第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午後問題66~70】

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66 脳神経とその働きの組合せで正しいのはどれか。

1.顔面神経:軟口蓋の挙上
2.三叉神経:下顎の運動
3.舌咽神経:舌の運動
4.舌下神経:唾液分泌
5.迷走神経:口唇閉鎖

解答
解説
1.× 顔面神経とは、表情筋の運動、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。
・軟口蓋の挙上は、舌咽神経迷走神経である。

2.〇 正しい。三叉神経:下顎の運動
・三叉神経とは、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。

3.× 舌咽神経とは、知覚・運動・分泌を受けもつ混合神経で、舌の後部3分の1の感覚や咽頭筋の運動を支配する。 また分泌線維は耳下腺に分布し、唾液の分泌を司る。 鼓室粘膜の知覚もこの神経が支配する。
・舌の運動は、舌下神経である。

4.× 舌下神経とは、舌の運動を支配する運動神経である。
・唾液分泌は、顔面神経(顎下腺、舌下腺)や舌咽神経(耳下腺)である。 

5.× 迷走神経とは、感覚神経・運動神経の一つである。嚥下運動や声帯の運動、耳介後方の感覚などに作用する。内臓(胃、小腸、大腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。刺激すると徐脈、咳、嘔吐などを生じる。強い痛みや精神的ショックなどが原因で、迷走神経が過剰に反応すると、心拍数や血圧の低下、失神などを引き起こす(迷走神経反射)。
・口唇閉鎖は、顔面神経である。

(※図引用:「イラストでわかる歯科医学の基礎 第4版 」永未書店HPより)

 

 

 

67 排尿に関与する神経で正しいのはどれか。

1.脳における排尿中枢は延髄にある。
2.外尿道括約筋は下腹神経支配である。
3.内尿道括約筋は陰部神経支配である。
4.交感神経路の興奮は膀胱を弛緩させる。
5.副交感神経路は第11胸髄~第2腰髄レベルから生じる。

解答
解説
1.× 脳における排尿中枢は、「延髄」ではなくにある。排尿反射とは、橋排尿中枢を介した反射により、蓄尿された尿が体外に排出されることである。正常の排尿には、膀胱排尿筋の収縮、内尿道括約筋と外尿道括約筋の弛緩が行われている。

2.× 外尿道括約筋は、「下腹神経支配」ではなく陰部神経(体性神経)である。蓄尿時には内・外尿道括約筋が収縮し蓄尿を維持し、排尿時には、内・外尿道括約筋が弛緩することで尿が尿道を通り排泄される。

3.× 内尿道括約筋は、「陰部神経支配」ではなく、排尿時は骨盤神経(副交感神経)・随意的に尿を止めるときは下腹神経(交感神経)である。
・内尿道括約筋とは、蓄尿時に収縮し、排尿時に弛緩する。

4.〇 正しい。交感神経路の興奮は、膀胱を弛緩(尿閉)させる。交感神経路の興奮は、膀胱平滑筋(排尿筋)は弛緩し、内尿道括約筋は収縮して尿をためる方向に働く(蓄尿期)。

5.× 副交感神経路は、「第11胸髄~第2腰髄レベルから」ではなく、骨盤神経(S2~4レベル)で生じる。第11胸髄~第2腰髄レベルから生じるのは交感神経で、主に蓄尿に関与する。

(今井昭一:薬理学.標準看護学講座5、金原出版、1998より改変)

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68 男性生殖器系で正しいのはどれか。

1.勃起中枢は腰髄にある。
2.陰茎海綿体神経は動脈収縮作用をもつ。
3.射精は副交感神経の作用を介して起きる。
4.性的刺激による勃起には辺縁系が関与する。
5.射精後の精子は女性の膣内で1週間程度生存する。

解答
解説
1.× 勃起中枢は、「腰髄」ではなく仙髄(S2~4)にある。副交感神経(骨盤神経)が陰茎の海綿体平滑筋を弛緩させ、血流を増やすことで勃起を起こす。ちなみに、腰髄にあるのは射精中枢(L1〜L2)である。

2.× 陰茎海綿体神経は、「動脈収縮作用」ではなく「動脈拡張作用と静脈閉鎖」をもつ。陰茎海綿体神経とは、副交感神経線維を含み、陰茎動脈を拡張させ、陰茎の勃起組織を支配する神経である。勃起時には、動脈を弛緩、勃起組織に血液を流入させ、それと同時に静脈を収縮させることで、血液の逃げ道をなくし、勃起を起こす。

