第50回(H27) 理学療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

 

16 70歳の男性。身長170cm、体重60kg。慢性心不全でNYHA分類classⅡ。在宅におけるリハビリテーションを行っている。
 在宅での生活と運動指導で正しいのはどれか。

1. 安静時間を長くする。
2. Borg指数で15程度の運動を勧める。
3. 体重増加は栄養改善の良い指標である。
4. 疲労感が残存しているときは運動を休む。
5. 症状に特別な変化がない場合は服薬を中止する。

解答4

解説

 NYHA分類classⅡは、「安静時は障害がないが、日常労作のうち比較的強い労作(例えば、階段昇降、坂道歩行など)によって、呼吸困難・疲労・などの愁訴が出現する」レベルである。NYHA分類classⅡ~Ⅲは、運動療法の適応となる(安定期にある心不全の場合)。

 

1.× 安静時間を長くする必要はない。むしろclassⅡは、1日30~60分週3~5日程度の適度な運動が推奨される。冠動脈硬化・高血圧など心臓機能に関わる合併症を予防するのに効果的である。
2.× Borg指数で15程度ではなく、12~13程度の運動を勧める。Borg指数12~13程度は「ややきつい」であり、Borg指数15は「きつい」であり負荷が強すぎるため不適切である。
3.× 体重増加は、一概に栄養改善の良い指標とは言い切れない。なぜなら、体重増加の理由として、心不全の増悪徴候である可能性があるため。他にも心拍出量低下による浮腫の可能性もある。過去1週間以内に、体重が2kg以上増加した心不全は、運動療法の相対的禁忌である。
4.〇 正しい。疲労感が残存しているときは運動を休む。なぜなら、運動による自覚症状の悪化(疲労・めまい・など)は相対的禁忌にあたるため。
5.× 症状に特別な変化がない場合でも服薬を中止するのは不適切である。なぜなら、服薬を中断すると心不全悪化しかねないためである。血栓症予防・血圧コントロールのためにも服薬は続けなければいけない。また、自己判断による服薬中止は危険である。

 

 

 

 

 

17 80歳の女性。多発性脳梗塞。動作の観察から、明らかな運動麻痺はみられないが軽度の感覚障害が予想される。軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい。
 深部感覚検査として適切なのはどれか。

1. 非検査肢の自動運動による模倣試験
2. 非検査肢の他動運動による模倣試験
3. 検査肢の自動運動による再現試験
4. 検査肢の他動運動による再現試験
5. 関節定位覚(母指探し)検査

解答5

解説

 本症例は、軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくいため、手順がシンプルなものを選択する。

 

1~2.× 非検査肢の自動運動による模倣試験/非検査肢の他動運動による模倣試験は、不適切である。模倣試験は、再現試験を反対氏で同じ動作を示すことによって評価できる。再現試験とは、深部感覚のうち関節位置覚が障害されている場合、障害側を他動的または自動的に動かし、再び同じ動作をしてもらうものである。模倣試験や再現試験のような検査は理解が不足している患者では適切でない。
3~4.× 検査肢の自動運動による再現試験/検査肢の他動運動による再現試験は、不適切である。再現試験とは、深部感覚のうち関節位置覚が障害されている場合、障害側を他動的または自動的に動かし、再び同じ動作をしてもらうものである。模倣試験や再現試験のような検査は理解が不足している患者では適切でない。
5.〇 正しい。関節定位覚(母指探し)検査は、一側の母指(固定肢)を反対側の手(運動肢)でつかませる方法である。固定肢の固有感覚機能を簡便に評価できる。選択肢の中から最も手順がシンプルであるため適切である。

 

 

 

 

 

