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11 70歳の男性。自転車エルゴメーターを用い負荷強度30Wattsから50Wattsの5種類の一定負荷を行わせた時の心拍数変化を図に示す。
この例に全身持久力トレーニングで運動強度を嫌気性代謝閾値〈AT〉に設定する場合、最も適切な負荷強度(Watts) はどれか。
1.30
2.35
3.40
4.45
5.50
解答3
解説
コメント「匿名さん」ありがとうございます。
嫌気性代謝閾値とは、運動時に有酸素運動から無酸素運動へと切り替わる運動強度の閾値のことである。”HRの増加率が上昇するポイントがATと一致すると報告している。”(心拍数二乗法による無酸素性作業閾値の測定の有用性より引用。はじめに1段落目 最後の行)
本症例の場合、40Wattsまで運動中の心拍数は一定である。一方、45Wattsから運動中の心拍数は上昇している。つまり、45Wattsではすでに無酸素運動が行われているため不適切である。
したがって、測定の結果から一定の心拍数を示す運動強度の中で最大の選択肢3.40Wattsが嫌気性代謝閾値〈AT〉に設定する最も適切な運動強度である。
実際には、嫌気性代謝閾値の測定は主に2つ方法を用いられる。
①運動負荷試験を行って運動強度を徐々に上げていった時、乳酸の血中濃度が急上昇した時の運動強度を、被験者の嫌気性代謝閾値とする。この方法の欠点は、血液を調べないといけないため侵襲的であることなどが挙げられる。
②運動負荷試験を行って運動強度を徐々に上げていった時、運動強度の増大に伴って肺呼吸での換気量も伸びる。さらに運動強度を上げると組織で酸素不足が起こり、これを検知した身体はさらに肺での換気量を増やそうとすることなどの影響で、ある運動強度を超えると、これまでの肺呼吸での換気量の伸びよりも急激に換気量が増加することが知られている。この急激に肺呼吸での換気量が増加し始めた時の運動強度を、被験者の嫌気性代謝閾値とする。
12 62歳の女性。約半年前から歩行中にふらつき、しゃべりにくいことに気付いていたが、最近これらの症状が悪化してきた。その他、四肢協調運動障害、頭部CTで小脳および脳幹萎縮を指摘されている。この症例の評価指標として適切でないのはどれか。
1.FBS
2.踵膝試験
3.鼻指鼻試験
4.FMA(Fugl-Meyer assessment)
5.SARA (scale for the assessment and rating test)
解答4
解説
・62歳の女性。
・約半年前:歩行中にふらつき、しゃべりにくい。
・最近:症状悪化。その他、四肢協調運動障害、頭部CTで小脳および脳幹萎縮を指摘されている。
→本症例は、小脳および脳幹に障害をきたしている可能性が高いため、それらを評価できるものが第一優先となる。
1. 〇 正しい。FBS(Functional Balance Scale)は、Berg Balance Scale(BBS)とも呼ばれる。バランス障害に対する評価になる。14項目について、0~4点の5段階で評価する。つまり、56点満点である。一般的には、Berg Balance Scale(BBS)を指す。本症例は、歩行中にふらつきがあるため評価指標として適切である。
2~3〇 正しい。踵膝試験・鼻指鼻試験は、協調運動の機能と距離を判断する能力(距離測定障害)を評価する。本症例は、四肢協調運動障害があるため評価指標として適切である。
4.× 適切ではない。なぜなら、FMA(Fugl-Meyer assessment)は、上肢運動機能、下肢運動機能、バランス、感覚、関節可動域・疼痛からなる脳卒中の総合的身体機能評価であるため。上肢運動機能66点、下肢運動機能34点、バランス14点、感覚24点、可動域・疼痛88点からなる。本症例は、頭部CTで小脳および脳幹萎縮を指摘されているため不適当である。
5.〇 正しい。SARA (scale for the assessment and rating of Ataxia)は、脊髄小脳変性による失調症の定量的な評価法である。本症例は、頭部CTで小脳および脳幹萎縮を指摘されているため評価指標として適切である。
