【PT共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」

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※問題の引用:厚生労働省より

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【OT/共通】筋萎縮性側索硬化症についての問題「まとめ・解説」

45回 午前13

13. 60歳の男性。50歳で筋萎縮性側索硬化症を発症し、自宅療養中である。舌を含めた全身に筋萎縮があり、上肢筋の萎縮は高度である。Danielsらの徒手筋力テストで肘・股・膝関節周囲筋3~4、他は頸部・体幹を含め2。起き上がり動作と歩行とに介助を必要としている。
 自宅内での適切な移動方法はどれか。

1.四つ這い移動
2.標準型車椅子での移動
3.肘をついてのいざり移動
4.ピックアップ歩行器歩行
5.杖と装具とを使用した歩行

解答2

解説

本症例のポイント

①上肢筋の萎縮は高度。
②頸部・体幹を含めMMT2。
③起き上がり動作と歩行に介助要す。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.3.× 四つ這い移動/肘をついてのいざり移動は優先度が低い。なぜなら、上肢筋の萎縮が高度であり、頸部・体幹を含めMMT2であるため。上肢の過負荷と前方が見えにくいことが予想される。
2.〇 正しい。標準型車椅子での移動は、自宅内での移動方法として優先度が高い。本症例は、自宅療養中で起き上がり動作と歩行に介助要していることからも、自宅に介助者がいることが考えられる。介助者の負担軽減・安全性確保のためにも車椅子の選択が望ましい。
4.× ピックアップ歩行器歩行は優先度が低い。なぜなら、上肢筋の萎縮が高度であり、頸部・体幹を含めMMT2であるため。ピックアップ歩行器は、主に体重の支持やバランスの確保のために使用する。
5.× 杖と装具とを使用した歩行は優先度が低い。なぜなら、体幹を含めMMT2であるため。杖と装具のみで四肢を補助しても、歩行自立とはなりにくく、装具の着脱などを加味すると介助者の負担軽減につながらない可能性が高い。

 

 

46回 午後29

29.筋萎縮性側索硬化症患者の球症状に対するプログラムとして適切でないのはどれか。

1.呼吸訓練
2.食物形態の指導
3.舌筋の抵抗運動
4.食事姿勢の指導
5.コミュニケーション手段の獲得

解答3

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.5.〇 呼吸訓練/コミュニケーション手段の獲得を実施する。球症状とは、延髄にある神経核が障害された状態を指す。舌咽・迷走・舌下神経が障害されるため、嚥下・構音障害・舌萎縮・線維束性攣縮などがみられる。このためコミュニケーション、呼吸、嚥下の訓練が必要となる。
2.4.〇 食物形態の指導/食事姿勢の指導を実施する。なぜなら、嚥下障害に対して、誤嚥の予防が必要であるため。
3.× 舌筋の抵抗運動を実施する優先度は低い。なぜなら、球症状として舌の弛緩性麻痺および萎縮がおこるため。ちなみに、舌の萎縮の予防として、舌自動運動により唾液の分泌促進を促したり、舌のストレッチ運動を行う。

球症状とは?

球症状とは、延髄にある神経核が障害された状態を指す。舌咽・迷走・舌下神経が障害されるため、嚥下・構音障害・舌萎縮・線維束性攣縮などがみられる。このためコミュニケーション、呼吸、嚥下の訓練が必要となる。

 

 

 

