第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午前問題26~30】

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26 加齢により増加するのはどれか。

1.脳血流量
2.肺残気量
3.基礎代謝量
4.消化液分泌量
5.メラトニンの夜間分泌量

解答

解説
1.× 脳血流量は、加齢とともに低下する。なぜなら、血圧が上昇するため。それに伴い、脳の体積も低下する。
2.〇 正しい。肺残気量は、加齢とともに増加する。なぜなら、末梢気道が狭小化するため。ちなみに、肺残気量とは、安静呼吸で息を吐いた時に、肺に残っている空気量のことである。加えて、肺活量および最大換気量、最大呼気中間流量なども加齢により低下する。
3.× 基礎代謝量は、加齢とともに低下する。なぜなら、骨格筋が萎縮し、骨格筋量が減少するため。基礎代謝量とは、生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量のことである。
4.× 消化液分泌量は、加齢により低下する。その結果、全土運動の低下が起こる。ちなみに、消化液分泌量は30〜40代をピークである。
5.× メラトニン(睡眠ホルモン)は、加齢により減少する。加齢により朝早く目覚めたり(早朝覚醒)、夜中に何度も起きる(途中覚醒)、若い頃より睡眠時間が減ってくる(不眠症)などの現象は、加齢によりメラトニン分泌量が減少するため起こる。

 

 

 

 

 

 

27 発症後1か月の脳卒中片麻痺患者。
 2か月後に予定されている退院時の歩行能力の目標を設定するための情報として、優先度が最も低いと考えられるのはどれか。

1.画像所見
2.糖尿病の合併
3.発症前のADL
4.歩行能力の回復経過
5.Brunnstrom法ステージの回復経過

解答

解説

歩行機能の阻害因子

・痙性麻痺であること
・原始的姿勢反射に支配されていること
・動作に多様性がないこと
・知覚、感覚障害を伴うこと
・失禁があること。
・小脳性運動失調を伴うこと
(※参考文献:ゴールセッティングを考える―片麻痺目標設定―

1.〇 画像所見は、歩行能力の目標を設定するための情報として優先度は高い。なぜなら、画像所見による障害部位や程度の特定により、これまでの統計による予後予測を求めることができるため。
2.× 糖尿病の合併は、歩行能力の目標を設定するための情報として優先度は低い。なぜなら、糖尿病による歩行障害は一般的に認められにくいため。ただし、治療選定を行うために必要な情報ではあり、また重度の神経障害・低血糖症状がある場合は必要な情報となってくる。
3.〇 発症前のADLは、歩行能力の目標を設定するための情報として優先度は高い。なぜなら、発症前のADLを知らないことには退院後の具体的な生活も見えてこないため。
4~5.〇 歩行能力の回復経過/Brunnstrom法ステージの回復経過は、歩行能力の目標を設定するための情報として優先度は高い。多様な歩行の獲得(遅い、速い、曲がる、止まる)や、筋緊張・麻痺の評価を観察しながら目標を設定する。

 

 

 

 

 

 

28 四肢長計測の起点または終点の指標となるのはどれか。2つ選べ。

1.肩峰の最前端部
2.上腕骨外側上顆の外側突出部
3.上前腸骨棘の最上端部
4.大転子の最上端部
5.腓骨頭の最上端部

解答2・4

解説
1.× 「肩峰の最前端部」ではなく、肩峰外側端を使用する。上肢長は、【起点】肩峰外側端(または第7頚椎棘突起)から【終点】橈骨茎状突起(または中指先端)までである。上肢長のほかにも上腕長を測定するときに使用する。
2.〇 正しい。前腕長は、【起点】上腕骨外側上顆の外側突出部から【終点】橈骨茎状突起までである。前腕長のほかにも上腕長を測定するときに使用する。
3.× 上前腸骨棘の「最上端部」ではなく、上前腸骨棘の最下端を使用する。棘果長(下肢長)は、【起点】上前腸骨棘の最下から【終点】脛骨内果の最下端までである。
4.〇 正しい。転子果長は、【起点】大転子の最上端部から【終点】外果の外側突出点までである。
5.× 腓骨頭の最上端部は、四肢長計測に使用しない。ちなみに、下腿長は、【起点】外側膝関節裂隙から【終点】外果までである。

