第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題91~95】

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91 中枢神経の先天奇形とその特徴の組合せで正しいのはどれか。

1. 小頭症:脳圧亢進
2. 滑脳症:脳溝増加
3. 二分脊椎:水頭症合併
4. Dandy-Walker症候群:後頭蓋縮小
5. Arnold-Chiari奇形:脊髄の頭蓋内嵌入

解答:3

解説

 二分脊椎とは、神経管閉鎖障害のうち腰仙部の脊髄・脊椎・皮膚などにみられる先天奇形であり、特に脊髄髄膜瘤では約90%に水頭症、ほぼ前例にChiariⅡ型奇形(小脳扁桃、小脳中部下部、延髄、第4脳室が大孔を通って頸椎管内へ下降変位したもの。第2頚髄を越えて陥入することが多い)を合併する。

 

1.× 小頭症は、脳の発育が悪く頭囲が身長、体重と比較して小さい状態である。脳圧亢進は水頭症である。
2.× 滑脳症は、脳溝「増加」ではなく減少である。
3.〇 正しい。二分脊椎は、水頭症合併する。ちなみに脊髄障害もきたしやすい。
4.× Dandy-Walker症候群(ダンディ・ウォーカー症候群)は、小脳虫部の形成不全と第四脳室嚢胞状拡大(後頭蓋拡大)などが特徴である。
5.× Arnold-Chiari奇形(アーノルド・キアリ奇形)は、小脳虫部、第4脳室、延髄などが頸椎管内へ嵌入する。嵌入(かんにゅう)とは、穴などに長い物がはまりこむこと。はめこむことである。

 

 

 

 

 

92 高齢者の肺炎の特徴として正しいのはどれか。

1. 高熱がみられる。
2. 誤嚥性肺炎が多い。
3. 肺尖部の病巣が多い。
4. 咳反射の亢進がみられる。
5. 死因となる例は減少している。

解答:2

解説

1. ✖ 必ずしも高齢者の場合、高熱とならない。なぜなら、免疫反応が低下しているため。
2. 〇 正しい。誤嚥性肺炎が多い。70歳以上では70%以上が、90歳以上では95%近くが誤嚥性肺炎であると指摘するデータがある。廊下により嚥下反射や咳反射機能の低下がみられる。そのため誤嚥性肺炎のリスクが増悪する。
3. ✖ 誤嚥性肺炎は、肺の後方部に好発する。肺尖部の病巣が多いのは肺結核である。
4. ✖ 咳反射の「亢進」ではなく低下がみられる。咳反射の他にも、嚥下反射や粘液線毛運動も障害される。
5. ✖ 死因となる例は、年々「減少」ではなく増加している。近年、脳血管疾患を抜いて日本人の死因第3位である。

 

 

 

 

93 急性心筋梗塞後の運動療法の効果として正しいのはどれか。

1. 梗塞範囲の減少
2. 心室破裂の減少
3. 心囊液貯留の減少
4. 左室駆出率の増加
5. 急性期心臓死の減少

解答:5

解説

1.× 梗塞範囲の減少は起こらない。なぜなら、心筋壊死は不可逆であるため。
2.× 心室破裂の減少はしない。なぜなら、心室破裂は心筋梗塞後1~2週間以内の急性期で起こりやすく、急性心筋梗塞の致死的合併症の1つであるため。症状が悪化する場合は緊急手術となる。
3.× 心囊液貯留の減少は起こらない。心囊貯留液が多い場合、静脈還流障害による身体所見では頸静脈怒張がみられる。急性心筋梗塞の合併症の1つとして、心破裂の一型で、心室中隔穿孔を来たすと急激な心タンポナーデを起こし、電気的機械的解離に至るため緊急手術が必要となる。
4.× 左室駆出率の増加はみられない。運動対応能の向上はみられる。
5.〇 正しい。急性心筋梗塞後の運動療法の効果として、急性期心臓死は減少する。心筋梗塞後の運動療法により心筋梗塞の再発が減少し,心臓血管死および全死亡が 20~25 % 減少するとされている。他にも、心疾患における運動療法に関するガイドラインよると、エビデンスAだけを抜粋すると、最高酸素摂取量増加、嫌気性代謝閾値増加、心筋虚血閾値の上昇による狭心症発作の軽減、同一労作時の心不全症状の軽減、最大下同一負荷強度での換気量減少、最大下同一負荷強度での心拍数減少、最大下同一負荷強度での心仕事量(二重積)減少、ミトコンドリアの増加、骨格筋酸化酵素活性の増大、毛細管密度の増加、Ⅱ型からⅠ型への筋線維型の変換、交感神経緊張の低下、冠動脈性事故発生率の減少などがあげられる。