47回 午前45

45 呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者に対する呼吸理学療法で適切なのはどれか。

1.口すぼめ呼吸の指導
2.胸郭のストレッチ
3.呼気時の胸郭圧迫
4.腹式呼吸の指導
5.有酸素運動

解答2

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× 口すぼめ呼吸の指導は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)に有効である。
2.〇 正しい。胸郭のストレッチは、呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者に対する呼吸理学療法である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症では、拘束性換気障害(呼吸筋の萎縮に伴い、胸郭の可動性低下)がみられるため。
3.× 呼気時の胸郭圧迫(患者の胸郭に手掌面を当てて、呼気に合わせて胸郭を生理的な運動方向に合わせて圧迫し、次の吸気時には圧迫を開放することを繰り返すもの)は、呼吸介助や排痰援助の際に行う。ただし、呼吸介助目的に実施する際は深呼吸が十分できるレベルで行う。排痰援助目的に実施する際も、エビデンスが少ないこと、セラピストの腕により効果が異なるなどといった理由で第一選択とされるべき手技ではない。本症例は、呼吸機能が低下してきた筋萎縮性側索硬化症患者(進行期)であるため、優先度は低い
4.× 腹式呼吸の指導は優先度が低い。なぜなら、呼吸筋麻痺(横隔膜も含めて)されるため。
5.× 有酸素運動は、全身に筋萎縮運動麻痺が進行するため困難である。

 

 

 

47回 午後45

45 球麻痺を伴う筋萎縮性側索硬化症患者とその家族への在宅指導で適切でないのはどれか。

1.自己導尿
2.摂食指導
3.吸引器の取扱い
4.電動車椅子操作
5.コミュニケーションエイドの使用法

解答1

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× 自己導尿は必要ない。なぜなら、膀胱直腸障害は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の陰性症状であるため。
2.〇 摂食指導は必要となる。なぜなら、球麻痺により嚥下障害がみられるため。
3.〇 吸引器の取扱いは必要となる。なぜなら、球麻痺により嚥下障害がみられるため。吸引器は、痰の吸引や誤嚥の防止に使用する。
4.〇 電動車椅子操作は必要となる。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)により、歩行障害がみられるため。筋萎縮性側索硬化症(ALS)により、上・下位運動ニューロン障害がみられる。
5.〇 コミュニケーションエイド(意思の伝達)の使用法は必要となる。なぜなら、球麻痺により構音障害がみられるため。コミュニケーションエイド(意思の伝達)とは、電話に文字変換装置、パソコン通信などに音声変換装置、椅子に文字盤をつけるなど機能補助をした福祉機器を指す。

球麻痺とは?

延髄にある神経核が障害された状態を指し、舌咽・迷走・舌下神経が障害される。
したがって、嚥下・構音障害、舌萎縮、線維束攣縮などがみられる。

 

 

 

48回 午後47

47 筋萎縮性側索硬化症患者で安静臥位時のPaO2が60Torrであった。
 呼吸理学療法で適切なのはどれか。

1.呼吸筋増強訓練
2.舌咽呼吸の指導
3.端座位保持訓練
4.腹筋の筋力増強訓練
5.頸部筋リラクセーション

解答5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

本症例は、PaO2が60Torrであることから呼吸障害を生じている。基準値は80~100Torr、60Torr以下で呼吸不全と判断できる。

1.× 呼吸筋増強訓練は、優先度が低い。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は進行性の神経変性疾患であり、すでに呼吸障害を呈しているため。残存筋力の維持訓練を行っていく。
2.× 舌咽呼吸の指導は、優先度が低い。なぜなら、舌咽呼吸(カエル呼吸)は、肺活量が低下した患者が嚥下機能を用いて代償的に行う呼吸法であるため。本症例は、嚥下機能も低下しているため舌咽呼吸を習得できるかが疑問である。
3.× 端座位保持訓練は、優先度が低い。なぜなら、呼吸障害を呈している現状態は、すでに体幹の支持性も低下していると考えられるため。端坐位を保持するのが難しいか、できたとしても過用性の筋力低下をきたす可能性も懸念される。
4.× 腹筋の筋力増強訓練は、優先度が低い。選択肢3と同様に、過用性の筋力低下をきたす可能性も懸念されるため。
5.〇 正しい。頸部筋リラクセーションは、選択肢の中では一番優先度が高い残存呼吸の機能を効率よく用いるために重要である。

 

 

 

49回 午後11

11 55歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。 1年前から通勤時に右足がつまずくようになった。最近は意識して膝を上にあげて歩行している。腰椎MRIでは病的所見はなく、針筋電図所見では両側の前脛骨筋に右側優位の神経原性変化を認めた。
 適切な対応はどれか。

