第51回(H28) 作業療法士国家試験 解説【午後問題1~5】

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※問題の引用:第51回理学療法士国家試験、第51回作業療法士国家試験の問題および正答について

※注意:著者は理学療法士で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

 

 

1 Daniels らの徒手筋力テスト(段階5または段階4)で、棘下筋が主動作筋のテストはどれか。

解答4

解説
1.× 肩関節伸展テストの主動作筋は、三角筋後部・広背筋・大円筋である。
2.× 肩関節外転テストの主動作筋は、三角筋中部および棘上筋である。
3.× 肩甲骨下制と内転テストの主動作筋は、僧帽筋下部線維である。
4.〇 正しい。肩関節外旋テストの主動作筋は、棘下筋および小円筋である。ちなみに、問題の図は、新・徒手筋力検査法原著第8版のもの(抵抗が検査者の指2本)である。第9版では「抵抗が被験者の手掌」とされている。
5.× 肩甲骨内転と下方回旋テストの主動作筋は、菱形筋群である。

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2 82歳の女性。右利き。脳梗塞を発症して1か月が経過した。頭部CTを下図に示す。
 この患者にみられる症状で正しいのはどれか。

1. Broca 失語
2. 他人の手徴候
3. 半側空間無視
4. Gerstmann 症候群
5. 超皮質性感覚性失語

解答3

解説

本症例のポイント

・82歳の女性(右利き)
・脳梗塞を発症して1か月が経過
・頭部CTから「右中大脳動脈領域の脳梗塞」と考えられる。
→本症例は右利きであるため、右大脳は劣位半球にあたる。劣位半球頭頂葉が障害されると、①対側の半側空無視、②着衣失行、③病態失認が起こる。ちなみに、CTでは脳梗塞発症直後は目立つ所見は認められず、数日の経過に伴い低吸収域を認めるようになることが多い。

1.× Broca 失語(運動性失語)は、前頭葉Broca野(運動性言語中枢)の障害によって生じる。言語理解は可能であるが、非流暢な発語がみられる。
2.× 他人の手徴候は、大脳皮質基底核性症(CED)や前頭葉の内側面、脳梁部の障害で起こる。ちなみに、「他人の手徴候」とは自分の腕が勝手に動き自分で制御できず、視覚情報なしではその腕が自分のものとは認識できない症状のことである。
3.〇 正しい。半側空間無視はこの患者にみられる症状である。頭部CTから「右中大脳動脈領域の脳梗塞」と考えられる。
本症例は右利きであるため、右大脳は劣位半球にあたる。劣位半球頭頂葉が障害されると、①対側の半側空無視、②着衣失行、③病態失認が起こる。ちなみに、CTでは脳梗塞発症直後は目立つ所見は認められず、数日の経過に伴い低吸収域を認めるようになることが多い。また、左半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。
4.× Gerstmann症候群(ゲルストマン症候群)は、優位球の角回の障害で起こる。ちなみに、Gerstmann症候群(ゲルストマン症候群)とは、①手指失認、②左右失認、③失書、④失算の四徴のことである。
5.× 超皮質性感覚性失語は、感覚性言語中枢(ウェルニッケ野)から概念中枢の経路が障害されることで起こる。概念中枢は特定の部位として同定されているわけではないが、言語中枢は本症例では左半球に存在すると考えられため選択肢5は不適切である。ちなみに、超皮質性感覚性失語とは、発語の流暢性と復唱機能は保たれるが、言語理解・困難な失語のことである。

 

 

 

 

 

 

3 20歳の女性。頸髄完全損傷、Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類でC6A。洗顔動作を図に示す。左上肢を用いて体幹を前傾し洗面台に顔を近づけることができる。
 この動作の力源となる筋はどれか。

1. 三角筋
2. 腕橈骨筋
3. 上腕二頭筋
4. 橈側手根屈筋
5. 橈側手根伸筋

解答3

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

本症例のポイント

・20歳の女性。
・頸髄完全損傷(C6A:長・短橈側手根伸筋が作用するが、手関節の背屈が弱い)。
・画像から)左上肢の肘関節屈曲動作(前腕回外位)で体幹を前傾し洗面台に顔を近づけている。前腕回外位での肘関節屈曲動作の主動作筋は上腕二頭筋である。したがって、選択肢3.上腕二頭筋が正しい。

