第55回(R2) 理学療法士国家試験 解説【午前問題41~45】

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41 外側ストラップ付き金属支柱付き短下肢装具の使用が最も適切なのはどれか。

1.歩行中の膝折れ
2.足クローヌス
3.深部感覚障害
4.内反尖足
5.外反膝

解答
解説

 内側ストラップは外反矯正であり、外側ストラップは内反矯正に効果的である。ちなみに、痙縮の強い症例に対しいて選択する装具としては、金属支柱付きの装具がプラスチック製の装具より有効である。さらに強い痙縮の矯正には以下の方法がある。
①強い内反の矯正:足背ベルト・ストラップの装着、短靴(腰靴が果部より2~3cm低いもの)からチャッカ靴(腰靴がほぼ果部までのもの)への変更。
②強い尖足の矯正:足背ベルトの装着、足板の補強。

したがって、選択肢4.内反尖足に対して、外側ストラップ付き金属支柱付き短下肢装具が有効である。

1.× 歩行中の膝折れに対しては、踵の補高(装具の足関節背屈角度を小さくする)などが有効である。
2.足クローヌスは、底背屈の制限などが有効である。
3.× 深部感覚障害は、支持基底面の拡大などが有効である。
5.× 外反膝は、膝装具や内側ウェッジなどが有効である。

 

 

 

 

42 慢性心不全患者に対する運動療法の効果で正しいのはどれか。2つ選べ

1.BNPの増加
2.QOLの改善
3.運動耐容能の向上
4.左室駆出率の低下
5.交感神経活性の亢進

解答2,3
解説

心不全に対する運動療法によって期待できる効果

①運動能力が増加し、心不全の症状(息切れなど)が軽くなり、楽に動けるようになる。
②不安やうつ状態が改善し、精神面で自信が付き、気分が快適になる(QOLの改善)。
③動脈硬化のもとになる冠危険因子(糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧)が改善する。
④血管が自分で広がる能力(血管内皮機能)や自律神経の働きが良くなり、血液中のBNP(心臓に無理がかかると増加する心臓ホルモン)が低下する。
⑤心不全悪化による再入院や脂肪の危険性が減る

1.× BNPの「増加」ではなく低下する。なぜなら、ちなみに、運動療法は心不全増悪を抑制するのため。BNPとは、心臓に無理がかかると増加する心臓ホルモンのことである。心不全の病態を反映する指標であるため、BNPの増加は心不全の増悪を表している。
2~3.〇 正しい。QOLの改善・運動耐容能の向上は、慢性心不全患者に対する運動療法の効果として適切である。
4.× 運動療法を実施することで、左室駆出率の低下することはない。(エビデンスA)
5.× 交感神経活性の「亢進」ではなく自律神経の調整に寄与する。むしろ交感神経筋量低下が期待できる(エビデンスB)。

心疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(※一部抜粋)

【エビデンスレベルA】
1.運動耐容能を増加する。
2.日常生活同一労作における症状の軽減によりQOLを改善する。
3.左室収縮機能およびリモデリングを増悪しない。
4.冠動脈事故発生率を減少する。
5.虚血性心不全における心不全増悪による入院を減少する。
6.冠動脈疾患および虚血性心不全における生命子後を改善する。
7.収縮期血圧を低下する。
8.HDLコレステロールの上昇、中性脂肪を低下する。

【エビデンスレベルB】

1.同一労作における心拍数と換気量を減少する。
2.左室拡張機能を改善する。
3.交感神経緊張低下が期待できる。
4.冠動脈病変の進行を抑制する。
5.CRP、炎症性サイトカインの減少など炎症関連指標を改善する。
6.血小板凝集能、血液凝固能を低下する。
7.圧受容体反射感受性を改善する。

【エビデンスレベル C】

1. 安静時、運動時の総末梢血管抵抗を減少する。
2.最大動静脈酸素較差を増加する。
3.心筋灌流を改善する。
4.冠動脈、末梢動脈血管内皮機能を改善する
5.骨格筋ミトコンドリア密度と酸化酵素の増加。(Ⅱ型からⅠ型へ筋線維型を再変換する)

 

 

