第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 変形性膝関節症で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 二次性が多い。
2. 男性に好発する。
3. 外反変形を生じやすい。
4. 運動開始時に疼痛がある。
5. 大腿四頭筋の萎縮を認める。

解答4,5
解説

 変形性膝関節症は、膝関節軟骨の退行性変化に伴って増殖変化が起こる疾患である。

1. × 「二次性」ではなく一次性が多い。原因疾患が不明で老化現象と機械的影響によって起こる一次性と、関節疾患や外傷に続発して起こる二次性に分類されている。大部分が一次性である。
2. × 「男性」ではなく肥満傾向の女性(中年期以降)に好発する。男女比は1:4といわれている。
3. × 「外反変形(X脚)」ではなく内反変形(O脚)を生じやすい。
4. 〇 正しい。運動開始時に疼痛がある。運動開始時の他にも階段昇降時にも膝にストレスが生じ疼痛が誘発されやすい。
5. 〇 正しい。大腿四頭筋の萎縮を認める。その他の症状として、関節液が貯留すると自発痛も生じたり、轢音が生じる。また大腿四頭筋の萎縮・内反変形が伴うと、荷重時の外側動揺膝折れ前方動揺も生じる。筋力強化により膝関節の安定性を向上させることが大切である。

 

 

 

32 Froment徴候が陽性のとき、麻痺を疑うべき神経はどれか。

1.肩甲背神経
2.尺骨神経
3.正中神経
4.長胸神経
5.橈骨神経

解答
解説

 Froment(フローマン)徴候とは、親指以外の4本の指の内外転と親指の内転ができなくなり、親指と人差し指でものをはさむ力が弱くなることである。母指内転筋や骨間筋の萎縮から指の内外転が障害される。したがって、選択肢2.尺骨神経の障害で起こる。

 

1.× 肩甲背神経は、肩甲挙筋・大菱形筋・小菱形筋を支配する神経である。
3.× 正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。
4.× 長胸神経麻痺で翼状肩甲(前鋸筋麻痺)がみられる。
5.× 橈骨神経で下垂手がみられる。

 

 

 

33 肩関節の関節可動域が屈曲100°、伸展10°、外転60°、外旋5°、内旋45°の肩関節周囲炎患者で障害されやすい動作はどれか。

1.洗顔動作
2.結髪動作
3.靴下の着脱
4.爪切り動作
5.歯磨き動作

解答
解説

(※図引用:すぐに使える!リハビリのイラスト集様HP)

 本症例の肩関節の関節可動域は、屈曲100(180)°、伸展10(50)°、外転60(180)°、外旋5(60)°、内旋45(80)°である。( )内は参考角度。参考角度から、肩関節のいずれの方向も著明に低下していることが分かる。したがって、選択肢2.結髪動作が最も障害される。結髪動作は、肩関節屈曲・外転・外旋の複合運動であり、図からも読み取れるが肩関節外転90°以上外旋30°以上は必要になると考えられる。

1.× 洗顔動作において重要な関節可動域は、肘関節屈曲・前腕回外である。
3.× 靴下の着脱/爪切り動作において重要な関節可動域は、肩関節屈曲・股関節屈曲である。
5.× 歯磨き動作において重要な関節可動域は、肩関節屈曲・外転水平外転・水平内転である。

 

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34 中脳(水平断)を図に示す。
Parkinson 病の病変部位はどれか。


1.①
2.②
3.③
4.④
5.⑤

解答
解説

 

 (※図引用:Wikipedia

 Parkinson 病の病変部位は、中脳の黒質の神経伝達物質の1つであるドーパミン量が減少する事で起こると考えられている。つまり、黒質を選択できれば正解となる。

1.× ①は、上丘核である。眼球運動に関与する。
2.× ②は、内側毛帯である。深部感覚の経路である。
3.× ③は、赤核である。赤核が障害されると赤核振戦(粗大な動作で誘発される振戦)が起こる。
4.〇 正しい。④は、黒質である。
5.× ⑤は、大脳脚である。錐体路の一部である。

 

 

 

35 筋萎縮性側索硬化症で下位運動ニューロン障害の徴候はどれか。

1.痙縮
2.仮性球麻痺
3.線維束性収縮
4.腹壁反射消失
5.アキレス腱反射亢進

解答
解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1~2.× 痙縮・仮性球麻痺は、上位運動ニューロンの障害である。
3.〇 正しい。線維束性収縮(筋委縮やピクつき)は、下位運動ニューロンの障害で起こる。また、頚部筋が弱くなり首があげられなくなり、いわゆる「首下がり」を呈することもある。
4.× 腹壁反射は、表在反射(T5~L1)である。筋萎縮性側索硬化症の陰性所見として、感覚障害は含まれないため腹壁反射消失は起こらない。
5.× 下位運動ニューロン障害が起これば、アキレス腱反射は、「亢進」ではなく低下する。ちなみに、アキレス腱反射亢進は、上位運動ニューロン障害で起こる。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の特徴

①下位運動ニューロン障害、②上位運動ニューロン障害、③球麻痺症状が混在して見られることが多い。①は上肢に強く、②は下肢に強く、③は延髄運動覚の変性が主体である。

 

6 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正いたしましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

返信する
チャールズ

午前33についてなのですがこの選択肢のADL動作の参考可動域はどういった本や文献に記載していますでしょうか?
もし、よろしければタイトルとページを教えていただきたいです。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
明確な他選択肢のADL参考可動域のテキスト等は私の手元にありませんが、よく参考にしている本は、「理学療法学Ⅴ 日常生活活動(ADL)第二版 監修:千住秀明 P352~370」です。
このページに、各ADLの特に必要な関節などの記載があります。
洗顔動作/歯磨き動作は、肘関節屈曲角度。
靴下の着脱/爪切り動作は、股・膝関節屈曲角度が必要になります。

返信する
チャールズ

ありがとうございます!
解説が詳しく書いてあるのでいつも参考にしております。これからもよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

こちらこそありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。

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