1. 座位時は足を挙上しておく。
2. 移動時に車椅子を利用する。
3. 立ち上がり運動を繰り返す。
4. 前脛骨筋に治療的電気刺激を行う。
5. 右側プラスチック短下肢装具を装着する。

解答5

解説

本症例のポイント

・55歳の男性(筋萎縮性側索硬化症
・1年前:右足がつまずく。
・最近:膝を上にあげて歩行。
・腰椎MRI:病的所見なし。
・針筋電図所見:両側の前脛骨筋右側優位の神経原性変化を認めた。
→本症例は、筋萎縮性側索硬化症の初期(自立期)である。この時期から自助具や歩行補助具などを用い、社会的交流・日常生活の維持を図る。

1.× 座位時は足を挙上しておく優先度は低い。浮腫に対し有効である。
2.× 移動時に車椅子を利用の優先度は低い。なぜなら、現在歩行(通勤)可能な時期であり、できるだけ本人の能力を維持できる対応を優先するため。
3.× 立ち上がり運動を繰り返すことの優先度は低い。なぜなら、現在、歩行(通勤)可能な時期であり、立ち上がりは行えていると考えられるため。加えて、立ち上がり運動を繰り返すことは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は過用性の筋力低下を起こす恐れがある。
4.× 前脛骨筋に治療的電気刺激を行う優先度は低い。なぜなら、治療的電気刺激は末梢運動神経の障害がないことが条件であるため。機能的電気刺激(FES)は、脳卒中、脊髄損傷等により運動麻痺を呈している方に適応となる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが障害されている。
5.〇 正しい。右側プラスチック短下肢装具を装着する。なぜなら、足関節背屈を補助するため。装具を装着することで、つまずきを予防できると考えられる。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

50回 午前27

27 球麻痺から発症した筋萎縮性側索硬化症で歩行が可能な患者への対応で正しいのはどれか。

1. 胸郭のストレッチを指導する。
2. 呼吸機能評価を1年に1回行う。
3. 栄養指導は誤嚥を認めてから行う。
4. 早期からプラスチック短下肢装具を導入する。
5. 鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングを指導する。

解答1

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。胸郭のストレッチを指導する。なぜなら、呼吸筋の萎縮に伴い胸郭の可動性低下がみられるため。
2.× 呼吸機能評価は、1年に1回では少なすぎるため不適当である。麻痺が進行して呼吸筋の麻痺が起こる可能性もあるため、定期的な呼吸筋の評価(最低でも2~3か月に1度)も必要である。
3.× 栄養指導は、「誤嚥を認めてから」ではなく、予防のため認める前から行う。早期から誤嚥予防や栄養指導、嚥下評価および必要な訓練・指導を行う必要がある。
4.× 早期からのプラスチック短下肢装具を導入は必要ない。なぜなら、本文から「歩行可能な患者」と表記されており、歩行障害はまだ認めないため。大腿四頭筋や足関節背屈筋の筋力低下し、歩行障害が出てきた段階(病気でいうと中期)で短下肢装具の導入を検討する。
5.× 鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングは不適当である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は、上肢末端に始まる筋萎縮が特徴であり、後負荷のトレーニングとなるため。そのため自動運動自動介助運動を筋力維持の主体とする。

 

 

 

51回 午前15

15 45歳の男性。筋萎縮性側索硬化症。発症から1年経過している。ADLは自立しているが、主に下肢の筋力低下、バランス不良および鶏歩が認められる。
 理学療法で適切なのはどれか。

