第54回(H31) 理学療法士国家試験 解説【午前問題16~20】

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16. 42歳の男性。スキーの滑走中に転倒し、腕神経叢の図を示す部位を損傷した。前腕外側(橈側)と手の掌側の母指から環指に感覚鈍麻がある。
 筋力低下をきたす筋はどれか。2つ選べ。

1. 円回内筋
2. 三角筋
3. 小指外転筋
4. 上腕三頭筋
5. 上腕二頭筋

解答1,5

解説

本症例のポイント

・42歳の男性(腕神経叢損傷)
前腕外側(橈側)と手の掌側の母指から環指に感覚鈍麻がある。
→図の障害された神経は、「外側神経束」である。外側神経束は、筋皮神経・正中神経に分岐する。その支配している筋を選択できれば正解となる。また、前腕外側の感覚鈍麻から筋皮神経麻痺、手の掌側の母指から環指の感覚鈍麻より正中神経麻痺がそれぞれ疑われる。

 

1. 〇:正しい。円回内筋の支配神経は、正中神経(C6~7)である。
2. ×:三角筋の支配神経は、腋窩神経(C5~6)である。
3. ×:小指外転筋の支配神経は、尺骨神経(C8,T1)である。
4. ×:上腕三頭筋の支配神経は、橈骨神経(C7~C8)である。
5. 〇:正しい。上腕二頭筋の支配神経は、筋皮神経(C5~C6)である。

 

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【暗記用】上肢筋の起始・停止・作用・神経を完璧に覚えよう!
【PT/OT/共通】腕神経叢についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

 

17. 【※採点除外問題】6歳の男児。顕在性二分脊椎症による脊髄髄膜瘤の術後。大腿四頭筋、大内転筋の作用はなく、ハムストリングス、前脛骨筋、後脛骨筋、長母指伸筋および長指伸筋が作用している。踵足変形のため靴型装具を使用しており、独歩可能である。
 予測されるSharrardの分類の上限はどれか。

1. Ⅰ群
2. Ⅱ群
3. Ⅲ群
4. Ⅳ群
5. Ⅴ群

解答 解なし
理由:設問が不十分で正解が得られないため。

解説

本症例のポイント

・6歳の男児(顕在性二分脊椎症による脊髄髄膜瘤の術後)
・大腿四頭筋、大内転筋の作用はなし。
・ハムストリングス、前脛骨筋、後脛骨筋、長母指伸筋および長指伸筋が作用。
・踵足変形のため靴型装具を使用しており、独歩可能である。
→今回は、設問の「靴型装具を使用」が曖昧であった。特に、「第Ⅳ群(L5レベル)第Ⅴ群(S1〜2レベル)」の断定ができないため不適切問題となったと考えられる。しかし、Sharrard(シェラード)の分類は過去にも出題されているため、しっかり覚えておく。

Sharrard(シェラード)の分類

第Ⅰ群(胸髄レベル):車椅子を使用している。下肢を自分で動かすことはできない。
第Ⅱ群(L1〜2レベル):車椅子と杖歩行を併用している。股関節屈曲・内転、膝関節伸展が可能。
第Ⅲ群(L3〜4レベル):長下肢装具(L3)または短下肢装具(L4)による杖歩行可能。股関節外転、足関節背屈が可能。
第Ⅳ群(L5レベル):短下肢装具による自立歩行可能。装具なしでも歩行可能。股関節伸展、足関節底屈が可能。
第Ⅴ群(S1〜2レベル):ほとんど装具が不要で自立歩行可能。足関節の安定性が低い。
第Ⅵ群(S3レベル):ほとんど運動麻痺はなく、健常児とほぼ同様の歩行。

 

 

18. 図に示す肺痰体位に対応する肺区域で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 肺尖区(S1
2. 後上葉区(S2
3. 上-下葉区(S6
4. 前肺底区(S8
5. 後肺底区(S10

解答3,5

解説

体位ドレナージとは?

体位ドレナージは重力を利用して痰の排出を図る方法である。痰貯留部位が上、気管支が下となる体位をとり、痰を排出する。

1. ×:肺尖区(S1)は、前上葉区(S3)、前肺底区(S8)とともに背臥位である。肺尖区(S1)は、上方に位置するため座位でも行う。
2. ×:後上葉区(S2)は、前方へ45°傾けた側臥位である。
3. 〇:正しい。上-下葉区(S6)・後肺底区(S10)ともに腹臥位である。
4. ×:前肺底区(S8)は、肺尖区(S1)、前上葉区(S3)とともに背臥位である。
5. 〇:正しい。上-下葉区(S6)・後肺底区(S10)ともに腹臥位である。

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【PT専門/OT専門】肺葉/排痰ドレナージについての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