3.× 射精は、「副交感神経」ではなく交感神経(下腹神経)の作用を介して起きる。勃起は副交感神経の作用を介して起こる。陰部の刺激が陰部神経を介して、射精中枢を興奮させ、それが一定のレベルを超えると射精中枢から交感神経(下腹神経)に刺激が伝わる。

4.〇 正しい。性的刺激による勃起には辺縁系が関与する。性的刺激(視覚・触覚・心理的要因)は大脳皮質を介し、辺縁系(特に視床下部)で統合され、勃起中枢(S2〜S4)を興奮させる。視床下部の性行動中枢は勃起・射精の両方に関与する。

5.× 射精後の精子は女性の膣内で、「1週間程度」ではなく48~72時間生存する。なぜなら、女性の膣内は酸性に保たれているため。精子は酸性の環境に弱く、腟内の精子は射精後約30分で急速に運動性が失われ、受精能力がなくなる。精子自体、膣内でなければ1週間程度生存する。

大脳辺縁系とは?

大脳辺縁系は脳梁を取り囲むように大脳の内側部に存在し、本能・情動・記憶などを司る構造物の総称である。構成要素としては、辺縁葉(梁下野、帯状回、海馬傍回)、海馬、扁桃体、乳頭体、中隔核などがあげられる。

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69 嫌気的代謝の過程で生成される物質はどれか。

1.アミノ酸
2.クエン酸
3.フマル酸
4.ピルビン酸
5.イソクエン酸

解答
解説

嫌気的代謝(解糖系)とは?

解糖系とは、生体内に存在する生化学反応経路の名称であり、グルコースをピルビン酸などの有機酸に分解し、グルコースに含まれる高い結合エネルギー(ATP)を生物が使いやすい形に変換していくための代謝過程である。グルコースから生じたピルビン酸は、還元され最終産物として乳酸になる。このグルコースから乳酸への変換経路は、酸素の関与なしに起こりうるので、嫌気的代謝(解糖)と呼ばれる。

【クエン酸回路とは?】
クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

1.× アミノ酸は、タンパク質から生成される。アミノ酸は、結合してペプチドとなり、さらに高次構造(タンパク質の高次構造)が構成される。その働きは、触媒、酵素など他の分子の輸送や貯蔵、物理的支持や免疫防御、運動の発生、神経インパルスの伝達、細胞の増殖や分化の制御と、実にさまざまである。

2~3.5.× クエン酸/フマル酸/イソクエン酸はクエン酸回路(好気的代謝)である。他には、オキサロ酢酸・α-ケトグルタル酸・サクシニルCoA・コハク酸・リンゴ酸がある。

4.〇 正しい。ピルビン酸が嫌気的代謝の過程で生成される物質である。この反応は酸素の有無にかかわらず起こるが、酸素がない条件(嫌気的)では、ピルビン酸は乳酸発酵によって乳酸へ変換される。

 

 

 

70 前腕回内の作用をもつのはどれか。2つ選べ。

1.上腕筋
2.腕橈骨筋
3.上腕二頭筋
4.上腕三頭筋
5.橈側手根屈筋

解答2,5
解説
1.× 上腕筋は、肘関節屈曲に働く。【起始】上腕骨の内側および外側前面の下半、内・外側の筋間中隔、肘関節包前面(広い)、【停止】鈎状突起と尺骨粗面(肘関節包)、【支配神経】筋皮神経(外側は橈骨神経)である。

2.〇 正しい。腕橈骨筋は、前腕回内の作用をもつ。
・腕橈骨筋の【起始】上腕骨外側縁の下部、外側上腕筋間中隔、【停止】橈骨遠位下端、茎状突起、【作用】肘関節屈曲、回内位での回外、回外位での回内、【神経】橈骨神経である。

3.× 上腕二頭筋は、肘関節屈曲、回外(長頭:肩関節外転、短頭:肩関節内転)に働く。【起始】長頭:肩甲骨の関節上結節、短頭:肩甲骨の烏口突起、【停止】橈骨粗面、腱の一部は薄い上腕二頭筋腱膜となって前腕筋膜の上内側に放散、【神経】筋皮神経である。

4.× 上腕三頭筋は、肘関節伸展・肩関節伸展に働く。上腕三頭筋の【起始】内側頭:上腕骨後面の橈骨神経溝の下方の大部分(広い)、両側の筋間中隔、外側頭:上腕骨橈骨神経溝の上方、長頭:肩甲骨の関節下結節、【停止】尺骨の肘頭、【神経】橈骨神経である。

5.〇 正しい。橈側手根屈筋は、手関節掌屈・橈屈、前腕回内に働く。【起始】上腕骨の内側上顆、前腕筋膜内面、【停止】第2中手骨底、【神経】正中神経である。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記確認用】上肢の筋のランダム問題

 

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