1. 車椅子操作の練習
2. 下肢の漸増抵抗運動
3. 両松葉杖での歩行練習
4. 感覚再教育によるバランス練習
5. プラスチックAFOを装着した歩行練習

解答5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× 車椅子操作の練習は時期尚早である。なぜなら、本症例はADL自立しており、歩行は可能(バランス不良および鶏歩)であるため。できる限り能力を維持できよう自力歩行を促すべきである。
2.× 下肢の漸増抵抗運動の優先度は低い。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は進行性に筋が萎縮するため。漸増抵抗運動を行っても筋力低下を補うことはできない。また、過用性筋力低下を引き起こす可能性が高い。
3.× 両松葉杖での歩行練習は不適切である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症に両松葉杖は適応になりにくい(上肢の筋力が十分にある場合に適応となる)ため。また、本症例の身体状態からも、下肢の筋力低下とバランス不良があり、松葉杖による歩行は転倒のリスクが高い。
4.× 感覚再教育によるバランス練習の優先度は低い。なぜなら、ALSの陰性徴候に感覚障害があるため。ちなみに、感覚再教育は、脳卒中後など感覚障害に対し行う。
5.〇 正しい。プラスチックAFOを装着した歩行練習が適応となる。なぜなら鶏歩に対して、プラスチックAFOを装着することで足関節背屈を補助し、つまずきを回避することができるため。

松葉杖の適応

・片方の下肢骨折
・対麻痺障害などの立位保持が困難な場合
・荷重負荷制限
・上腕の筋力が十分であること

 

 

52回 午後34

34 筋萎縮性側索硬化症で生じにくい症状はどれか。

1. 舌萎縮
2. 構音障害
3. 上下肢麻痺
4. 眼球運動障害
5. 摂食嚥下障害

解答:

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 筋萎縮性側索硬化症の陰性症状は、①感覚障害、②眼球運動障害、③膀胱直腸障害、④褥瘡である。他に、小脳症状や錐体外路症状、認知症なども出現しにくい。よって、選択肢4. 眼球運動障害が正しい。

1~2.5.× 舌萎縮/構音障害/摂食嚥下障害は、筋萎縮性側索硬化症の症状である。延髄の運動覚が変色し生じる(球麻痺)。
3.× 上下肢麻痺は、筋萎縮性側索硬化症の症状である。錐体外路障害である。

 

 

53回 午後10

10. 45歳の男性。半年前から左上肢遠位部の脱力、3か月前から左上肢の筋萎縮と右上肢の脱力、さらに最近歩行障害と構音障害を認めるようになり、神経内科で筋萎縮性側索硬化症と診断された。
 現時点で認められる可能性が高いのはどれか。

1.褥瘡
2.振動覚低下
3.眼球運動障害
4.膀胱直腸障害
5.Hoffmann反射陽性

解答:5

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1~4.× 褥瘡/振動覚低下/眼球運動障害/膀胱直腸障害は、陰性徴候である。
5.〇 正しい。Hoffmann反射陽性(ホフマン反射)である。Hoffmann反射陽性(ホフマン反射)とは、最も弱い刺激によって惹起される指の屈曲反射のことであり、これによって指の屈曲が出現する場合は、反射は非常に増強しており、病的であると判断される。筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが系統的に障害される進行性疾患である。そのため、病的反射であるHoffmann反射が陽性となる。

 

 

 

 

 

55回 午前35

35 筋萎縮性側索硬化症で下位運動ニューロン障害の徴候はどれか。

1.痙縮
2.仮性球麻痺
3.線維束性収縮
4.腹壁反射消失
5.アキレス腱反射亢進

解答
解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1~2.× 痙縮・仮性球麻痺は、上位運動ニューロンの障害である。
3.〇 正しい。線維束性収縮(筋萎縮やピクつき)は、下位運動ニューロンの障害で起こる。また、頚部筋が弱くなり首があげられなくなり、いわゆる「首下がり」を呈することもある。
4.× 腹壁反射は、表在反射(T5~L1)である。筋萎縮性側索硬化症の陰性所見として、感覚障害は含まれないため腹壁反射消失は起こらない。
5.× 下位運動ニューロン障害が起これば、アキレス腱反射は、「亢進」ではなく低下する。ちなみに、アキレス腱反射亢進は、上位運動ニューロン障害で起こる。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の特徴

①下位運動ニューロン障害、②上位運動ニューロン障害、③球麻痺症状が混在して見られることが多い。①は上肢に強く、②は下肢に強く、③は延髄運動覚の変性が主体である。

 

