第53回(H30) 作業療法士国家試験 解説【午前問題31~35】

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31 顔面と上下肢に感覚脱失を呈する脳卒中片麻痺の患者に対する生活指導で適切なのはどれか。

1.麻痺手使用を控える。
2.湯呑を非麻痺側で把持する。
3.両手での車椅子駆動を勧める。
4.屋内ではスリッパ使用を勧める。
5.髭剃りはT字カミソリを勧める。

解答2

解説

1.× 麻痺手使用を、「控える」のではなく推奨する。なぜなら、できるだけ麻痺側を使うような作業を日常生活に取り入れることで、関節拘縮廃用性萎縮を防止することができるため。
2.〇 正しい。湯呑を非麻痺側で把持する。なぜなら、上肢の感覚脱失により、湯呑をうまく持つことができず、こぼしてしまった際にやけどの危険があるため。
3.× 「両手での車椅子駆動」を勧めるのではなく、片手片足駆動の車椅子がよい。なぜなら、上肢の感覚脱失により、ハンドリムを感覚を頼って握ることができなかったり、車いす操作でケガしても気が付かなく危険を伴うため。
4.× 屋内ではスリッパ使用を勧めることはしない。なぜなら、スリッパ使用はつまづきの原因となり転倒の危険性があるため。
5.× 髭剃りは、「T字カミソリ」ではなく電動シェーバーの方が安全であり勧めるべき対象である。なぜなら、顔面に感覚脱失により、通常のカミソリの使用は危険性が高く、切り傷皮膚の損傷を招く可能性があるため。したがって、通常のカミソリより電動カミソリのほうが、安全性が高い。

 

 

 

 

 

 

32 後方アプローチによる人工股関節置換術後の動作で正しいのはどれか。

1.低めのソファーに座る。
2.健側を下にして横になる。
3.床のもの拾うときは患側を後方に引く。
4.階段を降りるときは健側から先に下ろす。
5.ベッドに這い上がるときは患側の膝を先につく。

解答3

解説

前方アプローチでは股関節伸展内転外旋
後方アプローチでは股関節屈曲内転内旋の動作は避けるように指導する。

1.× 低めのソファーの利用は、股関節の過屈曲を伴うため不適切である。
2.× 健側を下にして横になる動作は、股関節の内転を伴うため不適切である。
3.〇 正しい。床のもの拾うときは患側を後方に引く。患側を後方に引くことで、股関節の屈曲が軽減され荷重の負担も少なく遂行できる。
4.× 階段を降りるときは、「健側から」ではなく患側から先に下ろす。
5.× ベッドに這い上がるときは患側の膝を先につく動作は、股関節の過屈曲を伴うため不適切である。

 

 

 

 

 

 

33 関節リウマチ患者に対してスプリントを用いる目的で誤っているのはどれか。

1.筋力増強
2.動作の補助
3.痛みの軽減
4.炎症の改善
5.関節アライメントの矯正

解答1

解説

関節リウマチにおける一般的なスプリント療法の目的に、①関節を安定させ炎症を抑える(痛みや腫脹の軽減)、②関節のアライメントの矯正(変形の予防、筋出力の促進・効率化)、③術後の保護アプローチなどが挙げられる。

1.× 筋力増強は、スプリント療法の目的に含まれていない。
2~5.× 動作の補助・痛みの軽減・炎症の改善・関節アライメントの矯正は、スプリントを用いる目的である。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

 

34 Brunnstrom法ステージ上肢Ⅲ、手指Ⅳの片麻痺患者に座位で麻痺側上肢の促通練習を行う。
 上肢Ⅳを目指した課題として適切なのはどれか。

1.机上の積み木を裏返す。
2.机上のお手玉を非麻痺側大腿に載せる。
3.大腿上に置いた手を口元に近づける。
4.頭上の高さの壁面を肘伸展位で雑巾で拭く。
5.机上のお手玉を肘伸展位で麻痺側側方の肩の高さに移動する。

解答1

解説

 Brunnstrom法ステージでは次の段階を目指した訓練を行う。つまり、上肢はステージⅣを、手指はステージⅤを目指して訓練を行う。そのため、上肢ステージⅣでは、①腰の後ろに手を持っていく、②前方水平位に腕を挙上する、③肘90°屈曲位で前腕を回内・回外する段階を、手指ステージⅤでは、①対向つまみ、②筒握り、③球握りがだいたいできる、動きは不器用で機能的な使用は制限されている、随意的な手指伸展は可能だがその範囲は一定しない、という段階を目指す。

1.〇 正しい。机上の積み木を裏返す。肘90°屈曲位で前腕を回内・回外する動作なので適切である。
2.× 机上のお手玉を非麻痺側大腿に載せるのはすでに可能である。
3.× 大腿上に置いた手を口元に近づけるのはすでに可能である。
4.× 頭上の高さの壁面を肘伸展位で雑巾で拭く動作(肩関節の屈曲挙上を伴う動作)は、上肢ステージVの動作にあたるため現段階では尚早といえる。
5.× 机上のお手玉を肘伸展位で麻痺側側方の肩の高さに移動する動作(肩関節外転)は、上肢ステージVの動作にあたるため現段階では尚早といえる。

 

 

 

 

 

 

35 多発性硬化症に対する作業療法で正しいのはどれか。

1.MS fatigueに対して、Borg指数15に運動強度設定する。
2.Uhthoff徴候に対して、室温を25度以下に設定して運動を行う。
3.筋力低下に対して、漸増抵抗運動を行う。
4.視力障害を伴う協調性運動障害に対して、Frenkel体操を行う
5.有痛性強直性けいれんに対して、他動的関節可動域訓練を行う。

解答2

解説

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

1.× MSは、多発性硬化症のこと。fatigueは、倦怠感と訳される。多発性硬化症の倦怠感に対して、Borg指数15に運動強度設定するのは誤っている。Borg (ボルグ)指数は、自覚的な運動強度を6~20で表し、その10倍の数値がおおよその心拍数となる。15は“きつい”に分類されるため比較的負荷の大きい運動にあたる。
2.〇 正しい。Uhthoff徴候に対して、室温を25度以下に設定して運動を行う。Uhthoff徴候とは、疲労や体温上昇によって症状が一過性に悪化することである。室温を適度に保ち、体温の上昇を招くようなことを避けるように指導することが必要である。
3.× 漸増抵抗運動のような負荷のかかる運動は、過用性筋力低下により症状の悪化を招く可能性があるので禁忌である。
4.× Frenkel体操は、視覚で代償して運動制御を促通する運動療法であり、脊髄病性運動失調などに対して行われる。多発性硬化症(MS)による視覚障害は、球後視神経炎を初発症状として呈することが多いため適応されない。
5.× 自動的あるいは他動的に関節を動かす刺激が発作を誘発し、痛みやしびれを伴って四肢が強直発作を示すものを有痛性強直性けいれんという、他動的関節可動域運動はこれを誘発するため不適切である。

 

2 COMMENTS

大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正しましたのでご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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