第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午前問題86~90】

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86 変形性膝関節症について正しいのはどれか。

1. 男性に多い。
2. 膝関節液は混濁している。
3. 内側楔状足底板が有用な場合が多い。
4. 初期の疼痛は動作開始時に出現しやすい。
5. エックス線像では外側関節裂隙が狭小化している場合が多い。

解答:

解説

1.× 「男性」ではなく、女性(中年期以降の肥満女性)に多い。
2.× 膝関節液は、混濁しない。なぜなら、変形性膝関節症は非炎症性の疾患であるため。関節液は淡黄色~透明である。ちなみに、関節液が混濁している場合、関節液の細菌培養検査をおこなうなど、化膿性膝関節炎が示唆される。
3.× 「内側楔状足底板」ではなく、外側楔状足底板が有用な場合が多い。なぜなら、変形性膝関節症のほとんどがO脚(内反膝)であるため。
4.〇 正しい。初期の疼痛は動作開始時に出現しやすい。変形性膝関節症の特徴である。
5.× エックス線像では外側関節裂隙が、「狭小化」ではなく、拡大している場合が多い。

 

 

 

 

 

87 第4腰椎変性すべり症の症候として誤っているのはどれか。

1. 頻尿
2. 下肢痛
3. 痙性歩行
4. 間欠性跛行
5. 会陰部の熱感

解答:3

解説

 変性すべり症の起こるものとして、下肢痛や間欠性跛行は有名である。また障害部位は、馬尾神経がまとまっている。したがって、尿や便など排泄の機能を支配している神経も通っているため、膀胱直腸障害をきたす。さらに、会陰部障害といって、股の付け根から陰部にかけての知覚障害やほてり感(熱感)が出る。よって、選択肢3.痙性歩行が第4腰椎変性すべり症の症候として誤っている。痙性歩行は、上位運動ニューロン障害で現れ、頚椎症性脊髄症にみられる。

 

1.× 頻尿は、重度になると膀胱直腸障害を来たす。
2.× 下肢痛(殿部を含む)は神経根が障害されると生じる。
4.× 間欠性跛行とは、歩行を続けることによって出現あるいは増悪するが、座位や前傾姿勢で2~3分や住むと急速に症状が回復することである。
5.× 会陰部の熱感(肛門周囲も含む灼熱感)が生じる。

 

 

 

 

88 脳血管障害について誤っているのはどれか。

1. 高血圧は脳出血の危険因子である。
2. くも膜下出血は女性よりも男性に多い。
3. 発作性心房細動は脳塞栓の危険因子である。
4. 癌に付随する凝固異常は脳塞栓の原因となる。
5. 慢性腎臓病(CKD)は脳卒中の危険因子である。

解答:2

解説

1.〇 正しい。高血圧のほかにも、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙、飲酒、炎症マーカーなどが脳出血の危険因子である。
2.× くも膜下出血は女性の方が多く、2/3は女性である。くも膜下出血は脳動脈瘤が原疾患として最も多い(80%以上、中高年から高齢者に好発)。
3.〇 正しい。心房細動のほかにも、機械弁、4週間以内の心筋梗塞などが危険因子となる。心房細動による脳塞栓症のリスク評価として、CHADS2スコアがある。
4.〇 正しい。がんの治療中に発症する脳卒中の約1/4は、トルソー症候群という病気である。トルソー症候群は、がん細胞が分泌するムチンやサイトカイン、組織因子などの物質が血栓の形成を促進することによって起こる。
5.〇 正しい。肥満、運動不足、飲酒、喫煙、ストレスなどの生活習慣は、慢性腎臓病(CKD)の発症に大きく関与している。そのため、腎機能が少し低下しているだけでも、心血管疾患の大きな危険因子となることが明らかになっている。

 

 

 

 

 

89 平均的な発症年齢が最も低いのはどれか。

1. 筋強直性ジストロフィー
2. 福山型筋ジストロフィー
3. Becker型筋ジストロフィー
4. Duchenne型筋ジストロフィー
5. 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

解答:2

解説

1.× 筋強直性ジストロフィーは、15~40歳代(男性にやや多い)に発症する。
2.〇 正しい。福山型筋ジストロフィーは、新生児~乳児期早期に発症する。
3.× Becker型(ベッカー型)筋ジストロフィーは、小児期~成人に発症する。
4.× Duchenne型筋ジストロフィーは、3~6歳に発症する。
5.× 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、小児~成人に発症する。

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90 多発性硬化症について正しいのはどれか。

1. 女性よりも男性に多い。
2. 再発と寛解を繰り返す。
3. 発症は50歳以上が多い。
4. 後遺障害を残すことは稀である。
5. 白色人種に比べて黄色人種に多い。

解答:2

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

1.3.× 男性よりも女性に多い。女性の方が3倍多いといわれている。15~50歳の女性(20歳代後半がピーク)である。
2.〇 正しい。再発と寛解を繰り返す。全体としては徐々に増悪する。
4.× 後遺障害を残し、進行すれば運動機能が低下して車いす生活となる。生命予後はあまりよくない。
5.× 逆である。黄色人種に比べて白色人種に多い。したがって、北方の寒冷地に発症頻度が高い。

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