第53回(H30) 作業療法士国家試験 解説【午前問題36~40】

 

36 第6頸椎髄節まで機能残存している頸髄損傷患者に対する作業療法として適切でないのはどれか。

1.上衣着脱は被りタイプから練習する。
2.コンピュータの入力デバイスを検討する。
3.排便は臥位で行えるように環境を整える。
4.自己導尿ができるようにカテーテル操作を練習する。
5.車椅子で起立性低血圧が起こった時は前屈位する。

解答3

解説

 第6頸髄節機能残存レベルでは、トランスファーボードの利用などにより移乗ができ更衣・整容・食事も自助具を使用し自立可能である。以下に、頚髄損傷レベルと残存筋の表を上げた。

頚髄損傷レベルと残存筋

C4髄節残存僧帽筋、胸鎖乳突筋、横隔膜
C5髄節残存

三角筋、上腕二頭筋、上腕筋

C6髄節残存橈側手根伸筋、大胸筋、円回内筋
C7髄節残存上腕三頭筋、指伸筋筋群、橈側手根屈筋
C8髄節残存手指屈筋群

1.〇 上衣着脱は被りタイプから練習する。被りタイプの着脱はC5で自立可能である。前開きのシャツなどは、動作が複雑で衣服の工夫や自助具が必要になる。
2.〇 コンピュータの入力デバイスを検討する。コンピュータの入力では、両手でのタイピングは難しいので、万能カフにポインティングデバイスを用いてキーボードを操作するか、タッチパネルタッチパッドを使うなど、入力デバイスを検討する。
3.× 排便は臥位で行えるように環境を整えるのは適切ではない。髄損傷者用トイレを使用すれば、自立の可能性もあり、座位で行う方が生理的であり尊厳も保たれる。。

4.〇 自己導尿ができるようにカテーテル操作を練習する。男性は自己導尿操作が自立する可能性があり、女性はC6B3レベルでかつ設備・自助具の工夫があれば自立できる。
5.〇 車椅子で起立性低血圧が起こった時は前屈位するのは適切ではない。起立性低血圧の発作時には、前屈位をとり頭部を低くする

 

 

 

 

 

 

37 慢性閉塞性肺疾患の患者に対する指導として正しいのはどれか。

1.低脂肪食がいい。
2.下肢の運動を行う。
3.洗髪動作は両手で行う。
4.発症後は禁煙の必要は無い。
5.インフルエンザワクチンは勧めない。

解答2

解説

 呼吸器疾患患者は、身体を動かすことで血中の酸素飽和度が低下しやすい。特に前かがみの姿勢(和式トイレ・足を洗う)上肢の挙上(洗髪・更衣)反復する動作(拭き掃除)息を止めて力む動作(排便・重量物を持つ)などは、酸素飽和度が低下し呼吸苦を呈しやすいため避けるべきである。

1.× 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者は、呼吸にエネルギーを消費するので栄養障害に陥りやすい。そのため高エネルギー高蛋白食が基本である。
2.〇 正しい。下肢の運動を行う。筋力トレーニング、持久力トレーニングなどの運動療法により、運動耐容能の改善を図ることができる。呼吸補助筋が上肢の運動に参加するため、下肢よりも上肢を使用する場面でより呼吸困難感を訴えやすいことから、下肢の筋力トレーニングで運動効率の改善骨格筋代謝レベルの改善を目指す。
3.× 洗髪動作は両手ではなく片手ずつ行う。両上肢の挙上は酸素飽和度の低下を招きやすいためである。
4~5.× 発症後は禁煙の必要は無い。インフルエンザワクチンは勧めない。のは適切ではない。禁煙やインフルエンザワクチンの接種は、COPDの予防や進行の抑制に有用であるため、病期や症状の程度にかかわらずすべての患者に推奨される。

 

 

 

 

 

 

38 標準型車椅子の使用者の生活環境として適切なのはどれか。

1.トイレのドアは内開きにする。
2.作業台の高さは50センチ程度とする。
3.屋外スロープの勾配は1/10とする。
4.浴室と脱衣所の間にグレーチングを設置する。
5.玄関前の回転スペースが直径90センチ程度とする。

