第55回(R2) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

 

31 呼吸器疾患で正しいのはどれか。

1. 肺線維症は閉塞性肺疾患である。
2. 気管支拡張症では乾性咳嗽がみられる。
3. 気管支喘息の発作時は1秒率が低下する。
4. 過換気症候群では呼吸性アシドーシスになる。
5. CO2ナルコーシスは低CO2血症によって生じる。

解答3

解説

(※図引用:yakugaku lab様HP)

呼吸器疾患

閉塞性肺疾患(閉塞で呼気が障害されている)ので、1秒率が低下する。

拘束性肺疾患(肺の動きが悪くなっている)の1秒率は正常であるが、肺活量が減少する。

過換気症候群は、血中炭酸ガスが減少する結果、血液はアルカリ性となる。低Ca血症のため、四肢の硬直、痙攣、手足の先のしびれ、意識消失がみられることがあるが、通常は生命維持に影響がみられることはない。

1.× 肺線維症は、閉塞性肺疾患はなく、拘束性肺疾患である。肺線維症は、肺の線維化により肺が広がりにくくなる状態である。
2.× 管支拡張症は、乾性咳嗽ではなく、湿性咳嗽がみられる。気管支拡張症は、気管支が炎症などにより非可逆的に拡張した状態である。咳嗽(湿性咳嗽)と喀痰が主症状である。
3.〇 正しい。気管支喘息の発作時は1秒率が低下する。なぜなら、気管支喘息は、気道の慢性炎症による気道狭窄を示す閉塞性換気障害であるため。
4.× 過換気症候群は、呼吸性アシドーシスではなく、呼吸性アルカローシスになる。なぜなら、過換気症候群は、発作的に肺胞過換気状態と呼吸困難を生じるため。
5.× CO2ナルコーシスは、低CO2血症ではなく、CO2の蓄積によりPaCO2が上昇する。

CO<sub>2</sub>ナルコーシスとは?

慢性閉塞性肺疾患の患者は、慢性的に血中CO2濃度が上昇しており、体内のCO2濃度を感知する中枢化学受容体での感受性が鈍くなっている。したがって、普段の呼吸運動は低酸素を感知している酸素の受容体(末梢化学受容体)からの刺激によって起こっている。しかし、高濃度の酸素を投与されると酸素の受容体は体内に酸素が十分にあると判断し、呼吸中枢を抑制して呼吸運動が減弱する。その結果、体内に高度のCO2蓄積が起こり、意識障害などの中枢神経症状が起こる。

 

 

 

 

 

 

32 がん患者の疾患特異的評価で正しいのはどれか。

1. AIMS
2. FMA< Fugl-Meyer assessment >
3. GBS スケール
4. Hoffer 分類
5. KPS< Karnofsky performance scale >

解答5

解説

がん患者の身体機能評価

①ECOGのPS(Performance status)
②KPS(Karnofskyperformance scale) 

1.× AIMS(Arthritis Impact Measurement Scales:関節炎影響測定尺度)は、関節リウマチ患者自身による運動機能評価である。QOLの評価法として国際的に用いられている。
2.× FMA< Fugl-Meyer assessment >は、片麻痺患者の身体機能の回復についての評価である。上肢・手指・下肢の運動機能やバランス、感覚などを226点満点で評価する。
3.× GBS スケールは、認知症状評価尺度である。知的機能・自発性・感情機能・その他の精神症状・運動機能の項目で構成され、ある程度量的な測定が可能である。対象者の診察や対象者をよく知るものからの行動観察情報により評価する。
4.× Hoffer 分類は、二分脊椎の移動能力の評価基準である。①独歩 (CA)、② 屋内歩行 (HA)、③訓練レベル (NFA)、④歩行不能 (NA)に分類する。
5.〇 正しい。KPS< Karnofsky performance scale >は、がん患者の全身状態や日常生活での活動度評価ツールである。0(死)~100(正常)%までの11段階に分類する。

KPS(Karnofsky performance scale)

『正常な活動可能、特別のケアを要していない』
100%:正常、臨床症状なし
90%:軽い臨床症状があるが正常の活動可能
80%:かなりの臨床症状があるが努力して正常の活動可能

『分働不可能,家庭での療養可能。日常の行動の大部分に症状に応じて介助が必要』
70%:自分自身の世話はできるが正常の活動・労働は不可能
60%:自分に必要なことはできるが時々介助が必要
50%:症状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要

『自分自身のことをすることが不可能、入院治療が必要、疾患が急速に進行していく時期』
40%:動けず、適切な医療および看護が必要
30%:全く動けず入院が必要だが死は差し迫っていない
20%:非常に重症、入院が必要で精力的な治療が必要
10%:死期が切迫している

0% 死

 

 

 

 

 

 

