第59回(R6)理学療法士国家試験 解説【午後問題26~30】

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26 ICFの環境因子はどれか。

1.職業歴
2.屋外の移動
3.本人の性別
4.信仰する宗教
5.利用可能な保健サービス

解答

解説

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。

1.3~4.× 職業歴/本人の性別/信仰する宗教は、個人因子である。個人因子とは,個人の人生や生活の特別な背景であり,健康状態や健康状況以外のその人の特徴からなる。これには性別,人種,年齢,その他の健康状態,体力,ライフスタイル,習慣,生育歴,困難への対処方法,社会的背景,教育歴,職業,過去および現在の経験(過去や現在の人生の出来事),全体的な行動様式,性格,個人の心理的資質,その他の特質などが含まれるであろうし,これらの全部または一部が,どのレベルの障害においても一定の役割をもちうる(※引用:「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」厚生労働省様HPより)。
2.× 屋外の移動は、活動である。活動とは、課題や行為の個人による遂行のことを指す。
5.〇 正しい。利用可能な保健サービスは、環境因子である。環境因子とは、人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子である。個人にとって外部のもの(例:社会の態度,建築物の特徴,法制度)である。

(※画像引用:Job Medley様HPより)

 

 

 

 

 

27 理学療法士の行動で適切なのはどれか。

1.患者の病状を許可なく友人に伝える。
2.患者に担当作業療法士の自宅住所を教える。
3.先輩職員に患者宅の家屋構造を伝えて住宅改修の相談をする。
4.患者の全身動画を自分のスマートフォンに保存して歩行を分析する。
5.利用者限定のSNS〈Social networking service〉に患者の個人情報を投稿する。

解答

解説

個人情報保護法とは?

個人情報保護法とは、個人情報の保護に関する法律の略称である。個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とした個人情報の取扱いに関連する日本の法律である。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。

1.× 患者の病状を「許可なく」友人に伝えることは不適切である。なぜなら、患者の病状は個人情報に該当するため。あらかじめ患者に許可を取り、友人に病状を話す際は、話す場所に考慮する。
2.× 患者に「担当作業療法士の自宅住所」を教えることは不適切である。担当作業療法士が許可したとしても患者に教えるべきではない。なぜなら、自宅住所に手紙が送られてきたり、他の患者同士で「どこに住んでいるから、格式高い」とかで、第三者に広まっていくことにも考慮しなければならないため。
3.〇 正しい。先輩職員に患者宅の家屋構造を伝えて住宅改修の相談をする。なぜなら、家屋構造は、個人情報に該当しない可能性が高いため。住所・地番ともなれば、個人情報に該当する可能性が高くなる。定義(第2条)には、「この法律において『個人情報』とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう」とされている。
4.× 患者の全身動画を「自分のスマートフォン」に保存して歩行を分析することは不適切である。なぜなら、誤操作やハッキングにより、情報漏洩が懸念されるため。入院していることが情報漏洩した場合、患者の自宅は泥棒や盗難にあいやすくなる。また、外来の場合も同様で、動画の詳細情報から、撮影日を特定でき、その曜日と時間は自宅にいないと推察できる。したがって、やむを得ず動画撮影を行う場合は、患者から許可をもらい必ず顔を写さないなど配慮する必要がある。
5.× 利用者限定のSNS〈Social networking service〉に「患者の個人情報」を投稿することは不適切である。選択肢の文の意味がよく分からないが、患者の個人情報を取り扱う場合は細心の注意が必要である。意味不明な点として、「利用者限定のSNS」と「患者の個人情報」と、あえて利用者と患者を使い分けて使用して出題している意味がよく分からなかった。(施設の)利用者限定のSNSに、(病院の)患者の個人情報を投稿するといった意味で読んでよいのか?よくわからなかった。じゃなかったら、そもそもSNS〈Social networking service〉って、基本的に利用者限定じゃない?(教えてZ世代)。

患者の権利

1.良質の医療を受ける権利
2.選択の自由の権利
3.自己決定の権利
4.意識喪失患者が代理人に付託する権利
5.法的無能力者が代理人に付託する権利
6.患者の意思に反する処置・治療に対する権利
7.医療情報に関する権利
8.秘密保持に関する権利
9.健康教育を受ける権利
10.人間としての尊厳が守られる権利
11.宗教的支援を受ける権利

 

 

 

 

28 H反射を導出するために刺激する神経で正しいのはどれか。

1.α運動神経線維
2.γ運動神経線維
3.Ia群求心性線維
4.Ib群求心性線維
5.II群求心性線維

解答

解説

(※図引用:「痙縮発症メカニズム」名古屋大学大学院様HPより)

Hoffmann’s反射(H反射)とは、遠心性のα運動神経線維と求心性のIa群求心性線維の軸索に対し、同時に電気刺激を行う誘発電位反射である。α運動神経線維とIa群求心性線維同時に刺激するため、最初にα運動神経線維の刺激が伝わり筋を収縮させる(これをM波)。その後、Ia群求心性線維の刺激が求心方向に刺激を伝達し、脊髄を介在させ、α運動神経線維の刺激が伝わり筋を収縮させる(これをH波)。

1.× α運動神経線維は、H反射におけるM波を伝える。
2.× γ運動神経線維は、錘内筋線維の両端を支配しており、筋紡錘が正常に働くように調節する機能がある。
3.〇 正しい。Ia群求心性線維は、H反射を導出するために刺激する神経である。
4.× Ib群求心性線維は、腱受容器(Ib自己抑制)の求心性神経線維である。
5.× II群求心性線維は、筋紡錘(伸張反射)の求心性神経線維、感覚神経(触圧覚)の神経線維である。

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【PT/共通】伸張反射、筋紡錘、H波などの問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