 

 

 

43 慢性腰痛に対する認知行動療法で誤っているのはどれか。

1.痛みの有無を頻回に確認する。
2.腰痛の不安を解消する映像を見せる。
3.腰を反らしても痛まない体験を繰り返させる。
4.痛みがあっても行える活動があることを認識させる。
5.適切な身体活動は痛みを増悪させないことを説明する。

解答
解説

 認知行動療法とは、ベックによって精神科臨床に適応された治療法である。例えば、うつ病患者の否定的思考を認知の歪みと考え、その誤りを修正することによって症状の軽快を図る。認知行動療法の中に、系統的脱感作法がある。系統的脱感作法とは、患者に不安を引き起こす刺激を順に挙げてもらい(不安階層表の作成)、最小限の不安をまず想像してもらう。不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指す手法である。

1.× 痛みの有無を頻回に確認するのでなく、その痛みがどんな状態で引き起こすか(不安階層表の作成)を確認する。
2~5.〇 正しい。2~5.腰痛の不安を解消する映像を見せる/腰を反らしても痛まない体験を繰り返させる/痛みがあっても行える活動があることを認識させる/適切な身体活動は痛みを増悪させないことを説明することは、不安が生じなかったら徐々に階層を上げていき、最終的に源泉となる不安が消失する(脱感作)ことを目指すことにつながっている。

 

 

 

 

 

 

44 外反肘をきたしやすいのはどれか。

1.尺骨肘頭骨折
2.上腕骨外顆骨折
3.上腕骨顆上骨折
4.上腕骨内側上顆骨折
5.橈骨小頭骨折

解答
解説

外反肘とは?

 外反肘とは、上腕の軸に対して前腕の軸が、正常(10~15°程度外反)より外側を向いている状態(手部が外側に開く状態)である。逆に内側に向いているのが内反肘である。原因として、先天性では先天性橈骨頭脱臼など、後天性では上腕骨外顆骨折後の偽関節や変形治癒で生じる。外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘を曲げると伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。よって、選択肢2.上腕骨外顆骨折が正しい。

1.× 尺骨肘頭骨折の合併症は、肘関節屈曲伸展の可動域制限を生じやすい。肘頭部への直達外力により発生しやすい。
3.× 上腕骨顆上骨折の合併症は、正中・橈骨・尺骨神経麻痺、フォルクマン拘縮、内反肘変形を生じやすい。小児の上腕骨骨折で最多である。
4.× 上腕骨内側上顆骨折の合併症は、肘関節脱臼を生じやすい。また、小児の骨折で骨端線をまたぐとき内反肘を生じやすい。
5.× 橈骨小頭骨折の合併症は、肘関節の側方動揺性を生じやすい。

 

 

 

45 脳卒中後の左片麻痺患者に対するADL練習として正しいのはどれか。

1.上衣を右上肢から着衣する。
2.浴槽に右下肢からまたいで入る。
3.階段を上るときに左下肢を先に出す。
4.階段を下りるときに右下肢を先に出す。
5.車椅子からベッドに移乗するときに左半身をベッドに寄せる。

解答
解説

1.× 上衣は、「非麻痺側(右上肢)から」ではなく麻痺側(左上肢)から着衣する。反対に脱衣時は非麻痺側(右上肢)から行う。
2.〇 正しい。浴槽に非麻痺側(右下肢)からまたいで入る。出るときは麻痺側(左下肢)からになる。
3.× 階段を上るときに「麻痺側(左下肢)」を先ではなく、非麻痺側(右下肢)を先に出す。
4.× 階段を下りるときに「非麻痺側(右下肢)」を先ではなく、麻痺側(左下肢)を先に出す。
5.× 車椅子からベッドに移乗するときに「麻痺側(左半身)」をベッドに寄せるのではなく、非麻痺側(右半身)をベッドに寄せ、非麻痺側を軸にして移乗する。

 

2 COMMENTS

チャールズ

管理人さん。
前述したコメントを削除出来ましたらよろしくお願いいたします。

返信する
大川 純一

コメントありがとうございます。
削除させていただきましたが、今後もご気軽にコメントください(‘ω’)ノ

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