【PT専門】筋ジストロフィーについての問題「まとめ・解説」

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※問題の引用:厚生労働省より

※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

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【OT専門】筋ジストロフィーについての問題「まとめ・解説」

【共通問題飲み】筋ジストロフィーについての問題「まとめ・解説」

45回 午前37

37. 5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められるのはどれか。2つ選べ。

1.指這いでの上肢移動
2.足関節背屈制限
3.動揺性歩行
4.心不全徴候
5.動脈血二酸化炭素分圧の上昇

解答2.3

解説

筋ジストロフィーとは?

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。

【典型例の進行】
3歳頃:体幹・四肢の筋力低下が始まり、一旦歩行が可能になるものの、その後次第に転びやすくなる。症状は進行性で、次第に動揺性歩行や登攀性起立、ふくらはぎの仮性肥大などの所見が顕著になる。
10歳頃:上肢・体幹の筋力低下が著明となる。移動には車椅子が必要となる。
15歳頃:臥床中心となる。
20歳頃:呼吸障害や心不全で死亡する。骨格筋の他、心筋にも障害が見られることがある。

1.× 指這いでの上肢移動は、10歳頃のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。手動車いすが必要になる時期は、 肘関節屈曲拘縮もつ弱る時期と重なり、四つ這い→肘這い→ずり這い→指這いへと進行する時期である。
2.〇 正しい。足関節背屈制限は、5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。下腿三頭筋の短縮や仮性肥大により、足関節は底屈し、尖足変形を呈する。
3.〇 正しい。動揺性歩行は、5歳のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。動揺性歩行(アヒル歩行)は、下腹部と殿部を突き出して腰椎前弯を強めた姿勢で、腰部を左右に振りながら歩く様子が観察できる。Duchenne型筋ジストロフィー児や両中殿筋の低下・麻痺、発育性股関節形成不全などが原因として起こる。
4~5.× 心不全徴候/動脈血二酸化炭素分圧の上昇は、20歳頃のDuchenne型筋ジストロフィー児に認められる。20歳頃には、呼吸障害や心不全で死亡する。ちなみに、動脈血二酸化炭素分圧は、動脈血液中に取り込まれている炭酸ガスの圧力のことで、呼吸不全に対する呼吸状態の評価をする動脈血液ガス分析の検査項目のひとつである。

 

 

45回 午後38

38.Duchenne型筋ジストロフィーで初期から筋短縮が起こりやすい筋はどれか。2つ選べ。

1.腰方形筋
2.股関節内転筋群
3.大腿筋膜張筋
4.ハムストリングス
5.前脛骨筋

解答3.4

解説

MEMO

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。病状が進行していくと①腰椎の前弯、①股関節・膝関節の屈曲拘縮、③足部の尖足・内反変形が起こる。したがって、短縮しやすい筋としては、腸腰筋大腿筋膜張筋ハムストリングス下腿三頭筋(腓腹筋)である。

1.× 腰方形筋は、初期からの筋短縮は起こりにくい。症状が進行(車いす生活中心:10歳頃)し、脊椎側弯がみられるころには腰方形筋の短縮を認めることも多い。ちなみに、腰方形筋の【起始】腸骨稜と腸腰靭帯、腰椎肋骨突起、【停止】第12肋骨、腰椎肋骨突起、【作用】腰椎を同側に曲げる。両側が働けば腰椎を後ろへ曲げる(腰を反らす)である。
2.× 股関節内転筋群は、初期からの筋短縮は起こりにくい。症状が進行(車いす生活中心:10歳頃)し、股関節内転位がみられるころには股関節内転筋群の短縮を認めることも多い。
3.〇 正しい。大腿筋膜張筋は、初期からの筋短縮は起こりやすい。ちなみに、【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲・内旋・外転、膝関節伸展である。
4.〇 正しい。ハムストリングスは、初期からの筋短縮は起こりやすい。なぜなら、初期から股関節・膝関節の屈曲拘縮がおこるため。ちなみに、ハムストリングスは、大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋の総称である。
5.× 前脛骨筋は、初期からの筋短縮は起こりやすい。むしろ仮性肥大や足部の尖足・内反変形が起こる下腿三頭筋の短縮を認める。

参考にどうぞ↓

【暗記用】下肢筋の起始・停止・作用・神経を完璧に覚えよう!

 

 

47回 午後15

15 9歳の男児。Duchenne型筋ジストロフィー。独歩は可能だが、腹部を突き出し両肩を左右に振る動揺歩行と内反尖足とが顕著である。床からの立ち上がり動作では登はん性起立を示し、柱などにつかまればかろうじて立ち上がることができる。
 上肢に拘縮はなく、ゆっくりであるが両上肢を挙上することができる。
 この時期に行う理学療法士の対応で優先順位が高いのはどれか。

1.AFOを装着させ歩行時の内反尖足を矯正する。
2.体幹装具を装着させ歩行時の姿勢を矯正する。
3.松葉杖歩行の練習を行う。
4.四つ這い移動の練習を行う。
5.電動車椅子の購入を家族に提案する。

解答4

解説

Gowers徴候(登はん性起立)とは?