 

 

 

56回 午前44

44 筋萎縮性側索硬化症の進行により非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法を適応すべき数値はどれか。

1.PaO2:80mmHg
2.PaCO2:60mmHg
3.睡眠中SpO2:94%
4.最大吸気圧:75cmH2O
5.%努力性肺活量(%FVC):85%

解答

解説

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。

【睡眠時のNPPVの適応】
①慢性肺胞低換気(肺活量が60%以下の場合はハイリスク)
②昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以下)
③睡眠時SpO2モニターで、apnea-hypopnea index(AHI)が10/時間以上、SpO2が92%未満になることが4回以上か、全睡眠時間の4%以上

【睡眠時に加えて覚醒時のNPPVの適応】
①呼吸困難に起因する嚥下困難
②ひと息に長い文章を話せない
③慢性肺胞低換気症状を認め、昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以上)

(引用:NPPVガイドライン改訂第2版より)

1.× PaO2(動脈血酸素分圧)は、肺における血液酸素化能力の指標である。基準値は、若年健康者でほぼ100Torr(mmHg)、老年健康者で約80Torr(mmHg)である。設問のPaO2:80mmHgは正常範囲である。
2.〇 正しい。PaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)は、動脈血中の二酸化炭素の分圧を表す。換気の指標として用いられる。正常値は35〜45Torr(mmHg)であり、PaCO2>45Torr(mmHg)の状態だと、換気量が低下していることを示す。したがって、設問のPaCO2:60mmHgは、非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法を適応すべき数値と考えられる。
3.× SpO2(動脈血酸素飽和度)は、正常範囲は94%以上である。睡眠中SpO290%以下になる場合は、夜間の非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法の導入を検討する。睡眠中の無呼吸によって血液中の酸素濃度が下がり、「低酸素血症」が生じ、心拍数や血圧が上昇する。
4.× 最大吸気圧(PIP)とは、人工呼吸器から送り出す吸気時の圧力を示している。正常値としては、75~100cmH2Oである。設問の最大吸気圧:75cmH2Oは正常範囲である。
5.× %努力性肺活量とは、胸いっぱいに空気を吸ってから可能な限り(最大限の努力で)一気に吐き出す量をいう。喘息などの閉塞性の呼吸器疾患があると、すべて吐き出すことができず努力性肺活量が減少する。基準値は80%以上である。80%未満で拘束性換気障害と判断する。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

59回 午前35

35 筋萎縮性側索硬化症で正しいのはどれか。

1.深部感覚が障害されやすい。
2.認知機能が障害されやすい。
3.筋萎縮は四肢の遠位に著しい。
4.眼球運動が早期に障害されやすい。
5.動脈血二酸化炭素分圧が低下しやすい。

解答

解説

深部感覚の伝導路

【深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路】
後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

1.× 深部感覚が障害され「にくい」。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロンの障害であるため。
・上位運動ニューロンとは、大脳皮質から内包、脳幹、脊髄を経て脊髄前角細胞に至る経路のことである。
・下位運動ニューロンとは、脊髄前角細胞から末梢部で筋に至るまでの経路のことである。
2.× 認知機能が障害されやすいとはいえない。なぜなら、認知機能障害が併発するのは5~10%といわれているため。教科書的には、筋萎縮性側索硬化症は末期まで認知症などの高次脳機能障害は伴わないとされていたが、筋萎縮性側索硬化症に合併した認知症については以前から多数報告され、筋萎縮性側索硬化症患者の5〜10%が前頭側頭型認知症を呈するともいわれている(参考文献:「筋萎縮性側索硬化症と認知機能障害」著:立石 貴久ら)。
3.〇 正しい。筋萎縮は四肢の遠位に著しい。典型例(普通型)は上肢型で、発症は、箸がうまく使えなくなる、ピアノがうまく弾けなくなるなどの巧緻作業で気が付くことが多い。
4.× 眼球運動が早期に障害され「にくい」。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。
5.× 動脈血二酸化炭素分圧が「低下」ではなく上昇しやすい。なぜなら、拘束性換気障害がおこるため。一方、頻呼吸が起こると、二酸化炭素が体から速く排出されるため。動脈血二酸化炭素分圧は基準値よりも低くなる。ちなみに、動脈血二酸化炭素分圧とは、動脈血液中に取り込まれている炭酸ガスの圧力のことで、呼吸不全に対する呼吸状態の評価をする動脈血液ガス分析の検査項目のひとつである。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

