第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午前問題76~80】

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76 小脳橋角部に最も多い脳腫瘍はどれか。

1.腺腫
2.髄膜腫
3.血管芽腫
4.神経膠腫
5.神経鞘腫

解答
解説

小脳橋角部とは?

 小脳橋角部は、脳幹(橋の下部)と小脳の間で、内耳道に接する部位を指す。したがって、内耳神経・顔面神経が通る部位である。この部位にできる腫瘍は、脳実質外腫瘍が多い。

・脳腫瘍には、①脳内実質に発生するもの(グリオーマなど)と、②実質外に発生するもの(髄膜腫、頭蓋咽頭腫、聴神経鞘腫など)に分けられる。グリオーマには星状細胞腫、乏突起膠腫、膠芽腫などがあり、膠芽腫はその中でも最も予後が悪い。

1.× 脳腫瘍として、腺腫は主に下垂体腺腫があげられる。
・下垂体腺腫は、下垂体前葉由来の良性腫瘍である。トルコ鞍近傍で好発する。下垂体腺腫では、視交叉が圧迫されると視神経の一部が障害され両耳側半盲となる。視力・視野障害の他にも、下垂体前葉機能障害(成長ホルモン低下症状や卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの低下症状など)や視床下部障害(尿崩症)が起こる。

2.× 髄膜腫は、硬膜(髄膜)から発生することが最も多い。
・髄膜腫とは、最も多い原発性脳腫瘍で全脳腫瘍の27%を占める。脳や脊髄を覆う髄膜(円蓋部、傍矢状洞部、大脳鎌部)に発生する腫瘍である。皮膜をもつ良性の充実性腫瘍である。中年女性に多い。

3.× 血管芽腫とは、小脳半球になりやすい良性の腫瘍である。血管を構成する細胞が異常に増殖してできるもので、ゆっくりと大きくなる。遺伝性疾患であるフォン・ヒッペル・リンドウ病に合併することがある。出血や嚢胞形成を起こすと、頭痛、めまい、歩行障害などの神経症状を引き起こす。

4.× 神経膠腫とは、グリオーマともいい、成人では大脳半球、小児では小脳・脳幹になりやすい。主に頭痛、てんかん、運動障害、精神症状などが初発症状として現れる。悪性腫瘍であり予後が最も悪い。

5.〇 正しい。神経鞘腫とは、小脳橋角部に最も多い脳腫瘍である。小脳橋角部腫瘍の約80%を占める。特に聴神経鞘腫(前庭神経由来)が多い。女性にやや多い。症状として、一側の高音域難聴、耳鳴、健側に向かう水平注視眼振(Bruns眼振)、めまいなどがある。症状が進行すると、運動失調や歩行障害などの小脳症状や、水頭症による頭蓋内圧亢進症状を呈する。

 

 

 

 

77 胃全摘出術後に起こりやすいのはどれか。

1.多血症
2.てんかん
3.血小板減少
4.逆流性食道炎
5.高カルシウム血症

解答
解説

MEMO

胃全摘出術後は、噴門(逆流防止機構)と幽門(排出調節機構)が失われ、また胃酸分泌や内因子分泌もなくなるため、消化・吸収機能に大きな影響が出る。

【胃全摘出術後にみられやすいもの】①胃酸が不足することによる鉄の吸収障害。②胃の壁細胞から分泌されるキャッスル内因子が減少することによるビタミンB12不足。その他にも、小胃症状、体重減少、ダンピング現象、貧血、骨粗鬆症、逆流性食道炎、下痢などが考えられる。

1.× 「多血症(赤血球増加症)」ではなく、貧血が起こりやすくなる。なぜなら、鉄欠乏性、ビタミンB₁₂欠乏による巨赤芽球性が生じるため。

2.× てんかんと胃全摘出術後との関連性は低い。てんかんになる原因は様々で、①脳の奇形や周産期の異常による、②生まれつきのものから、③脳炎・脳腫瘍など、別の病気が原因によっておこるもの、④交通事故などの大きなケガによるもの、⑤脳卒中によっておこるもの、⑥認知症などの神経が老化することによっておこるものがある。

3.△ 血小板減少も胃全摘出術後に起こる可能性があるが、優先される胃全摘後の典型的合併症がほかにある。胃全摘出術後は、ビタミンB₁₂欠乏では汎血球減少が起こり、血小板数も減ることはある。

4.〇 正しい。逆流性食道炎は、胃全摘出術後に起こりやすい。なぜなら、胃全摘出術後により、胃の逆流防止機構(噴門)が失われ、再建腸管からの胆汁・膵液が食道へ逆流しやすくなるため。

5.× 「高カルシウム血症」ではなく、低カルシウム血症が起こりやすい。なぜなら、胃酸分泌の低下から脂肪性下痢などによるカルシウムの不溶化、ビタミンDの吸収障害が起こり生じるため。ちなみに、高カルシウム血症の主な原因には副甲状腺機能亢進症、ビタミンD中毒、癌などがある。

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78 無意識の願望を意識的に気付きから排除する形での防衛機制はどれか。(※不適切問題 採点除外)

1.統制
2.抑圧
3.合理化
4.知性化
5.反動形成

解答2(採点対象から除外
 理由:選択肢の表現が不十分で正解を得ることが困難なため。 
※設問文の「意識的に気付きから排除」という表現が矛盾している。防衛機制は、そもそも無意識で発動する心理的な機構である。

解説

防衛機制とは?

