第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題81~85】

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81.作動記憶<ワーキングメモリー>の説明として適切なのはどれか。

1.数日間保持される。
2.非宣言的記憶の1つである。
3.技能の記憶として機能する。
4.生活史の記憶として機能する。
5.情報の処理と保持を同時に行う。

解答:5


解説

 ワーキングメモリー(作業記憶)は、環境から新しく入ってくる短期記憶を保持する過程と、保持された短期記憶の情報と、長期記憶から取り出される情報とを適合して処理する過程の両方に関与している。物事を実行したり考えたりする際に、一時的に情報を蓄えておく記憶のシステム。いわゆる短期記憶と異なるのは、情報を保持している間に他の情報処理を行うことである。

 

1.× 数日間保持されるのは、長期記憶(近時記憶)である。
2.× 非宣言的記憶(非陳述的記憶)とは、自転車の乗り方など、技術や習慣的な行動を身体で覚えるような意識の上らない記憶(手続き記憶)などである。ちなみに、宣言的記憶(陳述的記憶)とは、エピソード記憶や意味記憶のことを指す。
3.× 技能の記憶として機能するのは、長期記憶(手続き記憶)である。
4.× 生活史の記憶として機能するのは、長期記憶(エピソード記憶)である。
5.〇 正しい。情報の処理と保持を同時に行うのは、作動記憶<ワーキングメモリー>である。

 

 

 

 

 

 

 

82.運動制御における小脳の役割で正しいのはどれか。

1.一連の動作の企画
2.運動プランの切り替え
3.記憶に基づく運動の修飾
4.視覚情報を運動指令に変換
5.自発的な行為のプログラミング

解答:3

解説

1.×:一連の動作の企画は、前頭連合野が担う。
2.×:運動プランの切り替えは、前頭連運動野と前頭葉にある高次運動野が担う。
3.〇:正しい。記憶に基づく運動の修飾は、運動制御における小脳の役割で正しい。
4.×:視覚情報を運動指令に変換は、前頭葉にある高次運動野が担う。小脳虫部にて、筋や腱などから意識できない深部感覚からの情報により、体幹の動きの調節を行っている。
5.×:自発的な行為のプログラミングは、前頭葉にある高次運動野の中の補足運動野が担う。

 

 

 

 

 

83脊髄ショック期の徴候として正しいのはどれか。

1.温痛覚解離
2.痙性四肢麻痺
3.肛門括約筋反射消失
4.深部腱反射亢進
5.排尿反射亢進

解答:3


解説

 重度の脊髄損傷では、突然脊髄の全機能が失われる。この状態を「脊髄ショック」と呼ぶ。脊髄ショックは、重度の脊髄ショック受傷後1日から3週間程度までに出現し、損傷部位以下の知覚の脱失、運動障害(弛緩性麻痺)、膀胱直腸障害、反射の消失といった身体の基本的な機能が失われる。

1.× 温痛覚は、「解離」ではなく脱失する。温痛覚解離とは、解離性感覚障害ともいい、温痛覚のみが障害されることをいう。したがって、脊髄が部分的に損傷した場合に生じるブラウンセカール症候群(Brown–Séquard症候群)や前脊髄動脈症候などによって引き起こされる。
2.× 「痙性四肢麻痺」ではなく、弛緩性麻痺が生じる。
3.〇 正しい。肛門括約筋反射消失が生じる。ちなみに、膀胱も弛緩し排尿困難となる。
4.× 深部腱反射は、「亢進」ではなく消失する。ちなみに、表在反射も消失する。
5.× 排尿反射は、「亢進」ではなく消失する。

 

 

 

 

 

 

 

 

84.脊髄損傷の機能残存レベルと可能な動作の組合せで正しいのはどれか。ただし、機能残存レベルより下位は完全麻痺とする。

1.C4:万能カフを用いた食事
2.C5:前方移乗
3.C6:橈側-手掌握り
4.C7:更衣
5.C8:長下肢装具での歩行

解答:4


解説

1.× 万能カフを用いた食事は、C4でなく、C5で行える。C4機能残存レベルでは四肢を動かすことはできない。
2.× 前方移乗は、C5でなく、C6で行える。
3.× 橈側-手掌握りは、C6でなく、C8で行える。C6機能残存レベルでは手関節の背屈は可能である。
4.〇 正しい。C7:更衣の組み合わせで正しい。
5.× 長下肢装具での歩行は、C8でなく、T12から行える。C8機能残存レベルでは体幹の随意性は得られない。

 

 

 

 

 

 

 

 

85.Fallot四徴症で起こる血管異常はどれか。

1.大動脈騎乗
2.大動脈狭窄
3.冠動脈狭窄
4.肺静脈閉塞
5.肺動脈弁逆流

解答:1


解説

Fallot四徴症とは、心室中隔欠損・大動脈騎乗・肺動脈狭窄・右室肥大のことである。

よって、選択肢1.大動脈騎乗が正しい。

 

2 COMMENTS

匿名

初めまして、PT学生です。いつも解説の参考にさせていただいており、とても助かっています。(^^)

問題81の2番の解説なのですが、非宣言的記憶は潜在的であるので手続き記憶とかだと思います。

陳述記憶は宣言的記憶、顕在記憶ともいわれているので、意味記憶は宣言的記憶ではないでしょうか。
確認お願いいたします。

文献は医歯薬出版の基礎運動学 第6版補訂pp469、467等を参考にしました。

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大川 純一

コメントありがとうございます。
ご指摘通り間違えておりました。
修正いたしましたので、ご確認ください。
今後ともよろしくお願いいたします。

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