第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題96~100】

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96.高齢初発てんかんについて正しいのはどれか。

1.特発性てんかんが多い。
2.患者数は減少傾向にある。
3.部分発作を呈することが多い。
4.てんかん重積状態に至ることはない。
5.抗てんかん薬が無効であることが多い。

解答:3


解説

 高齢(65歳以上)発症てんかんの有病率は1~2%であり、高齢化社会とともに増加傾向である。

1.× 「特発性てんかん」ではなく、側頭葉てんかん(脳卒中や神経変性疾患などが原因である症候性てんかん)が最も多い(約7割)。
2.× 患者数は、「減少傾向」ではなく増加傾向にある。
3.〇 正しい。部分発作を呈することが多い。脳の器質的病変を原因とする。
4.× てんかん重積状態に至る。てんかん重積状態とは、てんかん発作が30分以上続くか、発作が断続してその間意識がない場合をいう。側頭葉てんかんは、発作中の行動を忘れる。約30%がてんかん重積状態をきたす。
5.× 抗てんかん薬が効果的である。成人の側頭葉てんかんの80%は、薬で発作を抑えることが可能である。

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97.器質性精神障害について正しいのはどれか。

1.妄想はみられない。
2.安定した人格を認める。
3.記憶障害はみられない。
4.抗精神病薬は投与しない。
5.心理的要因の影響を受ける。

解答:5


解説

 従来、精神疾患は、心因性、内因性、外因性という三つの要因から成立すると考えられてきた。このうち、外因性に分類されるものの中に、「器質性精神障害」がある。脳外傷や脳梗塞などのように、直接脳そのものを障害するもののことである。例えば、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、ピック病の認知症、パーキンソン病の認知症などである。

 

1.× 妄想はみられる。妄想は、アルツハイマー型認知症(物とられ妄想)に認められる。
2.× 「安定した人格」ではなく、不安定な人格をハンチントン病(人格変化)に認められる。
3.× 記憶障害はみられる。記憶障害は、アルツハイマー型認知症で認められる。
4.× 精神状態に応じて、抗精神病薬を投与する。
5.〇 正しい。心理的要因の影響を受ける。認知症において、心理面での影響が大きい行動・心理症状(BPSD)が起こる。他の器質性精神障害でも行動・心理症状(BPSD)に類似した症状が起こることがある。

 

 

 

 

 

 

 

98.ベンゾジアゼピン系睡眠薬の依存について正しいのはどれか。

1.中高年者にはみられない。
2.身体依存は形成されない。
3.離脱症状としてせん妄がある。
4.常用量であれば依存は形成されない。
5.作用時間の長い薬剤の方が依存を形成しやすい。

解答:3


解説

ベンゾジアゼピン系睡眠薬とは?

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABAA受容体の作用を増強し、神経活動を抑制する。睡眠薬・抗不安薬として最も広く用いられている。比較的安全性が高いが、最近は依存性の問題が重視されており、適切な処方・十分な服薬指導が重要である。

1.× 年齢に関係なく、中高年者にも物質依存・身体依存を引き起こす。
2.× ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、身体依存を形成される。身体依存とは、その物質を急に摂取しなくなると生体が離脱症状を起こすものをいう。ちなみに、精神依存・耐性も形成される。
3.〇 正しい。離脱症状としてせん妄がある。他にも、手足の震え、冷汗、不安、イライラ、不眠などが出現する。離脱症状としてはアルコールと類似している。
4.× 常用量でも、長期に及ぶと依存は形成される。そのため適切な処方と十分な服薬指導が必要である。
5.× 作用時間の「長い」ではなく、短い薬剤の方が依存を形成しやすい。高力価・短時間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬では依存を形成しやすい。

 

 

 

 

 

 

 

 

99.「自分がやっていることなのに、自分がやっている感じがしない」と訴える患者の症状はどれか。

1.恐怖症
2.拒絶症
3.離人症状
4.心気症状
5.感情鈍麻

解答:3


解説

 離人症とは自我の障害であり、①自分がいない感じ、②世界が存在していない感じを訴え、まるで自分が外部の傍観者である感じを伴う。神経性障害、うつ病、統合失調症など様々な疾患で見られる。

 

1.× 恐怖症は、ある特定のものに対して、避けようとしたり異常な恐怖を感じたりする症状である。高所恐怖症や対人恐怖症など。
2.× 拒絶症は、緊張型統合失調症にみられる症状である。他人からの命令や要求に従わず拒絶する。かえって逆のことを行う傾向をみせる。
3.〇 正しい。離人症状は、「自分がやっていることなのに、自分がやっている感じがしない」と訴える患者の症状である。
4.× 心気症状は、身体の徴候や症状の誤った解釈のため、病気にかかるあるいはかかっているとの思い込みが6か月以上持続しており、それが著しい苦痛や機能の障害を呈している精神障害である。例:病気ではないのに「自分は癌かもしれない」と思い込むなど。
5.× 感情鈍麻は感情を引き起こす刺激に対する感受性の低下により、感情やその表出が乏しくなることである。統合失調症の慢性期の症状である。陰性症状で、感情の平板化や意欲の減退、思考の低下など。

 

 

 

 

 

 

 

100.親しい人間関係を構築できず、奇異な考え方や風変わりな行動が継続してみられ、パーソナリティ障害を指摘された。最も考えられるのはどれか。

1.演技性パーソナリティ障害
2.依存性パーソナリティ障害
3.統合失調型パーソナリティ障害
4.猜疑性<妄想性>パーソナリティ障害
5.シゾイド<統合失調質>パーソナリティ障害

解答:3


解説

1.× 演技性パーソナリティ障害は、過度に人の注意を引こうとする。
2.× 依存性パーソナリティ障害は、他人に強く依存し、自身に欠けている。
3.〇 正しい。統合失調型パーソナリティ障害は、親しい人間関係を構築できず、奇異な考え方や風変わりな行動が継続してみられる。
4.× 猜疑性(さいぎ)<妄想性>パーソナリティ障害は、他人に対する不信、疑い深さが強い。
5.× シゾイド<統合失調質>パーソナリティ障害は、社会から孤立しようとする自閉性がある。

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※問題の引用:第53回理学療法士国家試験、第53回作業療法士国家試験の問題および正答について
※注意:解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。

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