29 動的バランス能力評価検査はどれか。

1.10m歩行テスト
2.6分間歩行テスト
3.Trunk control test
4.Functional reach test
5.片脚立位バランステスト

解答

解説

バランス練習の流れ

①支持基底面内に重心を保持する(静的)。
②支持基底面内なら重心を移動できる(動的)。
③支持基底面内から逸脱しても新たに支持基底面を形成できる(立ち直り)。

1.× 10m歩行テストは、歩行機能を評価する。10m歩行時間とは、助走路を含めた直線歩行路約16mを至適速度または最高速度で歩行し、定常歩行とみなせる中間の10mの所要時間をストップウォッチにて計測するものである。一般的に、屋外歩行のカットオフが11秒程度である。7秒は、年齢にして十分な結果である。
2.× 6分間歩行テストは、特別な器具を用いることなく運動耐容能を調べることができる。標準的には、30mの直線コースを往復する方法がとられ、歩行距離だけでなく血圧、心拍数、SPO2、自覚的運動強度(Borgスケールなどで評価)なども併せて測定する。歩行が開始したら、検査者は1分ごとに声掛けをする。(「いい調子です。残り2分ですよ。」といった具合に声のかけ方には標準的なものが示される。)被験者は、疲労や息切れを感じたらペースを落としたり、立ち止まって休むこともできる。大きくふらついたり、胸痛を訴えたり、呼吸困難感が増悪した場合は試験を中止する。高齢者で500m歩行できれば正常とされ、400m以下では日常的な外出に制限が生じ、300m以下では活動が室内に限られ、200m以下では生活範囲がごく身近に限られると評価できる。一か月以内の不安定狭心症、心筋梗塞患者には絶対禁忌である。
3.× Trunk control testは、体幹の機能を評価する検査(体幹の制御機能検査)である。検査項目は、①非麻痺側への寝返り、②麻痺側への寝返り、③起き上がり、④座位バランスの4項目である。論文や臨床などでは、脳卒中や入院時の歩行の予後予測に使用されることも多い。
4.〇 正しい。Functional reach testは、動的バランス能力評価検査である。Functional reach testは、前方への重心移動域を上肢の移動距離として測定する。カットオフ値は、①脳卒中片麻痺:15cm、②Parkinson病:31cmなど疾患によって異なるが、30cmまでバランスが保てていれば転倒のリスクは低い。
5.× 片脚立位バランステストは、静的バランス能力評価検査である。なぜなら、支持基底面内に重心を保持する検査であるため。片脚立位テスト<開眼>の60秒より他の選択肢に転倒リスクが高いものがある。カットオフ値は、15秒未満を運動器不安定症の基準としている(日本整形外科学会)。

 

 

 

 

 

30 脳神経と働きの組合せで正しいのはどれか。

1.副神経:僧帽筋の運動
2.滑車神経:眼球の内転運動
3.顔面神経:咀嚼筋の運動
4.三叉神経:舌前2/3の味覚
5.舌下神経: 声帯の運動

解答

解説

(※図引用:「イラストでわかる歯科医学の基礎 第4版 」永未書店HPより)

1.〇 正しい。副神経は、僧帽筋の運動である。副神経とは、僧帽筋や胸鎖乳突筋など、首を動かす筋肉に分布する運動神経である。ちなみに、胸鎖乳突筋の【起始】胸骨部:胸骨柄前面、鎖骨部:鎖骨の胸骨端、【停止】乳様突起、後頭骨の上項線の外側部、【作用】両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す。片側が働けば顔面を対側に回す。吸息の補助、【支配神経】副神経外枝、頸神経叢筋枝(C2,C3)である。
2.× 眼球の内転運動は、「滑車神経」ではなく動眼神経である。なぜなら、眼球の内転運動は、内直筋であるため。動眼神経は、内直筋・上直筋・下直筋・下斜筋を支配する。動眼神経とは、外側直筋と上斜筋以外の眼筋を支配する運動神経と、眼球内の瞳孔括約筋や毛様体筋を支配する副交感神経を含んでいる。ちなみに、滑車神経は、上斜筋をつかさどる。
3.× 咀嚼筋の運動は、「顔面神経」ではなく三叉神経である。三叉神経とは、咀嚼運動にかかわる脳神経である。三叉神経は、主に咀嚼筋の咀嚼運動と顔面の皮膚感覚を司る。運動神経と感覚神経を含む。
4.× 舌前2/3の味覚は、「三叉神経」ではなく顔面神経である。
顔面神経とは、表情筋の運動、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。したがって、顔面神経の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下などが起こる。
【味覚】顔面神経舌:前2/3、舌咽神経:後1/3
【知覚(痛覚)】三叉神経:前2/3、舌咽神経:後1/3
5.× 声帯の運動は、「舌下神経」ではなく反回神経である。反回神経は、運動神経、知覚神経を含む混合神経で声帯や嚥下機能を司っている。前枝は喉頭粘膜、声帯裂、甲状披裂筋、外側輪状披裂筋に分布する。後枝は後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋に分布する。喉から胸にかけて走行する。反回神経の枝は喉頭や声帯に分布し、障害により嗄声を生じる。反回神経は、右が鎖骨下動脈を、左が大動脈弓を前方から後方へ回り、この周囲に癌が浸潤することで嗄声が生じる。嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経に問題がある場合がある。ちなみに、舌下神経とは、舌の運動を支配する運動神経である。

眼球運動の筋と支配神経

【眼球運動:筋】
外側:外直筋
内側:内直筋
外上方:外直筋+上直筋
内上方:内直筋+下斜筋
外下方:外直筋+下直筋
内下方:内直筋+上斜筋

【支配神経】
①動眼神経:内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経:上斜筋
③外転神経:外側直筋

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