第58回(R5)作業療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 過去に行われた信頼性の高い複数の研究結果を定量的に検討する研究方法はどれか。

1.群間比較試験
2.メタアナリシス
3.群内前後比較試験
4.クロスオーバー試験
5.ケースコントロール研究

解答

解説

1.× 群間比較試験とは、被験者を異なる群に割付け、各群同時に一定の期間、治療や介入してもらい、各群の有効性や安全性を比較・検討する試験方法である。
2.〇 正しい。メタアナリシスは、過去に行われた信頼性の高い複数の研究結果を定量的に検討する研究方法である。メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。 メタ分析、メタ解析とも言う。 ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは、根拠に基づく医療 (EBM) において、最も質の高い根拠とされる。
3.× 群内前後比較試験とは、臨床研究で個人または集団を対象に、介入前と、介入後の2回以上の観察との比較をする方法である。対照群はおかれない。観察者の主観を排することが難しく、治療効果の判定にはほとんど用いられないが、まれな疾患や対象者を得にくい研究などでは採用されることもある。症例研究と同等のエビデンスレベルと扱われることが多い(※引用:「用語集」聖路加国際大学HPより)。
4.× クロスオーバー試験(交差試験)とは、対象を2群に分け、各群に別々の治療を行い評価した後に、各群の治療法を交換して再度評価する方法である。メリットは、必要な症例数が少なく行える。デメリットは、試験期間が長くなること、症状が変化しやすい急性期や回復期の方は、前の治療条件の影響が次の治療条件の結果に影響を与える可能性があるなどがあげられる。
5.× ケースコントロール研究(症例対照研究)は、症例群と対照群に分け、両群の過去の曝露状況を比較する方法である。曝露と疾病発症の関連を明らかにする。欠点としては、選択バイアスや情報バイアスの影響が入りやすいことなどがあげられる。

 

 

 

 

 

22 上肢にリンパ浮腫(病期分類Ⅱ期)がある患者に対する生活指導として最も適切なのはどれか。

1.日光浴をする。
2.患肢の挙上を避ける。
3.患肢で血圧を測定する。
4.高い温度で入浴をする。
5.正常なリンパ節へ向けてマッサージを行う。

解答

解説

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫とは、がんの治療部位に近い腕や脚などの皮膚の下に、リンパ管内に回収されなかった、リンパ液がたまってむくんだ状態のことをいう。つまり、リンパ浮腫以外の浮腫を惹起する疾患や、癌の転移・再発が除外される必要がある。治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

【国際リンパ学会によるリンパ浮腫の重症度分類】
Stage 0(潜在性):リンパ循環不全はあるが、臨床的に症状のないもの
StageⅠ(可逆性):タンパク濃度の比較的高い(静脈などに比較して)浮腫液の早期の貯留で、患肢挙上で改善する圧窩性(押すとへこむ)浮腫。
StageⅡ(非可逆性):患肢挙上のみでは腫脹が改善しない、皮膚の硬い非圧窩性の浮腫。
StageⅢ(象皮病):象皮病で非圧窩性。皮膚の肥厚、脂肪の沈着、疣贅(いぼ)の増殖などの皮膚変化を認める。

1.× 日光浴を「する」のではなく控える。なぜなら、日光(特に紫外線)による炎症で皮膚障害が起こりえるためである。リンパ浮腫は、感染を契機に増悪しやすく、感染のリスクを上げる行動となる。また、過度な暑さはリンパ浮腫の悪化を招くことにつながりかねない。
2.× 患肢の挙上を「避ける」のではなく推奨する。なぜなら、自動運動やポジショニングにより、重力がリンパ還流を改善し、浮腫が軽減するため。
3.× 「患肢」ではなく健肢で血圧を測定する。血圧計のカフによる圧迫は、リンパ液の流れを妨げ、浮腫の症状を悪化させる可能性があるため。したがって、袖口のきつい服や腋窩を締め付ける服は避ける必要がある。
4.× 「高い温度」ではなく、適温で入浴をする。なぜなら、高温の環境は、血管の拡張を引き起こし、リンパ液の流れを悪化させるため。また、炎症がある場合には入浴やプールなどは控える。
5.〇 正しい。正常なリンパ節へ向けてマッサージを行う。これをリンパドレナージという。リンパ液の流れを改善し、浮腫の症状を軽減することができる。