解答4

解説

 車椅子では、段差の解消や移動・操作スペースの確保が重要である玄関にはスロープを設置し、1/12~1/20の勾配が望ましい。屋外では特に1/15勾配以下が好ましい。

1.× トイレのドアは内開きではなく、引き戸にする。住宅の事情によって引き戸の設置が困難で開き戸しか選択できない場合は、外開きにするとよい。
2.× 作業台の高さは、50cmでは低すぎる。標準型車椅子の座面の高さは40~45cm程度であり、膝頭は通常60cm以上の高さになる。つまり、作業台の高さは73~85cmほどの高さが必要である。
3.× 屋外スロープの勾配は、1/10では急すぎる。スロープの勾配は1/12以下で、1/15~1/20が推奨されている。
4.〇 正しい。浴室と脱衣所の間にグレーチングを設置する。グレーチングとは、排水溝部分の蓋である。浴室用のグレーチング(排水溝部分の蓋)を使用することによって段差を解消することができ、車椅子の通過が円滑に行える。
5.× 玄関前の回転スペースが直径90cm程度では狭い。車椅子の回転直径である150cmを必要とする。

 

 

 

 

 

 

39 ICFの構成要素である「活動と参加」の第2レベルに分類されるのはどれか。2つ選べ。

1.記憶機能
2.日課の遂行
3.社会的態度
4.姿勢の保持
5.活力と欲動の機能

解答2/4

解説

 ICFの第1レベルは、心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子という4つのカテゴリーに分かれている。第2レベルとはその中でさらに細かく分類されたものである。ただし、これらのカテゴリーをすべて覚える必要性は低い。代表的な内容を理解しておく。したがって、選択肢の中から大まかに「活動と参加」であるものを選択できれば正解となる。

1.× 記憶機能は、「心身機能」の第2レベル(b144)である。
2.〇 正しい。日課の遂行は、「活動と参加」の第2レベル(d230)である
3.× 社会的態度は、「環境因子」の第2レベル(e45)である
4.〇 正しい。姿勢の保持は、「活動と参加」の第2レベル(d415)である
5.× 活力と欲動の機能は、「心身機能」の第2レベル(b130)である

 

 

 

 

 

 

 

40 標準予防策(standard precautions)について正しいのはどれか。

1.手洗いは7秒以内で行う。
2.血圧を測るときは手袋を着用する。
3.感染症患者を隔離することが含まれる。
4.患者同士の接触による感染予防が目的である。
5.すべての患者の排泄物は感染性があるとみなす。

解答5

解説

 標準予防策(standard precautions)は、1996年に米国CDC(国立疾病管理予防センター)によって提唱された「感染症の有無にかかわらずすべての患者に適用する疾患非特異的な予防策」であり、「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などをすべて感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としている。

 感染経路別予防策は、標準予防策以上の予防策が必要となる病原体に感染している患者(あるいはその感染の疑いがある患者)が対象で、主に空気予防策飛沫予防策接触予防策の3種類がある。

1.× 手洗いは7秒以内では短すぎる。「WHO医療における手指衛生ガイドライン2009」では、石けんと流水を用いた手の洗い方として全工程を40~60秒で行う方法が記載されている。
2.× 血圧を測るときは手袋を着用する必要はない。手袋は湿性生体物質(血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜など)に触れるおそれのある場合に使用する。
3.× 標準予防策に感染症患者を隔離することは含まれていない。標準予防策は「感染症の有無にかかわらずすべての患者に適用する疾患非特異的な予防策」である。感染症患者を隔離することは感染経路別予防策の空気予防策に含まれる。
4.× 標準予防策に患者同士の接触による感染予防は含まれていない。患者同士の接触による感染の予防は感染経路別予防策の接触予防策に含まれる。
5.〇 正しい。すべての患者の排泄物は感染性があるとみなす。排泄物は、湿性生体物質(血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜など)であり、「すべての湿性生体物質は感染のおそれがある」とみなす。

 

標準予防策

1.手洗い
2.手袋の着用
3.防護用具の使用(マスクなど)
4.環境対策(ベッドなどの清潔)
5.労働衛生(針刺し事故など)
6.患者配置の考慮(環境を汚染する患者などは個室に移す。同種感染症の患者を集める。)

 

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