心臓リハビリテーションの効果

①体力が回復し、スムーズに動けるようになる(運動耐容能の改善)。
②筋肉や骨が鍛えられ、疲れにくくなるとともに心臓の働きを助ける(心拍数減少)。
③動脈硬化のもととなる危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満)が軽減する(HDLコレステロール増加、中性脂肪の減少、肥満の改善)。
④血管が柔らかくなり、循環が良くなる(虚血徴候の軽減)。
⑤呼吸がゆっくりとして、息切れ感が軽減する(運動耐容能の改善)。
⑥自律神経を安定させ、動悸や不整脈が軽減する。
⑦不安やうつ状態が改善し気持ちが晴れやかになる。
⑧心筋梗塞の再発や突然死が減り、死亡率が減少する。

(参考:「心臓リハビリテーション(運動療法について)」神戸掖済会病院様HPより)

 

 

 

 

 

94 内分泌異常と病態の組合せで正しいのはどれか。

1. 下垂体前葉ホルモン欠損:先端巨大症
2. 甲状腺機能低下:Basedow病
3. 抗利尿ホルモン分泌亢進:尿崩症
4. 副甲状腺機能低下:テタニー
5. 副腎皮質機能低下:Cushing症候群

解答:4

解説

1. ✖ 下垂体前葉ホルモン欠損するとアジソン病や小人病となる。先端巨大症は、下垂体前葉ホルモンである成長ホルモンの過剰分泌で生じる。ちなみに、下垂体前葉からは6種類のホルモンが分泌されている。①成長ホルモン(欠損すると小人病)、②甲状腺刺激ホルモン、③副腎皮質刺激ホルモン(欠損するとアジソン病)、④性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)、⑤プロラクチン(催乳ホルモン)である。
2. ✖ 甲状腺機能低下すると橋本病となる。甲状腺機能亢進で、Basedow病(バセドウ病)である。
3. ✖ 抗利尿ホルモン分泌が低下することで尿崩症となる。多尿(3L/日以上)を呈する尿崩症には、抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌低下におる中枢性尿崩症と、ホルモンの作用障害による腎性尿崩症がある。抗利尿ホルモン分泌亢進となる疾患には、抗利尿ホルモン分泌異常症がある。
4. 〇 正しい。副甲状腺機能低下症では、血中副甲状腺ホルモンの低下により、血清カルシウムが低下し、テタニー(手足のしびれ)を起こす。テタニーの症状として、手・足・口唇のしびれ感、全身強直性痙攣などがみられる。
5. ✖ 副腎皮質機能低下で、アドソン病となる。副腎皮質機能亢進でCushing症候群(クッシング症候群)である。コルチゾールの過剰分泌により、満月様顔貌や中心性肥満を来たす。アドソン病は、るいそうと色素沈着が特徴的である。

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95 医療法で規定されていないのはどれか。

1. 医療提供の理念
2. 医療従事者の責務
3. 病院開設者の資格
4. 医療行為に対する診療報酬
5. 都道府県における医療計画の策定

解答:

解説

 医療法は、病院・診療所・助産所の開設・管理・整備の方法などを定める日本の法律である。国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない。

 

1~3.5.〇 医療提供の理念/医療従事者の責務/病院開設者の資格/都道府県における医療計画の策定は、規定されている。
4.× 医療行為に対する診療報酬は、健康保険法、国民健康保険法等に規定されている。医療保険を適応できる診療行為の種類と定点が事前に決まっており、提供した診療行為の点数に相当する金額が支払われる。

医療法で定められている内容の概略
  1. 医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項。
  2. 医療の安全を確保するために必要な事項。
  3. 病院、診療所および助産所の開設および管理に関して必要な事項。
  4. 医療提供施設相互間の機能分担のために必要な事項。
  5. 医療提供施設相互間の業務の連携を推進するために必要な事項。

 

4 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
落ち着いてアジソン覚えていきましょう。
今後ともよろしくお願いいたします。

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匿名

いつも拝見しております。52回94 解説が違っていると思います。下垂体前葉ホルモンは小人症で副腎皮質機能低下がアジソン病ではないでしょうか?よろしくお願いします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
下垂体前葉からは6種類のホルモンが分泌されています。
①成長ホルモン(欠損すると小人病)
②甲状腺刺激ホルモン
③副腎皮質刺激ホルモン(欠損するとアジソン病)
④性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)
⑤プロラクチン(催乳ホルモン)
なので、下垂体前葉ホルモンが欠損すると、小人病やアジソン病が起こります。

解説が分かりにくかったので、修正いたしました。
今後ともよろしくお願いいたします。

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