乳癌について

乳癌は乳管や小葉上皮から発生する悪性腫瘍である。乳管起源のものを乳管癌といい、小葉上皮由来のものを小葉癌という。年々増加しており、女性のがんで罹患率第1位、死亡率は第2位である。40~60歳代の閉経期前後の女性に多い。

【乳房切除術後の注意事項】

①患側上肢での血圧測定、採血、注射などは避ける。
②袖口のきつい服や腋窩を締め付ける服は避ける。
③スキンケア、虫刺されに注意する。
④患側上肢では重いものを持たないようにする。
⑤患側上肢の過度の負荷や外傷を避ける。

【リンパ浮腫の治療】
リンパ浮腫の治療は、複合的理学療法といわれ、以下の4つの治療を組み合わせながら行う。①リンパドレナージ、②圧迫療法、③圧迫下における運動療法、④スキンケアである。リンパ液を流してあげることで突っ張った皮膚を緩め、硬くなった皮膚を柔らかくする。この状態で弾性包帯を巻いたり、スリーブといわれるサポーターのようなものや、弾性ストッキングを着用し、リンパの流れの良い状態を保ち、さらにむくみを引かせて腕や脚の細くなった状態を保つ。そして、圧迫した状態でむくんだ腕や脚を挙上する、動かすことでさらにむくみを軽減・改善をはかる。

 

 

 

 

23 脊髄性運動失調で陽性となるのはどれか。

1.Babinski徴候
2.Hoover徴候
3.Kernig徴候
4.Myerson徴候
5.Romberg徴候

解答

解説

脊髄性運動失調症とは?

脊髄性運動失調は、脊髄後索病変により深部感覚が障害されることによって生じる運動失調である。

1.× Babinski徴候(バビンスキー)徴候は、上位運動ニューロン障害でみられる。患者を背臥位にし、両下肢を伸展させる。気持ちを楽にさせ緊張を取るように指示する。先のとがったハンマーの柄や鍵などで、足底の外側を踵から足先に向けてこする。刺激によって母趾がゆっくりと背屈すれば陽性(母趾現象または伸展足底反射)である。
2.× Hoover徴候(フーバー徴候)は、解離性障害(ヒステリー性)の詐病を疑う患者にみられる。仰臥位にして、両踵の下に手を入れ、一側下肢の膝を伸展したまま挙上させ、他側の踵に加わる力を感じとる。反対圧がかからない場合には意識的に足の挙上を抑制しているため陽性となる。
3.× Kernig徴候(ケルニッヒ徴候)は、髄膜刺激症状であり髄膜炎などでみられる。方法は、①背臥位にて股・膝関節90°屈曲位に保持する。②他動的に膝関節伸展する。③膝関節に痛みが出たら陽性。膝関節を135°以上伸展できない。
4.× Myerson徴候(マイヤーソン徴候)は、parkinson病でみられる。眉間をハンマーや指で軽く叩くと、正常では両側眼輪筋の収縮すなわち瞬目(しゅんもく、まばたきのこと)が起こる。これを眉間反射という。これを何度も行ううちに眼輪筋の収縮は弱くなり、数回のうちに収縮しなくなるのが正常の反応である。しかし、パーキンソン症候群などの場合この反射が亢進し、何度叩いても瞬目が起こるようになる。これをMyerson徴候(マイヤーソン徴候)と呼ぶ。
5.〇 正しい。Romberg徴候は、脊髄性運動失調(深部感覚障害)で陽性となる。被検者につま先を揃えてまっすぐ立ってもらい、開眼で体の動揺をみる。次いで、閉眼で体の動揺をみる開眼時にはみられない動揺が、閉眼時にみられれば、Romberg徴候陽性とする。陽性であれば、脊髄後索障害、末梢神経障害、前庭神経系の障害を考える。開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。