18 62 歳の男性。スパイログラムのフローボリューム曲線を図に示す。
 最も考えられるのはどれか。


1. 肺癌
2. 肺線維症
3. 肺葉切除後
4. 上気道狭窄
5. 慢性閉塞性肺疾患

解答5

解説

1.× 肺癌は、進行期~末期になるまでは呼吸不全の症状は起こりにくい。また、肺癌の85%は呼吸不全が起こらないというデータもある。肺癌(進行期~末期)で、気管を閉塞するようになれば肺気量が低下する。
2.× 肺線維症は、呼気流速の低下はみられず、全肺気量が低下し、肺活量・残気量も低下する。肺の拡張障害のため拘束性障害である。肺実質(間質)の線維化により肺が広がりにくくなるものである。
3.× 肺葉切除後は、呼気流速の低下はみられない。肺容積の減少により全肺気量が低下するため、肺活量・残気量の低下がみられる。
4.× 上気道狭窄は、高肺気量での呼気流速が低下する凸型のフローボリューム曲線となる。
5.〇 正しい。慢性閉塞性肺疾患である。本症例のフローボリューム曲線は、ピークフローから急に呼気流速が下がる凹型を示しており、慢性閉塞性肺疾患が認められる。肺胞隔壁の破壊により肺が縮みにくくなり、呼気が吐き出しにくくなるという閉塞性障害の病態を呈する。

 

 

 

 

 

19 82歳の女性。1人暮らし。2階建て住居の1階にある居室でベッドを使用していた。敷居につまずき転倒し、大腿骨転子部骨折を受傷した。骨接合術後、屋内歩行は自立し、屋外歩行はT字杖にて5分程度可能となった。
 自宅に退院するにあたり適切なのはどれか。

1. 敷居の高さは5cmに統一する。
2. 居室にじゅうたんを敷く。
3. 玄関に手すりを設置する。
4. スリッパを使用する。
5. 寝具は床に敷く。

解答3

解説

1.× 敷居の高さは5cmに統一しても意味がない。受傷前も敷居で転倒されていることから敷居は解消すべきである。
2.× 居室にじゅうたんを敷くのは不適切である。なぜなら、じゅうたんはさらにつまずきの危険性を高めるため。
3.〇 正しい。玄関に手すりを設置する。本症例は現在、屋外歩行ではT字杖を使用している。玄関に手すりを設置することで転倒予防に有用である。
4.× スリッパを使用するのは不適切である。なぜなら、スリッパでの移動は、すり足になりやすく転倒の危険性が高まるため。
5.× 寝具は床に敷くのは不適切である。なぜなら、本症例は大腿骨転子部骨折の術後で負担をかけることは転倒のリスクであるため。ベッドの方が股関節への負担が少なく、転倒の予防につながる。

 

 

 

 

 

20 60歳の男性。脳梗塞による片麻痺と高次脳機能障害に対して理学療法を実施している。時折、能力以上の動作を行おうとするために転倒のリスクが指摘されていた。理学療法終了後、搬送担当者がわずかに目を離した間に立ち上がりバランスを崩して床に座りこんだが、明らかな打撲や血圧の変化はみられなかった。
 対応として適切でないのはどれか。

1. 家族に経過を説明する。
2. 再発防止の具体案を提案する。
3. 口頭で速やかに主治医へ報告する。
4. 発生した状況を詳細に文書で報告する。
5. 理学療法士に責任がないことを明確にする。

解答5

解説

1.〇 正しい。家族に経過を説明する。家族に説明することで、家族への協力を得られるだけではなく、面会時や退院時での事故防止にもつながる。
2.〇 正しい。再発防止の具体案を提案する。具体策を出すことで再発防止につながる。
3.〇 正しい。口頭で速やかに主治医へ報告する。本症例は、明らかな打撲や血圧の変化はみられなかったが、文章を書いて、主治医までが読むまでに患者の状態が変わるかもしれない。速やかに口頭で主治医に報告する必要がある。
4.〇 正しい。発生した状況を詳細に文書で報告する。インシデント・アクシデントのレポート提出を行い、患者家族への説明責任や、再発防止に努める責任がある。
5.× 理学療法士に責任がないことを明確にするのは不適切である。本症例は、高次脳機能障害と転倒のリスクが指摘されていた。また、理学療法士が事前に搬送担当者に患者の転倒リスクを説明しておけば防げたかもしれない

 

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