SARA (scale for the assessment and rating of Ataxia)は、脊髄小脳変性による失調症の定量的な評価法である。全8項目(歩行、立位、座位、言語障害、指追い試験、鼻指試験、手の回内・回外運動、踵脛試験)の評価セットである。四肢の運動失調の他、歩行障害、構音障害、眼球運動障害を簡便に評価できる。評価に採用している病院も多い(私が勤めていた病院でも使用していた)。
13 8歳の男児。脳性麻痺による痙直型両麻痺。GMFCS レベルⅢであり、床上はバニーホッピングで移動している。学校内の移動は車椅子駆動で自立している。
車椅子の設定で正しいのはどれか。
1.ヘッドサポートをつける。
2.座面高は標準より高くする。
3.背もたれの高さは肩までとする。
4.背もたれはリクライニング式にする。
5.フットサポートはスイングアウト式にする。
解答5
解説
・8歳の男児(脳性麻痺による痙直型両麻痺)
・GMFCS レベルⅢ(歩行補助具を使用して歩くことができるレベル)
・移動:床上はバニーホッピング。
・学校内の移動:車椅子駆動自立。
→両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のこと。痙直型両麻痺の特徴として、体重支持に際し、陽性支持反応にもとづく同時収縮が起こり、下半身を中心に漸進的に伸展緊張の亢進をもたらす(両下肢の麻痺に、軽~中等度の両上肢・体幹の麻痺を伴うことが多い)。
1.× ヘッドサポートをつける優先度は低い。ヘッドサポートは、車椅子座位時に頚部を支え、頭を安定させるために使用する。本症例は、定頸しており学校内の移動は車椅子駆動で自立している。
2.× 座面高は標準より高くする、もしくは低すぎるもの良くない。足底への刺激は大切であるが、座面高は標準より低くすると、自然と膝窩部分を開けたり、殿部への圧力を強くなるため。座面高は、床から這いあがれる高さの良い。
3.× 背もたれの高さは、肩までではなく、肩甲骨下端までの高さ(一般的な高さ)で十分といえる。なぜなら、本症例は、学校内の移動は車椅子駆動で自立しているため。
4.× 背もたれはリクライニング式にする必要はない。なぜなら、リクライニング式の適応は、姿勢の変換が困難なケースやバランス機能の低下が強い方であるため。具体的な疾患は、頸髄損傷者による低血圧性発作を起こしやすいかたなどである。
5.〇 正しい。フットサポートはスイングアウト式にする。車椅子のフットサポートには、2種類あり、①エレベーティング(脚部をリフトできる車椅子)、②スイングアウト(脚部を左右に開閉出来る車椅子)がある。①エレベーティング(脚部をリフトできる車椅子)は、骨折時や膝関節の病気などで足を曲げられず、伸ばしておきたい際に最適な車椅子脚部の機能である。②スイングアウト(脚部を左右に開閉出来る車椅子)は、脚部が左右に開くため、移乗の際などに移乗対象に近づきやすくなる。そのため、学校内の移動は車椅子駆動で自立しており、骨折などを伴っていないことから、一般的なスイングアウト式が正しい。
バニーホッピングとは、上下肢の交互運動は少なく、両下肢を屈曲位のまま前進する移動方法のこと。いわゆる両手が床についている「うさぎ跳び」である。(バニーホッピングのイメージとしては、うさぎ跳びのように飛び跳ねるものではなく、交互性の少ないほふく前進である。)
レベルⅠ:制限なしに歩く。
レベルⅡ:制限を伴って歩く。
レベルⅢ:歩行補助具を使用して歩く。
レベルⅣ:制限を伴って自力移動、電動の移動手段を用いてもよい。
レベルⅤ:自力移動が非常に制限される、手動車椅子によって搬送される。
苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓
【PT/OT/共通】GMFCSについての問題「まとめ・解説」
【PT/OT/共通】脳性麻痺についての問題「まとめ・解説」
14 関節リウマチ(Steinbrocker のステージⅢ、クラス3)のADL指導で正しいのはどれか。
解答4
解説
【Steinbrocker】
・ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態
・クラス3:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態
