第56回(R3) 作業療法士国家試験 解説【午後問題6~10】

 

6 痙直型四肢麻痺を呈する脳性麻痺児の姿勢保持の発達順で正しいのはどれか。

1. A―B―C―E―D
2. A―B―E―C―D
3. B―A―C―E―D
4. B―A―E―C―D
5. B―A―E―D―C

解答4

解説

痙直型脳性麻痺では、錐体路障害による両下肢痙性(両股関節の内転・内旋・膝関節伸展、および尖足)となる。つまり、両下肢の分離運動が困難である。また、両下肢と比較して両上肢の麻痺は軽度である。痙性麻痺を主症状として、筋トーヌス亢進、深部腱反射亢進、病的反射亢進、クローヌス出現、おりたたみナイフ現象がみられる。理学療法では、亢進した筋緊張を抑制し、病的反射の抑制、適切な反射の促通、運動パターンの学習を行う。

本症例のポイント

腹臥位による緊張性迷路反射の影響に注目する。緊張性迷路反射とは、背臥位では伸展緊張が促通され、腹臥位では屈曲緊張が促通される反射のことである。

A:下肢伸展しているが、体幹伸展がみられない。
B:四肢の屈曲がみられる。
C:上肢支持により、体幹伸展がわずかに可能。
E:上肢支持により、体幹伸展がわずかに可能でさらに頸部回旋が行える。
D:上肢支持により、体幹・頸部の完全後重力位が可能。

姿勢における難易度順(発達順)に並べ替えると、選択肢4.B―A―E―C―Dが正しい。B:四肢の屈曲がみられる。→A:下肢伸展しているが、体幹伸展がみられない。→E:上肢支持により、体幹伸展がわずかに可能でさらに頸部回旋が行える。→C:上肢支持により、体幹伸展がわずかに可能。→D:上肢支持により、体幹・頸部の完全後重力位が可能となる。

 

 

 

 

 

 

 

7 58歳の女性。関節リウマチ。SteinbrockerのstageⅡ、class2。この患者の日常生活活動を下図に示す。
 正しいのはどれか。

解答2

解説

本症例のポイント

①ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
②クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
③関節リウマチは、関節保護の原則を用い、手指など小さな関節に負荷をかけない、関節にかかる力を分散させる、変形の進みやすい向きでの荷重をかけない、などのように関節を保護した日常生活活動を送るように指導する。

1.× ①瓶の蓋の開閉する場合は、ボトルオープナーを使用する。ボトルオープナーがない場合は、手指関節に負担がかからないよう手掌全体を使い開ける。
2.〇 正しい。②椀を保持する場合は、手掌全体で保持する。関節の負担を最小限にできる。
3.× ③雑巾を絞る場合は、蛇口などにかけ、両手を使い絞る。
4.× ④はさみを開閉する場合は、カスタネットばさみなどを使用する。ちなみに、カスタネットばさみとは、テーブルの上に置いて上から押すだけで使えるはさみのことである。関節の負担を最小限にできる。
5.× ⑤ポットを持つ場合は、両手で保持し、特定の関節へ負担がかからないようにする。

Steinbrockerの病気分類

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

 

 

 

 

 

 

 

8 72歳の女性。転倒し、左手をついた。左手関節部に疼痛と腫脹が生じ、近くの病院を受診し徒手整復後ギプス固定を受けた。骨癒合後の画像を下に示す。手関節尺屈により尺骨頭部の疼痛とクリック音がする。手指の機能障害はない。
 生じている合併症で考えられるのはどれか。

1. 反射性交感神経性ジストロフィー
2. 尺骨突き上げ症候群
3. 長母指伸筋腱断裂
4. 正中神経損傷
5. 月状骨脱臼

解答2

解説

本症例のポイント

・72歳の女性。
・転倒、左手をつき、左手関節部に疼痛と腫脹が生じた。
・近くの病院を受診し徒手整復後ギプス固定を受けた。
・手関節尺屈により尺骨頭部の疼痛とクリック音がする。
・手指の機能障害はない。
・レントゲン所見:①橈骨遠位端の尺側が短縮、②尺骨が橈骨に対してやや遠位に偏位。
尺骨突き上げ症候群が疑われる。尺骨突き上げ症候群とは、骨折により橈骨が短縮するなどの変形癒合や、尺骨が相対的に長くなり尺側の疼痛や轢音(れきおん:クリック音)が生じるもの。治療は、専用のベルト付きサポーターを用いた保存療法や関節注射を行う。 通常、保存療法で大部分の人は改善する。しかし、改善されない場合は手術を用いる。