1.× 三角筋の作用は、主に肩関節の外転・屈曲・伸展である。肘関節屈曲とは関係がない。
2.× 腕橈骨筋は、前腕中間位においての肘関節屈曲動作の主動作筋である。
4~5.× 橈側手根屈筋/橈側手根伸筋は、肘関節屈曲に補助動作筋である。

 

 

 

 

 

 

4 24歳の男性。受傷後3か月の頸髄完全損傷。Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類はC6B1。手関節の可動域制限はない。
 把持動作獲得のための装具として適切なのはどれか。

解答1

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

本症例のポイント

24歳の男性(頸髄完全損傷)
・C6B1:長・短橈側手根伸筋が作用し手関節の背屈も強い。ただし、円回内筋、橈側手根屈筋の機能は残存していない。
・手関節の可動域制限はない。

1.〇 正しい。Rancho型把持装具(ランチョ型把持装具、手関節駆動式把持スプリント)は、正中神経麻痺(高位型)やC6レベルまで残存している脊髄損傷に対して用いる。ピンチ動作(把持動作)を可能にする装具である。
2.× パネル型コックアップ装具(手背屈装具、コックアップスプリント)は、橈骨神経麻痺で適応となる。手関節を軽度背屈位にして、安定保持を目的とした装具である。
3.× ナックルベンダーは、MP関節伸展拘縮・尺骨神経麻痺高位型で適応となる。MP関節屈曲を補助し、鷲手変形を防止する。
4.× 短対立装具は、正中神経麻痺低位型で適応となる。母指の掌側外転や対立運動の低下のため、第1,2中手骨間を一定に保つ役割を持つ装具である。また、C8残存に対しては、短対立装具にて母指の対立運動を補助する。
5.× 虫様筋カフは、尺骨神経麻痺低位型で適応となる。指の基節骨の背側に装着し、MP関節の過伸展を防止する。

 

 

 

 

 

 

5 72歳の男性。心筋梗塞後の心電図を下図に示す。
 この心電図でみられるのはどれか。

1. F 波
2. 異常Q 波
3. δ 波
4. PQ 延長
5. ST 低下

解答2

解説

心筋梗塞の時間経過とともにみられる特徴

心筋梗塞の時間経過とともにみられる特徴として、①T波の増高、②ST上昇異常、③Q波、④陰性T波の順番でみられるようになる。
→本症例の心電図から、ST上昇、異常Q波、冠性T波(対称性の陰性T波)が認められ、心筋梗塞後の心電図として読み取れる。心筋梗塞とは、心筋が壊死に陥った状態である。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。

1.× F 波は、鋸歯状波(粗動波)のことである。「ぎざぎざの波形」のような形となる。心房粗動で認める。
2.〇 正しい。異常Q波が認められる。異常Q波の判断基準として、Q波の幅が0.04秒以上、またはQ波の深さがR波の高さの4分の1以上となる場合である。ちなみに、冠性T波(対称性の陰性T波)とは、左右対称の陰性T波(下向きのT波)のことである。
3.× δ 波(Δ、デルタ)波は、QRS波の起始部が緩やかに上昇し、三角形状の波が本来のQRS波の前に追加されたような形を示すものである。WPW症候群で認める副伝導路による波形である。
4.× PQ 延長は、房室ブロックで認められる波形である。PQ間隔の正常値は、0.12~0.20秒である。本症例の心電図ではPQ間隔は、0.12~0.20秒(1マス以内)に収まっているため正常である。
5.× 「ST低下」ではなくST上昇を認める。ちなみに、ST低下は狭心症に見られる。

心電図の見方

第Ⅰ誘導:左室の側壁を見ている。つまり、主に右室側から心臓を見る誘導である。
第Ⅱ誘導:心臓を心尖部から見ている。 つまり、右室と左室前壁側から心臓を見る誘導である。
第Ⅲ誘導:右室側面と左室下壁を見ている。つまり、心室中隔と左室前壁から心臓を見る誘導である。
aVR誘導:右肩から心臓を見る誘導である。逆転した波形が見られる。
aVL誘導:左肩から心臓を見る誘導である。
aVF誘導:心臓を、ほぼ真下から見ている。

第Ⅱ誘導が四肢誘導で、波形が最も明瞭に描かれ、一般的によく見る心電図の波形となる。

 

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