第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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※解答の引用:第56回理学療法士国家試験及び第56回作業療法士国家試験の合格発表について(厚生労働省HPより)

 

1 椅子座位でテーブル上にあるコップにゆっくりと手を伸ばしてつかむ作業の図を示す。
 この時の肩関節と肘関節の運動に関与が推定される筋と収縮様式との組合せで正しいのはどれか。

1. 三角筋前部線維:求心性収縮
2. 三角筋後部線維:求心性収縮
3. 上腕二頭筋:求心性収縮
4. 上腕三頭筋:遠心性収縮
5. 腕橈骨筋:求心性収縮

解答1

解説

筋の収縮様式

求心性収縮:筋が収縮しながら筋の長さも短縮する状態。
遠心性収縮:筋が収縮しながら筋の長さは残される(伸張される)状態。

1.〇 正しい。三角筋前部線維は、求心性収縮している。なぜなら、設問の肩関節は屈曲しているため。三角筋前部線維は、肩関節屈曲に作用する。
2.× 三角筋後部線維は、「求心性収縮」ではなく遠心性収縮している。なぜなら、設問の肩関節は屈曲しているため。三角筋後部線維は、肩関節伸展に作用する。
3.× 上腕二頭筋は、「求心性収縮」ではなく遠心性収縮している。なぜなら、設問の肘関節は伸展しているため。上腕二頭筋は、肘関節屈曲に作用する。
4.× 上腕三頭筋は、「遠心性収縮」ではなく求心性収縮している。なぜなら、設問の肘関節は伸展しているため。上腕三頭筋は、肘関節伸展に作用する。
5.× 腕橈骨筋は、「求心性収縮」ではなく遠心性収縮している。なぜなら、設問の肘関節は伸展しているため。上腕二頭筋は、肘関節屈曲に作用する。

 

筋の詳細はこちら↓

【暗記確認用】上肢の筋のランダム問題

 

 

 

 

 

 

 

2 60歳の男性。COPDが進行し在宅酸素療法が導入された。酸素流量は労作時2L/分である。
 入浴動作の指導で正しいのはどれか。

1. 洗髪を片手で行う。
2. 動作を素早く行う。
3. 浴槽に肩まで浸かる。
4. 洗い場の椅子の座面を低くする。
5. 入浴中は経鼻カニューレを外す。

解答1

解説

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集様HPより)

血中酸素飽和度が低下しやすい日常生活動作

① 排便(息を止めるため、呼吸のコントロールを行う)
② 肩まで湯船につかる(胸部が圧迫されるため、動作環境や方法を工夫する)
③ 洗髪、上衣更衣、洗体など(上肢を使うため、上肢挙上は片腕のみで、呼吸のコントロールを行う。)
④ズボンや靴下を履く(体を前屈して行うため、動作のスピードや方法を調整する。)

※入浴の生活指導:息切れがある場合は全身入浴を控え、半身浴やシャンプーハットを使用したシャワーなどで対応する。入浴中は酸素吸入を行わない場合が多いため、入浴時間は短めにする。

1.〇 正しい。洗髪を片手で行う。なぜなら、同時に両手の上肢挙上をすると血中酸素飽和度の低下を招きやすいため。
2.× 動作を「素早く」行う必要はない。なぜなら、素早く行うことで呼吸が止まりやすくなったり、血中酸素飽和度の低下を招きやすくなったりするため。呼吸状態に合わせて、休息を入れつつ動作のスピードや方法を個々に合わせて調整する慢性閉塞性肺疾患患者は安静時には呼吸困難が無くとも、労作に伴って急に強い呼吸困難が出現することが特徴である。これは在宅酸素療法で酸素吸入を行っていても同様であり、 作業療法を行う際はその内容を分割して呼吸困難の出現に注意を払う。
3.× 浴槽には、「肩まで」浸かるのはなく、半身浴が望ましい。なぜなら、浴槽に肩まで浸かることで、体温上昇や水圧による呼吸運動の妨げになるため。また、ややぬるめの湯温で長時間(15分以上)の入浴は避ける。
4.× 洗い場の椅子の座面は、「低く」ではなく適度な高さとする。なぜなら、胸腹部の圧迫(横隔膜の可動域制限)が起こり、呼吸苦が生じやすいため。座面は胸腹部が圧迫されない程度に高くして、長柄ブラシなどの使用で前かがみ動作を軽減させる。
5.× 入浴中は、「経鼻カニューレを外す」必要はなく、入浴中も酸素吸入を継続する。なぜなら、入浴の運動強度は中等度と強いため。ちなみに、経鼻カニューレとは、酸素を吸入するための管状の道具で、両側の鼻孔に向けた短いチューブの先端から酸素が流れるしくみになっているものである。洗うこともできるが、酸素を送る器械に装着する際は、十分に水分を切るように注意する。

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3 Danielsらの徒手筋力テストで、段階2の測定肢位で正しいのはどれか。2つ選べ。
 ただし、関節可動域には異常がないものとする。