Gowers徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでみられる症状である。

1.× AFO(ankle-foot orthosis:短下肢装具)を装着させ、歩行時の内反尖足を矯正する優先度が低い。なぜなら、Duchenne型筋ジストロフィーは、下腿三頭筋の短縮により足関節は底屈し、尖足変形を呈するため。AFO(ankle-foot orthosis:短下肢装具)は、足関節の筋力低下に対して用いられることが多い。
2.× 体幹装具を装着させ歩行時の姿勢を矯正する優先度が低い。なぜなら、体幹装具を装着させるのは、車椅子のシーティングが必要になるステージ6以降である。ちなみに、本症例は、独歩・床からの立ち上がり動作が可能であることからステージ3〜4程度と考えられる。
3.× 松葉杖歩行の練習を行う優先度が低い。なぜなら、本症例は独歩可能であるため。進行するにつれ、①歩行器→②手すり→③手びき→④四つ這いのように理学療法を行っていく。 また、松葉杖は免荷のために使用されることが多い。
4.〇 正しい。四つ這い移動の練習を行うのが、選択肢の中で優先度が最も高い。なぜなら、ステージ5から、主な移動は四つ這いとなるため。本症例はステージ3〜4である。独歩は可能であるが、動揺歩行や内反尖足・登攀性起立などの様子がみられる。スムーズな移行のためにも練習しておく。
5.× 電動車椅子の購入を家族に提案するには時期尚早である。なぜなら、本症例は独歩可能であるため。歩行が不能になるステージ5以降に行っていく。

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

48回 午前37

37 Duchenne型筋ジストロフィーで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.関節拘縮は生じにくい。
2.知覚障害はまれである。
3.筋萎縮は遠位筋から始まる。
4.Gowers 徴候が特徴である。
5.5歳ころまでに歩行不能になることが多い。

解答2/4

解説

筋ジストロフィーとは?

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。

【典型例の進行】
3歳頃:体幹・四肢の筋力低下が始まり、一旦歩行が可能になるものの、その後次第に転びやすくなる。症状は進行性で、次第に動揺性歩行や登攀性起立、ふくらはぎの仮性肥大などの所見が顕著になる。
10歳頃:上肢・体幹の筋力低下が著明となる。移動には車椅子が必要となる。
15歳頃:臥床中心となる。
20歳頃:呼吸障害や心不全で死亡する。骨格筋の他、心筋にも障害が見られることがある。

1.× 関節拘縮を生じる。特に、ハムストリングスの短縮による膝関節の屈曲拘縮がみられる。
2.〇 正しい。知覚障害はまれである。なぜなら、筋ジストロフィーは、筋原性の疾患であるため。
3.× 筋萎縮は、「遠位筋」ではなく下肢近位筋(大殿筋)から始まる。
4.〇 正しい。Gowers徴候(ガワーズ徴候:登はん性起立)が特徴である。立ち上がる際に手を膝でおさえつつ、体を起こしていく方法である。
5.× 歩行不能になることが多いのは、「5歳ころ」ではなく、10歳前後である。

 

 

 

48回 午後37

37 Duchenne型筋ジストロフィーのステージ(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)で、ステージの定義に記載のない動作はどれか。

1.階段昇降
2.椅子からの立ち上がり
3.膝歩き
4.四つ這い移動
5.座位保持

解答3

解説

1.〇 階段昇降は、ステージ1~2の定義に含まれる。
2.〇 椅子からの立ち上がりは、ステージ3の定義に含まれる。
3.× 膝歩きの定義はない。
4.〇 四つ這い移動は、ステージ5の定義に含まれる。
5.〇 座位保持は、ステージ7の定義に含まれる。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

49回 午前10

10 9歳の男児。Duchenne型筋ジストロフィー。独歩は可能だが、腹部を突き出し両肩を左右に振る動揺歩行と内反尖足とが顕著である。床からの立ち上がり動作では登はん性起立を示し、柱などにつかまればかろうじて立ち上がることができる。上肢に拘縮はなく、ゆっくりであるが両上肢を挙上することができる。
 この時期に行う理学療法士の対応で優先度が高いのはどれか。

1. 電動車椅子の購入を家族に提案する。
2. 下肢の漸増抵抗運動を行う。
3. 四つ這い移動の練習を行う。
4. 松葉杖歩行の練習を行う。
5. 体幹装具を装着させる。

