第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題96~100】

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96 双極性障害と比較した場合のうつ病の特徴はどれか。

1. 有病率が低い。
2. 平均初発年齢が低い。
3. 有病率の男女差が小さい。
4. 一卵性双生児の罹患一致率が低い。
5. 状況要因が誘因となって発症することが少ない。

解答:

解説

気分障害におけるうつ病(単極性)と双極性障害について、双極性障害は障害有病率約1%で、うつ病よりも若い時期に発症しやすく、性差は認められていない。遺伝素因はうつ病よりも2倍以上の関与が考えられている。

 

1.✖ 有病率は、双極性障害よりうつ病の方が多い。双極性障害の発症率1%未満。うつ病は、日本で3~7%である。
2.✖ 平均初発年齢は、双極性障害よりうつ病の方が高い
3.✖ うつ病は男性に比べて女性に2倍多いと言われている。一方、双極性障害の男女比は、1.1:1と言われている。
4.〇 正しい。双極性障害は、双生児の研究などにより遺伝的要因が発症に関与していることが分かっている。一方で、うつ病は遺伝の影響は高くない。
5.✖ うつ病は、状況要因が誘因となって発症することが「少ない」のではなく多い。一方、双極性障害は、遺伝的要因が高い。うつ病の発症誘因として、その人に重要な生活上の出来事、例えば近親者の死、自身の病気、失業などの契機である。

 

 

 

 

 

97 小児自閉症について正しいのはどれか。

1. 学童期に発症する。
2. 脊椎変形を生じる。
3. 女児より男児に多く出現する。
4. 精神遅滞を伴うことは稀である。
5. 大部分の症例でてんかんを認める。

解答:3

解説

1.× 「学童期」ではなく、三歳以前(乳幼児期)に発症する発達の以上または障害である。
2.5.× 脊椎変形を生じる/大部分の症例でてんかんを認める、などの症状は出ない。ただ、小児自閉症の20~46%(報告により差があり)は転換を合併するといわれている。
3.〇 正しい。女児より男児に多く出現する。男女比は3~4:1といわれている。
4.× 精神遅滞を伴うことは稀ではない。約80%に合併する。障害されているのは、言語の発達遅滞とコミュニケーションの障害である。

 

 

 

 

98 アルコールの離脱症候群はどれか。2つ選べ。

1. 病的酩酊
2. けいれん発作
3. 複雑酩酊
4. 振戦せん妄
5. Wernicke 脳症

解答:2,4

解説

 アルコール離脱症候群の症状として、意識変容、精神運動亢進、頭痛、舌・眼瞼の振戦、発汗、悪心、嘔吐、血圧上昇、頻脈、体温変化、一過性の視覚性、触覚性、聴覚性の幻覚、錯覚、手指・体幹の振戦、けいれん発作が生じる。せん妄を伴う場合には、離脱せん妄あるいは振戦せん妄という。よって、選択肢2,4.けいれん発作/ 振戦せん妄が正しい。

 

1,3. ✖ 異常酩酊には、複雑酩酊病的酩酊がある。複雑酩酊は「酒癖が悪い」「酒乱」と呼ばれる酩酊である。酩酊による興奮が著しく、長く続く。気分は不安定であり、易刺激的で暴力的な言動がみられる。病的酩酊にはもうろう型病的酩酊とせん妄型病的酩酊がある。もうろう型病的酩酊では、酩酊により強い意識障害が起こり、人格の連続性が絶たれ、強い健忘を起こす。
5. ✖ Wernicke 脳症(ウェルニッケ脳症)…①意識障害、②眼症状(童顔神経麻痺)、③失調性歩行の3徴候とし、予後が不良である。ただし、ビタミンB1を早期に投与すると回復する場合がある。

アルコール断酒後に起こる離脱せん妄
  1. 断酒後数時間以内に生じてくる発汗、いらつき、不安、手指振戦、不眠などの症状に始まり、断酒2~3日後に振戦せん妄が生じる。
  2. 症状は、せん妄(様々な程度の意識混濁に見当識障害、不安感、恐怖感などを伴う)と幻視(特に小動物や小人の幻視)である。
  3. 1週間以内に症状が治まることが多いが、回復しないままウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群に移行する場合もある。

 

 

 

 

 

 

99 神経性大食症について正しいのはどれか。

1. 女性より男性に多い。
2. 高カリウム血症がみられる。
3. 神経性無食欲症からの移行はない。
4. カロリーの低いものを過食することが多い。
5. 代償行動で最も多いのは自己誘発性嘔吐である。

解答:5

解説

1.✖ 思春期から青年期の女子に好発する。
2.✖ 嘔吐を頻回に行うため、血中のカリウム濃度が低下するため、低カリウム血症(代謝性アルカローシス)がみられる。心停止をきたしやすい。
3.✖ 神経性無食欲症と神経性大食症との交通の精神病理があり、両者が依存したり、神経性無食欲症から神経性大食症に移行する場合がかなり多い。
4.✖ カロリーの高いものを過食することが多い
5.〇 正しい。神経性無食欲症と違い、病識を有しているため嘔吐を伴う。

 

 

 

 

 

100 再発に高EE(Expressed Emotion)が深く関与している統合失調症患者の治療に有効なのはどれか。

1. 自律訓練法
2. 認知行動療法
3. 生活技能訓練
4. 家族心理教育
5. レクリエーション

解答:

解説

 EE(Expressed Emotion)…「感情表出」といい、感情の表し方(表情、口調、態度など)という意味である。患者と接するときに家族に生じた主に否定的な感情をありのままに表すことをいう。感情表出が強い(=高EE)場合は、患者の症状は悪化しやすいとされ、家族心理教育では感情表出を抑えるような指導教育が行われる。統合失調症の患者は、周囲の人たちの接し方にとても敏感である。特にご家族をはじめとする身近な人たちの感情の表し方は、病気の再発に大きな影響を与えるといわれている。よって、選択肢4. 家族心理教育が正しい。

 

1.× 自律訓練法は、シェルツによって開発されたもので自己催眠法の手続きの一つで、事故に暗示をかけてリラックスを促し心身を整える方法である。神経症性障害などに適応である。
2.× 認知行動療法とは、歪んだ認知(ものの見方)を自覚させて行動を変化させるよう働きかけるものである。うつ病の否定的な認知の改善や強迫性障害などに用いる。
3.× 生活技能訓練は、対人コミュニケーション能力や生活技能を向上させ、地域生活への適応を高めることを目的として集団で行うものである。主に慢性期の統合失調症の患者が対象である。
5.× レクリエーションは、スポーツ、ゲーム、芸能活動、野外活動などにより、緊張の開放や健康維持を図る。

 

 

 

3 COMMENTS

匿名

96の5の答えが単極性障害よりも頻度が高いとなっておりますが、おそらく双極性障害の頻度が高いの誤りだと思います。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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