19. 78歳の男性。慢性閉塞性肺疾患の急性増悪により人工呼吸器管理中である。意識レベルJCS<Japan Coma Scale>Ⅱ-20、体温37. 5℃、呼吸数は26回/分、努力性呼吸を認める。
 二次的合併症の予防目的で行う理学療法で適切でないのはどれか。

1. 呼吸介助
2. 体位排痰法
3. ベッドアップ
4. 関節可動域運動
5. 徒手的抵抗運動

解答

解説

本症例のポイント

・78歳の男性(慢性閉塞性肺疾患)。
・急性増悪により人工呼吸器管理中。
・意識レベルJCS<Japan Coma Scale>Ⅱ-20(大きな声または体を揺さぶることにより開眼するレベル
・体温37. 5℃、呼吸数は26回/分、努力性呼吸を認める。
→本症例は、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪患者で人工呼吸器管理中である。慢性閉塞性肺疾患急性増悪とは、急に息が苦しくなったり、咳、痰が増加するなど呼吸状態が悪化し、血中酸素の低下(SPO2)、二酸化炭素の蓄積から意識レベルが低下することをいう。 感染症や大気汚染による影響が大きいが、はっきりした原因が不明の場合もある。慢性閉塞性肺疾患のキーワードとして①口すぼめ呼吸、②腹式呼吸、③リラクセーション、④体位排痰法がある。本症例は、高齢COPD患者であり、急性増悪で人工呼吸器管理中である。COPDの急性増悪では血中酸素の低下(SPO2)、二酸化炭素の蓄積から意識レベルが低下することがある。

1. 〇 正しい。呼吸介助は二次的合併症の予防目的で行う。呼吸介助で排痰を促し、努力性呼吸からの呼吸困難感の改善・リラクセーションをはかる。
2. 〇 正しい。体位排痰法は二次的合併症の予防目的で行う。体位排痰法で排痰を促し、肺炎等の二次的合併症を予防する。
3. 〇 正しい。ベッドアップは二次的合併症の予防目的で行う。ベッドアップすることで、褥瘡の予防や意識レベルの改善につながる。また、ベッドアップは人工呼吸器関連肺炎の予防に有効されており、横隔膜が下がるため、換気やガス交換が改善されやすくなる。
4. 〇 正しい。関節可動域運動は二次的合併症の予防目的で行う。関節可動域運動で拘縮の予防につながる。Ⅱ-20は、痛み刺激には応じられるため関節可動域運動は実施可能である。また、胸郭や肩甲帯の可動域運動は、呼吸困難感の改善・リラクセーションにつながる。
5. × 徒手的抵抗運動の優先度は低い。むしろ避けたほうが良い。なぜなら、慢性閉塞性肺疾患の特徴として、労作性呼吸困難があるため。本症例の場合、呼吸数は26回/分とやや多く(正常呼吸は12~20回/分)、努力用の呼吸をしている。したがって、さらに呼吸数を増やすような抵抗をかけた運動は不適切である。

JCSをしっかり覚えたい方用にまとめました。参考にしてください↓

【暗記用】意識障害の評価(JCS・GCS)を完璧に覚えよう!

 

 

 

 

 

20. 図を示す姿勢のうち、労働災害予防を目的とした動作指導で適切な作業姿勢はどれか。

解答

解説
 近年、産業分野(就労者の健康増進と労働災害予防)に理学療法士の専門性が求められるようになってきた。日本理学療法士協会に産業理学療法部門が立ち上がっている。今後、少子高齢化に伴い、「①従業員の足・腰を大切に、②長く働けるように」指導・助言を求められる理学療法士が求められる流れとなるだろう。ただ、問いていることは、腰に負担のかかりにくい動作はどれか?という問題である。

1. ×:骨盤が過度に後傾し、腰椎の前弯も減少すると、椎間板内圧を亢進させる姿勢になるため労働に適さない。
2. ×:両膝伸展位で、作業する物との距離が遠いと、背筋群への負荷が大きく腰痛の原因となりやすいため不適切。
3. ×:立位時での作業は、なるべく体幹回旋させたままではなく、体の正面で作業するのが良い。
4. ×:物の持ち上げ動作は、背筋群への負荷を減らすため、両膝屈曲位・体幹中間位で持ち上げるのが良い。
5. 〇:正しい。図のように、低い所での作業は必ずしゃがみ、腰部の屈曲を軽減させると良い。

腰痛患者の生活指導

 腰痛患者の生活指導では、腰椎の過度な動きを避け、腰部の安静を保つことが重要である。特に、①背部を常に直立位にする、②腹筋を常に収縮させる、③殿筋を常に収縮させる、④動作時などには膝を屈曲させるなどがあげられる。

 座位姿勢は、正座が最も腰椎の生理的前弯を保ちやすい。あぐら座位、長坐位は脊柱が後弯するため不適切である。横座りも同様に脊柱の側屈を強制されるため不適切である。

 

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