解答3

解説

本症例のポイント

・9歳の男児(Duchenne型筋ジストロフィー)
・独歩:可能(動揺歩行・内反尖足が顕著)
・床からの立ち上がり動作:登はん性起立、柱などにつかまればかろうじて立ち上がることができる
・上肢拘縮はなく、ゆっくりであるが両上肢を挙上することができる。
→本症例は、Duchenne型筋ジストロフィーのステージ4(歩行可能 イスからの立ち上がり不能)である。この時期は、過負荷に注意しつつ残存能力を維持(ストレッチや筋力維持)と、あわせて環境整備を行っていく。

1.× 電動車椅子の購入を家族に提案するのは、歩行が不能になるステージ5以降である。本症例には時期尚早である。
2.× 下肢の漸増抵抗運動(抵抗を徐々に強くする運動)は過負荷になるため行わない。主に、低負荷での立ち上がり練習や歩行練習を行う。
3.〇 正しい。四つ這い移動の練習を行う。現在ステージ4で独歩は可能であるが、動揺歩行や内反尖足、登攀性起立などの様子がみられる。ステージ5から、主な移動は四つ這いとなるため、スムーズな移行のためにも練習しておく。
4.× 本症例は独歩可能であるため、松葉杖歩行の練習は行わない。進行するにつれ、①歩行器→②手すり→③手びき→④四つ這いのように理学療法を行っていく。また、松葉杖は免荷のために使用されることが多い。 
5.× 体幹装具を装着させるのは、ステージ5以降である。脊柱変形が顕在化する前に導入することが望ましく、歩行不可能となった時が 1 つの判断時期となる。脊柱変形が強くなった後に導入すると、突出した骨が装具に圧迫し痛みを生じやすく、また胸郭の拘束によって呼吸困難感を引き起こすために長時間の装着が難しくなる。したがって、呼吸理学療法を同時に行うことが必要である(※参考:「筋ジストロフィー患者への装具療法」著:山本洋史)

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

 

49回 午後33

33 Duchenne型筋ジストロフィーで正しいのはどれか。

1. 常染色体劣性遺伝である。
2. 下肢の腱反射は亢進する。
3. 下肢の関節拘縮を生じやすい。
4. 閉塞性換気障害を生じやすい。
5. 前脛骨筋に仮性肥大を生じやすい。

解答3

解説

 筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。

 

1.× 「常染色体劣性遺伝」ではなく、X連鎖劣性遺伝である。
2.× 下肢の腱反射は、「亢進」ではなく低下する。なぜなら、筋の変性があり筋張力が小さくなるため。
3.〇 正しい。下肢の関節拘縮を生じやすい。股・膝関節屈曲拘縮足関節尖足拘縮がみられる。(腸腰筋・大腿筋膜張筋・ハムストリングス・下腿三頭筋に短縮が生じやすい)
4.× 「閉塞性換気障害」ではなく、拘束性換気障害を生じやすい。なぜなら、呼吸筋障害・胸郭や脊柱の可動性低下・変形を伴うため。
5.× 「前脛骨筋(下腿前面)」ではなく、下腿後面(ふくらはぎ)に仮性肥大(ふくらはぎが異常に太くなることで、原因はふくらはぎに筋肉ではなく、脂肪や結合組織が増えること)を生じやすい。

 

 

50回 午前28

28 Duchenne型筋ジストロフィー児にみられる異常歩行はどれか。

1. 踵打ち歩行
2. 小刻み歩行
3. 逃避性歩行
4. 動揺性歩行
5. 酩酊歩行

解答4

解説

1.× 踵打ち歩行は、足を高く持ち上げ、地面を叩くように歩く様子が観察できる。脊髄性運動失調などで深部感覚障害を原因として起こる。
2.× 小刻み歩行(小歩症)は、前屈みで、ゆっくりと小刻みに、足を地面の上に滑らせるようにして歩く様子が観察できる。Parkinson病Parkinson症候群でみられる。
3.× 逃避性歩行(有痛性歩行)は、下肢の痛みを避けるため、患肢への荷重時間を短くして歩く様子が観察できる。関節疾患・炎症・外傷など様々な原因によると疼痛時にみられる。
4.〇 正しい。動揺性歩行(アヒル歩行)は、下腹部と殿部を突き出して腰椎前弯を強めた姿勢で、腰部を左右に振りながら歩く様子が観察できる。Duchenne型筋ジストロフィー児両中殿筋の低下・麻痺発育性股関節形成不全などが原因として起こる。
5.× 酩酊歩行は、歩くときに両足を開き、 酔ったように体幹を揺らしながら不安定に歩く様子が観察できる。小脳障害前庭障害が原因として起こる。

 

 

 

50回 午後27

27 Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6(厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)に対する理学療法として適切なのはどれか。2つ選べ。