 

 

 

 

 

29 関節可動域測定法(日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会基準による)で矢状面上の角度を測定するのはどれか。2つ選べ。

1.肩伸展
2.手尺屈
3.股外転
4.膝屈曲
5.胸腰部回旋

解答1・4

解説
1.〇 正しい。肩屈曲・伸展は、矢状面での計測である。
2.× 手橈屈・尺屈は、前額面での計測である。
3.× 股外転・内転は、前額面での計測である。
4.〇 正しい。膝屈曲・伸展は、矢状面での計測である。
5.× 胸腰部回旋は、水平面での計測である。

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30 第Ⅶ脳神経の検査はどれか。

1.眼球運動
2.眼輪筋筋力
3.咀嚼筋力
4.調節反射
5.軟口蓋反射

解答

解説

第Ⅶ脳神経(顔面神経)の働き

第Ⅶ脳神経は、顔面筋支配の運動神経、涙腺や口蓋腺などの分泌作用制御の副交感神経、および味覚を司る感覚神経を含む混合神経である。

第Ⅶ脳神経(顔面神経)の障害により、顔面表情筋の障害、角膜反射低下、聴覚過敏、味覚低下(舌前2/3)、涙分泌低下、唾液分泌低下など。

1.× 眼球運動は、主にⅢ:動眼神経支配(内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋)である。他にも、Ⅳ:滑車神経(上斜筋)、Ⅵ:外転神経(外側直筋)である。
2.〇 正しい。眼輪筋筋力は、顔面神経支配(第Ⅶ脳神経)である。目の周りを取り囲むように密集しており、主にまぶたの開閉に作用する。
3.× 咀嚼筋は、主にⅤ:三叉神経支配である。咀嚼筋とは下顎骨の運動(主に咀嚼運動)に関わる筋肉の総称である。咀嚼筋は一般的に、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類が挙げられる。
4.× 調節反射は、Ⅲ:動眼神経支配である。調節反射とは、ピントを合わせる機能である。遠くを見る時に瞳孔は散大し、近くを見るときには瞳孔は収縮する。
5.× 口腔は、口唇から咽頭までの間の腔である。歯の内側を口蓋、口蓋の後方が硬口蓋(骨でできている)という。そして、硬口蓋の後方にあるのが軟口蓋であり、咽頭と鼻を遮断する役割を担っている。軟口蓋反射とは、摂食・嚥下の際に起こる一連の流れの一部であり、軟口蓋による鼻咽頭閉鎖により、食物の鼻への逆流を防止する。ちなみに、のどの運動系は、Ⅸ:迷走神経である。

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2 COMMENTS

匿名

Q28,四肢長計測の起点、終点に関する解答と解説は疑問です。厚生労働省のサイト(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12501000-Nenkinkyoku-Soumuka/0000054742.pdf)をご覧ください(厚生労働症 四肢長計測でも出てきます)。そもそも四肢長と問題が設定されているにも関わらず、前腕長を測定する起点を正解とすることに意味がありません。また前腸骨棘の下端を起点とする解説も理解できません。触診で明瞭なのは前腸骨棘の先端であり下端ではないと思われます、そこで選択枝の3を正解とすべきです。厚労省の正解が選択枝2,4とされているのは承知していますが、それは誤りとして指摘すべきだったのではないでしょか。正解は1,3とすべきと思われます。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
厚生労働省のサイトを見ました。
特段、解説自体を変更する必要はないと思いましたが、もしまだ不満のようでしたら、コメント主様のほうで厚労省に指摘してみてください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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