防衛機制とは、人間の持つ心理メカニズムであり、自分にとって受け入れがたい状況や実現困難な目標に対して、自我を保つために無意識で発動する心理的な機構である。防衛機制には、短期的には精神状態を安定させる作用があるが、長期的にみればかえって精神を不安定にさせてしまうものもある。

1.× 統制とは、防衛機制のひとつで、周囲の人や環境などの出来事や対象を、過度に管理したり統制することである。

2.× 抑圧とは、防衛機制のひとつで、自我を脅かす願望や衝動を意識から締め出して意識下に押し留めることである。例えば、性的欲求、攻撃性などを無意識のうちに抑えることである。

3.× 合理化とは、欲求が満たされないとき、その耐え難い感情をかなり強引な理屈づけを行って処理しようとすることである。例:異性に振られたとき、「あんな奴と付き合わない方が自分のためになる」などと思い込む。

4.× 知性化とは、欲動や感情を論理的あるいは抽象的に考えたり、それらに関する知識を得たりなどしてコントロールすること。例えば、性衝動を、性に関する知識で統制する態度である。

5.× 反動形成とは、満たされない欲求を正反対の欲動によって打ち消すことである。例えば、好きな子をいじめる。

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79 創始者と心理療法の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.Beck:集団療法
2.Freud:自由連想
3.Jung:夢分析
4.Rogers:自律訓練法
5.Skinner:認知療法

解答2,3
解説
1.× Beck(ベック)は、「集団療法」ではなく、うつ病に対する認知療法(認知行動療法)を発展させた。認知行動療法は、精神症状をもたらす原因となる否定的思考を認知の歪みと捉え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図るものである。
・集団(精神)療法は、通常10人前後の小集団を対象として、参加するメンバーの各々が自分を語ることを通じて実践される心理療法のひとつである。集団精神療法により、飲酒問題を認め、断酒の継続を行うことが治療上きわめて有効である。

2.〇 正しい。Freud(フロイト)は、精神分析の創始者であり、自由連想や精神・性的な発達理論、人格形成などである。
自由連想とは、患者の頭に浮かんだことを隠さずに自由に語ってもらうことで、無意識のうちに抑制されていた葛藤を意識化させ、洞察し解決に向かわせることである。

3.〇 正しい。Jung(ユング)は、分析心理学の創始者であり、精神病者の妄想などを神話、夢と比較して研究して、それらの共通点を多く見出し、人類共通の無意識である「集合的無意識(普遍的悪意ともいう)」の存在を提唱した。ほかにも、夢分析内向・外向などである。

4.× Rogers(ロジャース)は、「自律訓練法」ではなくクライエント(来談者)中心療法の創始者で、非指示的態度(パターン・センター・アプローチ)などである。これは、治療者が来談者の話に関心を持って傾聴し、共感していくことによって、来談者自身が自ら気づき、成長していけるとするものである。
・自律訓練法とは、シュルツ(Schulz)によって開発され、自己暗示をかけることにより身体をリラックスさせ、不安・ストレスを軽減させる方法である。

5.× Skinner(スキナー)は、「認知療法」ではなく、オペラント条件付けを開発した。オペラント条件付けとは、行動療法のもとになる学習理論である。
・認知療法は、Beck(ベック)によって提唱された。

 

 

 

 

80 加齢によっても保たれる精神機能はどれか。

1.記銘力
2.計算力
3.注意力
4.言語理解力
5.情報処理速度

解答
解説

(※図引用:知能の複数の下位側面(佐藤眞一(2006)2)より)

 知能の最も大きな分類は、結晶性知能と流動性知能である。結晶性知能は、個人が長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく知能であり、言語能力理解力洞察力などを含み低下しにくい。よって、選択肢4.言語理解力が正しい。

加齢による精神機能の変化

①流動性知能は、加齢とともに低下する。
②結晶性知能は、加齢でもあまり低下しない。
③機械的記憶能力は、加齢とともに低下する。
④論理的記憶能力は、加齢でもあまり低下しない。
④意欲・行動力は、加齢により低下する。

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2 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘いただいた通り間違えておりました。
修正致しましたのでご確認ください。

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