第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午後問題21~25】

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21 生活習慣病の発症重症化予防の推進が規定された法律はどれか。

1.医療法
2.介護保険法
3.健康増進法
4.社会福祉法
5.地域保健法

解答

解説
1.× 医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
2.× 介護保険法とは、40歳以上で介護が必要になった人の自立生活を支援するために、国民が負担する保険料や税金を財源として、日常生活の行為にかかるさまざまな介助やリハビリなどのサービスにかかる給付を行うことを目的にしている法律である。加齢に伴って生じる心身の変化による疾病等により介護を要する状態となった者を対象として、その人々が有する能力に応じ、尊厳を保持したその人らしい自立した日常生活を営むことができることを目指している。
3.〇 正しい。健康増進法が、生活習慣病の発症重症化予防の推進が規定された法律である。健康増進法とは、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。
4.× 社会福祉法とは、社会福祉について規定している日本の法律である。所管官庁は、厚生労働省である。ちなみに、社会福祉とは、一般的に低所得、要扶養、疾病、心身の障害、高齢などに起因する生活上の困難や障害に対して、その解決や緩和をめざして発展させられてきた社会的な施策とそのもとにおいて展開される援助活動の総体である。
5.× 地域保健法とは、地域保健対策の推進に関する基本指針、保健所の設置その他地域保健対策の推進に関し基本となる事項を定めることにより、母子保健法その他の地域保健対策に関する法律による対策が地域において総合的に推進されることを確保し、地域住民の健康の保持及び増進に寄与することを目的として制定された法律である。

健康増進法とは?

健康増進法は、国民の健康維持と現代病予防を目的として制定された日本の法律である。都道府県と市町村は、地域の実情に応じた健康づくりの促進のため、都道府県健康増進計画(義務)および市町村健康増進計画(努力義務)を策定する。平成14(2002)年に制定された。

【市町村が行う健康増進事業】
①健康手帳、②健康教育、③健康相談、④訪問指導、⑤総合的な保健推進事業、⑥歯周疾患検診、⑦骨粗鬆症検診、⑧肝炎ウイルス検診、⑨がん検診、⑩健康検査、⑪保健指導などである。

【都道府県の役割】
都道府県は、都道府県健康増進計画において、管内市町村が実施する健康増進事業に対する支援を行うことを明記する。都道府県保健所は、市町村が地域特性等を踏まえて健康増進事業を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な助言、技術的支援、連絡調整及び健康指標その他の保健医療情報の収集及び提供を行い、必要に応じ健康増進事業についての評価を行うことが望ましい。都道府県は、保健・医療・福祉の連携を図るとともに、市町村による健康増進事業と医療保険者による保健事業との効果的な連携を図るために、地域・職域連携推進協議会を活性化していくことが望ましい。

 

 

 

 

 

22 予防医学に関する組合せで正しいのはどれか。(※不適切問題:解2つ)

1.一次予防:褥瘡対策
2.二次予防:人間ドック
3.二次予防:ワクチン接種
4.三次予防:肺がん検診
5.三次予防:透析患者の運動療法

解答2・5
対応:複数の選択肢を正解として採点する。

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。(※健康日本21において)

1.× 褥瘡対策は、「一次予防」ではなく三次予防である。なぜなら、褥瘡が発生し、何らかの処置(対策)が必要であるため。
2.〇 正しい。人間ドックは、二次予防である。人間ドックとは、健康状態を診断し、病気の兆候がないかを調べる健康診断の一種である。
3.× ワクチン接種は、「二次予防」ではなく一次予防である。ワクチンとは、病原性(毒性)を完全になくしたり弱めたりした病原体の一部などを接種することで、免疫システムが次の病原体の侵入に備えられるようにして、重篤な感染症を予防する薬である。
4.× 肺がん検診は、「三次予防」ではなく二次予防である。がん検診とは、がんの症状がない人々において、存在が知られていないがんを見つけようとする医学的検査である。がん検診は健康な人々に対して行うものである。
5.〇 正しい。透析患者の運動療法は、三次予防である。透析療法とは、人工的に血液中の余分な水分や老廃物を取り除き、血液をきれいにする働きを腎臓に代わって行う治療法である。

(※引用:「糖尿病運動療法における理学療法士の役割」植木彬夫より)

選択肢5.糖尿病の運動療法は三次予防である。

の答えが「×」になっている。解説:糖尿病の運動療法は、二次予防(一次予防も)も含まれるが、三次予防の要素が強いといえる。「糖尿病の運動療法には糖尿病発症を予防する1次予防としての運動療法,糖尿病が発症し体重管理,血糖管理などを行うことにより重篤な血管合併症の予防が目的の2次予防,脳血管障害や壊疽による下肢切断などのリハビリテーションや再発防止のための3次予防としての運動療法がある(図 1)」と記載されている(※引用:「糖尿病運動療法における理学療法士の役割」植木彬夫より)。

 

 

 

 

23 運動制御における内部モデル形成で重要な役割をもつ中枢神経系はどれか。

1.小脳
2.中脳
3.視床下部
4.大脳皮質
5.大脳辺縁系

解答

解説

内部モデルとは?