1. 四つ這い移動練習
2. 脊柱の可動域運動
3. 電動車椅子操作の練習
4. 短下肢装具装着での立位バランス練習
5. 台やテーブルを利用した立ち上がり練習

解答2/3

解説

 Duchenne型筋ジストロフィー機能障害分類のステージ6は、「四つ這いは不可能だが、いざりは可能」なレベルである。

 

1.× 四つ這い移動練習は、ステージ5で行う。ステージ5は、「起立歩行は不可能であるが、四つ這い移動は可能」である。ステージ6になると、四つ這い移動は不可能であるため理学療法として不適切である。
2.〇 正しい。脊柱の可動域運動である。可動域運動を全ステージで行う。なぜなら、筋ジストロフィーや神経疾患では関節拘縮の発生頻度が高いため。
3.〇 正しい。電動車椅子操作の練習である。ステージ5~7において車椅子の操作が必要になる。操作練習はステージ5~6程度から理学療法を行っていく。
4.× 短下肢装具装着での立位バランス練習は、ステージ4で行う。ステージ4は、「歩行可能レベル」である。
5.× 台やテーブルを利用した立ち上がり練習は、ステージ4で行う。選択肢4~5は、ステージ6のレベルでは不可能であることが考えられる。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

51回 午前30

30 四肢遠位部の筋力低下を特徴とするのはどれか。

1. 肢帯型筋ジストロフィー
2. 福山型筋ジストロフィー
3. 筋強直性ジストロフィー
4. Duchenne型筋ジストロフィー
5. 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー

解答3

解説

1.× 肢帯型筋ジストロフィーは、下肢帯または上肢帯の筋力低下がみられる。
2.× 福山型筋ジストロフィーは、近位筋優位の筋病変(全身性)である。
3.〇 正しい。筋強直性ジストロフィーは、四肢遠位部の筋力低下を特徴である。他にも筋委縮は、顔面筋・側頭筋・咬筋の萎縮、また胸鎖乳突筋の萎縮がみられる。
4.× Duchenne型筋ジストロフィーは、腰背部および四肢近位筋優位の筋力低下がみられる。Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。
5.× 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、顔面と上肢帯から上腕に分布する筋力低下がみられる。

筋強直性ジストロフィーとは?

筋強直性(筋緊張性)ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種で、常染色体優性遺伝(男女比ほぼ1:1)で大人で最も頻度の高い筋ジストロフィーである。そもそも進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。

【筋強直性ジストロフィーの特徴】
①中枢神経症状(認知症状、性格変化、傾眠)
②顔面筋の筋萎縮により西洋斧様顔貌(顔の幅が狭くなった顔貌)、嚥下障害、構音障害
③前頭部若禿(前頭部の脱毛)
④遠位優位の筋委縮
⑤ミオトニア(舌の叩打・母指球・把握)
⑥心伝導障害(房室ブロックなど)
⑦軽症例:糖尿病(耐糖能異常)、白内障がみられる。

(参考:「筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー」難病情報センター様HPより)

 

 

52回 午前35

35 Duchenne型筋ジストロフィーにみられる症状はどれか。

1. 踵足変形
2. 視力低下
3. 深部感覚障害
4. Babinski反射陽性
5. 下腿三頭筋仮性肥大

解答:5

解説

 Duchenne型筋ジストロフィーでは、近位筋優位の筋力低下が特徴の一つであり、登はん起立、殿筋・腓腹筋の仮性肥大、動揺歩行を呈す。また、早期より下腿三頭筋の短縮による尖足やハムストリングスの短縮による膝関節屈曲拘縮がみられる。

 

1.× 「踵足変形」ではなく尖足変形である。なぜなら、下腿三頭筋の短縮がおこるため。
2~4.× 視力低下/深部感覚障害/Babinski反射陽性は、筋疾患であるためいずれもみられない。ちなみに、Babinski反射陽性の場合、上位運動ニューロン障害を疑う。
5.〇 正しい。下腿三頭筋(腓腹筋など)の仮性肥大は、Duchenne型筋ジストロフィーで見られる症状である。

Duchenne型筋ジストロフィーの特徴的症状
  1. 幼児期から始まる筋力低下
  2. 動揺性歩行
  3. ガワーズ徴候
  4. 腓腹筋などの仮性肥大

 

 

 

52回 午後10

10 10歳の男児。Duchenne 型筋ジストロフィー。独歩不可能で、屋外は車椅子で、室内では四つ這い移動が可能。上肢に拘縮はなく、座位で上肢の使用が可能である。
 この時期に優先して行うべき評価はどれか。

1. 知能検査
2. 深部腱反射
3. 神経伝導速度
4. 呼吸機能検査
5. 前腕回内外試験

解答:

