第53回(H30)理学療法士 国家試験解説【午前問題86~90】

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86.スパイロメトリーで計測できないのはどれか。

1.1秒量
2.予備吸気量
3.1回換気量
4.最大吸気量
5.機能的残気量

解答:5


解説

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

1.〇 1秒量は、横軸が時間であるため、最大吸気位から最大呼気位時に求められる。
2~4.〇 予備吸気量/1回換気量/最大吸気量は、計測結果から読み取れる。
5.× 機能的残気量は、測定できない。そのため、全肺気量も計測できない。

 

 

 

 

 

87.関節リウマチについて正しいのはどれか。

1.股関節などの大関節に初発する。
2.間質性肺炎を合併することが多い。
3.罹患関節の症状は非対称性に現れる。
4.半数以上にリウマトイド結節が認められる。
5.血清アルカリフォスファターゼが高値となる。

解答:2


解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 関節リウマチは、関節の滑膜を障害する自己免疫性(自分の抗体が自分の滑膜を攻撃する)疾患である。合併症として、間接性肺炎、皮下結節(リウマトイド結節)、シェーグレン症候群(唾液・涙液の減少)が起こる。

1.× 初発は、「股関節などの大関節」ではなく、MP関節や足趾(小関節)が多い。
2.〇 正しい。間質性肺炎を合併することが多い。ちなみに、肺線維症もみられる。
3.× 罹患関節の症状は、「非対称性」ではなく対称性に現れる。
4.× 「半数以上」ではなく、約20%にリウマトイド結節が認められる。
5.× 血清アルカリフォスファターゼ(ALP)は関係がない。なぜなら、肝・胆道系疾患や癌の骨転移などで高値となるため。関節リウマチでは、赤沈・CRP・リウマトイド因子(RA-F)・抗CCP抗体などが高値となる。

 

 

 

 

 

88.免疫不全によって生じやすい疾患はどれか。

1.肝性脳症
2.ペラグラ脳症
3.Wernicke脳症
4.トキソプラズマ症
5.Creutzfeldt-Jakob 病

解答:4


解説

 免疫不全とは、免疫系のどこかが障害されて生体防御に不全を来たした状態をいう。病原微生物への易感染性をきたすことが問題となる。

1.× 肝性脳症は、肝硬変が進行した場合や劇症肝炎などの重篤な肝障害(肝機能低下により、①意識障害、②異常行動、③羽ばたき振戦など)によって引き起こされる。
2.× ペラグラ脳症は、代謝内分泌疾患の一つで、ナイアシン欠乏症(栄養失調)である。ビタミンB3の欠乏で起こる。
3.× Wernicke脳症は、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって起こる脳症のこと。アルコール多飲、栄養障害などにより起こる。
4.〇 正しい。トキソプラズマ症は、免疫不全によって生じやすい疾患である。後天性免疫不全症候群(AIDS)、臓器移植後などの免疫機能低下時に顕性化、日和見感染の代表疾患である。
5.× Creutzfeldt-Jakob病(クロイツフェルト・ヤコブ病)は、全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主徴とする中枢神経の変性疾患である。脳に異常なプリオン蛋白が沈着し、脳神経細胞の機能が障害される疾患である。

 

 

 

 

 

 

 

89.Lewy小体型認知症に伴うことが多いのはどれか。

1.幻視
2.失語症
3.高血圧
4.聴覚障害
5.入眠障害

解答:1


解説

Lewy小体型認知症とは?

Lewy小体型認知症とは、Lewy小体が広範な大脳皮質領域で出現することによって、①進行性認知症と②パーキンソニズムを呈する病態である。認知機能の変動・動揺、反復する幻視(人、小動物、虫)、パーキンソニズム、精神症状、REM睡眠型行動障害、自律神経障害などが特徴である。

1.〇 正しい。Lewy小体型認知症は、視覚認知障害・幻視・パーキンソニズム・起立性低血圧が特徴的である。
2.× 失語症は、アルツハイマー型認知症の第二期でみられる。
3.× 高血圧は、脳血管性認知症に見られる。Lewy小体型認知症は、起立性低血圧がみられる。
4.× 聴覚障害が、認知症を引き起こす要因である。Lewy小体型認知症は、聴覚障害が伴うことは少ない。
5.× Lewy小体型認知症は、「入眠障害」ではなく、悪夢や夢を見ながら暴れたりする睡眠障害(レム睡眠行動障害:睡眠中に悪夢を見て大声で叫ぶ・意味不明な行動をとるなど)が起こる。

 

 

 

 

 

 

90.Guillain-Barre症候群について正しいのはどれか。

1.50 %以上で再発する。
2.脱髄型と軸索型がある。
3.アルコール多飲が原因である。
4.ビタミンB1欠乏によって起こる。
5.歩行可能まで回復する症例は25 %以下である。

解答:2


解説

”Guillain-Barré症候群とは?”

Guillain-Barré(ギラン・バレー)症候群は、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である。

(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)

1.× 再発率は、「50%以上」ではなく2~5%である。高頻度の再発が特徴であるのは、多発性硬化症である。
2.〇 正しい。脱髄型と軸索型がある。自己免疫反応による末梢神経の髄鞘の傷害が原因と考えられてきたが、軸索を直接傷害する病型も存在すると報告されている。
3.× 「アルコール多飲」ではなく、上気道感染や下痢が原因である。約70%に先行感染である。アルコール多飲と関係するのは、Wernicke脳症(ウェルニッケ脳症)である。
4.× ビタミンB欠乏によって起こるのは、Wernicke脳症(ウェルニッケ脳症)である。
5.× 歩行困難となる重症例は、約20%である。発症後2週間以内にピークとなり、数週~数か月以内に治癒することが多い。

多発性硬化症とは?

 多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。

(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

 

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