 

 

 

 

 

24 廃用症候群で増加するのはどれか。

1.安静時心拍数
2.換気血流比
3.心臓予備力
4.疼痛の閾値
5.予備呼気量

解答

解説

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

(※図引用:「廃用症候群の息切れの機序とそれに対するリハビリテーション」著:補永 薫)

1.〇 正しい。安静時心拍数は増加する。なぜなら、長期間にわたって安静状態を継続することにより、筋萎縮を呈し、筋ポンプ作用の機能不全をきたし、循環血液量が低下するため。したがって、心拍数が増加して、酸素需要を満たそうと働く。
2.× 換気血流比は低下する。換気血流比とは、肺胞換気量と肺循環血流量の比、つまり肺の換気と血流のバランスを示す指標である。臥位が長期化することにより、肺活量および機能的予備能力は 25~50%の低下をきたす。これにより、肋間筋は短縮をきたし、その際の筋紡錘からの求心性の情報の変化が呼吸困難感に影響を与える。さらに、換気量や換気血流比不均衡の結果もたらされる高炭酸ガス血症、低酸素血症、アシドーシスは、延髄の呼吸中枢を刺激して換気亢進反応を発現させるだけではなく、呼吸困難感も誘発させる。
3.× 心臓予備力は低下する。心臓予備力とは、心臓が拡張・収縮する能力の余裕を示す指標である。心循環系は、心予備力低下、心拍数増加、起立性低血圧、静脈血栓症、最大酸素摂取量低下、循環血液量の低下をきたす。
4.× 疼痛の閾値は低下する。閾値とは、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量である。したがって閾値が高いと(上がると)、 感覚を感じにくくなることをさす。中枢神経系は、異常知覚と疼痛の閾値の低下、自律神経失調、情緒障害(不安うつ症候群)、知的能力低下、心理的荒廃をきたす。
5.× 予備呼気量は低下する。なぜなら、肺機能や呼吸筋の筋力が低下するため。残気量が上昇し、肺活量は低下する。予備呼気量とは、安静時呼息位から強制呼息によって呼出できる量のことをいう。

 

 

 

 

 

25 歩行周期の立脚期において常に筋活動がみられるのはどれか。

1.大殿筋
2.前脛骨筋
3.股内転筋群
4.大腿四頭筋
5.ハムストリングス

解答

解説

(図引用:Eberhart,H. D. et al.:「Human Limbs and their Substitutes」Mc Graw Hill Book Co. Inc 1954より)

1.× 大殿筋は、①遊脚後期と②立脚中期に筋活動がみられる。それぞれ役割は異なり、①遊脚後期の筋活動は、前方へ振り出された下肢の減速に寄与する。②立脚中期までの筋活動は、過度の体幹屈曲を防ぐこと、股関節を伸展させることである。
2.〇 正しい。前脛骨筋は、歩行周期の立脚期において常に筋活動がみられる。主な役割として、踵接地により生じる足関節の底屈を減速させ、遊脚相で足関節を背屈させクリアランスを確保する。ほかにも、歩行周期の立脚期において常に筋活動がみられるのは、脊柱起立筋があげられる。主な役割は、歩行時には抗重力姿勢を維持する。
3.× 股内転筋群は、①立脚初期と②立脚後期に筋活動がみられる。股関節外転筋と協力して、①立脚初期は股間セ鬱の安定に、②立脚後期は股関節屈曲の補助として働く。
4.× 大腿四頭筋は、主に、①立脚初期と②立脚後期から遊脚初期にかけ活動する。①立脚初期は、衝撃吸収(膝折れ防止)のために、②立脚後期から遊脚初期は股関節屈曲の補助として働く。
5.× ハムストリングスは、遊脚相後期から立脚相初期に働く。主な役割として、振り出した下肢の制御に寄与する。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

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