解説

機能障害度

ステージⅠ:階段昇降が可能で、手すりを必要としない。
ステージⅡ:歩行は可能。階段昇降で手すりを必要とする。
ステージⅢ:歩行は可能だが、階段昇降などは不可能。通常の高さの椅子であれば立ち上がり可能。
ステージⅣ:1人では歩けないが、介助歩行は可能。
ステージⅤ:起立・歩行は不可能だが、四つ這いなどでの移動は可能。
ステージⅥ:四つ這いも不可能だが、いざり移動は可能。
ステージⅥ:いざり移動も不可能。座位を保持することは可能。
ステージⅧ:座位保持ができず、寝たきりの状態。

 本症例は、ステージⅤであることが分かる。今後、呼吸筋の筋力低下や心筋変性により、呼吸困難・心不全など罹患するリスクが上がる。よって、優先的に検査するのは、選択肢4.呼吸機能検査となる。また、車椅子座位時間が長時間になると脊柱の変形が急速に進行し、呼吸筋の筋力低下により呼吸機能は低下する。ステージの進行に伴い、人工呼吸管理が必要となるため、車椅子座位時間が増えるこの時期に呼吸機能の定期的な検査は重要である。

 

1.× 知能検査の優先度は低い。なぜなら、Duchenne 型筋ジストロフィーでは、精神発達遅延は必ずしもみられないため。
2.× 深部腱反射の優先度は低い。なぜなら、深部腱反射は、上位運動ニューロン障害や下位運動ニューロン障害の評価であるため。Duchenne 型筋ジストロフィーは筋疾患である。
3.× 神経伝導速度の優先度は低い。なぜなら、神経伝導速度は、末梢神経障害で行う検査であるため。Duchenne 型筋ジストロフィーは筋疾患である。
5.× 前腕回内外試験の優先度は低い。なぜなら、前腕回内外試験は小脳性運動失調の評価であるため。

 

 

52回 午後42

42 Duchenne型筋ジストロフィーについて誤っているのはどれか。

1. 小学校3〜4年では書字動作は保たれる。
2. 小学校高学年ではトイレ動作に介助が必要である。
3. 小学校高学年での歩行消失後は四つ這い生活を積極的に指導する。
4. 小学校高学年から中学校では美術の時間に補助具の工夫が必要である。
5. 中学校から高校ではパソコンの入力装置に工夫が必要である。

解答:3

解説

1.〇 正しい。小学校3〜4年では、書字動作は保たれる。なぜなら、小学校3〜4年では歩行期であり、ステージ3~4と考えられるため。緻密運動は化膿である。
2.〇 正しい。小学校高学年では、トイレ動作に介助が必要である。なぜなら、小学校高学年では車椅子期であり、ステージ5~7と考えられるため。自力でのトイレ動作は困難である。
3.× 小学校高学年での歩行消失後は、四つ這い生活を積極的に指導するのは困難である。「四つ這い生活」ではなく車椅子操作を積極的に指導する。なぜなら、小学校高学年では車椅子期であり、ステージ5~7と考えられ、四つ這い指導はステージ5での理学療法であるため。ステージ6以降では四つ這いは不可能であり、できる範囲での移動動作や姿勢変換動作を用いて、ADL維持に努めることが望ましい。
4.〇 正しい。小学校高学年から中学校では美術の時間に補助具の工夫が必要である。なぜなら、小学校高学年では車椅子期であり、ステージ5~7と考えられ四肢・体幹筋力が低下しているため。
5.〇 正しい。中学校から高校ではパソコンの入力装置に工夫が必要である。なぜなら、中学校から高校では臥床期であり、ステージ5~8と考えられるため。他にも、車いすやコンピューター入力支援、環境改善等の生活援助が必要である。

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

 

 

 

53回 午後45

45.Duchenne型筋ジストロフィーのステージ5 (厚生省筋萎縮症研究班の機能障害度分類による)に対する理学療法で優先度が高いのはどれか。

1.座位保持練習
2.体幹装具の使用
3.徒手での咳嗽介助
4.下肢の漸増抵抗運動
5.椅子からの立ち上がり練習

解答:2

解説

厚生省「筋萎縮症」対策研究会による障害段階分類

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

1.× 座位保持練習はステージ6で行う。なぜなら、ステージ7まで座位保持は可能であるため。
2.〇 正しい。体幹装具の使用は、ステージ5で最も優先度が高い。なぜなら、Duchenne型筋ジストロフィーの患者は、歩行不能となるころから側弯症が進行することが多く、車椅子乗車時間が長くなることも体幹の変形をさらに進行させる原因となるため。ステージ5は、脊柱彎曲予防のための体幹装具(軟性コルセットなど)を使用していく。
3.× 徒手での咳嗽介助は、ステージ7~8で行う。なぜなら、ステージ5では体幹可動域訓練が主となるため。
4.× 下肢の漸増抵抗運動は行わない。なぜなら、筋損傷を招く危険(負担が大きすぎる)があるため。
5.× 椅子からの立ち上がり練習は実施自体困難である。なぜなら、座位から起立ができるのはステージⅢまでであるため。