33 熱傷のリハビリテーションで正しいのはどれか。

1. 持続伸長運動が基本である。
2. 熱傷瘢痕部の圧迫は避ける。
3. 熱傷による拘縮予防には装具は使用しない。
4. 慢性期のパラフィン浴は60 ℃くらいがよい。
5. 会陰部熱傷の急性期では下肢外旋肢位のポジショニングを行う。

解答1

解説
1.〇 正しい。持続伸長運動が基本である。関節拘縮予防、瘢痕形成予防の目的で、受傷創・移植皮膚を損傷しないように愛護的に運動する。ちなみに、持続伸張とは、時間をかけてゆっくり筋肉を伸ばすことである。
2.× 熱傷瘢痕部の圧迫は、避けるのではなくアプローチとして行う。スポンジや弾性包帯などでの圧迫法がある。肥厚性瘢痕が顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮を来し、機能障害の原因となる。
3.× 熱傷による拘縮予防に、装具を使用する。急性期から装具を用いて良肢位にポジショニングを行うことで、拘縮予防となる。
4.× 慢性期のパラフィン浴は、60 ℃ではなく、50~55℃の間に設定するくらいがよい。60 ℃は高すぎる。
5.× 会陰部熱傷の急性期では、下肢外旋肢位ではなく、下肢(股関節)外転位のポジショニングを行う。熱傷部位が伸展されるようにポジショニングを行う。

 

まとめましたので参考にしてください↓

理学療法士国家試験 熱傷についての問題7選「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

34 左半側空間無視に対する作業療法で適切なのはどれか。

1. 間隔伸張法
2. 自己教示法
3. 視覚イメージ法
4. プリズム適応療法
5. 右後頸部振動刺激

解答4

解説

左半側空間無視に対する作業療法

・グレードB:視覚探索訓練、無視空間への手がかりの提示、プリスム適応療法など。

・グレードC1:無視側の耳への冷水刺激、無視空間への眼振の誘発を行う視運動性刺激、無視側への体幹回旋、無視側後頸部の筋への振動刺激など

しかし、永続的効果・日常生活動作への般化については、十分な科学的根拠はない。

1.× 間隔伸張法は、記憶改善テクニックであり、認知症などに適応となる。記憶したい事柄に対する質問をするまでの時間を次第に長くして、記憶を保持する期間をのばしていくことを目的とする手法である。
2.× 自己教示法は、認知行動療法の一つである。遂行機能障害にも適応となる。恐怖やネガティブな感情が湧出した際に、実際に声を出して、あるいは心の中で「リラックスしよう」「心配ない」などの言葉を自分自身にかける。
3.× 視覚イメージ法は、記憶障害に適応となる。人の名前を覚えるときに視覚的なイメージに置き換えて記憶する方法である。
4.〇 正しい。プリズム適応療法は、左半側空間無視に対する作業療法で適切である。プリズム適応療法は、視野を右にずらすプリズム眼鏡をかけ、目標物を指さす課題を繰り返すと、最初は正確な位置を指すのが難しいが、次第にプリズムによる視覚情報に適応し、正確な位置を指せるようになるものである。
5.× 後頸部振動刺激は、半側空間無視に適応であるが、左半側空間無視に対しては右後頭部ではなく、左後頭部(無視側)に振動刺激を加える。
左後頭部筋に振動刺激を与えると、筋紡錘を通じて筋が伸張されたという錯覚が生じ、主観的な身体正中が左にシフトするというわれる。

 

 

 

 

 

 

35 大腿骨頸部骨折に対して後方アプローチにて人工骨頭置換術を施行した患者のADL指導で正しいのはどれか。

1. 和式トイレで排泄する。
2. 割り座で足の爪を切る。
3. あぐら座位で靴下をはく。
4. 健側下肢から階段を下りる。
5. 椅子に座って床の物を拾う。

解答3

解説

人工股関節置換術後の禁忌肢位

・前方アプローチ:伸展、内転、外旋
・後方アプローチ:過屈曲、内転、内定

※人工関節置換術はしばしば関節脱臼を起こすが、人工骨頭置換術は脱臼を起こすことはまずない。

1.× 排泄は、和式トイレではなく洋式トイレを使用する。なぜなら、和式トイレの利用は股関節の過屈曲を伴い、脱臼するリスクがあるため。
2.× 足の爪を切るのは、割り座ではなくあぐら座位で行うよう指導する。なぜなら、割り座は股関節の屈曲・内旋を伴い、脱臼するリスクがあるため。
3.〇 正しい。あぐら座位で靴下をはく。あぐら座位(股関節外転・外旋)は、禁忌肢位とはならない。
4.× 階段を下りるのは、「健側下肢から」ではなく「患側下肢から」行う。健側が上段にあることで自重を安全に支えることができる。
5.× 床の物を拾うのは、椅子に座ってではなく、リーチャーなどの自助具を使用する。なぜなら、椅子に座って床の物を拾う動作は、股関節の過屈曲を伴い、脱臼するリスクがあるため。

 

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