第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午後問題16~20】

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16 心電図を下に示す。
 考えられるのはどれか。

1.心房細動
2.心房粗動
3.房室ブロック
4.心室細動
5.心室期外収縮

解答

解説

房室ブロックとは?

房室ブロックは、心房から心室への伝導障害をいう。第1度〜第3度に分類される。
・1度房室ブロック:心房から心室への伝導時間が延長するが、P波とQRS波の数や形は変わらない。
・2度房室ブロック
①ウェンケンバッハ型(モビッツⅠ型):PR間隔が徐々に延長してQRSが脱落する。
②モビッツⅡ型:心房から心室への伝導が突然途絶える。P波の後のQRSが突然脱落する。

・3度房室ブロック:心房からの刺激が途絶え、P波とQRSが無関係に生じるようになる。

1.× 心房細動とは、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れているf波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。
2.× 心房粗動の特徴は、①規則正しいRR間隔、②幅の狭いQRS波、③P波の代わりに規則正しい心房粗動波(F波)が認められる。
3.× 房室ブロックとは、洞結節からの電気信号が房室まで伝わらない状態で、程度に応じてペースメーカーの植え込みが必要である。
4.× 心室細動とは、脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい速くなった状態である。心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともあるが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま亡くなることが多い。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがある。除細動の適応である。また、基礎心疾患を伴う場合は、植え込み型除細動器(ICD)の適応となる。
5.〇 正しい。心室期外収縮を認める。心室期外収縮とは、本来の洞結節からの興奮より早く、心室で興奮が開始していることをいう。つまり、P波が認められず幅広い変形したQRS波がみられる。

(※看護roo!様「看護師イラスト集」より)

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17 85歳の男性。急性発症2日目の脳梗塞に対して、積極的に離床を行ってもよいのはどの場合か。2つ選べ。

1.呼吸数40/分
2.心拍数80/分
3.神経症状の増悪
4.平均血圧65mmHg以上
5.RASS〈Richmond Agitation Sedation Scale〉-3

解答2・4

解説

離床開始基準(座位訓練、立位訓練など)

・JCS:1桁であること
・運動の禁忌となる心疾患や全身合併症がないこと
・主幹動脈閉塞および脳出血では神経症状の増悪がないなど。
→ただし、グレードC1(十分な科学的根拠がないが、行うことを考慮しても良い。有効性が期待できる可能性がある。)である。

(※参考:「脳卒中リハビリテーションの進め方」より)

1.× 呼吸数40/分は高すぎる。成人の呼吸数の正常値は、1分間に12~20回である。リハビリテーションの中止基準の「途中でリハを中止する場合」として、頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合と規定されている。
2.〇 正しい。心拍数80/分の場合でも積極的に離床を行ってもよい。リハビリテーションの中止基準の「いったんリハを中止し,回復を待って再開」として、脈拍が 120/分を越えた場合と規定されている。
3.× 神経症状の増悪は、離床開始基準(座位訓練、立位訓練など)に該当する。なぜなら、神経症状の増悪は、脳梗塞の再発が考えられるため。
4.〇 正しい。平均血圧65mmHg以上の場合でも積極的に離床を行ってもよい。平均血圧として基準値が規定されているわけではないが、リハビリテーションの中止基準の「積極的なリハを実施しない場合」として、安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上、安静時拡張期血圧 120mmHg 以上が定められている。ちなみに、平均血圧とは、収縮期血圧、拡張期血圧を1つの数値で表したものである。平均血圧(mmHg)の計算方法は、(収縮期血圧 - 拡張期血圧)/3 + 拡張期血圧である。ちなみに、脈圧とは、収縮期血圧と拡張期血圧の差である。
5.× RASS〈Richmond Agitation Sedation Scale〉-3において、積極的に離床は行えない。なぜなら、-3は、中等度鎮静(呼びかけに何かしらの動きまたは開眼があるがアイコンタクトなし)となるため。JCS:2桁(Ⅱ:刺激で覚醒するが、刺激をやめると眠り込む状態)に該当する。RASS〈Richmond Agitation Sedation Scale:鎮静スケール〉とは、鎮静薬を使用中の患者さんの鎮静状態を評価するためのスケールである。鎮静は、気管挿管などの侵襲的な治療を受ける患者さんの苦痛を和らげたり、せん妄などで危険な行為におよぶ可能性のある患者さんを落ち着かせて快適さを確保したりする目的で行われる。0が意識清明な、落ち着いている状態である。+1が落ち着きのない:不安で絶えずそわそわしているが攻撃的でも活発でもない状態である。−1が傾眠:呼びかけると10秒以上の開眼とアイコンタクトがある状態である。+4好戦的な状態、−5昏睡状態まである。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

(※図引用:「Richmond Agitation-Sedation Scale日本語版の作成」著:卯野木 健ら)

 

 

 

 

18 介護予防事業にて、図のようなテストで確認可能なのはどれか。

1.フレイル
2.サルコペニア
3.ダイナペニア
4.ロコモティブ症候群
5.コンパートメント症候群

解答

解説

(※図引用:「指輪っかテスト」沼津市HPより)