1.× 反射性交感神経性ジストロフィーは、複合性局所疼痛症候群(CRPS)のひとつである。軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して、当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。本症例に見られる「手関節尺屈により尺骨頭部の疼痛とクリック音」と症状が合わない。
2.〇 正しい。尺骨突き上げ症候群が生じている合併症で考えられる。尺骨突き上げ症候群とは、骨折により橈骨が短縮するなどの変形癒合や、尺骨が相対的に長くなり尺側の疼痛や轢音(れきおん:クリック音)が生じるもの。治療は、専用のベルト付きサポーターを用いた保存療法や関節注射を行う。 通常、保存療法で大部分の人は改善する。しかし、改善されない場合は手術を用いる。本症例の症状と合致する。
3.× 長母指伸筋腱断裂とは、その名の通り長母指伸筋の腱が断裂している状態である。主な原因として、①骨折部の骨変形による腱との摩擦や、②阻血性壊死(血腫や仮骨形成による血行・栄養不良)である。長母指伸筋の【起始】は尺骨体中部背面・前腕骨間膜背面、【停止】は母指の末節骨底の背側、【作用】は母指の伸展、内転である。レントゲンでは、腱の状態は映らず判断できない。
4.× 正中神経損傷の主な症状として、①母指から環指橈側および手背の一部の感覚障害②支配筋の麻痺(猿手、祈祷手、tear drop sign など)がみられる。レントゲンでは、神経の状態は映らず判断できない。
5.× 月状骨脱臼は、手関節および手の近位部の疼痛・腫脹・変形が起こる。本症例に見られる「手関節尺屈により尺骨頭部の疼痛とクリック音」と症状が合わない。

 

 

 

 

 

 

 

9 58歳の男性。脊髄小脳変性症。脊髄小脳変性症の重症度分類(厚生省、1992)の下肢機能障害Ⅲ度、上肢機能障害Ⅱ度である。脱衣所と洗い場の段差はなく、浴槽は据え置き式で、高さは50cmであった。
 住環境整備について誤っているのはどれか。

1. ベッド(A)を(A´)に移動する。
2. 開き戸(B)を外開きから内開きに変更する。
3. 浴槽内の(C)の位置に浴槽台を設置する。
4. 洗い場の壁(D)に横手すりを設置する。
5. 浴槽の(E)の位置にバスボードを設置する。

解答2

解説

本症例のポイント

①下肢機能障害Ⅲ度:「常時補助・介助歩行―伝い歩行」歩行できるが、ほとんど常に杖や歩行器などの補助具、または他人の介助を必要とし、それらのないときは伝い歩きが主体をなす。
②上肢機能障害Ⅱ度:細かい動作は下手であるが、食事にスプーンなどの補助具は必要としない。書字も可能であるが、明らかに下手である。
③脱衣所と洗い場の段差はなく、浴槽は据え置き式で、高さは50cmである。

脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

多系統萎縮症とは、成年期(多くは40歳以降)に発症し、進行性の細胞変性脱落をきたす疾患である。①オリーブ橋小脳萎縮症(初発から病初期の症候が小脳性運動失調)、②線条体黒質変性症(初発から病初期の症候がパーキンソニズム)、シャイ・ドレーカー症候群(初発から病初期の症候が自律神経障害であるもの)と称されてきた。いずれも進行するとこれら三大症候は重複してくること、画像診断でも脳幹と小脳の萎縮や線条体の異常等の所見が認められ、かつ組織病理も共通していることから多系統萎縮症と総称されるようになった。(※参考:「17 多系統萎縮症」厚生労働省様HPより)

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1.〇 正しい。ベッド(A)を(A´)に移動する。なぜなら、ベッドとトイレの距離が近い方が望ましいため。本症例は、歩行障害があり移動に時間がかかる。また、脊髄小脳変性症は排尿障害(自律神経症状)を来すことも多い。
2.× 開き戸(B)は、そのまま外開き(脱衣所側に開く)で使用するか、引き戸に変更する。なぜなら、内開きの扉は、出入りする際に浴室内が狭くなりやすく、病気が進行し車椅子移動になった際に扉を閉めることができないため。また、浴室内で患者が倒れた際に脱衣所側から開けにくくなる。 
3.△ 分かる方コメント欄で教えてください。浴槽内の(C)ではなく、(E)の位置に浴槽台を設置した方が良い。なぜなら、本症例は、歩行障害があり移動や浴槽の出入りが不安定であるため。本症例は、浴槽台とバスボードを併用すると考えられる。併用する場合、通常バスボードと浴槽台は対面になることはない(浴槽内での方向転換は危険が伴うため)。浴室の出入りを安定させるため洗い場の壁(D)に横手すりを設置することで、浴槽までの移動も安全に行えると考えられる。つまり、浴槽台・バスボードとも浴槽内(C)ではなく、(E)の位置に設置するほうが望ましいと考えられる。ただし、浴槽内の(C)の位置でも「誤っている」とはいえず、一方で、選択肢2は確実に「誤っている」ため、優先的に選択肢2が不適切である。
4.〇 正しい。洗い場の壁(D)に横手すりを設置する。横手すりは、移動や座位安定に機能する。浴室内の移動・浴槽や浴室内の出入りの際に必要である。
5.〇 正しい。浴槽の(E)の位置にバスボードを設置する。現在は、洗い場の床面から浴槽の縁までの立ち上がりの高さは40~45cm程度が主流である。本症例は、脊髄小脳変性症でバランスが不十分であると考えられ、本症例の浴槽は高さが50cmと比較的高いため、浴槽への出入りは座って行えるようバスボードが必要である。