内部モデルとは、運動に見合った運動指令を出力するシステムのことである。小脳内に作られ、運動目標を達成するための運動指令の生成などに使われる。つまり、運動学習が必要不可欠となり、そのためには感覚フィードバック(内在的フィードバック)が必要になる。すなわち、「経験により学習した事象の関係に推論や思考による結果を加えて作られる出来事の因果関係に関する主観的な予測図式(スキーム)」のことを指す。要は、体が覚えている記憶(手続き記憶)のこと。

1.〇 正しい。小脳が、運動制御における内部モデル形成で重要な役割をもつ中枢神経系である。小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)を行っている。
2.× 中脳とは、間脳と橋の間に位置する脳構造である。中脳水道より背側の中脳蓋と、腹側の中脳被蓋、大脳脚の3つの部分に大別される。主な働きとして、間脳と小脳の中継路、姿勢を保つ反射神経、眼球運動、瞳孔の拡大縮小調節などである。
3.× 視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。 ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%、4g程度の小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温調節やストレス応答、摂食行動や睡眠覚醒など多様な生理機能を協調して管理している。つまり、視床下部は自律神経の最高中枢である。
4.× 大脳皮質とは、大脳の表層を覆うシワシワの部分で、前頭葉、頭頂葉、側頭葉などと呼ばれる部位の総称である。全身から送られてくる外界の情報を処理して思考・判断を行い、随意運動の指令を送り出している。
5.× 大脳辺縁系とは、脳梁を取り囲むように大脳の内側部に存在し、本能・情動・記憶などを司る構造物の総称である。構成要素としては、辺縁葉(梁下野、帯状回、海馬傍回)、海馬、扁桃体、乳頭体、中隔核などがあげられる。

参考にどうぞ↓

【PT/OT/共通】運動に関する部位ついての問題「まとめ・解説」
【PT/OT/共通】運動学習ついての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

24 軽度の片麻痺患者が車椅子から床へ移乗する手順で誤っているのはどれか。

1.車椅子のブレーキを確認する。
2.殿部を座面の前方に移動する。
3.非麻痺側の足部を十分後方に引く。
4.上体を前傾させて麻痺側の膝を床につく。
5.床に膝をついた側の殿部を接地させて回転するように着座する。

解答

解説

車椅子から床への移乗動作

①足をフットプレートから下ろし、車椅子の前方へ臀部を移動させる。
②片手をフロントパイプに固定し、足を斜めになるように寄せる。
③バランスをとりながらもう一方の手を床につく。
④臀部が着地できるスペースを空けながら、一度床についた手をつき直す。
⑤④で床につき直した手に体重をかけながら、前方または斜め前にゆっくりと移動させて臀部を着地させる。(※図、文引用:「移乗動作・移乗介助の方法」別府重度障害者センターより)

1.〇 正しい。車椅子のブレーキを確認する。なぜなら、車椅子が動かないようにブレーキをかけることで安全を確保できるため。
2~3.〇 正しい。殿部を座面の前方に移動する/非麻痺側の足部を十分後方に引く。なぜなら、離殿しやすくなり、重心移動が少なくて済むため。
4.× 上体を前傾させて、「麻痺側」ではなく非麻痺側の膝を床につく。なぜなら、麻痺側の膝を床につけることは、バランスを崩しやすく、転倒のリスクを高めるため。
5.〇 正しい。床に膝をついた側(非麻痺側)の殿部を接地させて回転するように着座する。安全に行うためには、基本的に、非麻痺側に重心を乗せた状態で行う。

 

 

 

 

 

25 LawtonのIADLスケールに含まれるのはどれか。2つ選べ。

1.意思疎通
2.階段昇降
3.家屋維持
4.家計管理
5.排泄コントロール

解答3・4

解説

Lawton, M.P & Brody. E.M. Assessment of older people :Self Maintaining and instrumental activities of daily living. Geroulologist. 9: 179 168, 1969 より)

1~2/5.× 意思疎通/階段昇降/排泄コントロールは、BADL(基本的日常生活動作)である。FIMの評価にも含まれている。FIMとは、日常生活動作(ADL)を評価する尺度で、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。
3~4.〇 正しい。家屋維持/家計管理は、LawtonのIADLスケールに含まれる。家屋維持は、家事に含まれる。

手段的日常生活動作とは?

手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)とは、日常生活動作(ADL)のなかでも、道具を使う、段取りを考えて行うなど、複雑で判断力を要する身体活動のことである。
ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

 

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