第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午前問題81~85】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

81 治療者が指示や助言を与え、非適応的な行動をコントロールすることを目的とした治療法はどれか。

1.芸術療法
2.森田療法
3.精神分析療法
4.来談者中心療法
5.バイオフィードバック療法

解答
解説
1.× 芸術療法とは、幼いころ、だれもが経験したことのある「ごっこ遊び」や「なぐり描き」、「粘土遊び」、「砂遊び」といった表現活動の意味や役割を生かした心理療法である。表現活動の相違によって、絵画療法音楽療法心理劇箱庭療法舞踏療法詩歌療法コラージュ療法造形療法などがあるが、芸術療法は、これらの多彩な技法の総称である。
2.× 森田療法は、目的、行動本意の作業を繰り返すことにより、症状を受け入れながら生活できるようにするものである。
3.× 精神分析療法は、自由連想法により無意識のうちに抑圧されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせる方法である。
4.× 来談者中心療法は、ロジャースが創始者であり、治療者が来談者(クライアント)を権威で従属させることなく、来談者の話を聞き、来談者自らが洞察を得るように導いていく方法である。
5.〇 正しい。バイオフィードバック療法は、治療者が指示や助言を与え、非適応的な行動をコントロールすることを目的とした治療法である。精神生理学に関連した方法で、脳波心電図血圧などの生理現象を計測しながら良い状態であれば対象者に信号を出して、良い状態に保つよう訓練するというオペラント条件付けを用いた手法である。

 

 

 

 

82 脳の病変部位と出現しやすい症候との組合せで正しいのはどれか。

1.黒質:感覚障害
2.視床:嗅覚障害
3.赤核:摂食嚥下障害
4.線条体:不随意運動
5.扁桃体:筋緊張異常

解答
解説
1.× 黒質の障害により起こる代表的な疾患は、パーキンソン病である。主な徴候は筋固縮、無動、安静時振戦、姿勢保持障害などである。感覚障害は、視床が病変となると起こることが多い。
2.× 視床の役割は、嗅覚を除き、視覚、聴覚、体性感覚などの感覚入力を大脳新皮質へ中継する。嗅覚障害は、前頭葉眼窩面の障害で多い。
3.× 赤核は、不随意の運動の調節(赤核振戦:粗大な動作で誘発される振戦)を担う。
4.〇 正しい。線条体(被殻と尾状核)が病変となると、不随意運動が出現する。なぜなら、線条体は大脳基底核の一部であるため。
5.× 扁桃体は、情動反応の処理と記憶において主要な役割を持つ。筋緊張異常が起こるのは、黒質や錐体路障害である。

類似問題です↓
【PT/OT/共通】運動に関する部位ついての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

83 Danielsらの徒手筋力テストについて正しいのはどれか。(※不適切問題 採点除外)

1.筋を最大伸張させた肢位で行う。
2.協働筋を個々に分離して評価できる。
3.関節可動域に制限があれば評価できない。
4.抑止テストでは徐々に徒手抵抗を強くする。
5.筋収縮が全く認められない筋の判定は段階1である。

解答 解なし採点対象から除外する。
理由:選択肢の表現が不十分で正解を得ることが困難なため。

解説
1.× 筋を最大伸張させた肢位とは限らず、一般に身体部位が可動範囲の最終域にある肢位で保持して計測する。
2.× 協働筋を個々に分離して評価できる検査(肘関節屈曲位:上腕筋、上腕二頭筋、腕橈骨筋)があるが、全てそうだとは言えない。また、MMTは運動動作をテストしているため、その運動動作に関与する複数の筋の筋力の和を評価している。
3.× 関節可動域に制限があっても評価できる。関節可動域に制限がある場合には、患者の可能な可動域を全可動域とし、その範囲で最大徒手抵抗に抵抗できる場合には、その段階は5と判定される。
4.× 抑止テスト(ブレイク・テスト)とは、筋が最も働かなくてはならない可動域の点で、患者にある身体部分を保持してもらい、その保持を「抑止」する方向に検者が徒手抵抗を加えるのに対して、患者が抵抗できる筋の最大強度を評価するという検査である。臨床では、MMTの抵抗は、「患者の関節・筋損傷を最小限にするため、徐々に徒手抵抗を強くするように」と習う方も多いかと思うが、抑止テスト(ブレイク・テスト)の定義は上記のようになっている。ちなみに、徒手抵抗を徐々に強くするのは、抗抵抗自動運動テストと呼ばれる。
5.× 筋収縮が全く認められない筋の判定は、「段階1」ではなくである。1(Trace)は、筋収縮が目に見える、または触知できるが、関節運動はおこらないことをいう。

類似問題です↓
【OT/共通】MMTについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

84 接触感染するのはどれか。(※不適切問題 解3つ)

1.MRSA
2.結核菌
3.風疹ウイルス
4.麻疹ウイルス
5.インフルエンザウイルス

解答1・3・43つの選択肢を正解として採点する
理由:3つの選択肢が正解であるため。

解説

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

1.〇 正しい。MRSA(methicillin‐resistant Staphylococcus aureus)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌であり、感染経路は接触感染である。
2.× 結核菌の感染経路は、空気感染である。
3.〇 風疹ウイルスは、飛沫感染・接触感染である。
4.〇 麻疹ウイルスは、飛沫感染・接触感染である。
5.△ インフルエンザウイルスは、飛沫感染・接触感染である。他にはマイコプラズマ、流行性耳下腺炎(ムンプス)などがある。 

 

 

 

85 原始反射のうち消失する時期が最も遅いのはどれか。

1.Moro反射
2.足底把握反射
3.緊張性迷路反射
4.交叉性伸展反射
5.非対称性緊張性頚反射

解答
解説
1.5.× Moro反射・非対称性緊張性頚反射は、4か月前後までに消失する。
2.〇 正しい。足底把握反射は、9か月ごろに消失する。
3.× 緊張性迷路反射は、5~6か月に消失する。
4.× 交叉性伸展反射は、2か月前後に消失する。

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】姿勢反射を完璧に覚えよう!

 

2 COMMENTS

匿名

84もそうですが
「〜を主な感染経路とするのはどれか。」という設問であれば不適切にならないんですよね。
不適切問題で正解は1・3・5で済ますのではなく、
可能な感染経路を考えながらも、なかでも主な経路や問題になる感染様式をおさえるようにするのだと思います。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。

第49回午前78 飛沫感染するのはどれか。
と関連してコメントくださりありがとうございます。
コメントしてくださった通り、「主な」感染経路と設問で書いてあれば、選択肢1.MRSAと選択しやすいかもしれませんね。

返信する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)