解答1・5

解説
1.〇 正しい。頸部屈曲の段階2は、設問のように背臥位で検者が胸鎖乳突筋の触診を行う。
2.× 肘関節伸展の段階2の検者の支える場所は、設問のように「前腕と肘」ではなく肘のみを支える。設問は、前腕と肘(肘頭のすぐ近位で上腕三頭筋を触知)しているため、段階0~1の検査肢位である。
3.× 股関節屈曲、外転および膝関節屈曲位での股関節外旋の段階2は、「端坐位」ではなく背臥位で行う。抵抗なしで全範囲行うことができれば、段階2である。
4.× 体幹屈曲の段階2は、設問のように「両膝関節伸展位」ではなく両膝関節屈曲位で行う。設問は、両上肢を前に両膝関節伸展した肢位をとっているため、段階3である。
5.〇 正しい。肩甲骨の内転と下方回旋の段階2は、設問のように座位で行う。患者の手首を握り上肢を支え、肩甲骨の脊椎縁 (内側縁)の下で触診する。

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4 身体図のような感覚障害を呈する場合に考えられる脊髄の障害部位はどれか。

1. ①
2. ②
3. ③
4. ④
5. ⑤

解答2

解説

本症例のポイント

①障害部レベルの全感覚消失。
②それ以下の左側の深部感覚消失・痙性麻痺。
③右側の温痛覚消失。
→Brown-Sequard 症候群(ブラウン・セカール症候群:脊髄半側症候群)は、損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。

1.× ①(右半側の障害)の場合は、①障害部レベルの全感覚消失、②障害部レベル以下の右側の深部感覚消失・痙性麻痺、③左側の温痛覚消失がみられる。
2.〇 正しい。②(右半側の障害)の場合、身体図のような感覚障害を呈する。Brown-Sequard 症候群(ブラウン・セカール症候群:脊髄半側症候群)は、損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。
3.× ③(後半側の障害)の場合は、①両側の触覚と深部感覚の障害、②温度覚・痛覚が残存する。解離性知覚脱失ともいう。
4.× ④(前半側の障害)の場合は、①損傷部位以下の運動麻痺、②損傷部位以下の温度覚・痛覚障害・膀胱直腸障害など。③両側の触覚と深部感覚は残存する。前脊髄動脈閉塞症候群後縦靭帯硬化症でみられる。
5.× ⑤(中心性の障害)の場合は、①下肢よりも上肢に強い運動麻痺、②感覚障害(触覚、深部感覚は保たれるが温痛覚が障害)が生じる。脊髄空洞症の初期でみられる。また、頭の急激な過伸展が原因で起こるものは中心性損傷が多い。

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5 32歳の男性。左利き。交通事故により右上腕切断となった。断端長は10.0cmで、残存肢の上腕長は25.0cmであった。
 能動義手製作のために選択する肘継手として最も適切なのはどれか。

1. 軟性たわみ式継手
2. 倍動肘ヒンジ継手
3. 能動単軸肘ヒンジ継手
4. 遊動単軸肘ヒンジ継手
5. 能動単軸肘ブロック継手

解答5

解説

本症例のポイント

40%残存の上腕短断端(断端長10.0cm、残存肢の上腕長25.0cm)

前腕切断:継手は遊動(肘まであるため)
上腕切断:継手は能動(肘の制御機能をもつため)

【能動肘継手の使い分けについて】
①ブロック型能動肘継手:能動肩義手、能動上腕義手(断端長<90%)に使用される。
②ヒンジ型能動肘継手:肘関節離断と上腕切断長断端(断端長>90%)に使用される。
(※ヒンジ型能動肘継手は、断端が長いためソケットの先にブロック型能動肘継手を組み込む余裕がない場合に用いられる肘継手である。)

1.× 軟性たわみ式継手は、前腕中~長断端手関節離断(前腕回内・回外が残存する前腕長断端義手)の場合に適応がある。ちなみに、軟性たわみ式継手は、革紐またはナイロンのたわみやすい肘継手である。したがって、遊動式(たわむだけ)に分類される。
2.× 倍動肘ヒンジ継手は、前腕短~極短断端の場合に適応がある。ちなみに、倍動肘ヒンジ継手は、肘関節の可動域が小さく屈曲が十分でないとき、肘屈曲運動を補う役割をもつ肘の運動でコントロールする。
3.× 能動単軸肘ヒンジ継手は、上腕長断端肘関節離断の場合に適応がある。ちなみに、能動単軸肘ヒンジ継手は、肘の動きをだせないが、コントロールケーブルを引っ張ることにより肘の固定と解除を繰り返すことができる。
4.× 遊動単軸肘ヒンジ継手は、前腕中~長断端手関節離断(前腕回内・回外が残存する前腕長断端義手)の場合に適応がある。ちなみに、遊動単軸肘ヒンジ継手は、差し込み式ソケットと上腕カフを連結し、肘の動きを保ちつつ頑丈な懸垂を行う。
5.〇 正しい。能動単軸肘ブロック継手は、本症例の能動義手製作のために選択する肘継手として最も適切である。能動単軸肘ブロック継手は、標準上腕断端上腕短断端肩離断肩甲胸郭間切断の場合に適応がある。ちなみに、能動単軸肘ブロック継手は、ロックコントロールケーブルを能動的に操作することで屈曲角度の固定・解除が随意的に行える。

 

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