第56回(R3) 理学療法士国家試験 解説【午前問題21~25】

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21 理学療法士の守秘義務を規定するのはどれか。

1.憲法
2.民法
3.医師法
4.医療法
5.理学療法士及び作業療法士法

解答

解説
1.× 憲法とは、主に日本国憲法の事を指し、国家の統治の組織や原理、国民の権利・自由を守るための最高法規である。憲法の基本原則は、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義である。
2.× 民法とは、①財産(契約)に関する事項と②身分(家族)に関する事項を規定している。つまり、日本における一般人同士の間のルールについて書かれた法律である。
3.× 医師法とは、医師全般の職務・資格などを規定する日本の法律である。つまり、一般人には禁止されている医療行為を、医師という有資格者に限って許可する法律である。
4.× 医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
5.〇 正しい。理学療法士及び作業療法士法(リンク先:厚生労働省様HP)は、理学療法士の守秘義務を規定する。第16条に、「業務上知り得た人の秘密を守る義務」が課せられている。理学療法士及び作業療法士が、この規定に違反し、正当な理由がないにも関わらず、その業務上知り得た人の秘密を漏らした場合(退職後も同様)、50万円以下の罰金に処せられる。

 

 

 

 

 

 

22 65歳以上の要介護者または要支援の認定を受けた人で介護が必要となった原因の割合(平成28年度国民生活基礎調査)が最も高いのはどれか。

1.糖尿病
2.認知症
3.関節疾患
4.骨折・転倒
5.高齢による衰弱

解答

解説

(※図引用:平成28年 国民生活基礎調査の概況  厚生労働省様HP)

1.× 糖尿病は、要介護度別にみた主な原因のうち、要支援者・要介護者含め全体の第8位(2.7%)である。なぜなら、基本的に通院が行え介護を必要とする必要が少ないため。
2.〇 「認知症」は、要介護度別にみた主な原因のうち、要支援者・要介護者含め全体の第1位(18.0%)である。
3.× 要支援1の人のうち20.0%が「関節疾患」に起因しており、第1位となっている。しかし、要介護者も含めた割合においては上位3位外である。
4.× 「骨折・転倒」は、全体の上位3位以外である。要支援者の中においては第3位(15.2%)である。
5.× 「高齢による衰弱」は、要介護度別にみた主な原因のうち、第3位(13.3%)である。

まとめ

【介護が必要となる原因】

1位:認知症 18.0%
2位:脳血管疾患(脳卒中) 16.6%
3位:高齢による衰弱13.3%(熊本を除く)

 

【要支援者となる原因】

1位:関節疾患17.2%
2位:高齢による衰弱16.2%
3位:骨折・転倒15.2%

(※データ引用:平成28年 国民生活基礎調査の概況  厚生労働省様HP)

 

 

 

 

 

 

23 一次予防はどれか。

1.高血圧症患者の運動療法
2.脳出血患者の合併症予防
3.脳梗塞患者の再発予防教育
4.メタボリックシンドロームの予防教育
5.糖尿病性足病変患者の筋力トレーニング

解答

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」

1.× 「高血圧症患者の運動療法」は、二次予防または三次予防に当たる。高血圧症と診断され、早期治療を行っているか、それとも回復を図っているかは設問の文章からは読み取れない。
2.× 「脳出血患者の合併症予防」は、すでに脳出血を起こしている患者に対して行うものであり、三次予防である。
3.× 「脳梗塞患者の再発予防教育」は、すでに脳梗塞を起こしている患者に対して、その後再発を予防していくような措置をとるものであるため、三次予防に当たる。
4.〇 正しい。「メタボリックシンドロームの予防教育」は、病気そのものの予防措置であるため、一次予防である。
5.× 「糖尿病性足病変患者の筋力トレーニング」は、糖尿病患者に対してのリハビリテーションであるため、三次予防に当たる。

 

 

 

 

 

 

24 感覚機能について正しいのはどれか。

1.聴覚路は上側頭回に至る。
2.視覚路は内側膝状体を通る。
3.深部覚は脊髄視床路を上行する。
4.痛覚は脊髄内で後索を上行する。
5.味覚は副神経を経由して伝わる。

