第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)の運動方向と参考可動域の組合せで正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 肩伸展 : 60°
2. 手橈屈 : 25°
3. 肘伸展 : 10°
4. 肩外旋 : 80°
5. 肩甲帯伸展 : 20°

解答2/5

解説

1.× 肩伸展は、「60°」ではなく50°である。
2.〇 正しい。手橈屈は、25°である。
3.× 肘伸展は、「10°」ではなくである。
4.× 肩外旋は、「80°」ではなく60°である。
5.〇 正しい。肩甲帯伸展は、20°である。

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22 肘関節を最大伸展させたときの表記で屈曲拘縮を示すのはどれか。2 つ選べ。

1. 屈曲 : -10°
2. 屈曲 : 10°
3. 伸展 : -10°
4. 伸展 : 0°
5. 伸展 : 10°

解答2/3

解説

屈曲拘縮とは、伸展が制限された状態である。肘関節の伸展角度は5°である。

1.5. × 屈曲-10°伸展10°である。
2.3. 〇 正しい。屈曲10°伸展-10°であり、屈曲拘縮を示す。
4. × 伸展0°は、参考可動域5°と比較すると軽度の屈曲拘縮(正常範囲レベル)であるが、選択肢の中にさらに大きい屈曲拘縮がある。

 

 

 

 

 

23 Daniels らの徒手筋力テストで、腓腹筋の検査をする際に代償的に働く筋はどれか。

1. 後脛骨筋
2. 前脛骨筋
3. 長母指伸筋
4. 長指伸筋
5. 母指外転筋

解答1

解説

腓腹筋の作用は、膝関節屈曲・足関節底屈、踵の挙上である。

 

1.〇 正しい。後脛骨筋の作用は、足関節底屈、内返しである。
2.× 前脛骨筋の作用は、足関節背屈、内返しである。
3.× 長母指伸筋の作用は、足関節背屈、母趾の伸展である。
4.× 長指伸筋の作用は、第2~5趾の伸展、足関節背屈、外返しである。
5.× 母指外転筋の作用は、母趾基節骨の屈曲、外転である。

 

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24 脊髄小脳変性症に比べて多発性硬化症に特徴的なのはどれか。

1. 痙縮
2. 運動失調
3. 嚥下障害
4. 構音障害
5. 有痛性けいれん

解答5

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

よって、選択肢5有痛性けいれんである。

1.× 痙縮は、どちらでも起こりうる。脊髄小脳変性症は、小脳症状のみが目立つ純粋小脳型と、小脳以外の症状が目立つ非純粋小脳型に大別され、後者では脳幹の症状をしばしば合併するため痙縮が起こる。多発性硬化症は、大脳白質病変や脊髄病変による錐体路障害で痙縮が起こる。
2.× 運動失調は、どちらでも起こりうる。運動失調は脊髄小脳変性症の主症状であり、多発性硬化症は頻度は少ないが小脳に病変が及べば起こる。
3.4.× 嚥下障害/構音障害は、どちらでも起こりうる。脊髄小脳変性症の非純粋小脳型は、脳幹(特に延髄)に変性が及ぶため、しばしば球麻痺を来し、嚥下障害を起こす。多発性硬化症は、脳幹病変による球麻痺や大脳の多発病変による仮性球麻痺によって嚥下障害を起こす。

”脊髄小脳変性症とは?多系統萎縮症とは?”

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

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25 視床出血の発症後2か月で患側上肢にアロディニアを認める。発症要因はどれか。

1. 中枢神経系の可塑的変化
2. 上肢屈筋群の筋緊張の亢進
3. 肩関節周囲筋への運動の過負荷
4. 腱板部分断裂による炎症
5. 肘関節の拘縮変形

解答1

解説

 アロディニア(allodynia:異痛症)とは、通常では疼痛をもたらさない程度の刺激が、すべて疼痛として認識される感覚異常のことである。視床出血の発症後2カ月で認める患側上肢の症状であることから、視床痛の症状の一つとしてのアロディニアを生じていると考えられる。

1.〇 正しい。中枢神経系の可塑的変化である。アロディニアは、視床出血(中枢神経系の可塑的変化)の発症後2カ月で認める患側上肢の症状であることから、視床痛の症状の一つとしてのアロディニアを生じていると考えられる。痛み刺激が持続すると、侵害受容ニューロンの感受性が亢進して、痛み関連のニューロンの興奮性の変化が生じている。また、神経の過敏化には、末梢性の過敏化と中枢性の過敏化があり、特に脊髄後角の可塑的変化が原因の一つとの報告もある。適切な鎮痛処置をして、可塑的変化を予防することが慢性痛に移行させないことにつながるため、早期診断が重要である。

2~5. 上肢屈筋群の筋緊張の亢進/肩関節周囲筋への運動の過負荷/ 腱板部分断裂による炎症/肘関節の拘縮変形/は、アロディニアとは異なる。なぜなら、アロディニアとは、通常では疼痛をもたらさない程度の刺激が、すべて疼痛として認識される感覚異常のことであるため。

 

2 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘の通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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