各手すりの働き

縦手すり:出入り口の動作安定などのその場での動作に使用。
横手すり:移動や座位安定に機能する。
L字手すり:縦・横手すりの機能を持つ。座位からの立ち上がりに機能する。

脊髄小脳変性症の重症度分類(厚生省、1992)

【下肢機能障害】

Ⅰ度(微度):「独立歩行」独り歩きは可能、補助具や他人の介助を必要としない・
Ⅱ度(軽度):「随時補助・介助歩行」独り歩きはできるが、立ち上がり、方向転換、階段の昇降などの要所要所で、壁や手すりなどの支持補助具、または他人の介助を要する。
Ⅲ度(中等度):「常時補助・介助歩行―伝い歩行」歩行できるが、ほとんど常に杖や歩行器などの補助具、または他人の介助を必要とし、それらのないときは伝い歩きが主体をなす。
Ⅳ度(重度):「歩行不能 -車椅子移動」起立していられるが、他人に介助されてもほとんど歩行できない。移動は車椅子によるか、四つ這い、またはいざりで行う。
Ⅴ度(極度):「臥床状態」支えられても起立不能で、臥床したままの状態であり、日常生活動作はすべて他人に依存する。

【上肢機能障害】

Ⅰ度(微度):発病前(健常時)に比べれば異常であるが、ごく軽い障害。
Ⅱ度(軽度):細かい動作は下手であるが、食事にスプーンなどの補助具は必要としない。書字も可能であるが、明らかに下手である。
Ⅲ度(中等度):手先の動作は全般に拙劣で、スプーンなどの補助具を必要とする。書字はできるが読みにくい。
Ⅳ度(重度):手先の動作は拙劣で、他人の介助を必要とする。書字は不能である。
Ⅴ度(極度):手先のみならず上肢全体の運動が拙劣で、他人の介助を必要とする。

【会話障害】

Ⅰ度(微度):発病前(健常時)に比べれば異常であるが、軽い障害。
Ⅱ度(軽度):軽く障害されるが、十分に聞き取れる。
Ⅲ度(中等度):障害は軽いが少し聞き取りにくい。
Ⅳ度(重度):かなり障害され聞き取りにくい。
Ⅴ度(極度):高度に障害され、ほとんど聞き取れない。

(※厚生労働省特定疾患運動失調症調査研究班による重症度分類)

 

 

 

 

 

 

 

10 39歳の女性。多発性硬化症。発症から4年が経過。寛解と再燃を繰り返している。MMTは両側の上肢・下肢共に4。軽度の両側視神経炎を伴い、疲労の訴えが多い。
 この患者に対する作業療法で適切なのはどれか。

1. 陶芸で菊練りを行う。
2. 木工作業で椅子を作る。
3. ビーズ細工でピアスを作る。
4. 卓上編み機でマフラーを編む。
5. 細かいタイルモザイクのコースターを作る。

解答4

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

1.× 陶芸で菊練りを行う優先度は低い。なぜなら、菊練りは全身の筋力を使う作業であるため。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。ちなみに、菊練りとは陶芸において上の空気を抜く作業である。
2.× 木工作業で椅子を作る優先度は低い。なぜなら、本症例は軽度の両側視神経炎を伴い、危険性が高いため。木工作業は金槌や釘などを使用する。また、作業全体の上肢への負担も大きすぎる。
3.× ビーズ細工でピアスを作る優先度は低い。なぜなら、本症例は軽度の両側視神経炎を伴うため。視力や巧緻性・筋持久力を求めない作業が望ましい。
4.〇 正しい。卓上編み機でマフラーを編む。なぜなら、視力や巧緻性・筋持久力を求めない作業であるため。また、細かい作業が少なく休みながらの作業が可能である。
5.× 細かいタイルモザイクのコースターを作る優先度は低い。なぜなら、視力や巧緻性が必要な作業であるため。

 

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