59回 午後12

12 58歳の男性。半年前から両手の筋萎縮に気付き、最近しゃべりにくさを自覚するようになった。体重は半年で70kgから60kgに減少。MMTは両上肢の近位筋が2、遠位筋が4、両下肢が4。四肢の腱反射は亢進。舌の萎縮が認められるが明らかな嚥下障害はない。肺機能検査で%肺活量は95%。動脈血ガス分析はPaO2:90Torr、PaCO2:40Torrであった。
 現時点で最も適切な対応はどれか。

1.BFOの導入
2.胃瘻造設術の施行
3.気管切開術の施行
4.電動車椅子の導入
5.在宅酸素療法の導入

解答

解説

本症例のポイント

・58歳の男性。
・半年前:両手の筋萎縮に気付く。
・最近:しゃべりにくさを自覚。
・体重:半年で70kgから60kgに減少
・MMT:両上肢の近位筋が2、遠位筋が4、両下肢が4。
・四肢の腱反射:亢進。
・舌の萎縮が認められるが、明らかな嚥下障害はない。
・肺機能検査:%肺活量95%。
・動脈血ガス分析:PaO2:90Torr、PaCO2:40Torr。
→本症例は、筋萎縮性側索硬化症が疑われる。本症例の体重は、半年で70kgから60kgに減少していることから、なんらかの対応が必要と思われる。

1.〇 正しい。BFOの導入が現時点で最も適切な対応である。なぜなら、BFOの導入することで食事をより容易になると考えられるため。本症例のMMTは、両上肢の近位筋が2、遠位筋が4であり、そのことが原因で、食事がとれず半年で70kgから60kgに減少と考えられる。BFO(Balanced Forearm OrthosisまたはBall bearing Feeder Orthosis)は、患者の前腕を支えてごくわずかの力で上肢の有益な運動を行なわせようとする補装具の一種である。
2.× 胃瘻造設術の施行の優先度は低い。なぜなら、本症例は、舌の萎縮が認められるが、明らかな嚥下障害はないため。明らかな嚥下障害はないため。胃瘻(いろう)とは、お腹に開けた穴にチューブを通して、直接胃に食べ物を流し込む方法である。口から食事をとることが難しい場合に適応となる。
3.× 気管切開術の施行の優先度は低い。なぜなら、肺機能検査の%肺活量は95%で、基準値範囲内であるため。気管切開術の適応は、①上気道狭窄や閉塞、②遷延性意識障害患者の気道確保と誤嚥の予防、③長期間の人工呼吸管理などである。
4.× 電動車椅子の導入の優先度は低い。なぜなら、設問文に歩行能力が記載されていないことや、本症例のMMT両下肢が4であることから、移動手段の変更の優先度は低いと考えられるため。本症例の体重は、半年で70kgから60kgに減少していることから、優先度が高い項目がほかにあると考えられる。
5.× 在宅酸素療法の導入の優先度は低い。なぜなら、肺機能検査の%肺活量は95%で、基準値範囲内であるため。在宅酸素療法とは、酸素療法を自宅で実施することをさす。適応として、慢性呼吸不全や慢性心不全により体内の酸素濃度が低下している人に対して行われる。在宅でも安心して酸素療法を受けられるよう、生活指導などの看護支援が必要で、在宅酸素療法を実施している間は、火気厳禁となる。ちなみに、慢性閉塞性肺疾患の定義として、%VC(%肺活量) 80%以上、FEV1.0%(1秒率) 70%以下である。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

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