 

 

 

39 ランプ負荷法を用いて軽い負荷強度から最大運動強度まで運動強度を漸増した場合、運動強度に比例して直線的に増加するのはどれか。

1.呼吸数
2.酸素摂取量
3.分時換気量
4.1回心拍出量
5.二酸化炭素排泄量

解答
解説

 Ramp(ランプ)負荷試験(直線的漸増負荷法)とは、数秒から1分以内で負荷強度を少しずつ増やすことにより、ほぼ直線的に負荷強度を増加させる方法である。この方法の特徴は、無酸素性作業閾値(AT)を求める負荷法として、主に心肺運動負荷試験(CPX)に用いられる。下の図は、第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午後問題2】で、ランプ試験関連の問題で使用された図である。図を見ると、選択肢2.酸素摂取量が運動強度に比例して直線的に増加していることが分かる。

(※図引用:第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午後問題2】クリックするとその問題に飛びます。)

1.× 呼吸数/分時換気量は、無酸素(嫌気性)代謝閾値から換気量が急激に増加する。分時換気量とは、一回換気量と呼吸数の積で表され、運動強度の増加に伴って分時換気量は増加する。軽い負荷の運動では一回換気量の増加が主であり、呼吸数の増加は抑えられ、運動が激しくなるにつれて、呼吸数を増加させる。
4.× 1回心拍出量は、軽い負荷の運動から徐々に増加するが、早い段階でプラトーに達し、その後の心拍出量(1回拍出量と心拍数の積)の増加は心拍数の増加に依存する。
5.× 二酸化炭素排泄量は、無酸素(嫌気性)代謝閾値から急激に増加する。

 

 

 

40 PTB式免荷装具の除圧部位はどれか。2つ選べ。

1.脛骨内側面
2.脛骨粗面
3.膝蓋靭帯
4.前脛骨筋
5.腓骨頭

解答2,5
解説

 PTB式免荷装具は、膝蓋腱部で荷重を受けるソケットであり、下腿義足に対する標準的なソケットである。下腿骨骨折の手術後、部分荷重より開始とならないような重度のケースや、早期より免荷での歩行導入が必要な症例で用いられる。体重支持部と除圧部位が混合しないようにしっかり覚える必要がある。体重支持部は、①膝蓋腱部、②膝窩部、③脛骨内側面、④前脛骨筋部、⑤腓骨骨幹部である。一方で、除圧部位は、①脛骨粗面、②腸骨稜、③脛骨顆部の前面部、④腓骨頭、⑤ハムストリングスの走行部分である。よって、選択肢2.5.脛骨粗面、腓骨頭が正しい。他の選択肢(1.3.4)は体重支持部である。

 

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