解答

解説
1.〇 正しい。聴覚路は、「上側頭回(ウェルニッケ野)」ではなく、側頭葉の聴覚野(上側頭回の上面)に至る。聴覚刺激は、内耳のラセン器で受容され、双極細胞の末梢性突起を経て、中枢性突起に伝えられる。そして蝸牛神経として橋に入り、蝸牛神経核に達し、ニューロンを交代する。蝸牛神経核から起こる線維が交差し台形体をつくる。その後、外側毛帯となり橋の背側部を上行→中脳下丘→視床後端にある内側膝状体に至る。ここで中継され、内包後脚のレンズ下部を通り、側頭葉の聴覚野(上側頭回の上面)に達する。
2.× 視覚路は、「内側膝状体」ではなく、外側膝状体を通る。視覚路とは、網膜で受容される視覚刺激が、大脳皮質の視覚野に達するまでの経路である。視覚情報は網膜→視神経→視索を経て、視床後端にある外側膝状体に入る。そして内包後脚のレンズ下部を通り、側頭葉内を走り、後頭葉の内側面にある視覚野に達する。ちなみに、内側膝状体は、視床に属する神経核群であり、中脳下丘と大脳皮質聴覚野の間に位置する聴覚伝導路の中継核である。
3.× 深部覚は、「脊髄視床路」ではなく、主に脊髄後索路を上行する。非意識型深部感覚では、主に後脊髄小脳路、または前脊髄小脳路を上行する。
4.× 痛覚は、脊髄内で「後索」ではなく、側索を上行する(外側脊髄視床路)。痛覚の伝導路は、末梢の受容器→脊髄神経節→後根→後角→白交連を通って反対側に交叉→側索→外側脊髄視床路→脳幹→視床→内包→大脳皮質中心後回(感覚野)である。
5.× 味覚は、「副神経」ではなく、顔面神経(舌前2/3)と舌咽神経(舌後1/3)を経由して伝わる。副神経とは、僧帽筋や胸鎖乳突筋など、首を動かす筋肉に分布する運動神経である。

詳しく勉強するならこちら↓

【PT/OT/共通】伝導路についての問題「まとめ・解説」

まとめ

聴覚:蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回

視覚:視神経→視交叉→外側膝状体→視放線→視覚野

・外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)

大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索

 

・前皮質脊髄路(錐体路の一部・運動)

大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束—延髄—交叉せずに脊髄前索を下降(10~25%程度)

重要事項①延髄で交差せずに同側に下降すること、②支配はL2まで。

 

・前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)

感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

 

・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)

感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

 

 

 

 

 

 

25 運動学習について正しいのはどれか。

1.固有感覚情報は影響しない。
2.言語学習よりも保持期間が短い。
3.学習課題の類似性に影響を受ける。
4.前の学習が後の学習を妨害することを正の転移という。
5.課題の種類にかかわらず覚醒レベルが高いと学習効果が高くなる。

解答

解説

運動学習とは?

運動学習とは、訓練や練習を通して獲得される運動行動の変化で、状況に適した協調性が改善していく過程である。感覚運動学習とも呼ぶ。

1.× 固有感覚情報も運動学習に影響する。固有感覚情報は、筋・腱・関節にある固有受容器により提供される身体の運動や位置についての情報である。身体がどのように動いたかなどの変化を捉える重要な情報である。したがって、運動学習には欠かせない要素である。
2.× 運動学習は、言語学習よりも保持期間は長い。なぜなら、言語学習よりも運動学習のほうが、多くの感覚を受容しており、比較的永続する能力の変化をもたらすため。
3.〇 正しい。学習課題の類似性に影響を受ける。2種類の運動課題の間に類似性があればあるほど転移の影響は大きくなる。テニスプレーヤーが、バドミントンやその他のラケット競技を練習に取り入れるのはこのためである。
4.× 前の学習が後の学習を妨害すること(うまくいかないこと)を、「正の転移」ではなく、負の転移という。反対に、前の学習が後の学習をうまくいくようになったことを、正の転移という。例えば、トランペットを吹いていた経験がトロンボーンの練習に役立つことは正の転移である。
5.× 一般的に課題の種類にかかわらず、覚醒レベルが高くても学習効果が高くはならない。なぜなら、覚醒レベルとパフォーマンスの関係は「逆U字曲線」で表すことができるため。覚醒レベルが中等度の時に最大(至適覚醒水準)となり、覚醒レベルが高すぎても低すぎても低下する。

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