第52回(H29) 理学療法士国家試験 解説【午後問題61~65】

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61 1本の神経線維を電気刺激した場合の興奮伝導の説明で正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 興奮は一方向に伝わる。
2. 興奮は減衰せずに伝わる。
3. 興奮は太い線維ほど速く伝わる。
4. 興奮は並走する別の線維に伝わる。
5. 有髄線維では興奮が髄鞘に伝わる。

解答:2,3

解説

神経線維の興奮伝導

①絶縁性(隔絶)伝導…1本の神経線維の興奮は、隣接するほかの神経線維を興奮させない。

②不滅衰伝導…興奮は減衰せずに伝わる。

③両方向(両側)性伝導…神経線維の一部を刺激すると、興奮は両方向に伝導する。ただし、シナプスからの出力は原則一方向性である。

④等速伝導…1本の軸索上の興奮は一定の速度で伝導していく。ただし、有髄線維では跳躍伝導が起こる。

よって、選択肢2.3. 興奮は減衰せずに伝わる。興奮は太い線維ほど速く伝わる。が正しい。

1.× 興奮は、「一方向」ではなく両方向に伝わる。ちなみに、シナプスにおける神経伝達は原則として、一方向性である。
4.× 興奮は、並走する別の線維には伝わらない。(絶縁性)
5.× 有髄線維では、興奮が髄鞘に伝わらない。ランビエ絞輪の間では跳躍伝導が起こる。髄鞘を飛び越えて伝わるため、髄鞘には興奮は伝わらない。

 

 

 

 

 

62 四肢からの感覚神経伝導路について正しいのはどれか。

1. 触覚の線維は中脳で交叉する。
2. 圧覚の線維は脊髄視床路を通る。
3. 温度覚の線維は脊髄節で交叉する。
4. 一次ニューロンの細胞体は後角にある。
5. 痛覚の伝導路は延髄で二次ニューロンになる。

解答:3

解説

1.× 触覚の線維は、「中脳」ではなく脊髄で交叉する(白交連)。触覚は延髄で交叉(毛帯交叉)する経路(識別のある触覚と識別のない触覚の一部)と脊髄で交叉する経路(前脊髄視床路、識別のない触覚の一部)がある。
2.× 圧覚の線維は、「脊髄視床路」ではなく前脊髄視床路を通る。脊髄視床路には、前脊髄視床路と外側脊髄視床路の2つがある。外側脊髄視床路は、温痛覚の線維の経路である。(問題文が不適当である)
3.〇 正しい。温度覚の線維は脊髄節で交叉する。温痛覚は、脊髄に入ってからすぐに対側へ交叉し、外側脊髄視床路を上行する。
4.× 一次ニューロンの細胞体は、「後角」ではなく脊髄後根神経節(脊髄神経節)にある。
5.× 痛覚の伝導路は、「延髄」ではなく、脊髄後角で二次ニューロンになる。

 

苦手な方向けにまとめました。参考にしてください↓

【PT/OT/共通】伝導路についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

63 運動時の循環反応で誤っているのはどれか。

1. 脳血流量は減少する。
2. 腎血流量は減少する。
3. 静脈還流量は増加する。
4. 分時心拍出量は増加する。
5. 骨格筋の血流量は増加する。

解答:1

解説

 運動時は筋肉や肺への血流量を増やすために心拍出量が増える。増加した心拍出量を維持するために心臓への血流量も増える。一方、消化器官(消化管、肝臓、胆嚢、膵臓)、腎臓、脾臓では血流量が減少する。脳血流は安静時とほぼ一定に保たれるため変わらない。よって、選択肢1.脳血流量は減少する。が正しい。

 

2.〇 正しい。腎血流量は減少する。運動にかかわる筋や皮膚などの血液量は増加し、消化管など主に安静時に働く臓器の血流量は減少するように循環動態が変化する。
3~5.〇 正しい。静脈還流量は増加する。/分時心拍出量は増加する。/骨格筋の血流量は増加する。静脈還流量は、心臓の前負荷であり、これが増加することにより心拍出量も増加し、筋などの運動器への血流量の増加に貢献する。安静時の心拍出量は3~5L/minであり、運動時には安静時の5倍にも増加する。

 

 

 

 

 

64 交感神経の作用はどれか。

1. 瞳孔の縮小
2. 膀胱の収縮
3. 心拍数の減少
4. 気管支の拡張
5. 膵液の分泌促進

解答:

解説

1. ✖ 交感神経が興奮すると、瞳孔は散大する。
2. ✖ 交感神経が興奮すると、膀胱の弛緩(蓄尿)が起こる。
3. ✖ 交感神経が興奮すると、心拍数の増加が起こる。
4. 〇 正しい。交感神経が興奮すると、気管支の拡張が起こる。
5. ✖ 交感神経が興奮すると、消化液の分泌は減少する。

類似問題です↓
【共通のみ】自律神経についての問題「まとめ・解説」

 

 

 

 

 

65 右心不全の症候として正しいのはどれか。2つ選べ。

1. 肺水腫
2. 肝脾腫
3. 起坐呼吸
4. 下腿浮腫
5. チアノーゼ

解答:2,4

解説

 心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。よって、選択肢2,4. 肝脾腫/下腿浮腫が正しい。

 

1,3,5.× 左心不全の症状である。

心不全とは?

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

 

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