第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 脳卒中で小脳皮質から上小脳脚に病巣がある場合にみられやすい症状はどれか。

1. 感覚障害
2. 運動麻痺
3. ジストニア
4. 動作時振戦
5. パーキンソニズム

解答4

解説

 上小脳脚の主体をなす線維は、小脳視床路小脳赤核路である。とはいえ、本問題は選択肢の中から一般的な小脳の働きを選択できれば正解となる。

1.× 感覚障害は、主に視床脊髄視床路大脳感覚野の障害などでみられるため不適切である。
2.× 運動麻痺は、主に錐体路の障害で起こるため不適切である。
3.× ジストニアとは、筋緊張の異常亢進による体幹・頚部の捻転などが起こる症状である。大脳基底核の障害でみられるため不適切である。
4.〇 正しい。動作時振とは、カップを口まで持ち上げるなどの随意運動時に生じるふるえである。小脳障害の典型的な症状である。
5.× パーキンソニズムは、黒質大脳基底核の障害などでみられる。

小脳障害

一般的に、企図振戦や眼振、筋トーヌス低下、運動失調、体幹動揺、構音障害、大字症などがみられる。

小脳半球が障害されると主に運動失調症状が現れ、虫部が障害されると平衡覚障害が現れる。

まとめ

聴覚:蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回

視覚:視神経→視交叉→外側膝状体→視放線→視覚野

外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)

大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索

 

前皮質脊髄路(錐体路の一部・運動)

大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束—延髄—交叉せずに脊髄前索を下降(10~25%程度)

重要事項①延髄で交差せずに同側に下降すること、②支配はL2まで。

 

前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)

感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

 

外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)

感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

 

 

 

 

 

27 球麻痺から発症した筋萎縮性側索硬化症で歩行が可能な患者への対応で正しいのはどれか。

1. 胸郭のストレッチを指導する。
2. 呼吸機能評価を1年に1回行う。
3. 栄養指導は誤嚥を認めてから行う。
4. 早期からプラスチック短下肢装具を導入する。
5. 鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングを指導する。

解答1

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。胸郭のストレッチを指導する。なぜなら、呼吸筋の萎縮に伴い胸郭の可動性低下がみられるため。
2.× 呼吸機能評価は、1年に1回では少なすぎるため不適当である。麻痺が進行して呼吸筋の麻痺が起こる可能性もあるため、定期的な呼吸筋の評価(最低でも2~3か月に1度)も必要である。
3.× 栄養指導は、「誤嚥を認めてから」ではなく、予防のため認める前から行う。早期から誤嚥予防や栄養指導、嚥下評価および必要な訓練・指導を行う必要がある。
4.× 早期からのプラスチック短下肢装具を導入は必要ない。なぜなら、本文から「歩行可能な患者」と表記されており、歩行障害はまだ認めないため。大腿四頭筋や足関節背屈筋の筋力低下し、歩行障害が出てきた段階(病気でいうと中期)で短下肢装具の導入を検討する。
5.× 鉄アレイを用いた上肢筋力トレーニングは不適当である。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は、上肢末端に始まる筋萎縮が特徴であり、後負荷のトレーニングとなるため。そのため自動運動自動介助運動を筋力維持の主体とする。

 

 

 

 

28 Duchenne型筋ジストロフィー児にみられる異常歩行はどれか。

1. 踵打ち歩行
2. 小刻み歩行
3. 逃避性歩行
4. 動揺性歩行
5. 酩酊歩行

解答4

解説

1.× 踵打ち歩行は、足を高く持ち上げ、地面を叩くように歩く様子が観察できる。脊髄性運動失調などで深部感覚障害を原因として起こる。
2.× 小刻み歩行(小歩症)は、前屈みで、ゆっくりと小刻みに、足を地面の上に滑らせるようにして歩く様子が観察できる。Parkinson病Parkinson症候群でみられる。
3.× 逃避性歩行(有痛性歩行)は、下肢の痛みを避けるため、患肢への荷重時間を短くして歩く様子が観察できる。関節疾患・炎症・外傷など様々な原因によると疼痛時にみられる。
4.〇 正しい。動揺性歩行(アヒル歩行)は、下腹部と殿部を突き出して腰椎前弯を強めた姿勢で、腰部を左右に振りながら歩く様子が観察できる。Duchenne型筋ジストロフィー児両中殿筋の低下・麻痺発育性股関節形成不全などが原因として起こる。
5.× 酩酊歩行は、歩くときに両足を開き、 酔ったように体幹を揺らしながら不安定に歩く様子が観察できる。小脳障害前庭障害が原因として起こる。

 

 

 

 

 

29 遠城寺式乳幼児分析的発達検査表で、月齢と獲得している機能の組合せで正しいのはどれか。

1. 5か月 : 人見知りをする。
2. 6か月 : ものにつかまって立っている。
3. 11か月 : コップを自分で持って飲む。
4. 12か月 : 積木を2つ重ねる。
5. 15か月 : 自分の姓名を言う。

解答3

解説

1.× 人見知りをするのは、10~11か月である 。
2.× ものにつかまって立っているのは、8~9か月である 。
3.〇 正しい。コップを自分で持って飲むのは、10~11か月である 。
4.× 積木を2つ重ねるのは、14~16か月である 。
5.× 自分の姓名を言うのは、27~30か月である 。

 

 

 

 

 

30 二分脊椎の病変部位と特徴の組合せで正しいのはどれか。

1. 第12胸髄 —長下肢装具を装着し、杖を使わずに歩行可能
2. 第1腰髄 — 短下肢装具を装着し、杖を使わずに歩行可能
3. 第2腰髄 — 下肢装具は使わずに、松葉杖を用いて歩行可能
4. 第3腰髄 — 尖足変形
5. 第4腰髄 — 踵足変形

解答5

解説

1.× 長下肢装具を装着し、杖を使わずに歩行可能は、T12以上残存している場合である。T12~L2レベルは、「骨盤帯付き長下肢装具とロフストランド杖を用いての歩行は訓練レベルで可能であるが、移動は車椅子やバギーが主体となる。」なぜなら、下肢筋はすべて麻痺か腸腰筋が効く程度であるため。
2.× 短下肢装具を装着し杖を使わずに歩行可能は、「第1腰髄」ではなく第4腰髄レベルである。
3.× 下肢装具は使わずに松葉杖を用いて歩行可能は、「第2腰髄」ではなく第2仙髄レベルである。
4.△ 尖足変形は、第3腰髄で起こり得る。第3腰髄レベルでは、大腿四頭筋まで効き、足関節・足部の自動運動はみられないため。つまり、足関節の内反または外反、尖足変形が生じうる可能性が高い。※厚生労働省の答えでは、5のみが正解となっているため、分かる方いましたらコメント欄にて教えてください。
5.〇 正しい。踵足変形は、第4腰髄で起こりやすい。なぜなら、第4腰髄レベル(短下肢装具と杖で実用歩行が可能)では、前脛骨筋が働くため。踵足変形とは、足のつま先が宙に浮いた状態で、踵だけが接地し、直立しながら歩行を行う状態である。

 

2 COMMENTS

松岡弥言

50aー26の①の解説の「視床脊髄路」は「脊髄視床路」だと思います!視床脊髄路だと表現的に下行路になっちゃうんで、、💦

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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