第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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※問題の引用:第52回理学療法士国家試験、第52回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

 

1 健常成人の平地歩行時の下肢筋活動を図に示す。
 下腿三頭筋の筋活動に相当するのはどれか。

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

解答:2

解説

(図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)

 

1.× ①は、股関節外転筋群である。重心の左右方向の移動を制御し、骨盤の安定性に役立っている。
2.〇 正しい。②は、下腿三頭筋である。下腿三頭筋は、遊脚相で筋活動がないのが特徴である。働きとしては、①重心線を踵から足先へ移動させる、②立脚終期に蹴りだして遊脚相に移行する。
3.× ③は、股関節内転筋群である。立脚相の初期と終期に活動して、外転筋群とともに骨盤の安定性に役立っている。また、股関節内転筋群は、①股関節屈曲位で股関節伸展作用があり、②股関節伸展位で股関節屈曲作用がある。したがって、立脚相の初期と終期に活動をもたらすのが股関節内転筋群である。
4.× ④は、前脛骨筋である。特に遊脚相から立脚相への移行期に強く活動する。主な活動は立脚初期(踵接地期から足底接地期)に遠心性収縮することで、足関節の滑らかな足底接地への移行を促す。
5.× ⑤は、大腿四頭筋である。立脚相の踵接地期から足底接地期にかけて、膝の衝撃を遠心性収縮で吸収し、ダブルニーアクションの作用の1つとして働く。また、立脚相から遊脚相にかけては下肢の振り子運動を誘導する動きを調整している。

 

 

 

 

 

2 図1の検査で異常がみられた場合、図2の脊髄横断面の模式図において損傷が考えられる部位はどれか。

 

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

解答:5

解説

図1:振動覚の検査である。
図2:脊髄横断面の模式図であり、深い溝(前正中裂)がある方が腹側、浅い溝(後正中溝)がある方が背側である。

振動覚、位置覚の経路は、「後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野」となる。よって、5. ⑤が正しい。後索である。後索を通る触覚と深部感覚の障害が主体となり、温度覚・痛覚が温存された解離性知覚脱失を伴う。

1.× ①は前索である。前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)が通り、その経路は「感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野」となる。
2.× ②は前角である。錐体路が通り、その経路は「大脳皮質運動野→放線冠→内包後脚→大脳脚→延髄→(錐体交叉)→脊髄側索→脊髄前角細胞」となる。
3.× ③は(外側)脊髄視床路である。外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)の経路は、「感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野」となる。
4.× ④は外側皮質脊髄路である。外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)の経路は、「大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索」となる。脊髄では、前脊髄動脈が脊髄の前2/3を支配しており、①~④は前脊髄動脈症候群で障害される部位である。前脊髄動脈症候群では、脊髄視床路や錐体路が障害され、感覚・運動のいずれも障害を受ける。後索に由来する深部感覚である振動覚や位置覚および表在感覚である触覚は温存される。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】解剖・横断図についての問題「まとめ・解説」
【PT/OT/共通】伝導路についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

3 患者の股関節部エックス線写真を下図に示す。大腿骨および下腿骨に骨折はなく、膝関節の変形や可動域制限はない。右大腿長44.0cm、両側の下腿長35.5cm、右下肢の棘果長83.0cmであった。
 左下肢の肢長検査で正しいのはどれか。

解答:1

解説

 レントゲン画像から、「左大腿骨頭と臼蓋の消失」が認められる。そのため、測定範囲に大腿骨頭が含まれる長さに、左右差が生じることが分かる。左棘果長(上前腸骨棘から内果までの最短距離)は、大腿骨頭も測定範囲に含まれるため、短縮が起こる。また、問題文に骨折や膝関節の変形はないと記載されていることから、転子果長の左右差はないと推測される。よって、選択肢1.【棘果長】81.0 cm、【転子果長】79.5 cmが正しい。

 

 

 

 

 

4 右股関節の可動域を表に示す。快適速度で直線路を歩行した場合に予想される特徴はどれか。

1. 歩隔の増加
2. 右の歩幅の減少
3. 左の遊脚時間の延長
4. 右立脚時の体幹の左側屈
5. 左立脚時の左股関節外転角度の増加

解答:1

解説

本症例のポイント

股関節の参考可動域角度は、屈曲125°、伸展15°、外転45°、内転20°である。本症例の特に影響すると考えられるのは、「股関節内転(-10°)」である。本症例は、常時股関節が外転位となっている。

1.〇 正しい。歩隔の増加である。なぜなら、内転-10°であるため。つまり、股関節が常時外転位であるため、右下肢を接地する際、通常よりも外方に接地することになる。ちなみに、歩隔とは、歩く時の両足間の横の幅のことである。
2.× 右の歩幅の減少は、右股関節屈曲伸展制限がある著明にある場合により起こる。なぜなら、左の立脚期に問題があるということになるため。ちなみに、歩幅とは、一側の踵が接地してから他側の踵が接地するまでの距離を示す。
3.× 左の遊脚時間(右の単脚支持時間)の延長の原因は、遊脚相に下肢の分回しが起こる左膝関節伸展拘縮左股関節外転拘縮の場合である。つまり、左ではなく右の遊脚時間(左の単脚支持時間)の延長の原因となる。
4.× 右立脚時の体幹の左側屈(トレンデレンブルグ徴候)は、立脚期側の中殿筋の機能低下により起こる。また、右股関節の内転制限のために右立脚時では体幹は代償的に右側屈となる。
5.× 左立脚時の左股関節外転角度の増加する原因として、①外転筋群の拘縮、②反対側下肢のトゥクリアランスを得るための代償運動などがある。

 

 

 

 

 

5 Daniels らの徒手筋力テストで肩関節屈曲(前方挙上)の段階の測定をする際、図のような代償がみられた。
 代償動作を生じさせている筋はどれか。

1. 回外筋
2. 上腕二頭筋
3. 前鋸筋
4. 肩甲下筋
5. 広背筋

解答:2

解説

肩関節屈曲検査での代償動作

①上腕二頭筋:肩関節外旋位での肩屈曲。
②僧帽筋上部線維:肩甲骨の挙上が目立つ。
③大胸筋の作用:肩関節の水平内転が目立つ。
④体幹の側屈、伸展運動など。

 正しい運動は、「肘関節は軽度屈曲位、前腕を回内位にて肩関節90°まで屈曲する」ことである。図の患者は肩関節を外旋し、前腕回外にて上腕二頭筋長頭の作用で肩関節屈曲を試みている。よって、2. 上腕二頭筋が適当である。ちなみに、肩関節屈曲(前方挙上)の主動作筋は①三角筋と②烏口腕筋である。

1.× 回外筋の作用は、前腕回外である。
3.× 前鋸筋の作用は、全体:肩甲骨を前方に引く。下2/3:下角を前に引いて肩甲骨を外方に回旋し、上腕の屈曲と外転を補助。最上部:肩甲骨をやや引き上げる。
4.× 肩甲下筋の作用は、肩関節内旋である。
5.× 広背筋の作用は、肩関節内転、伸展、多少内旋である。

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