→関節リウマチ患者に対する日常生活の指導は、関節保護の原則に基づき行う。関節保護の原則とは、疼痛を増強するものは避けること、安静と活動のバランスを考慮すること、人的・物的な環境を整備することがあげられる。変形の進みやすい向きでの荷重がかからないように手を使う諸動作において、手関節や手指への負担が小さくなるように工夫された自助具が求められる。
1.× 立ち上がりなどで手をつく必要がある場合は、肘から前腕を机に乗せて立ち上がったり、手の全体をつけるように行う。
2.× 瓶の栓は手掌側を上にして、肘関節屈曲で開けられるようにする。
3.× 洋ハサミは、指節関節の変形を助長するので、手掌ではさむ和ばさみを用いる。また、テーブルの上において、上から手掌で押すだけで切れるカスタネット型ばさみを用いると良い。
4.〇 正しい。買い物袋は手部で持つのではなく、持ち手を前腕にかけて関節に負担をかけないようにする。
5.× 椅子座位は、足底全面を接地させて座るようにする。また、座面を高くすることで膝関節への負担を軽減する。
【ステージの分類】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。
【クラスの分類】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。
類似問題はこちら↓
15 46歳の女性。BMIは29.0である。両側の変形性股関節症で、股関節周囲の筋力低下と荷重時の股関節痛がある。
理学療法で適切でないのはどれか。
1.杖を用いた歩行練習
2.水中歩行による有酸素運動
3.背臥位での下肢筋のストレッチ
4.階段昇降による筋力増強トレーニング
5.自転車エルゴメーターでの筋持久性トレーニング
解答4
解説
・46歳の女性(BMI29.0:肥満1度)。
・両側の変形性股関節症(股関節周囲の筋力低下と荷重時の股関節痛)
BMIとは、体重(㎏) ÷ 身長の2乗(m) で計算される体格指数のことである。日本肥満学会の基準では、18.5以下:低体重、25以下:普通、30以下:肥満Ⅰ度、35以下:肥満Ⅱ度、40以下:肥満Ⅲ度、40以上:肥満Ⅳ度である。理学療法は、なるべく関節に負担をかけないよう計画していく。
1.〇 杖を用いた歩行練習をすることで、免荷となり股関節にかかる力が減少する。
2.〇 水中歩行による有酸素運動をすることで、浮力により股関節への負担が軽くなり、また水の抵抗により無理なく安全に筋力増強を狙える。
3.〇 背臥位での下肢筋のストレッチをすることにより、変形性股関節症の進行を遅らせる効果がある。関節に負担がかかりにくい筋力増強トレーニングとストレッチを併用して行う。
4.× 適切ではない。階段昇降による筋力増強トレーニングは、股関節に負担がかかるため避けるべきである。また階段昇降を行うのであれば、手すりを用いた2足1段の関節の負担がかかりにくい日常生活動作訓練を行うのが正しい。また、筋力増強トレーニングを行う際は、関節に負担がかかりにくいよう行う。
5.〇 自転車エルゴメーターでの筋持久性トレーニングを行うことは、股関節の免荷を行いながら、股関節周囲の筋力強化とフィットネスとしての体重減少などの効果を狙える。
11番の問題ですが、おそらく心拍閾値(HRT)という指標を用いてATを予想するのではないのかなと予想してます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/24/6/24_6_793/_pdf
↑ここの論文で紹介されていたのですが、HR の増加率が上昇するポイントがATと一致するらしく、この問題だと40wまでは一定間隔で運動終了までの心拍数が上昇していたのに対して、45wから急激に運動終了時の心拍数が上昇しています。
急激に上昇するポイントが40w~45wの間にあることから40wが正しいってことになるのかなと思っています。
無理やり学生の自分を納得させた考え方なので合っているかは定かではありませんが、大川さんにも一度考えてみていただければ幸いです。
コメントありがとうございます。
そのような方法があることは知りませんでした_(._.)_
文献まで教えていただき有能過ぎます!!
今後ともよろしくお願いいたします。