第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午後問題31~35】

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31 IADLに含まれるのはどれか。2つ選べ。

1.家庭管理
2.更衣
3.洗濯
4.入浴
5.排泄

解答1・3

解説

IADL(Instrumental Activities of Daily Living:手段的日常生活動作)は、電話使用、買い物、食事の準備、家事(清掃、身の回りの片づけなど)、洗濯、移動、服薬管理、財産の取り扱い管理が含まれる。したがって、選択肢1/3.家庭管理/洗濯がIADLに含まれる。ちなみに、家庭管理とは、家庭経営を一定の設計に基づいて円滑、かつ快適に管理、運営していく技術、ないし仕事のことである(日本大百科全書(ニッポニカ)を参考)。

2.4~5.× 更衣/入浴/排泄は、基本的ADLに含まれる。

 

 

 

 

 

 

32 松葉杖歩行を行うために必要な機能と上肢の筋との組合せで正しいのはどれか。

1.体重支持:上腕二頭筋
2.握り手の把持:橈側手根伸筋
3.脇当ての固定:大胸筋
4.松葉杖の前方への振り出し:肩甲下筋
5.握り手を握ったときの手関節の固定:浅指屈筋

解答

解説
1.× 体重支持は、「上腕二頭筋」ではなく、肘伸展位に保つ上腕三頭筋である。他にも、肩甲骨下制筋、手関節背屈筋群も体重支持に作用する。
2.× 握り手の把持は、「橈側手根伸筋」ではなく、手指屈筋群による握力である。橈側手根伸筋の主な作用は、手関節背屈(伸展)である。
3.〇 正しい。脇当ての固定は、大胸筋で行う。ちなみに、大胸筋の作用は、肩関節内転、内旋であり、①鎖骨部:肩甲骨屈曲、②腹部:肩関節下制である。脇当てを胸郭と上腕で固定する。ちなみに、手を壁につけているときのように上肢が固定されているとき、または腕を前にあげて深呼吸するときなどに胸郭を上げて吸息を補助にも働く。
4.× 松葉杖の前方への振り出しは、「肩甲下筋」ではなく、肩関節屈曲筋群による三角筋などである。肩甲下筋の主な作用は、肩関節の内旋である。
5.× 握り手を握ったときの手関節の固定は、「浅指屈筋」ではなく、手関節背屈筋群である。浅指屈筋の主な作用は、第2~5指の中手指節関節と近位指節間関節の屈曲である。つまり、握り手の把持に作用する。

 

筋の作用について詳しく勉強したい方はこちら↓

【暗記確認用】上肢の筋のランダム問題

 

 

 

 

 

 

33 脳血管障害の片麻痺について正しいのはどれか。

1.四肢の遠位部と比べて四肢の近位部の回復が遅れることが多い。
2.上肢の麻痺と比べて下肢の麻痺の回復が遅れることが多い。
3.上肢に痙縮があると肘関節が屈曲することが多い。
4.共同運動が出現した後に連合反応が出現する。
5.発症直後は筋緊張が高まることが多い。

解答

解説
1.× 逆である。四肢の近位部と比べて四肢の遠位部の回復が遅れることが多い。主な一つの理由として、体幹や四肢の近位部では、両側性に支配されているためである。
2.× 逆である。下肢の麻痺と比べて上肢の麻痺の回復が遅れることが多い。主な一つの理由として、運動野の領域の広さが上肢>下肢であり障害される範囲が大きいため。
3.〇 正しい。上肢に痙縮があると肘関節が屈曲することが多い。Wernicke-Mann肢位(ウェルニッケマン肢位)になり、病巣の対側上肢が屈曲位、下肢が伸展位を呈することが多い。
4.× 逆である。連合反応が出現した後に共同運動が出現する。連合反応とは、身体の一部の運動が、身体他部の運動を不随意的に引き起こすような現象のことである。共同運動とは、発病の当初は随意性を喪失しているものをさす。やがて、肩・肘・手指全体を生理学的な屈曲あるいは伸展方向に同時にのみ動かせる運動ができる。
5.× 発症直後は筋緊張が低下(弛緩性麻痺)する。改善に伴い徐々に筋緊張が高まってくる。筋の随意収縮はなく、連合反応もない状態であることが多い。下図は、Brunnstrom法のステージである。