筋ジストロフィー患者への装具療法

体幹装具は、脊柱変形が顕在化する前に導入することが望ましく、歩行不可能となった時が 1 つの判断時期となる。脊柱変形が強くなった後に導入すると、突出した骨が装具に圧迫し痛みを生じやすく、また胸郭の拘束によって呼吸困難感を引き起こすために長時間の装着が難しくなる。したがって、呼吸理学療法を同時に行うことが必要である(※引用:「筋ジストロフィー患者への装具療法」著:山本洋史)

 

 

 

 

54回 午後6

6.26歳の男性。20歳ころから乗り物のつり革を握ると放しにくいことを自覚し始め、四肢遠位筋優位の筋力低下を自覚するようになった。母親にも同様の症状がある。前頭部に脱毛があり、側頭筋や咬筋が委縮し、顔の幅が狭く頬がこけた顔貌している。
 認められる可能性が高いのはどれか。

1. アテトーゼ
2. Gowers徴候
3.ミオトニア
4. Lhermitte徴候
5. Romberg徴候

解答

解説

本症例の特徴

・20歳ころから乗り物のつり革を握ると放しにくい(把握ミオトニア)。
・四肢遠位筋優位の筋力低下。
・母親にも同様の症状(常染色体優性遺伝)。
・前頭部に脱毛がある(前頭部禿頭)禿頭:とくとう。
・側頭筋や咬筋が委縮し、顔の幅が狭く頬がこけた顔貌である(斧様顔貌)。
→本症例は「筋強直性ジストロフィー」が疑われる。筋強直性ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種である。進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。収縮した骨格筋が弛緩しにくくなる現象(ミオトニア現象)と、全身の筋力低下、筋萎縮を主症状とし、その他にも多彩な症状を呈する疾患である。

1. ×:アテトーゼ(athetosis)は、自分の意志に反して運動を行う不随意運動の一つ。 ゆっくりとねじるような運動を行うのが特徴的。 脳性麻痺などが原因となる。 線条体、視床下核、黒質、赤核などの障害で錐体外路系の障害によって生じる。
2. ×:Gowers徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでみられる症状である。
3. 〇:正しい。ミオトニアは、筋強直現象ともいい、筋力低下・筋萎縮である。筋強直とは、手を強く握るとスムーズに手を開けない(把握ミオトニア)などの現象である。筋強直は繰り返し同じ運動をすると軽くなるのが特徴(ウォームアップ効果)である。
4. ×:Lhermitte徴候(レルミット徴候)は、頚部屈曲時に感電したような痛みや刺すような痛みが背中から両脚、片方の腕、体の片側へ走ることをいう。多発性硬化症に特徴的な症状である。
5. ×:Romberg徴候(ロンベルグ徴候)は、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査である。陽性では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。

筋強直性ジストロフィーの特徴

①常染色体優性遺伝
②中枢神経症状(認知症状、性格変化、傾眠)
③西洋斧様顔貌
④前頭部若禿
⑤白内障
⑥嚥下障害
⑦構音障害
⑧筋委縮(顔面筋・側頭筋・咬筋・胸鎖乳突筋・遠位優位の筋委縮)
⑨ミオトニア(舌の叩打・母指球・把握)
⑩心伝導障害(房室ブロックなど)
⑪糖尿病

 

 

56回 午後15

15 32歳の男性。筋強直性ジストロフィー。手指を強く握ると筋強直のために開くのに時間がかかる。側頭部と頬部の筋萎縮と閉口障害を認める。筋力はMMTで頚部2、肩関節周囲2、肘関節周囲2、手指3、股関節周囲2、膝関節周囲2、足関節周囲1で、立位になればかろうじて短距離歩行可能である。労作時に動悸や呼吸苦の自覚はなく、SpO2の低下を認めない。
 正しいのはどれか。

1.ROM運動は筋強直に抵抗して行う。
2.食事は咀嚼回数を減らす形態にする。
3.等尺性収縮による筋力増強は行わない。
4.アンビューバックを活用した呼吸練習を行う。
5.下肢装着型の補助ロボット導入は有効でない。

解答

解説

筋強直性ジストロフィーとは?