1.× フレイルとは、「虚弱」「脆弱」という意味であり、加齢するにつれて体力や活力が弱まっている状態のことを指す。診断基準に含まれるのは【①体重減少(6か月間で2~3㎏以上)、②主観的疲労度、③日常生活活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の減弱】である。
2.〇 正しい。サルコペニアを図のようなテストで確認する。サルコペニアとは、ギリシャ語で「サルコ(sarco)=筋肉」と喪失を意味する「ペニア(penia)=喪失」をあわせた造語である。加齢により全身の筋肉量と筋力が自然低下し、身体能力が低下した状態と定義されている。一次性サルコペニアと二次性サルコペニアに分類され、一次性(原発性)は加齢による筋肉量減少が原因とされるものである。一方で、二次性サルコペニアは、活動・栄養・疾患に関するもののことをいう。つまり、廃用症候群は、低活動が原因であるため二次性サルコペニアに分類される。
3.× ダイナペニアとは、四肢骨格筋量は低下していないが、筋力が低下した状態を指す。イメージとしては、運動をせず筋肉に脂肪がついたり、筋肉の質(筋発揮)が落ちた状態を指す。したがって、周径にも影響しないことが多い。ちなみに、ダイナペニアの定義は、握力が男性28kg以下または女性18kg以下かつ生体電気インピーダンス分析(bioelectrical impedance analysis:BIA)法による骨格筋量から算出した骨格筋指数(skeletal muscle index:SMI)が男性7.0kg/m2以上または女性5.7kg/m2以上の者とした(※引用:「中・高年者のダイナペニアに影響する身体,認知,生活・精神機能の検討」著:西牟田理沙ら)。
4.× ロコモティブ症候群(運動器不安定症)は、運動器自体の障害や加齢に伴う身体機能の低下が原因で移動能力の低下をきたした状態を表す。診断には実際の日常生活動作(片足立ちで靴下を履く、階段を登る、時間内に横断歩道を渡り切るなど)が遂行可能かどうかを基準として用いられる。
5.× コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

 

 

 

 

 

19 理学療法の臨床実習に参加している学生。脳梗塞による左片麻痺患者の評価を臨床実習指導者と行った。患者は常に右側を向き、左側からの声かけへの反応が遅かった。
 担当作業療法士の診療記録から収集する検査結果で最も優先度が高いのはどれか。

1.BIT
2.FAST
3.Stroop test
4.WAIS-IV
5.WCST(Wisconsin Card Sorting Test)

解答

解説

本症例のポイント

・脳梗塞による左片麻痺患者。
・常に右側を向き。
・左側からの声かけへの反応が遅い。
→本症例は、左半側空間無視を呈している左片麻痺患者と考えられる。したがって、左半側空間無視の評価を実施する。

1.〇 正しい。BITが最も優先度が高い。なぜなら、本症例は左半側空間無視を呈しているため。BIT(Behavioural inattention test:行動性無視検査)は、①通常検査(線分抹消試験・文字抹消試験・星印抹消試験・模写試験・線分二等分試験・描画試験)と、②行動検査(写真課題・電話課題・メニュー課題・音読課題・時計課題・硬貨課題・書写課題・地図課題・トランプ課題)がある。半側空間無視の検査として用いられている。
2.× FAST(Functional Assessment Staging of Alzheimer’s Disease)は、Alzheimer型認知症の進行度をADL障害の程度から評価する。 Alzheimer型認知症の病状ステージを生活機能(ADL)の面から観察により分類した評価尺度であり、1(正常)~7(高度)の7段階で評価する。
3.× Stroop test(ストループ検査)は、認知機能評価、脳血管障害後遺症等の高次脳機能障害(前頭葉)の評価に活用する。文字の色を声に出して、できるだけはやく読む検査である。たとえば、「青」の答えは「あか」と読むといったものである。速度・誤答数を測定する。
4.× WAIS-IV(Wechsler Adult Intelligence Scale-Fourth Edition)は、成人の知能検査(16歳0カ月〜90歳11カ月)である。個別式の包括的な臨床検査であり、特定の認知領域の知的機能を表す4つの合成得点(VCI、PRI、WMI、PSI)と全般的な知能を表す合成得点(FSIQ)を算出する。
5.× WCST(Wisconsin Card Sorting Test:ウィスコンシンカード分類課題)は、前頭葉機能検査法で遂行機能障害の診断に用いる。①計画を立てること、②計画を達成するためにとるべき行動を決めること、③状況の変化に対応すること、④衝動的に行動することを抑えることなどの前頭葉の実行機能を調べる検査である。提示されたトランプのようなカードを、色・数・形のどれに基づいて分類するかを判断する。

 

 

 

 

 

20 水中での立位姿勢を図に示す。
 体重の約50%が免荷されるのはどれか。

解答

解説

1.× 頚部までの水深の場合、約10%程度の体重負荷量となる。
2~3.× 乳頭までの水深の場合、約30%程度の体重負荷量となる。また姿勢が変化していても水面下に存在する体積が変わらなければ、浮力は変わらない。
4.〇 正しい。臍までの水深の場合、約50~60%程度の体重負荷量となる。
5.× 大腿部までの水深の場合、約90%程度の体重負荷量となる。ちなみに、下腿ではほぼ免荷にはならない。

 

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