 

 

 

 

 

34 脊髄性運動失調症でみられるのはどれか。

1.折りたたみナイフ現象
2.断綴性発語
3.羽ばたき振戦
4.酩酊歩行
5.Romberg徴候陽性

解答

解説

脊髄性運動失調症とは?

脊髄性運動失調は、脊髄後索病変により深部感覚が障害されることによって生じる運動失調である。

1.× 折りたたみナイフ現象は、錐体路障害(上位運動ニューロン障害)で生じる。折りたたみナイフ現象とは、他動的な関節運動(屈曲および伸展)の途中で急に抵抗が弱くなる現象をいう。
2.× 断綴性発語は、小脳の障害(脊髄小脳変性症、小脳炎等)で生じる。発声に必要な喉頭筋群の協調運動が障害されているため、会話はとぎれとぎれで不明瞭な話し方になる現象である。
3.× 羽ばたき振戦は、肝性脳症、呼吸不全(CO2ナルコーシス)に認められる。羽ばたき振戦とは、手関節を背屈させたまま手指と上肢を伸展させ、その姿勢を保持するように指示すると、「手関節及び中指関節が急激に掌屈し、同時に、元の位置に戻そうとして背屈する運動」が認められる。手関節や手指が速くゆれ、羽ばたいているようにみえるので、このように呼ばれる。
4.× 酩酊歩行は、オリーブ橋小脳萎縮症などの小脳性の失調で生じる。両足を開き、全身を動揺させる歩き方である。
5.〇 正しい。Romberg徴候陽性は、脊髄性運動失調症でみられる。脊髄性運動失調症では暗所で測定障害が出現する。視覚で代償を行いながら、姿勢制御を取るため暗所や閉眼の影響がある。被検者につま先を揃えてまっすぐ立ってもらい、開眼で体の動揺をみる。

 

 

 

 

 

 

35 Guillain-Barré症候群について正しいのはどれか。

1.四肢の深部腱反射が亢進する。
2.欧米に比べて日本では軸索型が多い。
3.脳神経症状がみられるのは5%以下である。
4.先行感染から24時間以内に神経症状が出現する。
5.約90%の症例で神経症状のピークは1週間以内である。

解答

解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 四肢の深部腱反射が「亢進」ではなく、減弱もしくは消失する。
2.〇 正しい。欧米に比べて日本では軸索型が多い。ただし、日本全体としてみると脱髄型の方が多い(脱髄型57.6%、軸索型18.5%)。人口10万人当たり年間1~2人が発症すると推定されている。どの年齢層の方でもかかることがあるが、平均発症年齢は39歳で、男性の患者さんの方がやや多い。日本では特定疾患に指定されている。
3.× 脳神経症状がみられるのは、「5%以下」ではなく、約50%である。脳神経症状は、①顔面神経麻痺、②球麻痺、③眼球運動障害であった。(引用データ:ギラン・バレー症候群 – 日本神経学会より)
4.× 神経症状が出現するのは、先行感染から「24時間以内」ではなく、1~2週間後である。発症1~3週間前に①感冒様症状、②下痢、③腹痛などが見られ、その後1~2週間で急性に神経症状(下肢から上行する左右対称性の弛緩性運動麻痺)をきたす。
5.× 約90%の症例で神経症状のピークは、「1週間以内」ではなく、2~3週間以内である。急に(1日から数日の経過で)腕や脚がしびれて力が入らなくなり、たいていは2~3週間以内に症状がピークとなり、その後回復するという経過をとることが多い。

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【PT専門】Guillain-Barré症候群についての問題「まとめ・解説」

 

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