筋強直性(筋緊張性)ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種で、常染色体優性遺伝(男女比ほぼ1:1)で大人で最も頻度の高い筋ジストロフィーである。そもそも進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。

【筋強直性ジストロフィーの特徴】
①中枢神経症状(認知症状、性格変化、傾眠)
②顔面筋の筋萎縮により西洋斧様顔貌(顔の幅が狭くなった顔貌)、嚥下障害、構音障害
③前頭部若禿(前頭部の脱毛)
④遠位優位の筋委縮
⑤ミオトニア(舌の叩打・母指球・把握)
⑥心伝導障害(房室ブロックなど)
⑦軽症例:糖尿病(耐糖能異常)、白内障がみられる。

(参考:「筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー」難病情報センター様HPより)

1.× ROM運動を筋強直に抵抗して行う必要はない。なぜなら、さらに筋の緊張を高める原因になるため。過緊張になっていない状態で、抵抗せずに緩める方向へROM訓練を行う事が望ましい。
2.〇 正しい。食事は咀嚼回数を減らす形態にする。なぜなら、本症例は、側頭部と頬部の筋萎縮による閉口障害を認められるため。食事は咀嚼回数を減らす形態にすることで、食事の際の負担を軽減させる効果が期待できる。
3.× 等尺性収縮による筋力増強は効果的である。なぜなら、本症例は、筋強直が見られているため。関節運動を伴わずに、筋力増強運動を実施できる。
4.× アンビューバックを活用した呼吸練習の優先度は低い。なぜなら、本症例は呼吸器の課題は見られないため。アンビューバックを活用した呼吸練習は、喀痰を補助する練習(最大吸気吸気量を維持する目的)として効果的である。ちなみに、アンビューバックとは、患者の口と鼻から、マスクを使って他動的に換気を行うための医療機器である。人工呼吸法の主流として、救急現場の第一線で幅広く用いられている。
5.× 下肢装着型の補助ロボット導入は有効である。なぜなら、四肢の遠位部筋から罹患していくため。本症例は、立位になればかろうじて短距離歩行可能であるため、現機能を維持できるようトレーニングしていく。ちなみに、下肢装着型の補助ロボットは医療機器承認を受け、①脊髄筋萎縮症、②球脊髄性筋萎縮症、③筋萎縮性側索硬化症、④シャルコー・マリー・トゥース病など神経・筋8疾患が保険適応となった。

 

 

 

 

 

57回 午前45

45 Duchenne型筋ジストロフィーの呼吸管理について正しいのはどれか。

1.非侵襲的陽圧換気療法〈NPPV〉の適応ではない。
2.舌咽呼吸は強制的に吸気する最大量を得るのに有効である。
3.咳最大流量〈cough peak flow〉は咳介助を行う目安にならない。
4.呼吸管理の適応になる時期は機能障害度ステージⅣからである。
5.排痰補助装置による咳介助は徒手による咳介助に優先して行われる。

解答

解説

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ

ステージ1 歩行可能 介助なく階段昇降可能(手すりも用いない)
ステージ2 階段昇降に介助(手すり、手による膝おさえなど)を必要とする
ステージ3 階段昇降不能 平地歩行可能 通常の高さのイスからの立ち上がり可能
ステージ4 歩行可能 イスからの立ち上がり不能
ステージ5 歩行不能 四つ這い可能
ステージ6 四つ這い不能だが、いざり移動可能
ステージ7 這うことはできないが、自力で坐位保持可能
ステージ8 ベッドに寝たままで体動不能 全介助

筋ジストロフィーは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。

1.× 非侵襲的陽圧換気療法〈NPPV〉の適応である。Duchenne型筋ジストロフィーは、病気の進行に伴い、 呼吸筋の筋力低下により呼吸障害を呈するため。20歳頃には、呼吸障害や心不全で死亡する。非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。
2.〇 正しい。舌咽呼吸(舌咽頭呼吸、カエル呼吸)は、強制的に吸気する最大量を得るのに有効である。最大強制吸気量のための肺内への送気に利用されることが多い方法である。筋萎縮性側索硬化症患者やDuchenne型筋ジストロフィーに適応となる。使用目的は、①人工呼吸器の離脱や呼吸維持、②効果的な咳の維持、③会話時の声量増加・リズム正常化、④肺実質の拡張性維持と微小な無気肺の予防である。舌咽呼吸の指導は、ガイドラインによるとC1(行うことを考慮してもよいが、十分な科学的根拠がない)であり、バッグバルブマスク(救急蘇生用バッグ)による送気や非侵襲的陽圧換気療法(従量式調節換気に限る)などの代替手段も増えてきている。
3.× 咳最大流量〈cough peak flow〉は、咳介助を行う目安となる。なぜなら、咳最大流量〈cough peak flow〉は、気道分泌物喀出能力の参考ともなるため。咳介助には、①徒手によるもの、②機械によるものがある。徒手による咳介助は、患者の胸郭下部に介助者の両手を置き、咳に合わせて圧迫し、呼気流速を高めて排痰をしやすくする手技である。咳最大流量は、ピークフローメーターや電子式診断用スパイロメータにて測定できる。
4.× 呼吸管理の適応になる時期は、機能障害度ステージⅣではなく「ステージⅤ」からである。ステージⅤは、歩行不能、四つ這い可能な状態である。つまり、車椅子座位時間が長時間になる。したがって、脊柱の変形が急速に進行し、呼吸筋の筋力低下により呼吸機能は低下する。ステージの進行に伴い、人工呼吸管理が必要となるため、車椅子座位時間が増えるこの時期に呼吸機能の定期的な検査は重要であり、呼吸管理の適応になる時期である。
5.× 逆である。徒手による咳介助は、排痰補助装置による咳介助に優先して行われる。なぜなら、排痰補助装置による咳介助は呼吸機能障害により咳が弱く、排痰が困難な場合に用いられるため。徒手による介助咳では、予防的な観点と排痰が困難となった場合でも有効とされている。

