第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題76~80】

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76.歩行障害がある患者の頭部MRIのT1強調冠状断像を示す。腰椎穿刺を行い髄液を排出させたところ、歩行障害が改善した。最も考えられるのはどれか。

1.Parkinson病
2.正常圧水頭症
3.脳梗塞
4.脳出血
5.慢性硬膜下血腫

解答:2


解説

画像を見ると、・「側脳室の拡大」「脳溝の狭小化」「シルビウス裂の拡大」が認められる。

腰椎穿刺を行い、髄液を排出させたところ、歩行障害が改善したことを考えると、選択肢2.正常圧水頭症となる。
正常圧水頭症の3徴候(①歩行障害、②認知症、③尿失禁)とともに、MRIの所見を覚えておく。

1.× Parkinson病は、MIBG心筋シンチグラフィーでの取り込み低下やドパミントランスポーターSPECTでの線条体の集積低下がみられる。
3.× 脳梗塞は、MRIのFLAIR拡散強調像などで梗塞巣を認める。
4.× 脳出血は、CTにて高信号域を認める。
5.× 慢性硬膜下血腫は、CTにて三日月形の血腫像が特徴である。

 

 

 

 

77.熱傷について正しいのはどれか。

1.第Ⅰ度熱傷では熱感はみられない。
2.浅達性第Ⅱ度熱傷では癒痕を残す。
3.深達性第Ⅱ度熱傷の水痕底は発赤している。
4.第Ⅲ度熱傷では疼痛が著明である。
5.鼻咽腔内に煤が見られたときは気道熱傷が疑われる。

解答:5


解説

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

1.× 第Ⅰ度熱傷では、熱感は「みられない」のではなく、表皮までの熱傷をいう。赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛が認められるが、水泡は認められない。
2.× 浅達性第Ⅱ度熱傷では、癒痕は再生するのが特徴である。瘢痕を残すのは、選択肢3(深達性第Ⅱ度熱傷)である。
3.× 深達性第Ⅱ度熱傷の水痕底は、「発赤」ではなく白色もしくは破壊になるのが特徴である。発赤しているのは2(浅達性第Ⅱ度熱傷)である。
4.× 第Ⅲ度熱傷では疼痛はない。白く乾燥・炭化水泡形成はない。
5.〇 正しい。鼻咽腔内に煤が見られたときは気道熱傷が疑われる。煤(すす)と読む。

熱傷について、まとめました。苦手な人向けにどうぞ。

【PT/OT/共通】熱傷についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

78.非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>の副作用として正しいのはどれか。

1.胃潰瘍
2.低血糖
3.多幸感
4.骨粗鬆症
5.中心性肥満

解答:1


解説

 非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。よって、選択肢1.胃潰瘍が正しい。

2.× 「低血糖」ではなく、高血糖は、ステロイドの副作用である。ちなみに、低血糖が副作用である薬は、インスリンやインスリン分泌促進薬である。
3~5.× 多幸感/骨粗鬆症/中心性肥満は、ステロイドの副作用である。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

79.欲求を満たせないときに、正反対の欲求を発展させ心的平衡を保とうとする防衛機制はどれか。

1.抑圧
2.否認
3.行動化
4.合理化
5.反動形成

解答:5


解説

防衛機制とは?

防衛機制とは、人間の持つ心理メカニズムであり、自分にとって受け入れがたい状況や実現困難な目標に対して、自我を保つために無意識で発動する心理的な機構である。防衛機制には、短期的には精神状態を安定させる作用があるが、長期的にみればかえって精神を不安定にさせてしまうものもある。

1.× 抑圧は、容認しがたい自分の欲求を無意識のうちに抑えつけてしまうこと。
2.× 否認は、容認したくない感情、経験を実際には存在しなかったかのように振舞うこと。
3.× 行動化は、情緒的葛藤やストレス因子に対し、内省をせず実際の行動によって対処するもの。
4.× 合理化は、欲求が満たされない時、その耐え難い感情をかなり強引な理由付けを行って処理しようとすること。
5.〇 正しい。反動形成は、欲求を満たせないときに、正反対の欲求を発展させ心的平衡を保とうとする防衛機制である。

類似問題です↓
【OT/共通】防衛機制についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

80.古典的条件付けの原理を用いた治療法はどれか。

1.曝露法
2.認知再構成法
3.トークンエコノミー法
4.セルフモニタリング法
5.社会生活技能訓練<SST>

解答:1


解説

古典的条件付け(レスポンデント条件付け)とは、「パブロフの犬」の反応として知られるように、ある刺激に対して、これまでなかった新しい反応を起こさせる方法である。

1.〇 正しい。曝露法(エクスポージャー)は、古典的条件付けの原理を用いた治療法である。例えば、強迫性障害の患者に強迫行為を引き起こす刺激に段階的に曝露させて、強迫行為を行うことを禁止し(反応妨害)、その際に起こる不安や不快感に慣れさせていき、最終的には強い刺激によっても不安や不快感が生じないように条件付ける方法である。
2.× 認知再構成法は、精神的に動揺した時に浮かんでくる歪んだ考えやイメージを、現実と対比しながら歪みを明らかにして、より適応的な考え方や行動に結びつける認知行動療法の基本的な手技である。
3.× トークンエコノミー法(代用貨幣)は、適応的なことをすれば報酬としてトークン(代用貨幣)を与え、その行動を快感を伴う体験として記憶させ、適応的な行動を増やす方法である。認知行動療法の基本的な手技である。
4.× セルフモニタリング法は、自分の考え、感情、行動を客観的に観察して記録し、それを適切な状態に自らコントロールすることである。認知行動療法の基本的な手技である。
5.× 社会生活技能訓練<Social Skills Training:SST>は、「人が地域社会で自立して円滑に生活できる」ための技能を習得することを目的とし、日常的な生活場面で適切な行動がとれるよう、具体的な場面を設定してロールプレイ(役割分担)を行いながら練習すること。認知行動療法の基本的な手技である。

 

2 COMMENTS

匿名

すみません。ステロイドの副作用は高血糖ではないでしょうか?二次性糖尿病もあるので、そうではないかと考えました。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
間違えておりました。
修正しましたので、ご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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