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法

非侵襲的陽圧換気〈NPPV〉療法は、気管切開することなくマスクを介して換気を行う治療法である。高二酸化炭素血漿を伴う呼吸不全(Ⅱ型呼吸不全)が対象となる。非侵襲的陽圧換気は、挿管をせずに鼻・口にマスクを使用した陽圧換気法で、患者にとって負担の少ない補助換気法である。気管内挿管が不要であるため患者は、苦痛が少ないが、挿管をして換気を行う侵襲的陽圧換気法の方が気道確保や換気は確実である。

【睡眠時のNPPVの適応】
①慢性肺胞低換気(肺活量が60%以下の場合はハイリスク)
②昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以下)
③睡眠時SpO2モニターで、apnea-hypopnea index(AHI)が10/時間以上、SpO2が92%未満になることが4回以上か、全睡眠時間の4%以上

【睡眠時に加えて覚醒時のNPPVの適応】
①呼吸困難に起因する嚥下困難
②ひと息に長い文章を話せない
③慢性肺胞低換気症状を認め、昼間に酸素飽和度以下(94%以下)または高二酸化炭素血症(45mmHg以上)

(引用:NPPVガイドライン改訂第2版より)

 

 

 

 

58回 午後34

34.Duchenne型筋ジストロフィーで正しいのはどれか。

1.知的障害はまれである。
2.筋萎縮は遠位筋から始まる。
3.発症初期から関節拘縮が生じやすい。
4.5歳ごろまでに歩行不能になることが多い。
5.筋力低下が進行すればGowers徴候がみられる。

解答

解説

1.× 知的障害は「まれである」と一概にいいがたい。男児の約3分の1で、主に言語能力に影響を及ぼす、軽度の知的障害がみられることが報告されている。ちなみに、知的障害とは、「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の支援を必要とする状態にあるもの」と定義されている。状況の判断能力が低く、他者の発言を被害的に受け取る傾向が強い。注意されたことを叱責と捉えるなど自信がなく、自分の気持ちを表現することが苦手である。知的障害では、抽象的概念の形成が困難で、言語概念の形成も遅れることが多く、学習障害を呈する。
2.× 筋萎縮は、「遠位筋」ではなく下肢近位筋(大殿筋)から始まる。したがって、動揺性歩行がみられる。
3.× 発症初期から関節拘縮が「生じやすい」と一概にいいがたい。最初の症状は、発達の遅れ(特に歩き始めるのが遅れる)のほか、歩く、走る、飛び上がる、階段を昇るといった動作困難である。
4.× 歩行不能になることが多いのは、「5歳ごろまで」ではなく10歳前後である。
5.〇 正しい。筋力低下が進行すればGowers徴候(ガワーズ徴候:登はん性起立)がみられる。Gowers徴候(ガワーズ徴候:登はん性起立)とは、立ち上がる際に手を膝でおさえつつ、体を起こしていく方法である。筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

筋強直性ジストロフィーとは?

筋強直性(筋緊張性)ジストロフィーとは、進行性筋ジストロフィー内の一種で、常染色体優性遺伝(男女比ほぼ1:1)で大人で最も頻度の高い筋ジストロフィーである。そもそも進行性筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性及び壊死を主病変とし、進行性の筋力低下や萎縮をきたす遺伝性疾患である。

【筋強直性ジストロフィーの特徴】
①中枢神経症状(認知症状、性格変化、傾眠)
②顔面筋の筋萎縮により西洋斧様顔貌(顔の幅が狭くなった顔貌)、嚥下障害、構音障害
③前頭部若禿(前頭部の脱毛)
④遠位優位の筋委縮
⑤ミオトニア(舌の叩打・母指球・把握)
⑥心伝導障害(房室ブロックなど)
⑦軽症例:糖尿病(耐糖能異常)、白内障がみられる。

(参考:「筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー」難病情報センター様HPより)

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